個人事業主の所得税とは?計算の仕方や納付方法、節税のポイントも解説
個人事業主の場合、税理士に依頼せず、自分自身で所得税額を計算し、確定申告および納税を行う方が多いかもしれません。しかし、これまで給与所得者として会社や官公庁で勤務していた場合、「どのように所得税を計算し、納付すればよいのかわからない」と悩んでいる方もいるでしょう。
そこで、本記事では、所得税の計算方法や納付方法について徹底解説したうえで、知っておきたい節税のポイントもご紹介します。
- 【この記事のまとめ】
- 個人事業主の所得税は、利子所得や事業所得など10種類の所得に課せられます。アルバイト等の給与所得がある場合、確定申告には事業所得だけでなく、給与所得も含める必要があります。
- 個人事業主の所得税計算は、年間の所得額から所得控除を引き、課税所得を算出します。さらに、課税所得に基づく税率を用いて所得税額を計算し、税額控除を差し引いた金額が納税額となります。
- 納税方法は、現金納付や口座振替、電子納税から選べます。確定申告の期限は3月15日で、予定納税が必要な場合もあります。節税対策として必要経費の計上や青色申告の活用が重要です。
- 個人事業主の所得税とは
- 個人事業主の所得税の計算方法
- 1.年間の所得額を算出する
- 2.所得控除額を差し引き、課税所得額を算出する
- 3.課税所得額をもとに税額を計算する
- 4.税額控除額を差し引き、納税額を算出する
- 個人事業主の所得税の計算シミュレーション
- 年収が100万円の場合の所得税
- 年収が1,000万円の場合の所得税
- 個人事業主の所得税の納付方法
- 個人事業主が知っておきたい節税のポイント
- 必要経費を全て計上する
- 青色申告を行う
- 小規模企業共済掛金控除を利用する
- iDeCoに加入する
- ふるさと納税を行う
- 個人事業主の所得税に関するよくある質問
- 年収がいくらまでだと所得税は0円になる?
- 確定申告は必要?
- 個人事業主は所得税をいつ支払うの?
- まとめ
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個人事業主の所得税とは
個人事業主の所得税は、主に以下の10種類の所得に対して課せられます。
- 【所得税の対象となる所得の例】
-
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
なお、個人事業主であってもアルバイトなどをして給与所得がある場合は、事業所得だけではなく、給与所得に関する情報も確定申告書に記入する必要があることは留意してください。
個人事業主の所得税の計算方法
以下は、個人事業主が所得税の計算を行う際の流れです。
- 年間の所得額を算出する
- 所得控除額を差し引き、課税所得額を算出する
- 課税所得額をもとに税額を計算する
- 税額控除額を差し引き、納税額を算出する
各段階について、詳しく説明します。
1.年間の所得額を算出する
まず、年間の所得額を算出しましょう。所得額は、以下の式で計算することが可能です。
「所得額=収入(売上)ー必要経費」
例えば、年間売上が500万円だったとしても、必要経費(消耗品費、水道光熱費、地代家賃など)が年間200万円かかっている場合、その年の所得額は300万円になります。
2.所得控除額を差し引き、課税所得額を算出する
次に、課税所得額を算出しましょう。なお、課税所得額は、以下の式で計算することが可能です。
「課税所得額=所得額ー所得控除額」
ちなみに、所得控除は、社会政策的な配慮から設けられている「物的控除」と、納税者の経済事情が反映される「人的控除」の2種類に分けられます。
以下は、それぞれの具体例です。
- 物的控除
雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、 地震保険料控除、寄附金控除 - 物人的控除
障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除
例えば、所得額が300万円で、所得控除額の合計が50万円の場合、その年の課税所得額は250万円になります。
3.課税所得額をもとに税額を計算する
課税所得額を算出できたら、下表(早見表)を参照しながら、所得税額を計算しましょう。
- 【所得税の速算表】
-
