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個人事業主が法人化(法人成り)するタイミングはいつ?メリットや法人化する手順を解説

個人事業主が法人化(法人成り)するタイミングはいつ?メリットや法人化する手順を解説

個人事業主の人は事業が順調に成長してきたら、法人化を検討し始めるでしょう。個人事業と法人では課せられる税も違い、メリットデメリットの両方で検討する必要があります。


この記事では、これから法人化の準備を始めたい人に、どのタイミングで法人化するべきか、法人化の手順も含めて詳しく説明します。

【この記事のまとめ】
  • 個人事業主が法人化を考えるタイミングは、年間利益が800万円を超えた時や課税売上高が1,000万円を超えた時です。
  • 法人化のメリットには、資金調達がしやすくなることや、社会保険に加入できることがあります。これにより、優秀な人材を集めやすくなり、事業の信頼性も向上します。
  • 法人化の手順は、基本項目の設定から始まり、定款の作成、法人登記書類の用意と提出など多岐にわたります。

2024年11月1日より、フリーランス保護法が施行されます。

組織に所属せずに働くフリーランスが安心して働ける環境を整備するために、フリーランスと企業などとの発注事業者間の取引の適正化(契約書等により取引条件を明示する)が主な目的です。

詳しくは次の記事をご覧ください。フリーランス保護法の概要、制定された背景や具体的な内容などを解説しています。

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法人化(法人成り)するタイミングはいつ?

法人化(法人成り)するタイミングはいつ?

法人化するタイミングとして挙げられるのは、以下のとおりです。

  • 年間の利益がおよそ800万円を超えたとき
  • 2年前の課税売上高が1,000万円を超えているとき
  • 前年の前半6ヶ月の課税売上高が1,000万円を超えているとき
  • 社会保険に加入したいとき
  • 資金調達をしたいとき
  • 事業を拡大したいとき

ひとつずつ解説していきます。

年間の利益がおよそ800万円を超えたとき

一般的には、法人税率と所得税率の比較から年間の利益が800万円~900万円を超えたあたりに法人成りするとよいとされています。年間の利益とは、その年の収益から費用を引いた残額を指します。

ただし、事業形態によって課せられる税はそれぞれ変わるため、詳しい法人化のタイミングは税理士など専門家と相談するのがおすすめです。

2年前の課税売上高が1,000万円を超えているとき

事業所の開始年度から2年間は、消費税が免除されています。個人事業主は2年前の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者となります。そのタイミングで法人化すると、課税事業者となる時期を遅らせることができ、今の税負担を減らせるメリットがあります。

個人事業主と新設した法人事業主は別とみなされ、新規に法人を開設してから2年間は消費税の納税義務は免除される可能性が高くなるためです。しかし、資本金が1,000万円以上で設立された法人は開始年度から課税事業者となるため、注意が必要です。

前年の前半6ヶ月の課税売上高が1,000万円を超えているとき

2年前の課税売上高が1,000万円以下の場合でも、前年の前半6ヶ月の課税売上高が1,000万円以上の場合は消費税の納税義務が発生します。

そのため、前年の前半6ヶ月の課税売上高が1,000万円を超えてきたタイミングでも、法人化を行うと上記と同様に納税免除の可能性があります。

社会保険に加入したいとき

社会保険に加入したい場合、法人成りにはメリットがあります。社会保険とは、公的費用負担により個人が病気や災害などのリスクに備えることができる制度です。個人事業主が利用する国民健康保険よりも高額ですが、社会保険にある厚生年金では老後に受け取れる年金が多くなります。

会社に社会保険に加入できるというメリットがあれば、老後にも備えたい優秀な人材が集まりやすく、多くの利点が期待できます。

資金調達をしたいとき

法人となれば個人事業主よりも信用を得やすく、金融機関からの資金を融通してもらいやすくなります。

資金調達は事業を存続しさらに成長させていくために必要な工程です。資金調達を怠ったまま事業を続ければ、資金ショートを起こし会社が倒産するリスクもあります。

金融機関から融資などで資金を受け取るには、審査を通過する必要があり、法人の方が圧倒的に有利になります。

事業を拡大したいとき

事業を拡大したい場合でも、法人化は大きなメリットがあります。上記で説明していたとおり、税負担の軽減以外にも法人事業になると受けられる権利がいくつかあります。

社会的な信用獲得により金融機関からの資金調達もしやすく、社会保険の加入によって優秀な従業員の数も増やせます。また、個人事業主よりも法人の方が信頼感もあり、新規取引先の開拓にも有利に働いてきます。

