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インボイス制度は免税事業者に不利?事業への影響と課税事業者との違い

インボイス制度は免税事業者に不利?事業への影響と課税事業者との違い
【この記事のまとめ】
  • インボイス制度は請求書の交付や保存の方式を変更する新しい制度で、登録した事業者は適格請求書の提出が必要です。
  • 免税事業者は消費税の納税義務がないが、買い手が仕入税額控除を受けられなくなるため、取引価格の低下や取引数の減少が懸念されます。
  • 免税事業者と課税事業者の違い、メリット・デメリット、及び免税事業者が取るべき対応を理解しておくことが大切です。

インボイス制度が始まり、自社が免税事業者であるべきなのか、課税事業者であるべきなのか悩んでいる企業も少なくありません。
消費税の納税義務がない免税事業者ですが、その他のメリットやデメリットなども含め、課税事業者になるかどうかの判断が必要になるでしょう。
本記事では、インボイス制度の概要から免税事業者の立ち位置や課税事業者との違い、課税事業者になるための方法や事業に与える影響などについて紹介していきます。
免税事業者であることが事業のプラスになるのかどうか、はたまた事業の妨げになるのか見極めましょう。

インボイス制度における免税事業者とは?

インボイス制度における免税事業者とは?

免税事業者とは何なのか理解するためには、インボイス制度がどのようなものなのかしっかりと理解しておく必要があります。
新しい制度が広まる中で、自社がどのような立ち位置で事業を展開していくのか判断するためにも、インボイス制度と免税事業者の関係性を理解しておきましょう。

インボイス制度の概要

インボイス制度とは、請求書などの交付や保存の方式を新しく変更する「適格請求書等保存方式」のことを指します。
制度導入後は仕入税額控除を受けるために、消費税額や適用税率、登録番号などの項目を記載した適格請求書(インボイス)の提出をしなければなりません。
仕入税額控除は、売上の消費税額から仕入れなどの経費にかかった消費税額を差し引くことができる仕組みです。
免税事業者は適格請求書の発行ができないため、インボイス制度の導入に合わせて課税事業者になった企業も少なくありません。
すべての企業が必ず課税事業者にならなければならない決まりではありませんが、どちらの事業者になるのか判断が求められます。

インボイス制度における免税事業者

インボイス制度における免税事業者とは、商品の販売時に受け取った消費税の納税義務の免除が許された事業者のことを指します。
また、最低限以下の条件を満たしていなければなりません。

  • 法人は前々年度、個人事業主は前々年の課税売上が1,000万円以下であること

免税事業者には消費税の納税義務はありませんが、買い手が仕入税額控除を受けられなくなるため、取引価格の値下げや打ち切りが起こる可能性があります。
課税事業者になれば取引もスムーズになりますが、消費税の納税義務がついてくるため、売上が1,000万円以下の中小企業や個人事業の方は慎重に判断しましょう。

免税事業者と課税事業者の違い

免税事業者と課税事業者の違い

免税事業者と課税事業者にはどのような違いがあるのか、課税売上高と消費税、メリットとデメリットなどの観点から解説します。
自身の企業がどうあるべきなのか考えながら、どちらの事業者が自社にあっているのか検討するようにしましょう。

課税売上高と消費税について

免税事業者は消費税を納税する必要がないため、個人事業主や小規模の事業者による消費税計算の業務への負担を解消できます。
課税売上高は原稿料や印税、インターネットのサイドビジネスの収入や、諸謝金などが対象となるため、見落としがないようにしましょう。その他にも社会保険診療費など、課税売上高に算入されない売上もあるため、事前に売上の中で消費税が必要なケースを把握しておくのがおすすめです。

メリットとデメリットについて

両者のメリット、デメリットには以下のようなものがあります。

メリット デメリット
免税事業者 消費税納付の義務がない
消費税の申告にコストをかけずに済む
適格請求書が発行できない
取引先の数や売上が下がる恐れがある
課税事業者 還付額が発生する場合免税事業者より有利になりやすい
適格請求書の交付ができる
消費税の納税が必要になる
申告手続きをしなければならない
請求書のフォーマットの変更が必要

特に消費税の扱いによる違いが多く、課税事業者はインボイス制度の導入による変化に対応しなければなりません。免税事業者は業務に大きな変更なくビジネスが進められますが、適格請求書が発行できないため、取引先との契約の数が減少したり、売り上げが落ちたりしてしまう可能性がある点に注意が必要です。

免税事業者である場合の影響

税事業者である場合の影響

次に、免税事業者であり続ける場合に起こる4つの影響を紹介します。よい影響も悪い面もあることを理解し、企業にとって免税事業者であることが最適な判断なのかどうか考えることが大切です。

