一人会社の設立費用はいくら?個人事業主とは異なる準備や必要書類を解説

2006年の会社法成立により、一人でも会社を起こせるようになって以来、個人事業でなく一人会社を設立して事業展開をする経営者が増えています。一人会社を設立する際は、事前に個人事業主との違いや設立の流れを把握しておくことが大切です。
そこでこの記事では、一人会社の特徴とメリット・デメリットや、設立の手順を詳しく解説します。一人会社を設立しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 【この記事のまとめ】
- 一人会社は、社長が一人で経営し、設立時の条件が緩和されたことで普及しました。
- 一人会社のメリットには信用度の向上や節税効果、経費計上の幅の広がり、有限責任が含まれます。
- 一人会社の設立には、設立費用や運営手続きが必要で、税理士の支援が推奨されます。
- 一人会社の「お金」にまつわる基本知識
- 一人会社とは?資本金はいくら必要?
- どの会社形態がコスパがいい?(株式会社・合同会社・合名会社の設立費用と維持コスト)
- 個人事業主と一人会社の違い
- 一人会社を設立するメリット
- 信用度が向上する
- 所得税の負担を軽減できる可能性がある
- 経費計上の幅が広がる
- 有限責任になる
- 一人会社を設立するデメリット・注意点
- 税理士でないと確定申告が難しい
- 法人口座との区別が必要となる
- 設立費用がかかる
- 死亡時は会社を存続できない
- 社会保険料の負担額が増える可能性がある
- 一人で会社を作るときの手順
- 1:会社の必要情報を整理
- 2:実印の作成
- 3:定款の作成
- 4:資本金の払い込み
- 5:法務局で申請
- 6:設立後に行う必要手続きに着手
- 個人事業主として法人化する手順
- 1:会社設立手続き
- 2:個人事業の開業・廃業等届出書の提出
- 3:資産・負債の移行
- 4:名義変更
- 一人会社の設立に必要な書類
- 登記申請関連
- 定款の認証手続き関連
- 一人会社の設立前に検討しておくべきこと
- 会社名の決め方と注意点
- 本店所在地の選び方
- 資本金はいくら必要か?
- 定款は電子か紙か?
- 一人会社の設立後にやるべきこと
- 法人口座を作る準備
- 会社印鑑の種類と使い分け
- 必要な契約や登録の進め方
- 税務署などへの提出書類
- 社会保険・労働保険の手続き
- 一人会社の創業時に役立つ補助金・助成金一覧
- メリットやデメリットをよく考えて一人会社の設立を
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一人会社の「お金」にまつわる基本知識

一口に一人会社といっても、その形態はさまざまです。
一人会社は従業員を雇わずに社長ひとりで経営している法人を指すため、株式会社・合同会社・合名会社など経営方針によって選択できます。
しかし、選択する会社形態によって、必要なコストは大きく変わります。
ここでは、一人会社の「お金」にまつわる基本知識を理解していきましょう。
一人会社とは?資本金はいくら必要?
一人会社とは、従業員を雇わずに社長がひとりで経営している会社です。
法律上は株式会社や合同会社、合名会社などに分類され、個人事業主とは異なる法人格を持ちます。2006年に成立した「会社法」によって会社を設立するための条件が緩和されたことで一般化しました。
一人会社は、株式会社の場合、次の条件を満たせば設立できます。
旧商法では株式会社の設立に少なくとも1,000万円の資本金と3名の取締役を用意する必要がありましたが、現在は撤廃されています。そのため、資本金1円、取締役1名からでも設立が可能です。
なお、上記は株式会社設立時の条件です。一人会社には別の形態もあり、それぞれメリット・デメリットがあります。
どの会社形態がコスパがいい?(株式会社・合同会社・合名会社の設立費用と維持コスト)
一人会社を設立する際の会社形態は、主に以下の3つです。
会社形態 | 設立費用 | 維持コスト |
---|---|---|
株式会社 |
合計:16万7,000円~ |
|
合同会社 |
合計:6万円~ |
|
合名会社 |
合計:6万円~ |
|
コスパの高い会社形態を見つけるには、それぞれの設立費用と維持コストの比較が必要です。
株式会社は社会的な信用度が高い反面、設立費用は16万7,000円~と高めです。登録免許税や定款認証費用がかかるため、初期費用がかさみます。合同会社や合名会社の設立費用は6万円~で、株式会社よりも安く抑えられます。定款認証が不要な点が、費用差に大きく影響するでしょう。
なお、これらの設立費用は電子定款を使用した場合の金額です。紙の定款を使用する場合は、収入印紙代4万円が別途かかります。
また、維持コストは、税金や社会保険料、税理士への報酬などの共通コストに加え、株式会社の場合は、決算公告費用、役員の就任・重任に関する費用、株主総会開催費用などが必要になるケースもあります。
個人事業主と一人会社の違い

