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個人事業税とは?経費計上時の勘定科目や控除・減免について解説

個人事業税とは?経費計上時の勘定科目や控除・減免について解説

法定業種の70業種に分類された個人事業主が290万円事業所得を超える場合、個人事業税という地方税が発生します。

毎年、確定申告のタイミングで個人事業税の仕訳のやり方や勘定科目に入力する金額に頭を抱える人も少なくないでしょう。

この記事では、個人事業税を経費計上する際の勘定科目、控除や減免制度について詳しく解説しています。

【この記事のまとめ】
  • 個人事業税は事業所得が290万円を超えた場合、納税義務があります。
  • 個人事業税の仕訳は、租税公課を用いて経費計上します。
  • 控除や減免の内容や条件は各都道府県の自治体によって異なります。

2024年11月1日より、フリーランス保護法が施行されます。

組織に所属せずに働くフリーランスが安心して働ける環境を整備するために、フリーランスと企業などとの発注事業者間の取引の適正化(契約書等により取引条件を明示する)が主な目的です。

詳しくは次の記事をご覧ください。フリーランス保護法の概要、制定された背景や具体的な内容などを解説しています。

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個人事業税とは

個人事業税とは

個人事業税は地方税のひとつに分類される税金で、各都道府県に対して納付します。事業をするうえで、行政サービスを利用することから、その経費を負担するために作られた税金です。

すべての個人事業主に納税義務があるわけでなく、法定業種や事業所得金額が290万円を超える個人事業主が対象になった税金です。

法定業種の70業種には、多くの業種が含まれており、業種ごとに区分や税率も異なります。

対象業種に該当しない場合は、事業税の課税はない

個人事業税が対象になる業種は、法律で70業種に分類された法定業種があり、個人事業主のほとんどが対象になるといわれています。

70業種に区別されない事業者は、個人事業税を支払う必要はありません。

また、個人事業税に対しては青色申告であっても青色申告特別控除が適用されません。ただし、事業主控除の290万円があるため、原則所得が290万円を超えない限り、納税義務は発生しないことになってます。

個人事業税の課税対象となる法定業種と税率

個人事業税の課税対象となる法定業種と税率

法定業種の70業種と区分、税率は以下の通りです。

区分 税率 法定業種の種類
第1種事業
(37業種)
5% 物品販売業、運送取扱業、料理店業、遊覧所業、保険業、船舶定係場業、飲食店業、商品取引業、金銭貸付業、倉庫業、周旋業、不動産売買業、物品貸付業、駐車場業、代理業、広告業、不動産貸付業、請負業、仲立業、興信所業、製造業、印刷業、問屋業、案内業、電気供給業、出版業、両替業、冠婚葬祭業、土石採取業、写真業、公衆浴場業(むし風呂等)、電気通信事業、席貸業、演劇興行業、運送業、旅館業、遊技場業
第2種事業
(3業種)
4% 畜産業、水産業、薪炭製造業
第3種事業
(30業種)
5% 医業、公証人業、設計監督者業、公衆浴場業(銭湯)、歯科医業、弁理士業、不動産鑑定業、歯科衛生士業、薬剤師業、税理士業、デザイン業、歯科技工士業、獣医業、公認会計士業、諸芸師匠業、測量士業、弁護士業、計理士業、理容業、土地家屋調査士業、司法書士業、社会保険労務士業、美容業、海事代理士業、行政書士業、コンサルタント業、クリーニング業、印刷製版業
3% あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復、その他の医業に類する事業、装蹄師業

出典:東京都主税局|個人事業税「4 法定業種と税率」

税務署にて、個人事業主の開業届けを提出した際の事業内容によって業種が決定します。

第1種事業(37業種)・第2種(3業種)・第3種(30業種)に分類され、多くの個人事業主が適合します。ただし、例外として漫画家・作家・執筆業(ライター)などは法定業種に該当しません。

もし、開業した業種が不明だったり、業種が70業種の中にない場合は、管轄の都道府県にある税務署もしくは税事務所等に確認しましょう。

個人事業税の計算方法

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個人事業税の計算式は以下の通りです。

個人事業税=(所得〔収入-必要経費〕-各種控除-事業主控除290万円)×税率

1月1日〜12月31日の1年間で得た、事業所得および不動産所得の合計から計算します。

会計ソフトを使用している場合、個人事業税は確定申告時の確定申告書第1表・青色申告決算書・収支内訳書の所得金額から自動で計算されます。

ただし、業種を事前に設定しないと異なる税率で計算されてしまうため、注意してください。

また、確定申告の内容によっては、雑所得も対象になる場合があります。雑所得が加算される場合や計算が難しい場合は、管轄の税務署に相談して正確な金額を納税するようにしてください。