取引の数と価格が減少する恐れがある

免税事業者が適格請求書を発行できないことから、代わりに控除が受けられる課税事業者との取引が優先されやすくなるでしょう。
したがって、報酬を引き下げられたり、依頼が打ち止めにされたりする可能性が高くなります。
結果的に取引の数が減少してしまい、売り上げが落ちてしまうかもしれません。

課税事業者との新規契約の難易度が高くなる

課税事業者は仕入税額控除を前提に取引するようになるため、新規契約をする際にはインボイスに対応できる企業との取引を優先するようになるでしょう。
また、品質の良い商品を扱っていても適格請求書が発行できないことから取引が避けられやすくなってしまいます。
したがって、課税事業者との新規契約を結ぶためには、仕入税額控除がなくても得られるメリットがなければなりません。
できるだけ消費税の納税額を抑えてより大きな利益をあげようとするのは当然の考え方であるため、取引ができなくなる企業が出ることを想定した対応が求められます。

納税義務や事務手続きが不要になる

取引相手や売上が減少してしまう可能性もありますが、納税義務や事務手続きが不要なのは大きなメリットにもなり得ます。
事務手続きの負担が減れば他の事業に手を回したり、新たな活動をすることもできるようになるでしょう。しかし、契約している企業の取引先の多くが課税事業者となってしまった場合、契約数が減少してしまう可能性があります。
周りの企業の動向も含め、自社がどのように動けば十分な利益を上げられるようになるのかも含めて判断しましょう。

インボイス制度の免税事業者として必要な対応

インボイス制度の免税事業者として必要な対

ここでは、インボイス制度実施後に免税事業者がどのような対応をしていくべきなのか解説します。自社の最善策を考えながら、柔軟な対応ができるように準備しておくことが重要です。

課税事業者になるかどうか決める

免税事業者として活動していく上で常に考えなければならないことは、課税事業者になるかどうかです。売り上げが1,000万円以下の企業であっても、あえて課税事業者になることで、契約数の減少を抑えようと考えている事業者も少なくありません。
しかし、納税額が増えて事業が立ち行かなくなっても意味がないため、どちらの選択が自社にとって大きな利益になるのか改めて考えるようにしましょう。
たとえば、企業との契約ではなく、消費者向け(BtoC)の事業を展開しているのであれば、免税事業者でもそれほど事業への影響はないかもしれません。。自社の企業形態や、サービスの展開に合わせて事業者の形を決めましょう。

免税事業者のままであるなら消費税に対する対処が必要

免税事業者のままでのビジネスを考えるのであれば、消費税に対する対処が不可欠です。消費税は国内で販売される商品やサービスの提供に課税され、以下のように標準税率と軽減税率にわけられます。

地方税 国税 合計
標準税率 2.2% 7.8% 10%
軽減税率 1.76% 6.24% 8%

免税事業者は消費者の消費税も含めた支払いによる収益を得ることになるため、消費税に合わせた価格設定も重要になります。個人事業主や小規模事業者が多い免税事業者にとって、消費税分の利益が得られるのは大きなメリットです。
しかし、課税事業者との取引では仕入税額控除が受けられないため、取引価格を仕入税額控除分安くするなどの対処をしなければならない場合もあります。

課税事業者になるなら2割特例を検討する

課税事業者になることを検討しているのであれば、インボイス発行事業者になる小規模事業者への負担軽減処置となる2割特例の活用をおすすめします。
2割特例は、仕入税額控除の金額を特別控除税額(課税標準の合計金額に対する消費税額から、売上に関わる対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額の100分の80に相当する金額)にできる制度です。
2割特例を受けるためには、基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になる方でなければなりません。
また、2割特例の適用期間は、令和5年10月1日~令和8年9月30日までの日に属する課税期間となるため、期間切れに注意が必要です。

簡易課税制度の導入を視野に入れる

簡易課税制度とは、仕入れ税額控除の計算を簡素化するもので、消費税額にみなし収入率を乗じて計算する方法です。
簡易課税制度の選択は、納税にかかる事務作業の負担を減らすこともできるでしょう。
また、簡易課税制度を選択するためには、以下2つの条件を満たしている必要があります。

  • 基準期間の課税売上高が5,000万円以下であること
    ※法人は前々事業年度、個人事業者は前々年
  • 所轄の税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していること

免税事業者から課税事業者になる際の、作業への負担を緩和する制度を活用しながら、インボイスに柔軟に対応できる体制作りをしていきましょう。
制度をうまく活用すれば変化に大きな労力をさかずに済むため、時間と人員にかかるコストを抑えることも可能です。