一人会社と同じくひとりで事業を展開する形態といえば、個人事業主が思い浮かぶかと思います。一人会社と個人事業主の最も大きな違いは、法人であるか個人であるかということです。
事業の責任は、法人の場合は会社が、個人の場合は事業を行う個人が負います。
そのほか、細かい違いを以下の表にまとめました。
- 【一人会社と個人事業主の違い】
※一人会社の設立費用は株式会社の場合
個人事業主が開業届を出す際は特に費用がかかりませんが、一人会社は設立費用として少なくとも24万2,000円ほど用意しなければなりません。また、一人会社では会社が収益を所有するため、社長の役員報酬も会社から受け取ります。
一人会社を設立するメリット

一人会社を設立すると、個人事業主として事業に取り組むよりも有利になる場合があります。一人会社を設立するメリットは、以下の4点です。ここからは、それぞれのメリットを詳しく紹介します。
- 信用度が向上する
- 所得税の負担を軽減できる可能性がある
- 経費計上の幅が広がる
- 有限責任になる
信用度が向上する
一人会社は、社員がひとりでもあくまで法人です。収益や借金は会社のものとなり、プライベートと事業が明確に分けられるため、個人の責任の下で収支を管理する個人事業主よりも信用度が向上します。事業拡大の計画を立てているのであれば、株式会社としての経営がおすすめです。
会社の印象がよいほど、取引先の新規開拓をする際や金融機関から融資を受ける際に有利です。特に設立や経営上の制約が多い株式会社として設立すると信用度が高くなります。
所得税の負担を軽減できる可能性がある
一人会社で一定額以上の所得を得ると、個人事業主でいるよりも節税できる可能性があります。
個人事業主には所得金額に応じて税率が最大45%まで上がる所得税が課せられるのに対し、法人では最大でも税率23.2%の法人税が課せられるためです。したがって、所得金額が大きくなるほど、法人税の方が高い節税効果が期待できます。
具体的に節税効果が高くなるのは、収入から諸経費を差し引いた所得が概ね800万円になってからです。現在個人事業主として収入を得ている方は、年間所得が800万円以上になった場合には法人化を検討してみてください。
経費計上の幅が広がる
個人事業主よりも経費として計上できる支出の幅が広がることも、一人会社のメリットといえます。例えば、次のような支出が経費として計上可能です。
- 役員報酬
- 退職金
- 生命保険料
- 出張時の日当
経費計上分は法人税法上の損金になるため、節税につながります。
有限責任になる
株式会社や合同会社では、借金を負ったとしても返済の責任が「出資額の範囲内」に限られ、社長個人で弁済する必要がありません。
つまり、事業が大きく失敗したとしても自分の財産は失わずに済み、リスクを最小限に留められるのです。
ただし、融資を受ける際に社長が個人保証した場合は、連帯責任を負うことになります。多くの場合、中小企業や一人会社の社長は金融機関から個人での連帯保証を求められるため、有限責任のメリットを完全に得られるとは限らないことに注意してください。
一人会社を設立するデメリット・注意点

