フリーランスになるための準備|必要な手続き、やるべきことを解説
フリーランスになるためには、事前の準備が必要です。今回はフリーランスとして独立する方に向けて、事前にやるべきことや開業手続きなどを解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
- 【この記事のまとめ】
- フリーランスは、会社に所属せずに個人で仕事をする人々で、プログラマーやデザイナーが多いです。フリーランスになる際には、準備期間として約3ヶ月を設けることが推奨されます。この期間に、上司への独立の報告や後任への引き継ぎ、個人活動に必要な手続きの実施が必要です。
- フリーランスになる前に、クレジットカードやローン、賃貸契約、仕事用銀行口座の準備が重要です。特にフリーランスは収入が不安定と見なされ、これらの審査が通りにくくなるため、会社員のうちに手続きを済ませておくことがスムーズです。
- フリーランスには、開業届や青色申告の申請、健康保険・年金の手続きが求められます。これらの手続きを適切に行うことで、事業の円滑な運営が可能になります。また、小規模企業共済制度に加入することで、将来的な退職金の準備にも役立ちます。
2024年11月1日より、フリーランス保護法が施行されます。
組織に所属せずに働くフリーランスが安心して働ける環境を整備するために、フリーランスと企業などとの発注事業者間の取引の適正化(契約書等により取引条件を明示する)が主な目的です。
詳しくは次の記事をご覧ください。フリーランス保護法の概要、制定された背景や具体的な内容などを解説しています。
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フリーランスになるためには準備が必要
フリーランスとは、会社などの団体に所属せず個人で仕事を請け負う人のことを指します。プログラマーやカメラマン、デザイナーなど自分のスキルを活かしながら活動している人が多いです。
会社を退職してフリーランスになる場合、準備期間は3ヶ月ほど取るとよいといわれています。フリーランスになるまでは「会社の上司に独立の旨を打ち明け、後任の引き継ぎなどを行う」「個人として活動するための手続きを行う」など、やることがたくさんあるためです。
また、独立に必要な費用を算出する必要もあります。事業に必要なパソコンやインターネット設備、名刺などの初期費用に加え、3~6ヶ月分の経費は用意しておくとよいでしょう。
フリーランスになる前にやるべきこと
フリーランスになる前にやっておいたほうが良いことは、主に5つです。
- クレジットカードの契約
- ローンを組む
- 賃貸契約
- 仕事用の銀行口座の準備
- 仕事に関する備品を備える
基本の手順を確認しておけば、抜け漏れなくフリーランスとしての準備を整えられるようになります。各項目を詳しくチェックして、手続きの計画を立ててみてください。
クレジットカードの契約
必要経費の支払いには、仕事用のクレジットカードを作るのがおすすめです。プライベート用と仕事用のクレジットカードを兼用していると会計処理が煩雑になり、本来はプライベート用として処理すべき費用を誤って経費にしてしまう可能性もあります。専用クレジットカードがあれば、事業の資金繰りがクリアになるでしょう。
また、フリーランスは会社員と比べて社会的信用が劣り、カードの審査に通らない場合があります。審査が気になる方は、独立前にカードの手続きを終えておくと安心です。
ローンを組む
フリーランスは「収入が不安定」と判断されやすいため、ローンの審査に通らないことがあります。特に、自動車ローンや住宅ローンを始めとした大きめのローンをフリーランスになった後に組むのは困難かもしれません。ローンを組む予定がある場合は、安定した収入が見込める会社員時代に手続きを済ませておくとスムーズです。
賃貸契約
クレジットカードやローンと同じように、収入が不安定なフリーランスは賃貸契約の審査が通りづらい傾向があります。保証人や保証会社と契約して物件を借りる方法もありますが、保証人探しで苦労したり、保証会社へお金を払ったりするのであれば、会社員のうちに物件を借りておいた方が大変な思いをせずに済むでしょう。
仕事用の銀行口座の準備
銀行口座についても仕事用とプライベート用で分けた方が、会計処理が楽になります。同一の口座を使用していると、どの入出金が仕事用なのかわからなくなり、会計処理に時間がかかる可能性が高まるでしょう。仕事用クレジットカードの引き落とし先も仕事用の口座にしておけば、プライベートと混同することなく会計処理を行えます。
また、仕事用の口座であれば口座名に屋号を入れられるのも嬉しいポイントです。独立後は何かと忙しくなって銀行へ行く時間も取りづらくなるため、あらかじめ手続きしておくとよいでしょう。
仕事に関する備品を揃える