免税事業者から課税事業者になる手順

免税事業者から課税事業者になる手順

免税事業者から課税事業者になる場合の方法や手続きを紹介します。 手続き自体は簡単にできるため、必要書類を準備して スムーズに業務ができるように準備しましょう。

適格請求書発行事業者の登録申請書の提出

免税事業所から課税事業者になるには、まず適格請求書発行事業者の登録申請書を作成し、提出する必要があります。適格請求書発行事業者の登録申請書は、国税庁のサイトからダウンロードし、印刷したものを使用します。
また、登録申請書は2枚あり以下の内容について記載します。

  • 登録申請書1枚目:提出日、所轄税務署、申請者住所、納税地、事業者名、代表者氏名、法人番号、事業者区分など
  • 登録申請書2枚目:免税事業者の確認のために必要な上部の確認事項と、下部にある登録要件の確認に関する事項にチェックをつける

記載漏れがないか確認し、納税地を所轄する税務署に提出しましょう。提出後に審査が行われ、問題がなければ適格請求書発行事業者として認めてもらえます。

仕入れの適格請求書とその他が明記された帳簿を作る

課税事業者になると、インボイス制度に対応した帳簿を作成しなければなりません。帳簿には、仕入れにかかる適格請求書とその他の明記が必要になるため、以下の記載事項を守って帳簿を作成しておきましょう。

  1. 仕入れ年月日
  2. 仕入先の氏名または名称
  3. 取引内容及び税率
  4. 課税仕入れ額

必要事項が書かれていない帳簿はインボイス制度では認めてもらえないため、書類作成時に漏れがないようにご注意ください。また、あくまでも帳簿となるため、適格請求書への記載が義務付けられている登録番号などの記載は不要となっているため、必要のない情報がないかも確認しておくとよいでしょう。
記載内容も変化するため最初は確認に時間がかかるかもしれませんが、一度書類を作成してしまえば手間なく手続きが行えます。

消費税の確定申告をする

課税事業者では、消費税の納税義務が発生します。申告漏れや納税が遅れてしまうと、延滞税が課せられてしまう恐れがあるため、事前に準備しておくのがおすすめです。消費税の納付期間や申告期間は以下の通りとなっているため、内容を確認して期日を守るようにしましょう。

申告期間 課税対象期間の翌年1月1日~3月31日
納税期限 課税対象期間の翌年3月31日
課税対象期間 1月1日~12月31日
提出書類
  • 消費税及び地方消費税の確定申告書第一表・第二表
  • 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準になる「消費税額計算表」
  • 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表
  • マイナンバーカードもしくは、マイナンバーを確認できる本人確認書類
書類提出方法
  • 所轄の税務署の受付に提出
  • 所轄の税務署へ郵送
  • e-tax

消費税課税事業者選択届出書の提出について

消費税課税事業者選択届出書の提出について

免税事業者が自らの意思で課税事業者になる際には、消費税課税事業者選択届出書の提出が必要です。一般的には、適用を求める課税期間の初日の前日までに、納税地を所轄する税務署長に提出します。
しかし、2029年9月30日までに適格請求書発行事業者の登録申請書を提出していれば、自動的に課税事業者となるため、消費税課税事業者選択届出書の提出は必要ありません。
したがって、2029年9月30日以降に必要になる書類だと覚えておくようにしましょう。
現時点では免税事業者になるつもりがない場合でも、課税事業者になる必要性が出てくる可能性もあるため、必要書類に変更や追加がないかも定期的に確認しておくのをおすすめします。

免税事業者のままでいるか迷ったら税理士に相談しよう

免税事業者のままでいるか迷ったら税理士に相談しよう

免税事業者のままでいるかどうか迷った場合は、第三者の視点から会社の資産や課税売上高などから適切な判断をしてくれる税理士に相談するようにしましょう。
免税事業者から課税事業者になると必要な手続きや、売上などにも影響が出るため、税理士などの専門家からのアドバイスを参考に慎重に判断するようにしましょう。

まとめ

インボイス制度における免税事業者とは何なのか、課税事業者との違いや事業に与える影響などについて解説しました。免税事業者のままでいても大丈夫なのか、 課税事業者になる必要があるのかについては会社ごとで異なるため、課税売上高や取引先の動向などを見て判断しなければなりません。
したがって、第三者かつ専門家としてのアドバイスが受けられる税理士との相談は有効な方法のひとつです。自社や自分だけで考え込まず、顧問税理士に相談し、自社にとって最善な選択ができるよう準備をすることが大切です。

記事監修
中野裕哲
中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
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