一人会社の設立にはメリットだけではなく、注意しなければならないポイントもいくつかあります。一人会社を設立する代表的なデメリットが、次の5点です。
- 税理士でないと確定申告が難しい
- 法人口座との区別が必要となる
- 設立費用がかかる
- 死亡時は会社を存続できない
- 社会保険料の負担額が増える可能性がある
税理士でないと確定申告が難しい
一人会社は法人である以上、貸借対照表や損益計算書、各種税務申告書類を作成した上で申告・納税しなければなりません。
納税手続きはソフトで計算できるような個人の確定申告とは異なり、専門知識を持つ税理士でないと対応が困難です。経理業務なども自分ひとりで行うとなると、本来の業務に集中できなくなることも考えられます。
そのため、大半の場合、税理士にお願いする必要があるでしょう。
法人口座との区別が必要となる
一人会社では、個人と法人の口座を厳密に使い分け、双方の資産をしっかりと区別しなければなりません。
事業の収支はこれまで使っていた個人の口座ではなく、別途開設した法人用の口座で管理する必要があります。法人では個人事業主と違って事業の収入を生活費に充てたり、自分の給与額を自由に変えたりすることもできません。
個人と法人の資産を明確に分けることで、信用度の向上という法人ならではのメリットを享受できることを忘れないようにしましょう。
設立費用がかかる
前述したとおり、一人会社の設立には個人事業主と異なり設立費用がかかります。
定款の認証手数料・収入印紙代・登録免許税といった登記費用のほかにも、印鑑作成代や登記簿謄本の取得手数料などがかかります。資本金1円から設立できるとはいえ、資本金があまりに少ないと取引先や金融機関からの信用を獲得しづらいため、資本金もある程度の額は必要です。
死亡時は会社を存続できない
一人で会社を設立すると、代表取締役である自分が万が一死亡したときに会社を存続できないリスクがあります。
ただし、株式会社の場合、死亡時に株式を相続した人が新たな取締役を選任すれば事業の継続は可能です。合同会社でも、相続に関するルールを定款に記載することで対処できます。税理士と相談し、会社の存続については早めに決めておきましょう。
社会保険料の負担額が増える可能性がある
法人には社会保険への加入義務があります。
ところが国民年金から厚生年金保険に切り替わると、保険料の負担額が高くなる可能性が高いです。負担額が増えると将来もらえる金額は増えるため一概にデメリットとはいえませんが、一時的な支出が増えて経営難に陥らないよう気をつけてください。
一人で会社を作るときの手順

一人会社を設立するには、おおまかに次のような手順を踏みます。最後に、各ステップでどのような作業が必要なのか見ていきましょう。
- 会社の必要情報を整理
- 実印の作成
- 定款の作成
- 資本金の払い込み
- 法務局で申請
- 設立後に行う必要手続きに着手
1:会社の必要情報を整理
まずは設立する会社の必要情報を整理します。最低限決めておくべき基本事項は、以下のとおりです。
- 商号
- 本店所在地
- 資本金
- 設立日
- 会計年度
- 事業目的
- 株主や役員の構成
あらかじめ基本情報をまとめておくことで、定款作成に役立ちます。
2:実印の作成
社名が決まったら会社の実印を作成します。実印は設立登記を申請するときに必要です。
オンラインで登記申請するのであれば実印がなくても設立できますが、設立後に使用することを考慮するとこのタイミングでの作成をおすすめします。一緒に法人口座開設に使う銀行印と、請求書等の書類に押印する角印(社印)も作成しておくとよいでしょう。
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3:定款の作成
定款(ていかん)とは、ステップ1で定めた会社の基本ルールをまとめた書類です。定款の記載項目は、大きく「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分けられ、絶対的記載事項に不備があると定款は無効になります。
定款は作成後、本店所在地と同じ都道府県の公証役場に提出し、認証手続きを行います。定款の作成方法には紙と電子(PDF)があり、電子定款は紙の定款認証でかかる4万円の収入印紙代を用意する必要がありません。また、合同会社の場合は定款の作成は必須ですが、認証は不要です。
4:資本金の払い込み
定款が認証されたら、出資金(資本金)を払い込みます。
会社設立登記はまだ済んでいないため、振込先は発起人、つまり自身の個人口座です。資本金が1円以上あれば申請はできますが、極端に少額だと資金不足に陥る場合があります。目安として、融資など他の資金調達手段と合わせて、初期費用+運転資金3ヶ月分程度の金額を用意しておきましょう。
5:法務局で申請
続いて「株式会社設立登記申請書」や定款などの必要書類をそろえ、法務局で登記申請を行います。
なお、マイナンバーカード等で公的個人認証サービス電子証明書を取得しICカードリーダーライタを用意すれば、オンライン完結で申請可能です。
申請後、不備がなければ1週間~10日程度で登記が完了し、会社設立が正式に認められます。
6:設立後に行う必要手続きに着手
会社設立が完了した後も、次のような手続きが必要です。
- 法人税の届出
- 健康保険・年金への加入
- 法人口座の開設
各種届出の提出期限に間に合うよう、時間の余裕を持って着手しましょう。ひとりでの対応が難しい場合、税理士や社会保険労務士といった専門家に代行依頼できます。
個人事業主として法人化する手順

