地方起業は成功しやすい?メリットやデメリット、向いているビジネス例を紹介
地方起業は、都市部と異なる独自の魅力と課題を持つビジネスを展開する方法です。近年、地方創生の流れもあり注目を集めています。
少ない資金だけでなく、地域ならではの資源を活かすことができ、少ない競合のなかでビジネスを始められます
しかし、人材確保の難しさや市場規模の小ささなどのデメリットも存在します。成功するためには地域のニーズを的確に把握し、自治体や地元企業とのネットワーク構築が重要です。
ITビジネスや地域資源を活かしたビジネスなど、地方の特性を活かせる業種が向いています。
この記事では、地方起業の特徴やメリット・デメリット、成功するためのポイント、適したビジネス例などを詳しく解説します。
- 【この記事のまとめ】
- 地方起業とは大都市圏以外の地域で事業を立ち上げることを指します。
- コストを抑えられたり、地域資源を活用したビジネスを始められるメリットがあります。
- 人材不足や市場規模の小ささが懸念されるため、デメリットを回避する対策が必要です。
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地方起業とは
地方起業とは、東京や大阪などの大都市圏を除く地域で事業を立ち上げることです。近年、地方創生の推進や働き方の多様化に伴い注目されています。
地方起業には主に3つのパターンがあります。
- 地元出身者がUターンして起業するUターン起業
- 都市部から新たに地方へ移住して起業するIターン起業
- 地方出身者が出身地とは別の地方で起業するJターン起業です。
地方起業は、地方ならではの資源や特性を活かしたビジネスモデルを展開できる点が特徴です。
また、自治体による支援制度が充実している地域も多く、起業のハードルが比較的低いのも魅力となっています。
地方起業のメリット
ここでは、地方起業のメリットを解説します。
都市部よりも少ない資金で起業できる
地方起業は、都市部と比べて少ない資金で始められる点がメリットです。とくにオフィスや店舗の賃料、人件費などのランニングコストを抑えられる点が魅力といえます。
たとえば、東京都港区の新橋・虎ノ門エリアでのオフィス平均坪単価が22,294円であるのに対し、大分県のJR大分駅周辺では5,000円〜8,000円程度と大幅に安いです。
人件費についても、アルバイト・パートの平均時給を見ると、関東と九州・沖縄では219円もの差があります。
これらのコスト削減により、初期投資を抑えつつ資金繰りに余裕を持って事業を展開できる可能性が高まります。
地方ならではの伝統を活かしたビジネスが可能
地方起業は地域ならではの伝統や文化、特産品などを活かしたビジネスを展開できることがメリットです。
各地方には長年受け継がれてきた伝統工芸や特産品が存在しますが、後継者不足や需要の減少により衰退の危機に直面しているケースも少なくありません。
こうした地域資源を現代のニーズに合わせてアレンジし、新たな価値を付加すれば、独自性の高いビジネスを生み出せる可能性があります。
たとえば、地元の伝統工芸品をモダンにアレンジした商品開発や、特産品を使った新しい食品の開発などです。
これらのビジネスは地域活性化にも貢献し、自治体からの支援も得やすいメリットがあります。
競合が少なく事業展開が容易
地方は都市部と比べて競合が少ないため、事業を展開しやすいメリットがあります。
とくに大手企業の進出が少ない地域では、中小企業やスタートアップが比較的容易に市場シェアを獲得できる可能性が高いです。
たとえば、2014年時点で鳥取県には全国で唯一スターバックスコーヒーが進出していませんでした。
この状況を活かし、地元企業がすなば珈琲というチェーン店を展開し、大きな成功を収めています。
このように、大手企業が参入していない隙間を狙って事業を展開すれば、地域に根差したビジネスを成功させる可能性が高まります。
競合が少ない点は、独自のビジネスモデルを構築して地域でのブランド力を高めるうえで大きな強みとなるでしょう。
自治体の補助金や助成金を使える
地方起業のメリットは、自治体が提供するさまざまな支援制度を活用できることです。
多くの地方自治体が地域活性化や人口増加を目指し、起業家向けの補助金や助成金制度を設けています。
たとえば、地域の課題解決に取り組む社会的起業に対して最大200万円を支援する起業支援金や、東京圏から地方へ移住して起業する場合に最大100万円を支給する移住支援金などが挙げられます。
これらの制度を上手く活用すれば、初期投資やランニングコストを抑えつつ、事業を軌道に乗せやすくなるでしょう。
また、資金面以外にも、経営相談や販路開拓支援など、さまざまな形で自治体のサポートを受けられます。
地方起業のデメリット
ここでは、地方起業のデメリットを解説します。
人材不足に陥る可能性が高い
地方起業におけるデメリットのひとつが人材不足です。多くの地方では人口減少や高齢化が進んでおり、とくに若い世代や専門的なスキルを持つ人材の確保が難しくなっています。
