合同会社設立時に印鑑は必要?法人印鑑の種類や注意点を解説
この記事では、印鑑は合同会社設立時に必要かどうか、合同会社設立時に必要な法人印鑑の種類、合同会社の設立の手続きと流れ、印鑑作成の注意点について解説します。
印鑑と合同会社の関係について知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 【この記事のまとめ】
- 合同会社設立時に印鑑は必須ではありません。2021年以降、オンラインでの登記申請では印鑑の提出が任意となりました。ただし、書面申請では印鑑が必要です。
- 業務や取引での印鑑の利用が推奨されます。契約や金融機関との取引で印鑑が求められるため、設立時に使用しなくても印鑑を事前に準備しておくと便利です。
- 法人印鑑の種類と用途を把握することが重要です。必要な法人印鑑は、会社実印、銀行印、角印の3種類があり、それぞれ異なる用途で使用されます。
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印鑑は合同会社設立時に必要?
はじめに、合同会社設立時に印鑑は必要なのかについて解説します。
2021年から登記所への印鑑提出は任意
2021年に行われた商業登記規則改正により、法人設立をオンラインで申請する場合は登記所への印鑑提出が任意となりました。
原則、印鑑の提出が任意となったため、登記所へ提出しても提出しなくても大丈夫です。当然ながら、未提出時のペナルティもありません。
そのため、2021年以降に合同会社を設立する場合は、登記所への印鑑提出は基本的に必要ないと認識しておいて良いでしょう。
オンラインで登記申請する場合は不要
オンラインで合同会社の登記申請を行う場合、印鑑は不要です。
一般的にオンラインで申請する場合は、定款をPDF形式に変換して電子定款として添付するだけで登記できるため、定款を含めてすべての添付書類に電子署名できれば印鑑は不要となります。
電子定款で登記する場合は収入印紙も不要となるため、印鑑代だけでなく収入印紙代も節約できるのがメリットです。
書面で登記申請する場合は必要
書面で合同会社の登記申請を行う場合は印鑑が必要です。
一般的に書面で申請する場合は、申請用紙の必要箇所に印鑑を捺印してから提出するため、書面申請に限り印鑑が必要となります。
申請用紙で登記する場合は郵送の他、本社所在地を管轄する法務局へ直接出向かなくてはいけない場合もあるため、やや負担がかかるのがデメリットです。
取引で求められる場合もある
合同会社設立時の印鑑提出は不要ですが、会社同士の契約や企業間での取引においては印鑑が必要となる場面もあります。
他にも、以下の取引で印鑑が求められることがあります。
- 会社同士の契約時
- 企業間での取引時
- 金融機関への融資申込・契約時
契約時や取引時だけでなく、金融機関から融資を受ける場合には印鑑が求められるケースは少なくありません。
そのため、合同会社設立時には使用しなかったとしても、その他の場面に備えて印鑑は作成しておくことを推奨します。
合同会社設立時に必要な法人印鑑の種類
印鑑は合同会社設立時には不要ですが、その他の場面で必要となるため事前に作成しておくことを推奨します。ここでは、合同会社設立時に必要な法人印鑑の種類について解説します。
会社実印
会社実印とは、法人が所在する地域を管轄する法務局に登録する印鑑のことで、法務局に印鑑を持参して窓口で印鑑登録申請を行うと登録できます。
会社実印は丸い形状で外側に会社名、内側に役職名(代表者印)を彫るのが一般的で、契約書類作成や法人登記申請などで使用します。
代表者印
代表者印とは、経営者が企業の代表者として体外的に使用する印鑑のことで、会社実印と同じ立ち位置にある印鑑となります。
会社実印と同義となるため丸い形状で外側に会社名、内側に役職名(代表者印)を彫るのが一般的で、用途は会社実印とほぼ同様です。
銀行印
銀行印とは、取引のある金融機関に届け出る印鑑のことで、会社の銀行口座の出金や小切手・手形の振り出しなどに使用する印鑑となります。
形状は丸く、外側に会社名、内側に「銀行之印」と彫られたものを使用するのが一般的で、会社実印をそのまま銀行印として提出することも可能です。
角印
角印とは、会社名を彫刻した四角い形状の印鑑のことで、取引で発生した領収書や請求書の発行などに使用する印鑑です。
形状は四角く、会社印や社印と呼ばれるのが一般的で、企業が日常的に使用する印鑑となります。
しかし、会社実印のように法務局に届け出る必要がない印鑑であるため、公的な書類には使用しないのが一般的です。
合同会社の設立の手続きと流れ
合同会社の設立を考えている場合は、設立の手続きと流れを把握しておくことが重要です。ここでは、合同会社の設立の手続きと流れについて解説します。
基本事項を決定する
合同会社を設立する場合は、基本事項を決定するところから始めます。
- 会社名
- 所在地
- 資本金
- 事業目的
- 事業年度
基本事項は「具体的に何を決める」と定められているわけではありませんが、上記のような基本的な要素から決めていくのが一般的です。
例えば、会社名は企業のアイデンティティとなるだけでなく、世間に認識してもらうための重要な要素となる他、所在地や資本金も今後の経営を左右する要素となるでしょう。
そのため、各基本事項は設立段階で細かく設定しておくのが理想です。
特に合同会社の場合、社員1人当たり1円以上の資本金が必要なものの「資本金が1円」だと不都合が生じます。許認可で財産要件のある事業については要件を満たす金額の設定が必要となります。
他にも、あらかじめ決めておいた方が今後の経営がスムーズになるため、合同会社設立時にはある程度の基本事項を決定しておきましょう。
定款を作成する
合同会社を設立する際は、定款の作成が必要です。
