従業員を雇う個人事業主が加入する社会保険は3種類!保険料や加入のポイントも解説
会社勤めをしていない個人事業主の場合、国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。事業が成長すると個人事業主が従業員を雇うこともありますが、その場合は社会保険への加入が必要です。
社会保険は従業員だけでなく個人事業主を守るための保険でもあります。しかし、どの社会保険に加入すればいいのか、事業者が負担する保険料の割合はどのくらいなのか、頭を抱えるポイントもたくさん出てくるでしょう。
そこで今回は、従業員を雇う個人事業主が加入する社会保険や保険料、加入ポイントなどについても詳しく説明します。
- 【この記事のまとめ】
- 個人事業主が従業員を雇う際に加入すべき社会保険は、労災保険、雇用保険、健康保険・介護保険・厚生年金保険の3種類です。
- 労災保険や雇用保険の手続きは、従業員ごとではなく事業所単位で行い、保険料は業種ごとのリスクに応じて異なります。
- 個人事業主が従業員の社会保険料を負担する場合、法定福利費として経費に計上でき、従業員が安心して働ける環境を提供できます。
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従業員を雇う個人事業主が加入する社会保険は3種類
従業員を雇う個人事業主が加入すべき社会保険は、以下の3種類です。
- 労災保険
- 雇用保険
- 医療保険・介護保険・厚生年金保険
基本的に、個人事業主が従業員を5人以上雇う場合は労災保険と雇用保険に加入する必要があります。ただしサービス業など一定の業種については人数にかかわらず加入義務はありません。
なお、令和4年10月より、従業員を5人以上雇用している士業の個人事業所が新たに厚生年金保険・健康保険の強制適用事業所となり、対象となる従業員は被保険者にすることが義務付けられました。
適用の対象となる士業は、弁護士・沖縄弁護士・外国法事務弁護士・公認会計士・公証人・司法書士・土地家屋調査士・行政書士・海事代理士・税理士・社会保険労務士・弁理士となります。
※参考:日本年金機構
労災保険
労災保険とは、通勤中や業務中のケガ・病気に対して、現金や医療サービスなど必要な給付を行う保険制度のことです。労働者災害補償保険法1条によると、「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡等」が労災保険の適用対象となっています。
加入条件
アルバイトや正社員など雇用形態にかかわらず、1日でも従業員を雇う事業者には労災保険への加入義務が生じます。加入対象は、正社員・パート・アルバイトなどすべての従業員が対象です。
ただし、事業主や事業主と同居している親族、法人の役員は加入対象にはなりません。一定の条件を満たす場合のみ、加入対象外の人でも任意で加入できる特別加入制度があります。
手続き方法
労災保険の手続きは、従業員ごとに加入手続きをする必要はありません。。「保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署へ提出し、その年度分の労働保険料(※)を概算保険料として申告・納付します。
なお、保険関係成立届は雇用する従業員と保険関係が成立した日の翌日から換算し、10日以内に労働基準監督署への提出が義務付けられています。保険関係成立届は、労働基準監督署またはハローワークの窓口で直接もらうか、郵送してもらえるので早めに準備しておきましょう。
(※)保険関係が成立した日からその年度の末日まで、労働者へ支払う賃金総額に保険料率(労災保険率+雇用保険率)を乗じて得た額。
保険料
事業内容によって労働災害のリスクが異なるため、労働保険率は業種ごとに細かく分類されています。たとえば、製造業においても食料品製造業(たばこ等製造業を除く)は6/1000、コンクリート製造業は13/1000などです。
労災保険料は、この労災保険料率と従業員へ支払う賃金の総額を乗じて計算します。つまり、「前年度1年間の全従業員の賃金総額×労災保険料率」が労災保険料というわけです。
たとえば、従業員が10名、退職金や一時金を除く給与が400万円の交通運輸事業者(労働保険率4/1000)の場合、「(400万円×10名)×0.4%=160,000円」になります。
参考:厚生労働省|労災保険率表
雇用保険
雇用保険とは、労働者の生活と雇用の安定を目的とした保険制度です。主に、再就職へのサポートを行うことが雇用保険の大きな目的です。
加入条件
加入対象となる従業員を雇う事業者は、雇用保険に加入する義務が生じます。加入対象の従業員は昼間学生を除く、「1週間の労働時間が20時間以上」「31日以上継続して雇用が見込まれること」に該当する人です。
ただし、農林水産業の個人経営かつ従業員が5人未満の場合、雇用保険への加入は任意となります。
また、労災保険と同じく、事業主や事業主と同居している親族、法人の役員は加入対象にはなりません。
手続き方法
「雇用保険適用事業所設置届」をハローワークなど所轄の公共職業安定所へ提出します。また、雇用保険に加入するには、従業員ごとに「雇用保険被保険者資格取得届」の提出が必要です。
なお、「雇用保険適用事業所設置届」は加入対象者を雇用した日から10日以内、「雇用保険被保険者資格取得届」は加入対象者ごとに雇用した月の翌月10日までに提出する必要があります。
保険料
雇用保険の場合、事業主と従業員それぞれが規定の雇用保険料にしたがって負担することになります。従業員が負担する雇用保険料は、毎月の支給総額に保険料率を掛けて徴収する仕組みです。
なお、雇用保険料率は定期的に見直しが行われているため、こまめに厚生労働省の「雇用保険料率について」をチェックしてください。
従業員から徴収する雇用保険料と事業主負担の保険料の計算方法は、下記のとおりです。
従業員から徴収する雇用保険料=給与の支給総額(1ヶ月分)×従業員負担分の保険料率
事業主負担の保険料=雇用保険対象の全従業員の給与(1年分)と賞与の合計額から算出
健康保険・介護保険・厚生年金保険
健康保険、介護保険、厚生年金保険はそれぞれ以下のような制度を指します。
