雑所得とは?個人事業主が知るべき計算方法や確定申告が必要になる金額を解説
個人事業主には、事業以外に副業としての収入を得ている方が多く存在します。確定申告の際に、事業所得と雑所得の違いを理解しておくことで、申請をスムーズに終わらせられるでしょう。
本記事では、雑所得の概要や雑所得に区分される所得などを網羅的に解説しています。今後さまざまな収入を得たいと考えている個人事業主は、所得に対する理解を深めておくことが重要です。ぜひ、本記事を参考に確定申告を行いましょう。
- 【この記事のまとめ】
- 雑所得は、事業所得や給与所得など他の所得区分に該当しない所得を指します。個人事業主の場合、単発の収益や副業所得が該当することがあります。
- 雑所得が48万円を超える場合、個人事業主や会社員は確定申告が必要です。特に会社員の副業所得が20万円を超えた場合、個別の申告が求められます。
- 雑所得の計算方法は、総収入から必要経費を差し引いた金額です。所得税の税率や控除額は累進課税に基づき、収入額に応じて異なります。
2024年11月1日より、フリーランス保護法が施行されます。
組織に所属せずに働くフリーランスが安心して働ける環境を整備するために、フリーランスと企業などとの発注事業者間の取引の適正化(契約書等により取引条件を明示する)が主な目的です。
詳しくは次の記事をご覧ください。フリーランス保護法の概要、制定された背景や具体的な内容などを解説しています。
雑所得とは?
雑所得とは、9個に分類されている所得区分のどれにも該当しない所得を指します。
9種類の所得区分は、以下の通りです。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
会社員が毎月貰っている給与は、給与所得に該当します。雑所得は、給与所得以外に副業で得た所得です。
個人事業主の場合は、事業所得がメインになりますが、単発で得た所得は雑所得に分類される可能性があります。
雑所得と事業所得の違い
事業所得は、事業として成り立ち生計を立てている所得です。そのため、会社員が土日に副業で得た所得は、生計を立てているほどではないため、基本的に雑所得として分類されます。
また、事業所得と雑所得では、青色申告の選択でも違いがあります。雑所得の場合は、青色申告で確定申告ができません。雑所得と事業所得は、本業レベルか副業レベルかによって分類されます。
個人事業主の雑所得になるもの
次に、個人事業主の雑所得になる3つの所得を紹介します。
- 公的年金に関する所得
- 副業に関する所得
- 暗号資産やFXなどに関する所得
メインの事業以外に、ネットショップやアフィリエイトを行っている個人事業主の方にとって、大きく関係する話題になるため、ぜひ最後までお読みください。
また、暗号資産やFXを行っている方も、税金に関する知識を深めておかなければ後にトラブルが起きる可能性があるため、注意しましょう。
公的年金に関する所得
公的年金等に関する所得は、雑所得として扱われます。
公的年金等の範囲は、以下の通りです。
- 国民年金法、厚生年金保険法、公務員等の共済組合法などの規定による年金
- 過去の勤務により会社などから支払われる年金
- 確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金
- 外国の法令に基づく保険または共済に関する制度で(1)に掲げる法律の規定による社会保険または共済制度に類するものに基づいて支給を受ける年金<
※引用:国税庁:No.1600公的年金等の課税関係
生命保険契約や生命共済契約による年金は公的年金などに該当しないため、注意しましょう。また、満期保険金などで一度に受け取った場合は、一時所得になります。
副業に関する所得
先述した通り、会社員が副業で得た所得は、事業所得ではなく雑所得に分類されます。
たとえば、以下のような収益です。
- 原稿料
- 講演料
- ネットショップで得た利益
- ネット広告やアフィリエイトで得た利益
副業の場合でも、本業と同等の時間を費やしており、継続的に安定した収入が得られている場合は、事業所得として認められるケースもあります。まずは、自分がどの程度副業に時間を費やしているのか計算してみましょう。
暗号資産やFXなどに関する所得
暗号資産やFXで得た所得は、雑所得に分類されます。しかし、FXで得た収入は一般的な雑所得として扱われず、「先物取引に係る雑所得等」に分類されます。
「先物取引に係る雑所得等」では、税金の計算方法が一律20%になるため、注意が必要です。
また、暗号資産取引を事業規模で行っている場合は、雑所得ではなく事業所得に分類されます。
雑所得で確定申告が必要になる金額とは?