定款とは、わかりやすくいうと「会社の基本的なルールを定めた書類」のことで、一般的には会社法によって定款に記載すべき事項や公証人役場での認証について定められています。
合同会社の場合は社員となる人物が作成し、他の社員の署名または記名押印を行うことで作成でき、1人で設立する場合は自身の署名または記名押印で作成できます。
なお、定款に記載する事項には次のものが必要です。
- 商号・住所などの基本事項
- 社員の氏名や名称などの情報
- 社員の出資目的及び価額の評価標準
- 全社員を有限責任社員とする旨
その他、持分譲渡に関する要件や業務執行に関する社員の選任方法、業務の決定方法、代表する社員の指名または互選の規定、存続期間または解散事由などを記載します。
別途で、業務執行社員の人数や報酬などについて任意で記載すれば定款の作成は完了です。
印鑑を注文する
合同会社を設立する際は、印鑑の注文も必要となります。
印鑑の提出は合同会社設立時に限り任意となっていますが、契約や取引で使用する印鑑が複数あるため、時間があるときに印鑑を注文しておくことが重要です。
前述の通り、合同会社には主に「会社実印(代表者印)」「銀行印」「角印」の3つの印鑑が必要となるため、今後必要となりそうな印鑑を含め注文しておきましょう。
出資を履行する
資本金の価額が決定したら、実際に出資を行います。
法人口座を開設している場合は法人口座に振り込みを行い、まだ法人口座を開設していない場合は合同会社を設立する社員の金融機関口座に振り込みましょう。
出資を行ったら、通帳の出資を確認できるページと表紙・裏表紙をコピーして、払込証明書を作成してください。払い込みに問題がなければ、合同会社の設立完了です。
登記申請する
最後に、法務局に登記申請を行いましょう。
設立登記の申請手続きは省略できないため、合同会社の代表者が法務局に設立登記のための申請書を提出します。
事前に作成した「会社実印(代表者印)」「銀行印」「角印」を準備し、法務局に次の書類を作成すれば登記申請が可能です。
- 合同会社設立登記申請書
- 定款
- 印鑑届出書
- 代表社員の印鑑登録証明書
- 業務執行社員の一致を証する書面
- 出資の払い込み及び給付を証する書面
- 資本金の価額が法令に則って計上されたことを証する書面
代理人が登記申請をする場合は、その権限を証する書面も持参してください。上記の書類に不備がなければ合同会社の設立が完了し、会社組織として運営可能です。
ただし、印鑑など事前に準備しておくべきものが揃っていないと手続きに遅れが生じるため、あらかじめ用意すべきものを把握しておくことを推奨します。
合同会社の印鑑作成の注意点
合同会社で印鑑を作成する際は、いくつかの注意が必要です。ここでは、合同会社の印鑑作成の注意点について解説します。
代表取締役印ではなく代表社員之印と刻印
合同会社の印鑑を作成する際は、代表取締役印ではなく代表社員之印と刻印しましょう。
株式会社の代表者印を作成する場合は「代表取締役之印」と表記するのが一般的ですが、合同会社の場合は「代表社員之印」と表記するのが一般的です。
印鑑を専門業者に依頼する場合は「株式会社ではなく合同会社」と伝え、代表取締役の文言は使用しないようにしましょう。
把握しやすく偽造されにくい書体
合同会社の印鑑を作成する際は、把握しやすく偽造されにくい書体を選びましょう。
印鑑の刻印は把握しやすさを重視すると単調になり、偽造されにくさを重視すると複雑になるため、視認しやすく簡単には真似できないものを作成する必要があります。
印鑑の専門業者ではどちらの要件も満たした印鑑の作成が可能なため、業者に相談するのがおすすめです。
1辺1cm以上3cm以下の正方形
合同会社で使用する会社実印(代表者印)は、1辺1cm以上3cm以下の正方形に収めなければいけません。
形状に規制はないものの、直径1.8cmの丸印がよく使用されているため、作成時に迷った場合は他の企業の印鑑を参考にすると良いでしょう。
ただし、刻印に入れる文字数に比例して印鑑のサイズも2.1cm〜2.4cmと大きくなるため、どれくらいの文字数を入れるのかも検討しなければいけません。
その他、普段の業務で使用する印鑑は形状やサイズの条件もないため、使用しやすいものを選びましょう。
ゴム印やシャチハタ印は不可
公的な書類に使用する印鑑は、ゴム印やシャチハタ印は認められていません。
通常業務でゴム印やシャチハタ印を使用する分には問題ありませんが、公的な手続きにおいては簡易的な印鑑は拒否されるため、その他の法人印鑑を別途作成しておきましょう。
ただし、平時の業務であっても契約や取引の内容によってはゴム印やシャチハタ印が認められないケースもあるため、場面ごとに使い分けることが重要となるでしょう。
印鑑の兼用は避ける
合同会社に限らず、印鑑の兼用は避けましょう。
例えば、会社実印(代表者印)と銀行印の兼用や、その他の印鑑と角印の兼用は危険です。同じ印鑑を兼用すると偽造や盗難のリスクがあるため、別々での作成・保管を推奨します。
万が一の際にも印鑑の兼用を行っていると「どの印鑑を使用したか」を失念し、各種手続きに問題が生じることもあるかもしれません。
そのため、印鑑の兼用はしないようにしてください。
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印鑑は合同会社設立時には不要ですが、業務上の契約や取引においては必要です。
必要な印鑑は主に「会社実印(代表者印)」「銀行印」「角印」の3つで、各種手続きの際に提出が求められることもあります。
そのため、合同会社設立時の印鑑の提出は任意であっても、後々のことを考えると事前に作成しておいた方が良いでしょう。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。