適切なタイミングで法人化することにより、節税効果に加えて事業拡大時期にも大きなメリットをもたらします。

法人化するメリット

法人化するメリット

法人化すると、節税対策や社会的信用の獲得などができ、資金調達がしやすくなります。また社会保険の加入により従業員を増やせるメリットもあります。

そのほかの利点として、決算期を自由に決められることなどもあります。個人事業主が毎年12月31日に事業年度締めが決められているのに対し、法人は事業の繁忙期を避けた都合のよい日などに決算期を定めることが可能です。

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また、法人は赤字を10年繰り越すこともできます。個人事業主の場合は、青色申告で赤字を繰り越せるのは3年のみです。赤字を繰り越せれば、黒字になった年に金額を相殺して節税対策をすることができます。

法人化については以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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法人化するデメリット

法人化するデメリット

法人化で留意しておきたいデメリットとしては、赤字でも税を支払う必要があるということです。個人事業主で赤字になってしまったときは、所得税や住民税を支払う必要はありませんでしたが、法人に課せられる法人税には赤字でも支払いが生じます。最低でも年間7万円の地方税がかかるため、注意が必要です。

また、法人は事業に関連する飲食費の損金算入が一部のみになります。個人事業主の場合は、事業に関する交際費がすべて損金参入できる一方で、法人は交際費のうち飲食代に限り50%までという制限があります。ただし、資本金が1億円以下の場合は年間800万円まで全額損金算入可能です。対応として、飲食代を交際費ではなく、会議費など、そのほか適切な科目を設けて計上することなどが挙げられます。

また、2023年10月1日に開始されるインボイス制度についても確認しておきましょう。インボイス制度とは、消費税の適格証明書の交付・保存を義務化し、取引の透明性を図る制度です。免税事業者は、この適格証明書を交付できなくなります。そのため、インボイス制度適用後は2年間の消費税免除期間がメリットにならない場合があります。

法人化を検討している人は、インボイス制度が開始されるまでに法人化し、可能な限りの免税期間を活用するとよいでしょう。

法人化の手順

法人化の手順

以下で、法人化する流れについてご説明します。

1.会社の基本項目を設定する

まずは会社の基本項目を設定します。設定する科目は以下のとおりです。

基本項目 詳細
会社名 個人事業主のときの屋号、もしくは新たな社名を決めます。
会社の形態 株式会社や合同会社など、事業に合った形態を選択します。
事業目的 個人事業主のときの事業のほか、新たな事業を開始する場合は、事業目的を決めます。
本店住所 個人事業主のときのオフィスをそのまま使えます。
資本金 個人事業主のときの最後の確定申告や、今後の会社の信用、融資計画などをもとに決めます。

法人化して本店住所を登記申請する際、事前に管理会社やマンションに連絡しましょう。契約によっては連絡しなくてよい場合もありますが、本店住所とする場合の連絡を必須としている場所もあるため、確認が必要です。

2.定款を作成する

上記で定めた基本項目を記録した定款を作成します。定款は原則会社と公証役場に1部ずつ保管する必要があります。

記載が必要な項目は以下のとおりです。

  • 商号
  • 会社の目的
  • 本店所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(資本金)
  • 発起人の氏名または名称および住所
  • 株式の譲渡制限に関する定め(ある場合)
  • 代表取締役・取締役会・監査役、会計監査人などの設置(ある場合)
  • 公告の方法(ある場合)

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3.法人登記書類を作成する

法務局へ登記するための書類を揃えます。書類は、各自で用意が必要なもと金融機関や法務局内から購入が必要なものなどがあります。それぞれ必要なアイテムや記載すべき情報、作り方の手順などを事前に確認しましょう。

必要な書類は以下のとおりです。

書類 詳細 取得場所
会社設立登記申請書 商号や本店所在地など、登記する内容を記載する書類です。各自で作成する必要があります。

各自で作成。

参考:法務局の雛形

登録免許税の収入印紙を貼付した台紙 登記に必要な登録免許税の収入印紙を台紙に貼ります。

収入印紙は、金融機関や法務局内の印紙売り場。

台紙は各自で作成。

登記すべき事項を記載した申請用紙・テキストデータ 会社の形態に合わせた登記すべき事項を記載した申請用紙・テキストデータです。テキストデータは、CD-RやCD-ROMなどでも提出できます。

各自で作成。

参考:法務局の作成例一覧

定款 公証役場で認証を受けた定款です。電子定款でオンライン申請も可能です。 各自で作成。
取締役の就任承諾書 取締役として就任を承諾したことを証明する書類です。 各自で作成。
払込証明書

発起人によって資本金が所定の銀行口座に振り込まれたことを証明する書類です。

以下を用意します。

  • 払込内容などが記載された書面
  • 銀行口座の通帳の表紙
  • 銀行口座の通帳の表紙裏
  • 振り込み内容が記帳されているページ
各自で作成。
印鑑届出書 法務局で代表印を印鑑登録するために必要な書類です。 各自で作成。