たとえば、ITやデジタルマーケティングなどの最新技術に精通した人材や、経営管理のスキルを持つ人材の発見は容易ではありません。
また、都市部と比べて給与水準が低い傾向にあるため、優秀な人材の獲得や定着が困難な場合もあります。
さらに教育機関や研修施設が少ないため、従業員のスキルアップや能力開発の機会も限られがちです。
人材不足は事業の拡大や新規事業の展開を妨げる要因となり、企業の成長に大きな影響を与える可能性があります。
市場規模が小さく利益が少なくなる
地方起業のデメリットは市場規模の小ささです。多くの地方では人口が少なく、さらに人口減少が進んでいるため、ビジネスの対象となる顧客数が限られています。
これは売上や利益の上限の制限につながります。
たとえば、都市部であれば成立するビジネスモデルでも、地方では需要が少なすぎて採算が取れない可能性があるでしょう。
また、地域住民の所得水準が都市部より低い傾向にあるため、高付加価値商品やサービスの販売が難しい場合もあります。
加えて、季節変動や観光客の増減など、地域特有の要因によって需要が大きく変動するケースも考えられます。
市場の制約は、事業の成長や安定的な収益確保を難しくする要因となります。
既存企業からのシェア奪取が難しい
地方では、長年その地域で事業を展開してきた既存企業が強固な地盤を持っている場合がほとんどです。そのため、新規参入者によるシェアの獲得は容易ではありません。
とくに地域に根差した老舗企業は地元住民からの信頼も厚く、顧客との強い関係性を築いています。
このような状況下で新規参入者が市場シェアを獲得するには、既存企業以上の価値を提供しなければなりません。
また、地方では保守的な傾向が強いため、新しいビジネスモデルや商品・サービスが受け入れられるまでに時間がかかる可能性があります。
さらに地域内のビジネスネットワークも既存企業を中心に形成されている場合が多く、取引先や協力企業の開拓にも苦労するでしょう。
これらの要因は、新規参入者の事業展開を困難にするかもしれません。
地方起業を成功に導くポイント
メリットとデメリットがある地方起業ですが、ポイントを押さえておけば成功する確率を上げることが可能です。ここでは、地方起業を成功に導くポイントを解説します。
地方が抱えるニーズを事前に調査する
地方起業を成功させるためには、地域が抱えるニーズの徹底的な調査が重要です。
各地方には固有の課題や需要があるため、それらを的確に把握すれば、地域に必要とされるビジネスを展開できるようになります。
たとえば高齢化が進む地域では、介護サービスや生活支援サービスのニーズが高い可能性があります。
また、観光地であればインバウンド需要に対応したサービスが求められているかもしれません。
ニーズを調査する方法としては、地域住民へのアンケートやインタビュー、自治体の統計データの分析、地元企業へのヒアリングなどがあります。
さらに、実際に一定期間その地域に滞在し生活者の視点で課題を発見するのも効果的です。
このような綿密な調査を通じて、地域に必要とされるビジネスモデルを構築すれば、成功できる確率は高くなるでしょう。
自治体や地元企業とのネットワークを作る
地方起業を成功に導くもうひとつの重要なポイントは、自治体や地元企業とのネットワーク構築です。
地方は人間関係が密接であるため、ネットワークを活用すれば、ビジネスチャンスの拡大や課題解決のサポートを得やすくなります。
たとえば、自治体とのつながりを持つと、各種支援制度の情報をいち早く入手したり、地域の政策立案に参画したりする機会を得られやすくなります。
また、地元企業とのネットワークは取引先の開拓や協業の機会につながるでしょう。
ネットワーク構築の方法としては、商工会議所や地域の経済団体への参加、自治体主催のセミナーやイベントへの参加、地域のボランティア活動への参加などがあります。
これらの活動を通じて地域に溶け込み、信頼関係を築けば、ビジネスの成長と安定につながる強固なネットワークを形成できるはずです。
補助金や助成金を使ってコストを抑える
地方起業を成功させるには、補助金や助成金の活用が効果的です。多くの地方自治体が、起業支援や地域活性化を目的としたさまざまな補助金・助成金制度を設けています。
たとえば、地域の課題解決に取り組む社会的起業に対して最大200万円を支援する起業支援金や、東京圏から地方へ移住して起業する場合に最大100万円を支給する移住支援金などが挙げられます。
これらの制度を上手く活用すれば、初期投資やランニングコストを大幅に削減可能です。
補助金・助成金の申請にあたっては事業計画書の作成や必要書類の準備など、煩雑な手続きが必要になる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
「起業の窓口」の特集ページ「AI×起業」では、AIを活用して事業計画書を簡単に作成する方法を紹介!