個人事業税は経費として計上できる

個人事業税は経費として計上できる

個人事業税は事業を営むうえで必要な出費になるため、経費計上が可能です。

経費計上をする前に、自分が営む業種は法定業種にあたるかどうか、その場合の税率は何%か、事前にチェックするようにしましょう。

個人事業税の仕訳と勘定科目

確定申告時に個人事業税の仕訳は租税公課と普通預金もしくは現金で計上します。

仕訳は借方勘定に租税公課と納税金額、貸方勘定に普通預金(現金)と納税金額です。

借方勘定 貸方勘定
勘定科目 金額 勘定科目 金額
租税公課 150,000 普通預金 150,000

※納税金額を150,000円と仮定

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個人事業税の申告方法と申告時期

個人事業税の申告方法と申告時期

原則、個人事業主で確定申告をした人は、別途個人事業税の申告の必要はありません。

基本的に個人事業主は、毎年3月15日までに前年で発生した事業所得を各都道府県に申告する義務になっています。

個人事業税の納付方法

個人事業税の納付方法

個人事業税の支払いは確定申告後に送付される納付書や口座振替・クレジットカード・電子納付で納税が可能です。

納付時期は、原則8月と11月の年2回です。

各都道府県によって納付書の発行タイミングには多少の誤差があるため、納付書が届かない場合は役所に確認しましょう。

ここでは、個人事業税の納付方法を解説します。

1:納付書と現金で支払う

確定申告後に送付される納付書を使って現金で支払うのが、一般的な支払い方法です。

納付書はコンビニエンスストアや金融機関の窓口で支払えるようになっているため、納付書と現金を用意して支払ってください。

2:口座振替で支払う

口座振替は、指定の口座から自動で納付する方法です。

自身が引き落としを希望する銀行へ行き、口座振替依頼書(自動払込利用申込書)に必要事項の記入と押印のうえ、銀行もしくは最寄りの県税事務所で提出してください。

各都道府県によって対応している銀行が異なるため、県内の取扱金融機関の各店舗や郵便局、県税事務所などで口座振替依頼書(自動払込利用申込書)を受け取ってください。

3:クレジットカードで支払う

個人事業税はクレジットカードでも支払うことが可能です。

ただし、個人事業税は国税ではなく地方税になるため、各都道府県の自治体によっては対応していない場合や使用するクレジットカード会社に制限がある場合があります。例えば、東京都で利用できるカードブランドは、VISA・MasterCard・JCB・AmericanExpress・Diners Club.TS CUBIC CARDです。

クレジットカード払いのメリットは24時間支払い可能で、締め日によっては支払いを遅らせることが可能な点です。デメリットは納税できる金額は100万円未満のみという制限があり、手数料がかかります。

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4:電子納付で支払う

地方税を支払う専用サイトeLTAX(エルタックス)を利用すれば、ダイレクト納付・インターネットバンキングを利用して、個人事業税を納付することが可能です。

eLTAXからのダイレクト納付では、口座振替になるため手数料がかからないメリットがあります。もし興味のある方はeLTAX(エルタックス)公式サイトをご確認ください。

個人事業税が控除となる4つのケース

個人事業税が控除となる4つのケース

ここでは、個人事業税が控除もしくは該当しない場合について解説します。

法定業種以外の業種に該当する場合

法定業種の70種以外の業種に該当する場合、個人事業税の対象にはなりません。

例えば、漫画家・作家・執筆業(ライター)・システムエンジニア・プログラマーなどが個人事業税の対象外です。ただし、業務内容によっては請負業と判断され、課税されてしまうケースもあります。

また、漫画家などの場合、デザイン業の要素が業務に含まれると、課税対象になる場合もあるため、管轄の都税事務所や県税事務所で法定業種の確認をしておきましょう。

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事業所得が290万円以下の場合

個人事業主には、290万円の事業主控除があるため、原則所得が290万円を超えない限り納税義務はありません。

また、営業開始から1年未満の場合は月割額で控除されます。

過去3年の赤字の繰り越しがある場合

過去3年の赤字繰り越しがある場合、赤字分が所得の控除となります。

個人事業主は、事業所得が純損失で赤字経営になった場合、翌年以降3年間は繰越控除が可能です。本年度が黒字経営だったとしても、前年度が赤字経営であれば、純利益分を相殺して収入を下げることができます。