個人事業主として法人化する手順は、以下の通りです。
- 会社設立手続き
- 個人事業の開業・廃業等届出書の提出
- 資産・負債の移行
- 名義変更
あらかじめ手順を知っておけば、個人事業から法人へのスムーズな移行が可能です。
1:会社設立手続き
法人化の第一歩は、新しい会社の設立手続きです。
まずは会社の本店所在地や商号、事業目的などを決定します。
次に、定款を作成し、公証役場で認証を受けなければいけません。定款認証が完了したら、資本金を会社の銀行口座に払い込みます。この口座は、設立手続きのための一時的なもので、法人口座ではありません。
最後に、法務局へ設立登記を申請します。登記申請が受理され、登記が完了すると会社は正式に法人として認められます。
一連の手続きは専門知識が求められるため、スムーズな進行を希望する場合は司法書士などの専門家に依頼しましょう。
2:個人事業の開業・廃業等届出書の提出
法人化では、会社設立手続きと並行して、個人事業の廃業手続き(税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出)を進めます。届出をすると、個人事業主としての事業を廃止したことを税務署に伝えられます。
廃業届の提出が遅れると、個人事業と法人事業の税務処理が複雑になる場合があるため注意が必要です。法人の設立日を個人事業の廃業日とすると、税務上の混乱を避けられます。
また、消費税の納税義務者であった場合は、消費税課税事業者選択不適用届出書の提出なども検討しなければいけません。
3:資産・負債の移行
個人事業から法人へ事業を引き継ぐには、資産と負債の移行手続きが欠かせません。個人事業で使っていた備品や車両などの資産、借入金などの負債を法人へ移転させます。
例えば、個人事業で使っていたパソコンや机などの減価償却資産は、法人に売却する形で移行できます。この際、売却額を適切に設定し、売買契約書を作成するようにしましょう。
負債も、金融機関との間で債務引受契約などを締結し、法人へ移管します。資産・負債の移行は、税務上の影響が大きいため、税理士と相談しながら進めましょう。
4:名義変更
法人化をする際は、個人名義で使用していた事業関連の名義を法人名義に変更する必要があります。例えば、事務所の賃貸借契約、電話回線やインターネット回線の契約などです。
また、仕入れ先や販売先との取引契約も、法人名義に切り替えなければいけません。
名義変更を怠ると、契約内容によっては個人が責任を負う場合や、税務上の問題が生じるおそれもあるため、十分な注意が必要です。特に、許認可が必要な事業の場合、許認可の名義変更も忘れずに行いましょう。
一人会社の設立に必要な書類