詳しくは「【できるのか?】ChatGPTを使ってたった1時間で事業計画書を書くアラフォー起業家。《小説「AI起業」シリーズ#01》」をご覧ください。
リモートワークを可能にして人材不足を補う
地方起業における人材不足の課題に有効な対策としては、リモートワークの導入が挙げられます。近年は情報通信技術の発達により、多くの業務をオンラインで行えるようになりました。
リモートワークを積極的に取り入れれば、地理的な制約を超えて都市部や他地域の優秀な人材を確保できます。
たとえば、ITエンジニアやデザイナー、マーケティング専門家などの専門職を、全国から採用可能です。
また、子育てや介護などの理由で通勤が難しい地元の人材も、在宅勤務という形で活用できるようになります。
リモートワークを効果的に機能させるためには、適切なコミュニケーションツールの導入や業務プロセスの見直し、セキュリティ対策などが必要です。
これらを整備すれば、地方でも都市部に負けない競争力のある組織を構築できるでしょう。
地方起業に向いているビジネス例
地方起業は、地域の特性や資源を活かしたものや地理的な制約を受けにくいビジネスが向いています。
具体的には、ITビジネスや地域資源を活かした特産品開発、観光関連サービス、農業や食品加工業などです。
これらのビジネスは地方ならではの強みを活かしつつ、都市部にはない魅力を提供できる可能性があります。
また、地域の課題解決に直結するサービス、高齢者向けの生活支援サービスや地域の交通課題を解決する新たな移動サービスなども、地方起業に適したビジネスといえるでしょう。
成功の鍵は地域のニーズを的確に捉え、そこに独自の価値を付加できるかどうかにあります。ここでは、地方起業に向いている2つのビジネス例を紹介します。
ITビジネス
ITビジネスは地方起業に最適なビジネスのひとつです。インターネットを介して提供されるサービスは地理的な制約を受けにくく、都市部と同等のサービスを地方から展開できます。
たとえば、Webデザインやシステム開発、デジタルマーケティング、オンライン教育サービスなどです。実際に青森県十和田市でWeb制作会社を起業し、成功を収めた事例もあります。
ITビジネスのメリットは初期投資を抑えられる点に加え、リモートワークを活用して全国から優秀な人材を確保できる点です。
また、地域の観光情報を提供するアプリケーションの開発や地元企業のDX支援サービスなども、地方ならではの需要を掘り起こせる可能性があります。
特産品や伝統品など地域資源を活かしたビジネス
地域の特産品や伝統工芸品を活用したビジネスも地方起業に最適です。
各地域には長年受け継がれてきた特産品や伝統工芸品が存在しますが、後継者不足や需要の減少により衰退の危機に直面しているケースも少なくありません。
これらの地域資源を現代のニーズに合わせてアレンジし、新たな価値を付加すれば、独自性の高いビジネスを生み出せる可能性があります。
たとえば、島根県出雲市で創業された台雲酒造合同会社は、戦前に台湾で開発された蓬莱米を使用した日本酒を製造し、台湾市場を中心に展開して成功を収めています。
地域の食材を使った加工食品の開発や伝統工芸品をモダンにアレンジした商品の製造販売なども、地域資源を活かしたビジネスの成功例といえるでしょう。
もしものときの備えに「FREENANCE」
出典:FREENANCE
地方起業には、都市部での起業とは異なる独自のメリットとデメリットがあります。
課題を適切に対処し、地域のニーズを的確に捉えたビジネスモデルを構築できれば、地方ならではの成功は十分に可能です。
ITビジネスや地域資源を活かしたビジネスなど、地方の特性を活かせる業種を選択し、自治体や地元企業とのネットワークを構築しながら事業を展開していきましょう。
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