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個人事業主の消費税はいつから払う?インボイス制度の変更点や計算方法、課税の仕組み

個人事業主の消費税はいつから払う?インボイス制度の変更点や計算方法、課税の仕組み
インボイス制度の開始を目前に、思わず頭を抱えたくなっている個人事業主の方も多いでしょう。

そこで本記事では、そもそもなぜ今まで個人事業主は消費税を支払わなくてもよかったのか、またインボイス制度が与える影響の実態について解説します。

インボイス制度の特徴はもちろん、個人事業主と消費税課税の関係性など基本から知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事のまとめ】
  • 個人事業主が消費税を支払う条件は、売上が1,000万円を超えた場合や、自主的に課税事業者として申請した場合です。
  • 消費税の支払い義務は課税売上が1,000万円超となった2年後から発生し、例外として前年の売上が一定額を超えた場合にも発生します。
  • インボイス制度により適格請求書が求められ、免税事業者は契約への影響や課税事業者への登録が必要となる場合があります。

2024年11月1日より、フリーランス新法(フリーランス保護法、フリーランス保護新法)が施行されます。

組織に所属せずに働くフリーランスが安心して働ける環境を整備するために、フリーランスと企業などとの発注事業者間の取引の適正化(契約書等により取引条件を明示する)が主な目的です。

詳しくは次の記事をご覧ください。フリーランス新法の概要、制定された背景や具体的な内容などを解説しています。

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個人事業主の消費税の課税の仕組み

個人事業主の消費税の課税の仕組み

個人事業主に消費税が課税される条件は以下のとおりです。

  • 課税期間より2年前(前々年:基準期間)の課税売上高が1,000万円超
    または
  • 前年の1月1日から6月30日の間(特定期間)の課税売上高、または給与等の支払額が1,000万円超
    または
  • 消費税課税事業者選択届出書を提出済み

基本的には基準期間の売上高が1,000万円を超えると、消費税が課税されると考えて間違いありません。売上高が1,000万円以下の場合は、免税事業者として扱われるため納税の義務が発生しないのです。

ただし、消費税課税事業者選択届出書を自らの判断で提出している場合は、基準期間の売上高が1,000万円以下でも消費税の納税が義務となり課税事業者になります。

個人事業主の消費税はいつから払う?

個人事業主の消費税はいつから払う?

では個人事業主が課税事業者となった場合、消費税はいつから支払うことになるのでしょうか。課税事業者となったその年にすぐ払うのではなく、課税売上額が1,000万円を超えた2年後に支払い義務が確定します。

2022年の売上高が1,000万円を超えた場合、2024年の確定申告で消費税額が決定するということです。また、2年前の課税売上額が1,000万円以下だった場合でも、例外的に消費税の支払いが発生するケースもあります。

例外として消費税が発生するのは、1年前の特定期間(1月1日~6月30日)の課税売上額と人件費がいずれも1,000万円を超えた場合です。基本的に1年間、または特定期間の間に1,000万円以上の課税売上額があった場合に消費税の支払い義務が発生します。

2年後か1年後かの違いは、売上額が1,000万円を超えたタイミング次第だと考えてください。

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個人事業主の消費税の計算方法

個人事業主の消費税の計算方法

消費税を支払うことになる場合、気になるのはいくら支払わなければいけないのかといった点でしょう。支払う消費税の計算方法は公表されているため、事前に額を確認することも可能です。

一般課税、簡易課税それぞれの計算方法を紹介するので、ぜひ事前に消費税額を把握する際に活用してください。

一般課税(本則課税)の計算方法

一般課税は、売上に含まれている消費税の中から、事業者自身が購入した際に支払った消費税分を差し引いて計算します。

  • 計算方法:
    課税売上高(受け取った消費税)×10%(国税7.8%:地方税2.2%)または8%-仕入額(支払った消費税)×10%(8%)=納付する消費税

具体的な数字を使った計算例は以下です。(課税売上高が1,200万円で、仕入れにかかった額が500万円とした場合)

  • 1200万×10%―500万×10%=70万円

計算で出た70万円が支払うべき消費税分になります。10%と8%の違いは、現在一般的に買い物をする際に適用される、標準税率と軽減税率の違いと同じです。

したがって食料品の仕入れなどがある場合、もう少し計算は複雑になると考えられます。

簡易課税の計算方法

簡易課税とは標準機間の売上高が5,000万円以下の場合に利用できる計算方法です。簡易課税では仕入れ時の消費税を計算する必要がなく、代わりに「みなし仕入れ率」を適用して計算します。

【業種別みなし仕入れ率】
  • 卸売業:90%
  • 小売り、農林水産業(食用):80%
  • 農林水産業(非食用)、鉱業、建設業、製造業:70%
  • 飲食店業(ほかに該当しない職業):60%
  • 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く):50%
  • 不動産業:40%
  • 簡易課税の計算式:
    課税売上高×10%-(仕入額×10%×みなし仕入れ率)=納付する消費税

一般課税の計算方法と同じく、課税売上高が1,200万円、仕入れ額が500万円(卸売業)で計算してみます。

  • 1,200万×10%―(500万×10%×90%)=75万

上記の計算からわかるように、簡易課税方式は仕入れ額の消費税を計算しなくてよいため、事務手続き自体はわかりやすいと言えます。

しかし、業種によっては納める税額が高くなる可能性があることに気を付けましょう。

個人事業主の消費税免除

個人事業主の消費税免除

インボイス制度の発表から、個人事業主の中にも消費税を意識し始めた方が多くなったのではないでしょうか。インボイス制度に触れる前に、現在実施されている、個人事業主の消費税免除制度(免税事業者)の条件について解説します。