課税される所得税額 税率 控除額 1,000円から1,949,000円まで 5% 0円 1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円 3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円 6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円 9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円 18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円 40,000,000円以上 45% 4,796,000円
例えば、課税所得額が250万円の場合、所得税額は、250万円×0.1-97,500円=152,500円と算出されます。
4.税額控除額を差し引き、納税額を算出する
最後に、所得税額から税額控除額を差し引いて、納税額を算出しましょう。税額控除の具体例としては、「配当控除」や「住宅ローン控除」などが挙げられます。例えば、所得税額が152,500円で、10万円分の住宅ローン控除が適用される場合、所得税の納税額は52,500円です。
なお、令和19年(2037年)までは、東日本大震災からの復興のために、「復興特別所得税」も併せて課されることをご留意ください。
復興特別所得税額の計算式は以下のようになります。
「復興特別所得税額=所得税の納税額×0.021」
例えば、所得税の納税額が52,500円の場合、復興特別所得税額は52,500円×0.021=1,102.5円です。よって、所得税の納税額と復興特別所得税の納税額を合算すると、53,600円(100円未満の端数は切り捨て)となります。
個人事業主の所得税の計算シミュレーション
ここからは、年収別に個人事業主の所得税の計算シミュレーションを見てみましょう。
年収が100万円の場合の所得税
まずは、年収が100万円のケースを想定して試算を行います。
- 年収(売上):100万円
- 必要経費:10万円
- 所得控除額:50万円
- 税額控除額:0円
この場合、所得額は100万円-10万円=90万円です。なお、課税所得額は90万円-50万円=40万円になります。「所得税の速算表」を参照すると、「税率が5%、控除額が0円」なので、所得税額は40万円×0.05=2万円です。
税額控除額は0円なので、所得税の納税額は2万円になります。復興特別所得税額は2万円×0.021=420円なので、実際に納税する金額(所得税の納税額と復興特別所得税の納税額の合計)は「20,400円」になります。
年収が1,000万円の場合の所得税
次に、年収が1,000万円の場合で試算を行います。
- 年収(売上):1,000万円
- 必要経費:350万円
- 所得控除額:100万円
- 税額控除額:20万円
この場合、所得額は1,000万円ー350万円=650万円です。なお、課税所得額は650万円-100万円=550万円になります。「所得税の速算表」を参照すると、「税率が20%、控除額が427,500円」なので、所得税額は550万円×0.2-427,500円=672,500円です。
税額控除額は20万円なので、所得税の納税額は472,500円になります。復興特別所得税額は472,500円×0.021=9,922.5円なので、実際に納税する金額(所得税の納税額と復興特別所得税の納税額の合計)は「482,400円(100円未満の端数は切り捨て)」になります。
個人事業主の所得税の納付方法
個人事業主が所得税を納付する場合、方法は以下の3種類から選べます。
- 税務署・金融機関・コンビニエンスストアで、納付書を用いて現金で納付
- 金融機関の口座からの振替(事前に税務署に「口座振替依頼書」を提出)
- 電子納税(インターネットバンキングやクレジットカードなどで納付)
個人事業主の所得税は、基本的には確定申告の期限である「3月15日」までに納付することになります。なお、振替納税(申告を行った納税金額が、金融機関の口座から自動的に引き落される仕組み)を利用すると、振替日が3月15日よりも先に延びること(2022年の場合、4月20日が振替日)を覚えておきましょう。
また、3月15日までに納めるべき税額の半分以上を納付した場合、残りの金額の納付を延期することも可能です。ただし、延納期間中は利子税がかかることにご留意ください。ちなみに、令和4年(2022年)の場合、5月末まで延期が可能で、利子税は年0.9%の割合でした。