- 健康保険:業務外の病気やケガに対して医療サービスの提供や現金を給付する制度
- 介護保険:要介護認定者に介護サービスを提供する制度
- 厚生年金保険:加入者の障害や老齢・死亡に伴い現金を給付する制度
加入条件
従業員が5人以上いる個人事業所かつ加入対象の従業員を雇用する場合は、健康保険・厚生年金保険に加入する義務が生じます。法律で定めている業種以外(農林漁業、理容業や飲食業などのサービス業)の場合、加入は任意です。
労災保険や雇用保険とは違い、法人の代表であれば加入義務がありますが、個人事業主の場合は原則として国民年金保険と国民健康保険へ加入するので、事業主本人は加入できません。
また、加入対象となる従業員は、事業者が健康保険・厚生年金保険の適用を受ける場合と受けない場合で異なります。
【健康保険・厚生年金の適用を受ける事業者の場合】
- 常時雇用されている従業員
- アルバイト・パートなどの短時間労働者でも、1週の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上の者
- 上記2以外でも、以下の5項目すべてに該当するアルバイト・パート等
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が1年以上見込まれる
- 賃金の月額が8.8万円以上
- 学生でない
- 常時101人以上の企業に勤めている(従業員100人以下の事業所の場合は労使合意がある)
健康保険・厚生年金の適用を受けない事業者の場合、従業員が個々で扶養者の保険に加入するか、個人で国民健康保険・国民年金に加入します。基本的に、事業者自身が手続きをする必要はありませんが、「国民健康保険組合」に加入している場合は医療保険のみ事業者による手続きが必要です。
手続き方法
健康保険と厚生年金保険の加入が義務付けられる事業所に該当している場合は、所轄の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険新規適用届」、加入対象者ごとに「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」の提出が必要になります。
被扶養者が加入対象者にいる場合は、必要に応じて「健康保険被扶養者(異動)届」と「国民年金第三号被保険者届」を提出してください。
また、「国民健康保険組合」に加入している事業者は、国民健康保険組合に問い合わせて、必要な手続きを確認しましょう。
保険料
医療(健康)保険・介護保険・厚生年金保険それぞれの計算式は、以下のとおりです。
【医療(健康)保険】:標準報酬月額×健康保険料率=医療(健康)保険料
健康保険には「健康保険組合」と「全国健康保険協会(協会けんぽ)」があり、協会けんぽの場合は都道府県によって保険料率が異なります。なお、健康保険は事業主と従業員それぞれ50%ずつ負担します。
【介護保険】:標準報酬月額×1.82%÷2=事業主が負担する介護保険料
介護保険料の納付は40歳以上の従業員だけです。介護保険料率は全国一律1.82%となっています。
【厚生年金】:標準報酬月額×18.3%÷2=事業主が負担する厚生年金保険料
厚生年金保険料率は、2017年9月より18.3%で固定されています。
個人事業主と従業員では加入できる社会保険が異なる
個人事業主と従業員では加入できる社会保障が異なるという点に注意してください。では、それぞれ加入できる社会保障とはどのようなものなのでしょうか。
個人事業主は国民健康保険、国民年金に加入する
基本的に、個人事業主は国民健康保険、国民年金に加入することになります。健康保険および厚生年金保険における被保険者は、あくまで「事業所に使用される者」だからです。そのため、個人事業主自体は、健康保険・厚生年金保険に加入できません。
なお、「国民健康保険」は他の医療保険制度に加入していないすべての住民を対象とした医療保険制度、「国民年金」は日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満かつ厚生年金保険に加入していない人が義務付けられている年金制度です。
国民健康保険と同様に、個人事業主は自分で国民年金に加入する必要があります。ただし、健康保険に関しては、健康保険組合や業界に特化した団体・組合など、国民健康保険以外の健康保険に加入するのも選択肢のひとつです。
個人事業主は原則労働保険には加入できない
個人事業主は、原則として労働保険に加入できません。労働保険は、会社に雇用されている従業員を対象にした保険制度だからです。個人事業主は会社に雇用されているわけではないので、加入対象外となります。
ただし、業務の実態や災害の発生状況を考慮し、保護が必要だと判断される一定の方が加入できる制度「特別加入制度」があります。
特別加入の手続きは個人事業主本人ではなく、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行うことになるので注意が必要です。詳細は厚生労働省の「特別加入制度のしおり」をご覧ください。
個人事業主は従業員の社会保険料を経費にできる
従業員の社会保険料は法定福利費として経費にできます。
福利厚生費の一種である法定福利費は、従業員を雇っている事業者に法律で負担が義務付けられている保険料のことです。労働保険や社会保険などが含まれており、事業主が負担した分は経費として計上できます。
なお、従業員の給料から保険料を天引きした場合は、「預り金」として記帳します。
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まとめ
会社に雇用されて働いている人と個人事業主では、加入できる保険が異なります。個人事業主が従業員を雇う場合は、従業員が安心して働けるように、労災保険や雇用保険などの保険に加入する必要性が出てくるので注意が必要です。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
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