個人事業主が請求書を発行する際の書き方・記載項目・注意点を詳しく紹介!
個人事業主が取引先から代金を支払ってもらうには、原則的に自身で請求書を発行しなければいけません。
請求書には、書き方や作成方法に明確な決まりはありません。
しかし、記載すべき項目やマナー、個人事業主ならではの記載項目があるため、発行する前に書き方に関する知識は把握しておくべきです。
この記事では、個人事業主の請求書の書き方や記載項目、発行する際の注意点や請求書に関する疑問などを詳しく紹介します。
2024年11月1日より、フリーランス新法(フリーランス保護法、フリーランス保護新法)が施行されます。
組織に所属せずに働くフリーランスが安心して働ける環境を整備するために、フリーランスと企業などとの発注事業者間の取引の適正化(契約書等により取引条件を明示する)が主な目的です。
詳しくは次の記事をご覧ください。フリーランス新法の概要、制定された背景や具体的な内容などを解説しています。
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請求書とは
請求書とは、商品・サービスを提供した顧客に対して支払いを要求する文書です。
一般的には顧客に対して送付するものであり、商品やサービスの詳細、個数、単価、合計金額などを記載します。
請求書と似た文書に、見積書・発注書・納品書があります。ここでは、それぞれの違いを詳しく解説します。
見積書との違い
見積書とは、商品・サービスを提供する前に価格の見積もりを示す文書です。
見積書は提供する商品・サービスの詳細、数量、単価、見積もり金額を記載し、契約や発注前の合意を得るために使用されます。
請求書が商品・サービス提供後であるのに対して、見積書は提供前に送付されます。また、価格見積もりを示す文書であるため、提供する目的にも大きな違いがあります。
発注書との違い
発注書とは、買い手が売り手に対して商品・サービスの購入を依頼する文書です。
発注書には購入する商品・サービスの詳細、数量、単価、納期、配送先などが記載されるため、売り手は正確に注文内容を把握できます。
請求書は売り手が支払いを要求するための文書であるため、買い手が購入を依頼するための発注書とは大きく目的が異なります。
納品書との違い
納品書とは、商品・サービスの納品を記録する文書です。
売り手は商品・サービスを買い手に届けたことを証明し、買い手は確認と記録のために保管します。在庫管理や請求書作成における重要な文書です。
納品書は商品・サービスの納品を記録する文書であり、送付するタイミングは実際に納品物が作成・提供されたタイミングです。
個人事業主の請求書の書き方・記載項目
商品・サービスを提供した顧客に対して支払いを要求する請求書には、明確な書き方の決まりや記載項目はありません。
しかし、最低限以下の項目は含まれる必要があります。
- 作成者の氏名・名称
- 請求書の宛先
- 取引年月日・内容・金額
- 消費税
- 支払日・振込先
- 請求書番号
- 特筆事項
ここでは、個人事業主が請求書を発行する際の書き方や記載項目を詳しく解説します。
作成者の氏名・名称
請求書には、作成者の氏名・名称が必要です。
個人事業主が自身の名前で事業を行っている場合は、請求書に氏名を記載します。事業に固有の名称を使用している場合は、その名称を記載することもあります。
請求書の宛先
請求書の宛先は、請求書を送付する相手の詳細な情報です。一般的に請求書の宛先では、以下の内容を記載します。
- 顧客名
- 所在地
- 電話番号
請求書のヘッダー部分に作成者の氏名・名称を記載し、その下に請求書の宛先の項目を設けて記載するのが一般的です。
また、必要に応じてメールアドレスやファックス番号や担当者の氏名、顧客との連絡手段などを追加し、情報を追記することもあります。
取引年月日・内容・金額
請求書には、商品・サービスの提供日、契約成立日、取引日など、具体的な取引の日付を記載するのが一般的です。
内容では、商品・サービス名、数量、単位、単価、種類、提供期間などを具体的に説明し、金額には割引額、税金、合計金額を記載します。
取引年月日、内容、金額は本文に具体的かつ詳細に記載する部分です。これにより、取引の詳細や金額に関する誤解や後のトラブルを避けることができます。
消費税
請求書には、商品・サービスの提供に伴い課税される消費税に関する情報を記載します。
本文では、税抜き金額に対して消費税を加算した税込み金額を明示します。商品・サービスごとに明細を表示するか、合計金額に対する消費税額を表示するのが一般的です。
支払日・振込先
請求書には、支払期限・期日を記載します。
これは顧客に対して支払いを行う期限を指定する項目で、双方の取り決めにより変わりますが、一般的には請求書を発行してから指定期間を設定します。
また、顧客が支払いを行うための振込先の情報も記載します。一般的には、以下の項目を記載するようにしてください。
- 銀行名
- 支店名
- 口座種別
- 口座番号
- 名義人
支払日と振込先の情報は、請求書のフッター部分や支払い関連の項目にまとめて記載するのが一般的です。
請求書番号
請求書番号は、請求書の識別や管理、追跡を容易にする目的で使用されます。具体的な決まりはありませんが、一般的な形式は「年-連番」です。
例えば、2023年に発行した最初の請求書に「2023-01」といった番号を付与しておくと、この数字をもとに請求書を特定・追跡することができます。
必ずしも記載すべき項目ではありませんが、番号で請求書を管理したい場合は、右上の空いているスペースに請求書番号を記載しておきましょう。
特筆事項