結果的に、利益を相殺して収入が290万円以下になれば個人事業税の納税義務がなくなります。

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その他の繰越控除がある場合

被災事業用資産の損失の繰越控除がある場合も、損失の金額を所得から控除可能です。白色申告事業者は、自然災害(震災・水害・風害・火災など)によって生じた、事業用資産の破損や故障による損失金額を翌年以降3年間は繰越控除可能です。

また、直接事業の用に供する資産(土地、家屋などを除く、機械、装置、車両など)を譲渡したことによって被った損失に対する譲渡損失の控除と繰越控除もあります。

こちらは青色申告をしている人が対象で、翌年以降3年間は繰越控除可能です。

減免が受けられる個人事業税減免制度とは?

減免が受けられる個人事業税減免制度とは?

個人事業主の方で、障がいを持つ事業主や扶養家族に障がい者がいる場合に、個人事業税減免制度を受けられます。

ここでは、減免が受けられる個人事業税減免制度の詳細を解説します。

自治体によって条件が異なる

個人事業税減免制度は、各都道府県の自治体によって金額や内容が異なります。

身体的障がいだけでなく、精神障がいの場合、免税額が大幅に増えるだけでなく、条件次第で2つの制度を併用できるケースもあります。

例えば、東京都の場合、障がい者1人につき5,000円の減税対象です。詳しい要件については各都道府県の税金事務所や役所にご確認ください。

個人事業税減免制度の対象となる主なケース

個人事業税には、各都道府県の自治体が定める一定条件や自然災害によって被害を被った被災者を対象とした個人事業税減免制度が制定されています。

自然災害の場合は、災害の規模や被害を受けた程度によって内容が異なるため、各自治体の県税事務所に確認してください。

災害などで損害を受けた場合

例えば熊本県では、台風等の災害の影響で被災者の復興を支援する目的から免税処置が設けられています。

前年の事業所得が1,000万円以下であり、災害により事業用資産にその価格の2分の1以上の損害を受けた場合が対象です。免税額は事業所得の金額ごとに区別され、500万以下の場合100%減免・500万超え750万円以下の場合50%減免・750万超え1000万円以下の場合25%減免と制定されました。

自然災害等で事業継続が困難な場合は、各都道府県の減免措置を確認しましょう。

生活保護法による生活扶助を受けている場合

例えば神奈川県では、生活保護法の規定により生活扶助を受けている場合、税額の全額が減免されます。

この申請には、減免申請書と福祉事務所の長が発行する生活扶助を受けている証明書が必要です。

納税者または扶養親族が障害者の場合

減免制度が対象になるケースは以下の通りです。

  • 1年間の合計所得金額が一定額(300万から400万円)以下であること
  • 納税者、または扶養親族等が障がいのある人であること

原則、障がい者手帳が1級〜4級になる人が対象ですが、精神障がいや知的障がいの場合には各都道府県で判断も変わってきます。対象となる人は、公的に障がい者を証明する資格を取得している人がほとんどです。

その他の場合

神奈川県では、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律に規定する生活支援給付を受けている場合には、全額の減免が認められています。

中国残留邦人等とは、日本が戦争中に中国に住んでいた中国人が戦後の混乱の中で幼くして肉親と離別し、身元を知らないまま成長したり、生活手段を失い中国に留まったりして中国で生活してきた人たちを指します。

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まとめ

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個人事業税は、法定業種の70種に該当して収入が290万円を超えたときに納税の義務が発生する地方税です。所得税のような国税とは異なり、地方の行政サービス等の利用するうえでの管理費に使われています。

法定業種70種類が対象となり、個人事業主のほとんどの業種が課税対象者になりますが、収入が290万円を超えたときに課税対象になるため、赤字繰越などを使って、事業所得が290万円を下回れば納税の義務はありません。開業時に区分に分類されない業種の場合は、青色決算書や収支内訳書の業種の欄にしっかりと記載して、税務署等に確認しておくのがよいでしょう。

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記事監修
中野裕哲
中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
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