一人会社の設立に必要な書類は、以下の2つです。
- 登記申請関連
- 定款の認証手続き関連
事前に準備しておくと、一人会社の設立手続きをスムーズに進められるでしょう。
登記申請関連
会社を設立し、法務局へ登記申請を行う際は、複数の書類が必要です。
まずは、登記申請書です。会社の基本情報を記載する中心的な書類で、会社の商号や本店所在地、資本金、役員の情報などを正確に記入しなければいけません。
また、会社の印鑑を登録するための印鑑届書も提出します。印鑑届書には、会社の実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。
加えて、役員が就任を承諾したことを示す就任承諾書や、役員の印鑑証明書も添付書類として必要です。これらの書類は会社の法的な存在を確立し、取引の際に必要となる信頼性を担保するために欠かせません。
定款の認証手続き関連
定款とは、会社の目的や組織、事業活動に関する根本的な規則を定めたものです。
一人会社を設立する際は定款を作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。
なお、認証手続きでは、作成した定款の原本を提出します。会社法で記載が義務づけられている事項は、以下の通りです。
- 会社の商号
- 目的
- 本店所在地
- 資本金の額
また、定款が適法に作成されたことを証明するため、発起人全員の印鑑証明書の提出も必要です。公証役場での認証を受けると、内容が法的に有効であると認められます。
一人会社の設立前に検討しておくべきこと

一人会社の設立前に検討しておくべきことは4つあります。
- 会社名の決め方と注意点
- 登記先の選び方
- 資本金はいくら必要か?
- 定款は電子か紙か?
これらを事前に検討すると、設立後のトラブルを防げるため、スムーズな経営につながるでしょう。
会社名の決め方と注意点
会社名を決める際は、株式会社や合同会社といった法人形態を含める必要があります。
ただし、既存の会社と同一、または類似しすぎる会社名は避けるべきです。
特に、同一住所に同じ会社名が登記されている場合、登記が認められません。インターネットで類似商号がないか検索したり、法務局で調査したりするとトラブルを回避できます。
また、会社名に公序良俗に反する言葉や、誤解を招くような表現を使わないよう注意しましょう。
本店所在地の選び方
会社設立登記は、本店所在地を管轄する法務局で行います。自宅を本店所在地とする場合は、自宅の住所を本店所在地にします。
賃貸物件の場合は、賃貸契約書で事務所利用が許可されているかを確認しましょう。
また、バーチャルオフィスを利用する方法もあります。これは、実際にオフィスを構えなくても住所を借りられるサービスです。
初期費用を抑えたい場合や、自宅住所を公開したくない場合に有効といえるでしょう。ただし、許認可が必要な事業の場合は、許認可が取れないケースがあるため、事前に確認が必要です。
資本金はいくら必要か?
資本金の額は、会社の信用力や事業の安定性を示す上で欠かせない要素です。現在は資本金1円から会社を設立できますが、事業内容によって適切な資本金は異なります。
例えば、許認可が必要な事業の場合、許認可の取得要件として一定額以上の資本金が求められる可能性があるため注意が必要です。また、金融機関からの融資を受ける際や取引先との契約において、資本金の額が信用力に影響を与える場合もあります。
設立当初の運転資金や、事業が軌道に乗るまでの生活費も考慮に入れ、無理のない範囲で資本金を設定しましょう。数ヶ月分の運転資金に相当する額を資本金として用意すると、事業をスムーズに開始できる可能性が高まります。
定款は電子か紙か?
定款は電子定款と紙の定款のどちらを選ぶかで、設立費用が変わります。
紙の定款で作成すると、印紙税として4万円が必要です。
一方、電子定款で作成すると、印紙税がかかりません。電子作成をするには、PDF化した定款に電子署名を付与する必要があります。
また、電子署名を行うには、マイナンバーカードとICカードリーダー、または電子証明書発行サービスを利用します。これらを自身で準備するのは手間がかかるため、司法書士などの専門家に依頼しましょう。
一人会社の設立後にやるべきこと