開業から2年間は消費税免除

個人事業主の場合、開業から2年の間は消費税が免除されます。もともと消費税の納税義務が発生するのは、売上が発生して2年後の確定申告時のため、標準期間内は消費税の納税が発生しません。

そのため、免除期間のうちに事業の流れや地盤を整えておくとよいでしょう。

課税売上高1000万円以下だと消費税免除

個人事業主として開業後、3年経過した時点で2年前の課税売上高が1,000万以下の場合も消費税の納税は免除されます。課税売上高とは、課税取引の売上金額から返品や値引き、割り戻しなどの諸合計を差し引いた額を指します。売上高全てを指すわけではありません。

売上高には本業以外の収入(不動産収入など)も含まれます。この消費税免除制度は、事業の売上がそこまでない状態で課税してしまうことで、税額はもちろん、事務手続きの煩雑さから事業が立ち行かなくなることを防ぐ目的があると考えられます。

また、個人事業主になるためのハードルを下げることも目的の一つです。

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インボイス制度による個人事業主への影響

インボイス制度による個人事業主への影響

新しい制度ということもあり、インボイス制度について、まだよく理解できていない方も多いのではないでしょうか。

ここでは、インボイス制度が実施されることによって個人事業主にどのような影響が出るのか、また施行時期から必要な手続きまでを詳しく紹介します。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは

インボイスとは、もともとは輸出業で利用される「請求書」や「送り状」を指す用語とされています。今回導入されるインボイス制度も正式には「適格請求書等保存方式」であり、一定の要件を満たした請求書の発行・保存を義務化する制度です。

個人事業主に直接関係する変更点としては、インボイス制度が施行された後は適格請求書でなければ仕入れ税額控除ができなくなるという点にあります。仕入れ税額控除とは、消費税計算のうち、預かった消費税から支払った消費税を控除できる制度です。

適格請求書には多くの決まりがあるため、適格請求書を発行することが難しい免税事業者は仕事がなくなるのではないかと懸念されています。この懸念こそがインボイス制度導入は早計ではないかといわれる理由です。

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インボイス制度の施行時期と経過措置

事務手続き内での計算方法や、免税事業者から課税事業者への切り替えなど、影響が出る範囲が大きいことから施行が始まるまでの間に経過措置が取られることになりました。

経過措置の期間は6年間(2029年まで)とされており、具体的な内容としては、この経過措置の間は適格請求書以外であっても一定の仕入れ控除が受けられる措置です。

  • 2023年10月1日から3年間:80%の仕入れ額控除が可能
  • 2026年10月1日から3年間:50%の仕入れ額控除が可能

上記のように、期間中に段階的に仕入れ額控除額が引き下げられる見通しとなっています。

インボイス制度で個人事業主に生じる納税義務

個人事業主にとってインボイス制度はどのような影響があるのかは、課税事業者になるか免税事業者のままでいるかによっても生じる影響が異なります。以下、それぞれの影響について見てみましょう。

【免税事業者のまま】
  • クライアントから消費税分の減額を打診される
  • 仕入れ額控除ができない免税事業者との契約に影響がある可能性
  • クライアントから課税事業者への登録を打診される
【課税事業者に登録】
  • 消費税の納税義務が生じる
  • 適格請求書の発行、保存義務が生じる

事業内容や収入額によって取るべき方法は変わってくるでしょう。適格請求書の発行には課税事業者への登録が必須のため、早め早めの行動が必要です。また適格請求書を正しく発行するため、会計ソフトの見直しなども視野に入れる必要があります。

当初は2023年3月末までの登録が必要でしたが、インボイス制度導入自体が延長されたことで9月末まで受け付けています。

インボイス制度で必要な手続き

インボイス制度を利用するには、現在免税事業者である場合は課税事業者として登録しなければなりません。必要な手続きや準備すべき書類をご紹介します。

【書面で申請する場合】
  • 必要書類:適格請求書発行事業者の登録申請書

国税庁のHPからダウンロードが可能であり、個人・法人共に同じ申請書類になります。必要な項目を記入して、納税地を管轄する税務署(確定申告をする税務署)へ持参します。郵送の場合は税務署ではなく、地域ごとの管轄がある「インボイス登録センター」なので間違えないようにしましょう。

【e-taxで申請する場合】

e-taxのサイトへログイン、フォームに沿って申請書類を作成し、電子署名を送付すれば申請完了です。個人事業主の場合は、PC版だけではなくスマートフォンからも申請が可能になっています。

まとめ

まとめ

以前までは個人事業主の中でも小規模事業主には関係なかった消費税ですが、インボイス制度導入によって否が応でも対応しなければいけなくなりました。

しかし、制度が難しくてよくわからないという方も多いと思います。事業を行っている以上、制度を正しく把握して臨機応変に対応していかなければなりません。事業内容によって課税事業者になるべきか否かの選択は異なります。

この記事を参考にまずは制度を正しく理解し、自身がどう動くべきなのか判断するのに役立ててください。

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記事監修
中野裕哲
中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
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