起業資金はいくら必要?資金調達方法や算出方法を徹底解説

起業するには設備資金と運転資金の2種類の起業資金が必要です。
「2021年度新規事業開業実態調査」によると、起業に必要な開業費用の平均値は941万円ですが、開業費用の分布をみると500万円未満で起業する方が40%以上で最も多いという結果がでています。
個人事業主か法人にするのかでも金額が必要な資金が変わってきます。事前に起業資金の算出することで、自分に合った資金調達の方法も見えてきます。
この記事では、起業するにあたっての具体的な必要資金と算出方法について解説します。また、起業資金の調達方法についても紹介するので、計画的に起業資金を集めてスムーズな起業を目指しましょう。
起業資金はいくら必要?平均は1000万円?

「2021年度新規事業開業実態調査」によると、起業に必要な開業費用の平均は941万円という結果が出ています。しかし、開業費用の内訳を見てみると、500万円未満という回答が42.1%と最も高くなっており、500万円未満で開業する割合は長期的に高まる傾向にあるでしょう。
起業資金として必要となる金額は、事業内容や規模によって大きく異なります。
例えば飲食店やクリニックを開業する場合は内外装工事や設備投資にお金がかかるため、必要な起業資金は高額になりがちです。一方で、プログラマーやライターなど、パソコン1台で始められるような事業の場合は、起業資金はほとんど必要ありません。
個人事業主の目安
個人事業主が起業する場合の資金は、事業内容や規模によって異なりますが、まずは200万円を目安に準備するとよいでしょう。
低資金で始められる事業でも、軌道に乗るまでの運転資金は必要です。そのため、目安である200万円は設備投資に必要な金額ではなく、運転資金のみの金額目安となります。
運転資金には、オフィスの賃料や人件費や外注費、広告宣伝費などがあります。1ヶ月にかかるオフィス賃料が10万円、人件費や外注費、広告宣伝費等が40万円と仮定した場合、1ヶ月あたり50万円必要です。最低でも3ヶ月間運用するとなると150万円は必要であり、加えて50万円は突発的な支出に備えた手元資金として見ておきましょう。
個人事業主の方は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
法人の目安
法人の場合も、事業内容や規模によって金額は異なりますが、設備資金+300~400万円を目安に資金準備をしましょう。
まず、会社設立の手続きだけで株式会社なら20万円以上、合同会社も6万円以上の費用がかかります。司法書士などに依頼すればプラス5~20万円程度の報酬を支払わなくてはならないため、手続きだけで11~40万円ほどは見ておきたいところです。
さらに、会社設立には「資本金」が必要です。資本金額の決め方ですが、起業当初にかかる運転資金や設備資金で決定します。会社設立時の資本金の平均は300万円程度であり、規模に応じて増額を検討しましょう。
会社設立・法人化に必要な費用や手順については、こちらの記事でも解説しています。
起業資金とは?必要なお金は2種類ある

そもそも起業資金とは、どんなお金をさすのでしょうか?
企業資金とは、その名の通り起業するために必要なお金のことです。起業資金には、次の2種類があります。
【起業資金の種類】
- 設備資金・・・事業に関わる資産性のある設備を購入するための資金
(例:店舗の工事費用、営業車、OA機器、機械、パソコン、電話、事務机、自社HP制作費用など) - 運転資金・・・事業を運営していくため必要な資金
(例:商品の仕入代金、従業員の給料など人件費、オフィスの賃料等維持費、外注費、販促費用、消耗品費、税金など)
起業資金の算出方法

まずは必要な費用を全てリスト化し、設備資金と運転資金に分類します。
設備資金については、リスト化したものを合算すれば算出できます。運転資金は、リストアップした費用のおおむね3ヶ月分をそれぞれ算出して合算しましょう。
【起業資金の算出方法の事例:カフェの開業(個人事業主)】
項目 | 内訳 | 合計 |
---|---|---|
設備資金 | 〇店舗物件取得費:180万円 〇内外装工事費:500万円 〇什器・備品費:200万円 |
880万円 |
運転資金 | 〇仕入:30万円
〇地代家賃:30万円 〇人件費:20万円 〇水道光熱費:4万円 〇広告宣伝費:10万円 〇その他雑費:6万円 合計:100万円×3か月 |
300万円 |
起業資金 | – | 1,180万円 |
起業資金の調達方法5種類