一人会社の設立後にやるべきことは、以下の通りです。
- 法人口座を作る準備
- 会社印鑑の種類と使い分け
- 必要な契約や登録の進め方
- 税務署などへの提出書類
- 社会保険・労働保険の手続き
設立後に漏れなく進めると、会社の事業活動をスムーズに開始できるでしょう。
法人口座を作る準備
会社を設立した後にまずやるべきことは、法人口座の開設準備です。
法人口座は、会社の資金と個人の資金を明確に区別するために欠かせません。
口座がないと、経費精算や税務処理が複雑になり、会社の信用力にも影響を与える可能性があります。
口座の開設には、以下の書類が必要です。
- 会社の登記簿謄本
- 印鑑証明書
- 定款の写し
- 代表者の本人確認書類
金融機関によっては、事業計画書や許認可証の提出を求められる場合もあります。最近は、法人口座の開設審査が厳しくなっているため、複数の金融機関を検討し、早めに手続きを始めましょう。
会社印鑑の種類と使い分け
事業を円滑に進めるには、3つの会社印鑑を用意し、適切に使い分ける必要があります。
- 会社実印
- 会社銀行印
- 会社角印
会社実印は法務局に登録する代表印で、契約書や登記申請など、重要な書類に押印します。会社銀行印は、法人口座の開設や手形、小切手などに使用する印鑑です。
会社角印は、見積書や請求書、領収書など、日常業務で頻繁に使う書類に押印します。
それぞれ使用する場面が異なるため、混同しないよう管理しましょう。
必要な契約や登録の進め方
会社を設立したら、事業を始める上で必要な契約や登録を進めなければいけません。
例えば、オフィスを借りる場合は賃貸借契約、事業に必要なサービスを利用する場合は契約の締結です。通信回線や電気、ガスなどのインフラ契約も法人名義に切り替えましょう。
また、事業内容に応じて許認可が必要な場合があります。飲食店であれば営業許可、人材紹介業であれば有料職業紹介業許可など、事業を行うために必要な許認可を各行政機関に申請します。
これらの契約や登録を怠ると、事業活動に支障をきたすだけでなく、法的な問題に発展する可能性もあるため注意してください。
税務署などへの提出書類
会社設立後は、税務署や都道府県税事務所、市町村役場へ複数の書類を提出しなければいけません。
税務署へは法人設立届出書を提出し、法人として税金を納めることを知らせます。
また、給与を支払う場合は、給与支払事務所等の開設届出書を提出します。青色申告を希望する場合は、青色申告の承認申請書も提出しましょう。
これら以外にも、消費税関連の届出書や源泉所得税に関する届出書など、会社の状況に応じて必要な書類があります。提出期限が設けられている書類が多いため、設立後は速やかに準備を進めてください。
社会保険・労働保険の手続き
一人会社であっても、代表者が1人であれば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が必要です。
健康保険や厚生年金保険の加入手続きは、会社の所在地を管轄する年金事務所で行います。健康保険・厚生年金保険新規適用届などを提出しましょう。
従業員を雇用する場合は、労働保険(労災保険・雇用保険)への加入も必要です。労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークで手続きを行います。
社会保険や労働保険は、従業員の福利厚生だけでなく、万が一の補償にもつながります。
一人会社の創業時に役立つ補助金・助成金一覧
一人会社の設立に役立つ補助金・助成金は、以下の通りです。
補助金名 | 補助上限 | 補助率 | 対象経費 |
---|---|---|---|
小規模事業者持続化補助金 | 50万円(通常枠) | 2/3 | 販路開拓や業務効率化にかかる費用 |
事業承継・M&A補助金 | 1,000万円(事業承継促進枠) | 1/2~2/3 | 事業承継やM&Aにかかる費用 |
※これらの補助金・助成金の要件や内容は変更される場合があります。
申請要件や対象経費はそれぞれ異なるため、公的機関のWebサイトで最新情報を確認しましょう。
メリットやデメリットをよく考えて一人会社の設立を

一人会社を設立すると社会的信用度が高まる上に、節税できる可能性があります。また、法人は返済責任が有限であるため、事業が失敗した場合のリスクを小さくできるのもメリットです。一方で、設立や運営にかかる費用が高く、ひとりで設立手続きや複雑な業務を行わなければならないというデメリットもあります。
そのため、一人での事業展開を検討するときは、法人と個人事業主との違いを把握して、本当に会社を設立すべきか判断しましょう。最終的に個人よりも大きな利益を得られる見込みがあるのであれば、一人会社の設立を考えてみてください。
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- 記事監修
-
- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
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- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修または独自調査(アンケート)に基づいて制作したものです。
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- ※記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、すべての方に当てはまるものではありません。個人の状況に応じた具体的な助言が必要な場合は、専門家にご相談ください。
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