逆に、5月15日時点で、前年分の所得金額や税額などをもとに計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上の場合、その年の所得税・復興特別所得税の一部をあらかじめ納付することになり、「予定納税」と呼ばれます。予定納税に関する通知を受け取ったら、「7月1日~7月31日」および「11月1日〜11月30日」の期間に、それぞれ予定納税基準額の3分の1を納付してください。
これらを踏まえたうえで、自身に適した方法で納税を行いましょう。
個人事業主が知っておきたい節税のポイント
個人事業主が知っておくと有効な節税のポイントは以下のとおりです。
- 必要経費を全て計上する
- 各種控除を利用する
- 青色申告を行う
- 小規模企業共済掛金控除を利用する
- iDeCoに加入する
- ふるさと納税を行う
それぞれについて詳しく説明します。
必要経費を全て計上する
まず、必要経費を全て計上しましょう。必要経費とは、家賃、電気代、ガス代、水道代、電話料金、交通費、消耗品費など、事業を営むうえで必要な経費を指します。確定申告を行う際には、計上漏れがないか、しっかりとチェックしてください。
所得額は、収入(売上)から必要経費を差し引いた金額なので、きちんと経費を計上すれば、その分、節税につながります。
青色申告を行う
青色申告とは、最大で65万円の「青色申告特別控除」を受けられる制度であり、節税に役立ちます。
「家族に支払う給与を経費にできる」「3年間、赤字を繰り越せる」といったメリットもあるので、節税を考えているのであれば、青色申告を行うことを検討してはいかがでしょうか。なお、あらかじめ税務署に対して「青色申告承認申請書」を提出しておく必要があることや、複式簿記で経理を行わなければならないことはご留意ください。
以前は、白色申告(青色申告承認申請を行っていない場合)であれば記帳義務が免除されていた時代もありました。しかし現在は、白色申告者でも記帳を行う義務があるので、多少の手間はかかりますが、複式簿記を学んで青色申告に挑戦しましょう。
小規模企業共済掛金控除を利用する
小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の経営者向けの退職金制度です。
掛金を支払うと、所得控除の一種である「小規模企業共済掛金控除」を受けられます。課税所得額が圧縮され、節税につながるので、ぜひ加入をご検討ください。
iDeCoに加入する
iDeCo(個人型確定拠出年金)も、節税に役立ちます。iDeCoとは、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金制度です。
掛金額は、全額所得控除の対象になります。所得税・住民税が軽減されるので、加入も検討してみましょう。
ふるさと納税を行う
ふるさと納税とは、ご自身が選んだ自治体に寄附を行うことで、所得税と住民税から控除を受けられる制度です。
自治体の返礼品も受け取れるので年々ふるさと納税の総額は増加しています。ただし、所得によって上限が定められていることに留意しましょう。
個人事業主の所得税に関するよくある質問
ここからは個人事業主の所得税に関する「よくある質問」に回答していきます。
年収がいくらまでだと所得税は0円になる?
所得税は、「年収(売上)」に基づいて計算されるわけではありません。年収(売上)から必要経費を差し引いた「所得」から、さらに所得控除を差し引いた「課税所得額」に、所定の所得税率をかけて算出した金額から税額控除額を差し引いたものが、所得税の納税額となります。
そのため、年収が多くても、結果的に所得税が0円(非課税)になるケースもあるのです。いくらから所得税が発生するのかは、必要経費や所得控除、税額控除の額によって異なります。
確定申告は必要?
期限までに確定申告・納税を行わなかった場合、さまざまなペナルティー(無申告加算税、延滞税など)を課されます故意に売上を申告しないなど悪質な場合、刑事罰に処される可能性もあるので、きちんと申告・納税を行いましょう。
個人事業主は所得税をいつ支払うの?
基本的には3月15日までに支払うことになります。ただし、振替納税や延納、予定納税のように、期日が前後するケースがあることは留意しておいてください。
まとめ
個人事業主は、給与所得者(会社員、公務員など)と異なり、自分自身で所得税の計算を行ったうえで、確定申告・納税をしなければなりません。さまざまな節税策を講じたうえで、期限までに確定申告・納税を行いましょう。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。