事業がスタートした後だと備品の準備にまで手が回らなくなるため、事前に必要なものを揃えておくと効率的です。
主に必要な備品の例は、以下の通りです。
- デスク&チェア
- パソコン
- プリンター
- 書類保管用のファイル
- 文房具
- 印鑑
- 名刺 など
自分の事業にはどのような備品が必要かリストアップしておけば、取りこぼしを防げます。チェックリストを確認しながら、事業開始までに備品を揃えておきましょう。
フリーランスになる際に必要な手続き
フリーランスになるためには、以下のような手続きが必要です。
- 個人事業の開業届出書(以下開業届)の提出
- 青色申告の申請
- 健康保険の手続き
- 年金の手続き
また任意の手続きですが、節税の観点からは以下の手続きもおすすめです。
- 小規模企業共済制度の手続き
必要な手続きを終えていないと、事業に支障をきたす可能性もあるため注意が必要です。各手続きの詳細を確認しましょう。
開業届の提出
フリーランスとして事業をスタートする際には、納税地を管轄する税務署へ開業届を提出する必要があります。開業日から1ヶ月以内が提出期限のため、提出方法と必要書類を確認して手続きを行ってください。
開業届の提出方法
開業届は、税務署の窓口に持ち込み・郵送・e-Taxと、3つの提出方法があります。どの方法が取り入れやすいか確認し、届出をしましょう。
税務署の窓口で提出 | 税務署の開庁時間に直接窓口へ必要書類を提出します。記入漏れがある場合もその場で指摘を受けられるのがメリットです。 |
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郵送で提出 | 必要書類に加えて開業届の控え(コピー)・返信用封筒・返信用切手・マイナンバーカードの写し(もしくはマイナンバー確認書類と本人確認書類)を同封して郵送します。受領印が押された控えが返送されたら、申請の完了です。 |
e-Taxで提出 | パソコンとインターネット環境、ICカードリーダライタ、マイナンバーカードを準備し、e-Taxソフトを使って届出を行います。開業届提出後、e-Taxのメッセージボックスに受信メッセージが届いたら申請の完了です。 |
必要書類と書き方
開業届に必要な書類は、以下の通りです。
- 個人事業の開業・廃業等届出書
- マイナンバーがわかる書類(個人番号通知カード、マイナンバーカードなど)
- 本人確認書類(運転免許証など/マイナンバーカードがある場合は不要)
- 印鑑(訂正があった場合の訂正印として必要な場合がある)
このうち、個人事業の開業・廃業等届出書は税務署の窓口で取得するか、国税庁のHPで雛形をダウンロードできます。具体的な書き方を確認して、税務署へ提出しましょう。
個人事業の開業・廃業等届出書の書き方は、それぞれ以下のとおりです。
納税地 | 納税予定の住所を記載 |
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個人番号 | マイナンバーを記載 |
職業 | 客観的に判別できる職業名を記載 |
屋号 | 屋号を定めていない時は記載不要 |
届出の区分 | 「開業」を選択 |
所得の種類 | 山林や不動産以外の所得は事業所得を選択 |
開業・廃業等日 | 開業した日を記載 |
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 提出書類がある場合は「有」を選択 |
事業の概要 | 具体的な事業内容を記載 |
給与等の支払の状況 | 給与を支払う予定がある場合に記載 |
源泉所得税(源泉税)の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無 | 提出する場合は「有」を選択 |
給与支払を開始する年月日 | 給与の支払いを始めた日付を記載 |
青色申告の申請
青色申告とは確定申告方法の一種であり、1年間の取引状況を記載した簿記帳簿の作成・保管義務があります。市販の確定申告ソフトを使えば、簿記帳簿も簡単に準備できるでしょう。
また、最大65万円の控除や3年間の赤字の繰越など、節税メリットを受けられるのも青色申告の特徴です。しっかりと節税対策を行いたい方は、青色申告を選んでみてください。
必要書類 | 青色申告承認申請書 |
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申請先 | 納税地の税務署 |
提出方法 | 税務署の窓口への持ち込み・郵送・e-Tax |
提出期限 | 青色申告を行う年の3月15日まで(事業開始日がその年の1月16日以降になった場合は、事業開始日から2ヶ月以内) |
青色申告承認申請書は税務署に申請するものなので、開業届と一緒に提出するとスムーズです。開業届提出時に忘れないように準備しましょう。
健康保険の手続き