起業資金を自己資金だけで準備するのは大変であるため、複数の方法を組み合わせて資金調達するのが一般的です。起業資金の集め方としては、大きく分けて5つの方法があります。
資金調達方法 | メリット | デメリット |
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自己資金を使う |
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出資を受ける |
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家族や知人から借入する |
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金融機関から融資を受ける |
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補助金や助成金を申請する |
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自己資金を使う
自分で貯めたお金(自己資金)を元手に起業することは、基本的な資金調達の方法だと言えます。
自らが出資者となるため、経営の自由度が高くなるのがメリットです。もちろん金利の負担を気にする必要もなく、トラブルが起こるリスクもありません。ただし、基本的に資金には限りがあるため、万が一事業が成功しなかったときには個人資産を失ってしまうというデメリットがあります。
出資を受ける
資金調達の方法には、他企業やエンジェル投資家から出資を受けたり、クラウドファンディングで出資を募ったりする方法もあります。
出資を受けるメリットは、返済が不要だという点です。また、投資家や起業家からのアドバイスを受けることができるほか、投資家同士のネットワークにより人脈も広がります。ただし、出資比率や投資契約の内容によっては、経営権を握られてしまうケースがあるほか、制約を受ける可能性がある点がデメリットです。
出資元には、主に以下のような種類があります。
【出資者の種類】
- ベンチャーキャピタル(ファンド)
- クラウドファンディングの会員
- エンジェル投資家
- 他企業
家族や知人から借入する
家族や友人、知人などから個人的な借入をして資金調達する方法もあります。親族や友人、知人からの個人的な借入なら審査が必要なく、借入条件を自由に決められるため、融通が利きやすいというメリットがあります。
その反面、近しい存在だからこそ曖昧な約束になってしまったり、後でトラブルになったりする可能性があるなど、デメリットも大きいのが難点です。
金融機関から融資を受ける
資金調達の方法として、国や金融機関からの融資がよく利用されています。国からの創業融資は、融資を受けるまでの期間が短いのがメリットです。金融機関からの融資は審査が比較的厳しく、融資までにある程度時間を要しますが、出資や個人的な借入とは違い、経営への介入や人間関係のしがらみがないというメリットがあります。
ただし、出資や補助金・助成金などと違い、いずれも金利負担や返済義務があるのがデメリットです。起業資金として利用される融資には、次のようなものがあります。
【融資の種類】
- 国からの創業融資・・・日本政策金融公庫の「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」「新創業融資制度」等
- 民間金融機関からの融資・・・自治体の制度融資、銀行や信用金庫からの融資等
補助金や助成金を申請する
資金調達の方法としては、補助金や助成金を申請するという方法もあります。 補助金や助成金は、返済しなくてもよいのが最大のメリットですが、申請手続きに手間がかかる上に要件が厳しいため、すぐに受け取れないというデメリットがあります。
とはいえ、支払った費用を後から支給するという仕組みが基本であるため、当面の資金は必要となります、そのため、補助金や助成金があるからといって、自己資金の準備は怠らないよう注意しましょう。
補助金・助成金の例としては、以下のようなものがあります。また、自治体独自に設けている制度もあるため、各自治体のホームページを確認しましょう。
【補助金や助成金の種類】
- 経済産業省の「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」等
- 厚生労働省の「キャリアアップ助成金」「人材確保等支援助成金」「中途採用等支援助成金」等
- 東京都の「創業助成事業」、大阪府の「大阪起業家グローイングアップ事業」等
起業資金に関するよくある質問

ここでは、起業資金に関する「よくある質問」に回答します。
起業家への支援制度はどこで情報収集できる?
「経済産業省」や「独立行政法人中小企業基盤整備機構」といった公的機関が、積極的に起業家の支援を行っています。そのため、起業家への支援制度については、これらの公式サイトで情報収集することをおすすめします。
また、それぞれの自治体でも、起業家へ独自の支援制度を設けているところがあります。都道府県や市町村の広報サイトなども、こまめにチェックすると情報収集できるでしょう。公的機関以外にも株式会社プロジェクトニッポンが運営する「DREAM GATE」などで起業家支援に関する情報収集が可能です。
- 【起業家への支援制度の例】
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- 女性、若者/シニア起業家支援資金・・・日本政策金融公庫による、女性の方、35歳未満または55歳以上の方の創業を支援する制度
- 起業支援ファンド・・・ベンチャー企業が新事業等に取り組む際の、ファンドによる資金提供・経営支援
- エンジェル税制・・・ベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して、税制上の優遇措置を行う制度
まとめ

起業資金とは、起業するときに必要な設備資金と運転資金を合わせた資金のことです。具体的に必要な金額については、事業内容や事業規模によって異なります。まずは必要な設備や事業運営にかかる必要経費の支出項目を具体的な金額とともにリストアップすることで、必要な起業資金は見えてくるでしょう。
また、起業資金の調達方法にはさまざまな方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。そのため、各調達方法の特徴を把握したうえで、自身に合った調達方法を選びましょう。 どのくらいの起業資金をどのように準備したらよいかお悩みの方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
起業の手順や手続きはこちらの記事で解説しています。
- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。