4.法人登記の申請を行う

必要な書類を持って法務局へ行き、窓口に提出します。書類は郵送でも届出可能です。郵送先は、法務局のホームページで確認しましょう。

申請後、書類に不備がなければ最短10日ほどで登記が完了します。完了後、登記事項証明書の取得が可能です。

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5.その他、必要な手続きを行う

登記申請後は、そのほか会社設立に必要な手続きを行います。

会社設立から5日以内に健康保険・厚生年金保険新規適用届、1ヶ月以内に給与支払事務所等の開設届出、2ヶ月以内に法人設立届、3ヶ月以内に青色申告の承認申請が必要です。ほかにも、地域や事業により異なる申請が必要になります。

それぞれ必要な書類を揃えて、税務署や年金事務所に提出します。

その他の必要な手続き一覧は以下のとおりです。

手続き 申請方法 必要書類 詳細
法人設立届

税務署へ提出

都道府県税事務所へ提出

市町村役場へ提出

法人設立届・定款の写し

登記事項証明書の写し

税務署:会社設立から2ヶ月以内に提出

都道府県税事務所:期限は各自治体によって異なる

市町村役場:期限は地域によって異なる

青色申告の承認申請 税務署へ提出 青色申告の承認申請書 会社設立から3ヶ月以内に提出
給与支払事務所等の開設届出 税務署へ提出 給与支払事務所等の開設届出書 会社設立から1ヶ月以内に提出
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請 税務署へ提出 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 適用したい月の前月末日までに提出
健康保険・厚生年金保険新規適用届 年金事務所へ提出

健康保険・厚生年金保険新規適用届

登記事項証明書

法人番号指定通知書のコピー

会社設立から5日以内までに提出
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 年金事務所へ提出 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 被保険者になってから5日内までに提出

また、法人化によって個人事業を廃業する場合は、廃業届も必要です。個人事業主として事業の一部を継続する場合や、不動産所得が発生する場合は、廃業届の提出は必要ありません。

廃業届に必要な手続きは以下です。

手続き 申請方法 必要書類 詳細
個人事業の開業・廃業等届出(所得税) 税務署へ提出 個人事業の開業・廃業等届出書 事業を廃止した日から1ヶ月以内に提出
事業廃止届出(消費税) 税務署へ提出 事業廃止届出書 事業廃止後、速やかに提出(消費税の納税義務者であった場合のみ)
所得税の青色申告の取りやめ届出 税務署へ提出 所得税の青色申告の取りやめ届出書 事業を廃止する年の翌年3月15日までに提出
給与支払事務所等の廃止届出 税務署へ提出 給与支払事務所等の廃止届出書 事業を廃止した日から1月以内に提出(給与を支払っていた場合のみ)
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続 税務署へ提出 所得税の予定納税の7月(11月)減額申請書

第1期分・第2期分の減額申請は、その年の7月1日から7月15日まで

第2期分のみの減額申請は、その年の11月1日から11月15日まで(税務署から通知された予定納税額が多い場合、減額のために提出)

法人化に必要な費用

法人化に必要な費用

法人化を行う際、会社設立登記にかかる費用が発生します。株式会社、合同会社を設立した際にかかる費用を例として記載します。

株式会社の場合
定款用収入印紙代 4万円(電子定款では不要)
定款の認証手数料 資本金の額により3万円~5万円
定款の謄本手数料 約2,000円(250円/ページ)
登録免許税 15万円もしくは資本金額×0.7%のどちらか高い方
合同会社の場合
定款用収入印紙代 4万円(電子定款では不要)
定款の認証手数料 0円
定款の謄本手数料 0円
登録免許税 6万円もしくは資本金額×0.7%のどちらか高い方

また、これまで資本金の用意は必須でしたが、最低資本金制度が撤廃されたことにより、1円からでも法人化が可能になりました。資本金の用意はなくとも、上記の登記にかかる費用のみで法人化が可能です。ただし、資本金額が会社の信頼に関わる場合も多いため、ある程度の用意は必要でしょう。

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まとめ

まとめ

法人化は、節税対策や事業拡大に大きなメリットがあります。支払う税額を抑えたり、資金調達や従業員獲得の手助けになったりもします。法人化のタイミングは、税理士などの専門家と相談し、適切なタイミングで行うのがおすすめです。この際、法人化のデメリットについても確認しましょう。法人になると個人事業主時代の赤字が繰り越せなくなるなど検討すべき点もあります。

また、インボイス制度の開始により、事業の形態によっては免税が受けられない場合もあるため、注意が必要です。法人化が決まれば、行わなくてはいけない手続きも多くあります。この記事で手順を確認し、速やかに進めていきましょう。

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記事監修
中野裕哲
中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
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