本章では、確定申告が必要になる雑所得の目安金額を、個人事業主や会社員などのケース別に分けて解説します。
- 個人事業主の場合
- 会社員の場合
- 公的年金を受け取っている場合
それぞれのケースで、確定申告が必要になる目安金額や条件が変化するため、自分が該当する箇所を確認しましょう。
雑所得が48万円超ある場合は、どのようなケースであっても確定申告が必要になります。
【個人事業主の場合】雑所得を含めた所得が48万円超
個人事業主は、基礎控除で48万円が所得額から控除されます。雑所得を含めた1年間トータルの所得が48万円以下であれば、確定申告の必要がありません。
しかし、個人事業主として生計を立てているならば、所得金額の合計が48万円以下になる可能性は低いでしょう。そのため、個人事業主は確定申告が原則必要になる、と覚えておいてください。
確定申告することで、自分の収入を証明できます。年収を証明できるものがないと、ローンが組めなかったり休業補償を受けられなかったり、デメリットに感じることが多いでしょう。
【会社員の場合】雑所得を含めたその他所得が20万円超
会社員の場合は、個人的に確定申告する必要はなく、会社が代わりに行ってくれます。しかし、副業の雑所得が年間で20万円を超えている場合は、個人でも確定申告が必要です。
注意点として、確定申告が必要になるのはあくまで所得の合計額が20万円超の場合に限ります。売上が100万円あっても、経費に90万円かかっていれば、所得は10万円となり確定申告は不要です。
正確な所得金額を計算するためには、日頃から領収書をまとめておくようにしましょう。
【公的年金を受け取っている場合】年間所得20万円超
公的年金を受け取っている場合、1年の公的年金の収入額が400万円以下で公的年金以外の所得が20万円以下の場合は、確定申告する必要がありません。
どちらかの要件を満たしていない場合は、確定申告を必ず行いましょう。また、公的年金等の収入額が400万円以下でそれ以外の所得が20万円以下であっても、住民税の申告は必要になる可能性があります。
確定申告することで医療費控除などの還付金を受け取れる方は、確定申告するとよいでしょう。
雑所得の金額が48万円以下の個人事業主が確定申告をするメリット
確定申告が不要な場合でも、個人事業主が確定申告をするメリットはさまざま存在します。
- 年収の証明になる
- ふるさと納税や各種控除を受けられる
- 収入が増えたときの確定申告がスムーズにできる
確定申告をすることで個人事業主は、年収の証明ができます。また、ふるさと納税や各種控除を利用した場合は、基本的に確定申告をしなければ恩恵を受けられません。
今後事業が上手くいき、雑所得を含んだ所得金額の合計が48万円を超えることは、十分に考えられます。数年後の確定申告をスムーズに行うためにも、1度正しい手順で確定申告をするのがおすすめです。
個人事業主が知るべき雑所得の計算方法と税率
本章では、個人事業主の方に向けて雑所得の計算方法や税率を詳しく解説します。
- 雑所得の計算方法
- 所得税の税率や控除額
特に、日本は累進課税を採用しているため、所得税の税率や控除額が個人によって変化します。納める所得税の額を事前に知れれば、お金が足りないというトラブルを未然に防げるでしょう。
雑所得の計算方法
個人事業主が知るべき雑所得の計算方法は、以下の通りです。
公的年金等 | 収入金額 – 公的年金等控除額 = 公的年金等の雑所得 |
---|---|
業務に係るもの | 総収入金額 – 必要経費 = 業務に係る雑所得 |
その他 | 総収入金額 – 必要経費 = その他の雑所得 |
※引用:国税庁 No.1500雑所得
基本的には、1年間の総収入から必要経費や控除額を引き算した額が雑所得になります。確定申告では、雑所得を含めた総所得額から納税額を算出します。
納税額の計算方法は、以下の通りです。
総所得額-所得控除額=課税所得額 |
課税所得額×税率=所得税額 |
所得税額-税額控除額=納税額 |
日本では累進課税を採用しているため、課税所得額によって税率と控除額が変わります。税率と控除額の詳しい数値は、次の見出しで記載しているため、このまま最後までお読みください。
所得税の税率や控除額
所得税の税率と控除額は、以下の通りです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
先述した計算式に、該当する所得金額欄の税率と控除額を当てはめれば、納税する金額が算出できます。事前に納税額を把握するためにも、個人事業主は毎月の所得を把握するのが重要です。
雑所得で計上できる経費とは?
個人事業主が雑所得で計上できる経費は、主に以下の通りです。
- コワーキングスペースの利用代金
- コピー機や文房具などの事務用品にかかる代金
- 取引先や顧客との打ち合わせで使用した飲食費
- 取材先までの交通費
- パソコンやタブレット、ソフト・ツールなどの代金(ただし10万円以上のものは減価償却費の計算が必要となります。)
基本的に、経費として計上できるものに明確な答えはありません。事業の売上に貢献している金額であるかどうかを目安に自分で判断しましょう。
ただし、プライベートの交通費を偽って経費に計上する行為や外食をすべて経費として計上する行為は脱税行為にあたるため、絶対にやめましょう。
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まとめ
本記事では、雑所得と事業所得の違いや個人事業主が確定申告をしなければならない雑所得を含む合計金額について解説しました。個人事業主は、年収の証明ができるといったメリットがあるため、基本的に金額にかかわらず確定申告をするのがおすすめです。
また、雑所得の計算方法や所得税の税率を理解しておくことで、納税金額の目安がわかりスムーズに納付できます。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
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