会社員を辞めてフリーランスになったら、国民健康保険に加入する手続きが必要です。
必要書類 |
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申請先 | 住所地を管轄する自治体の窓口 |
申請期限 | 退職日から14日以内 |
必要書類は各自治体で異なることがあるため、事前に確認しておくと安心です。期限内に必要書類を持参して手続きを行えば、国民健康保険への加入が完了します。
年金の手続き
フリーランスになったら、会社の厚生年金から国民年金に切り替える必要もあります。
必要書類 |
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申請先 | 住所地を管轄する自治体の国民年金窓口 |
申請期限 | 退職日から14日以内 |
期限内に必要書類を揃えて自治体の国民年金窓口で申請を行えば、国民年金への切り替えが完了します。
小規模企業共済制度の手続き
小規模企業共済制度とは、個人事業主や中小企業経営者の積立による退職金制度を指し、事業を廃業した際は掛金に応じて給付を受けられるのが特徴です。フリーランスには会社員のような退職金はないため、独立した後の貯蓄を用意しておくために役立ちます。また、掛金は確定申告時に全額所得控除となるため、節税対策という意味でも加入するのがおすすめです。
必要書類 |
|
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申請先 | 中小機構が業務委託している団体か金融機関の窓口 |
申請期限 | なし |
必要書類を窓口に提出してから約40日後、中小機構から「小規模企業共済手帳」等の書類が送られてきたら手続きの完了です。
フリーランスで失敗しないためのポイント
会社を退職し、フリーランスとなった後は失敗が不安になることもあるでしょう。フリーランスで失敗しないためのポイントを確認し、リスクを回避するようにしてください。
フリーランスで失敗しないためのポイントは、主に以下のとおりです。
- まずは副業から始めて実績を積む
- しっかり休日を取って体調管理を行う
- 信頼できるクライアントを吟味する
- 常にスキルアップを心がける
- フリーランスが集まるセミナーなどに参加する
いきなりフリーランスになるのではなく副業から始めれば、しっかり実績を積めるため、独立後に失敗するのを防げます。また、無休で働き続けると体調を崩して納期を守れなくなることもありますので、計画的に休日を作り体調を管理することも重要です。この他にクライアントの選び方やスキルアップ、セミナーへの参加も意識して、失敗しないための基礎を作りましょう。
フリーランスになるための準備に関するよくある質問
最後に、フリーランスの準備に関する質問と回答を紹介します。疑問を解消し、フリーランスとしての準備を整えましょう。
Q.フリーランスの準備にかかる費用は経費にできる?
開業前のフリーランスの準備にかかった費用(開業費)は、経費ではなく「繰延資産」という資産項目として処理します。資産項目に当てはまる費用は、資産に応じた使用年数に合わせて毎年少しずつ経費として償却するのが基本です。
「開業のために準備したからこそ、今後の事業を継続できる」という考えから、開業した年度だけでなくその後の年度にも関係する資産として開業費を取り扱うことになります。開業費としては、10万円以下のパソコンや家賃、公共料金、通信費などが当てはまるため、必要に応じて会計処理を行ってください。
Q.開業届けを出さないとどうなる?
開業届を出さなくても、特に罰則はありません。ただし、フリーランスとして事業を始めた人は開業届を提出する義務があります。また、開業届を提出しないと屋号を使った銀行口座を開設できなかったり、青色申告を申請できなかったりといったデメリットもあるため、必ず手続きを行ってください。
Q.フリーランスになるにはどんなスキルが必要?
フリーランスには、スケジュール管理能力や自己管理能力、コミュニケーション力、仕事の選別力などが求められます。1人で活動するからこそ、滞りなく仕事をこなすために計画を立て、体調を崩さないよう自己管理を行うことが重要です。
さらにコミュニケーション力を磨いて人脈を広げ、損をしない仕事を選ぶこともフリーランスには欠かせません。必要なスキルを身につけて、フリーランスとして活躍していきましょう。
まとめ
クレジットカードを作成したり、必要なローンを組んだり、フリーランスになる前にやるべきことは多岐に渡ります。また、フリーランスとして事業を始める際には開業届などの申請も必要なため、手続き項目をリストアップして計画を立てておくのがおすすめです。滞りなくフリーランス活動をスタートできるよう、万全の準備を整えましょう。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。