請求書の特筆事項では、請求書に関する追加情報や特記事項を記載します。
例えば、割引制度の適用や支払い方法の指示、遅延時の利息や延滞料金の有無などです。また、顧客に伝えるべき商品・サービスの情報も記載できます。
特筆事項は必要に応じて適切な箇所に記載するのが一般的ですが、顧客とのコミュニケーションを円滑にする目的で使われるため、配置箇所には配慮が必要です。
個人事業主が請求書を発行する際の5つの注意点
個人事業主が請求書を発行する際は、源泉徴収の有無など、法人とは異なる特有の注意点があります。ここでは、具体的な注意点を5つ解説します。
金額の記載方法
請求書を発行する際は、取引先ごとに金額の記載方法を合わせる必要があります。具体的には、数値の表現やフォーマットです。
- 通貨単位の表示:最初に「\」か最後に「円」をつけるか
- 3桁ごとにカンマで区切る
- 税込金額の表示方法
- 合計金額の表示方法
通貨単位の表示方法に決まりはないため、取引先の表示方法に合わせるのが一般的です。
しかし、合計金額が視覚的に判断しやすく間違いを防ぐためにも、3桁ごとのカンマは必ず入れるようにしてください。税金や合計金額の表示方法も、取引先に合わせます。
源泉徴収の有無
源泉徴収とは、給与や報酬などの支払いに対して受取人から源泉徴収税を差し引き、所得税や住民税を納める制度です。
個人事業主が法人や給与支払いをしている個人に対して請求書を発行する際は、業務内容に応じて源泉徴収の対象になることがあります。。
源泉徴収が義務付けられている仕事の請求書には、税抜きの報酬金額と消費税に加えて、源泉徴収額を請求金額に表示するのが望ましいです。
しかし、請求書への源泉徴収の記載は義務ではありません。記載の有無も含めて、取引先へ確認しておくことをおすすめします。
押印の有無
押印とは、請求書に個人事業主の印鑑を押すことを指します。
法令や業種により異なりますが、一般的に個人事業主が発行する請求書に押印は不要です。しかし、一部の企業や公的機関では押印を要求される場合もあります。
押印が必要な場合でも、ExcelやWordなどで請求書を作成すれば、印影を画像として取り込んでおいた電子印鑑を利用することが可能です。
また、押印は請求書の信頼性や信用性確保に役立つ場面も多くあります。
様と御中の使い方
個人事業主が請求書を発行する際は、取引先の文化や習慣に従いながら、「様」と「御中」を使い分けるのが重要です。
一般的に様と御中は、以下のように使い分けられます。
- 様:一般的に相手方に対して尊敬や丁寧さを示す場面で使う
- 御中:一般的に団体や組織全体に対して使われる敬称
取引先が個人の場合は「●●様」、企業の場合は「株式会社●● 御中」と記載するのが一般的ですが、明確な決まりはありません。
また、屋号の後に担当者の氏名を記載する場合は、「株式会社●● 〇〇様」と記載します。
振込手数料の負担
一般的に振込手数料は、支払いを受ける側が負担します。しかし、特定の条件や取引内容次第では、振込手数料の負担に関して別途で合意が必要な場合もあります。
特に海外との取引では振込手数料の負担が大きくなるため、顧客とコミュニケーションを進めていくうえで、振込手数料に関する合意や交渉を行う必要があります。
後のトラブルを回避するためにも、振込手数料の負担に関する取り決めは請求書に記載しておきましょう。
個人事業主の請求書に関する気になる疑問をQ&Aで紹介
最後に、個人事業主の請求書に関する気になる疑問をQ&A形式で紹介します。
請求書を送付するタイミングは?
請求書を送付するタイミングは、顧客との取り決めにより変わります。
一般的には、完了したプロジェクトを提供した後、支払い期限が定められている場合は十分な余裕を持って送付します。
また、定期的な請求が発生する場合に関しては、「毎月〇日」「毎週末」など、契約期間ごとに決められたサイクルで請求書を発行する場合もあります。
送付するタイミングは、顧客へ確認しながら調整していきましょう。
請求書の作り方は?
請求書の作成は、手書きでもパソコンでも問題ありません。しかし、近年ではテンプレートを利用してパソコンで作成するのが主流です。
ExcelやWordには無料で使える多数のテンプレートがあるため、初めての請求書作成でも苦労することなく、便利に活用できるはずです。
請求書の送り方は?
請求書の送り方は、郵送、電子メール、オンラインサービスの利用など、顧客によりさまざまです。一般的には、PDFフォーマットで作成し送付する場合が多いです。
インボイス制度の導入で何か変わる?
インボイス制度の適格事業者として登録した個人事業主は、2023年10月から導入されるインボイス制度に則った請求書を発行しなければいけません。具体的には、適格請求書発行事業者の氏名・登録番号の記載、適用税率を請求書に記載する必要があります。
まとめ
個人事業主が請求書を発行する際の書き方や記載項目、注意点や気になる疑問をまとめて紹介していきました。
個人事業主はすべての責任を自身で負うため、取引先から代金を支払ってもらうための請求書も自身で作成しなければいけません。
請求書には明確な書き方やルールはありませんが、様と御中の使い分けや金額の記載方法、源泉徴収や押印の有無など、確認すべき事項は多くあります。
近年は無料のテンプレートが多くあるため、パソコンで作成し気軽に送付することが可能です。
2023年10月からはインボイス制度が導入されるため、請求書の書き方については、確認の意味を踏まえて再度チェックしてみてください。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。