白色申告とは?必要書類の作成方法や提出方法を解説
白色申告とは、1年間の所得を申告して納税額を算出する確定申告方法の一つです。
青色申告であれば最大65万円の所得控除を受けられるメリットもありますが、白色申告には税務上のメリットがありません。
ただし、白色申告は事前申請の必要がなかったり、単式簿記で簡単に記帳できるメリットがあります。
白色申告と青色申告の違いを理解して、どちらが自分に最適な申告方式になるのかを検討しましょう。
この記事では、白色申告とは何か、青色申告との違い、必要書類の作成方法や提出方法について詳しく解説します。
- 【この記事のまとめ】
- 白色申告は確定申告における申告方法のひとつです。
- 白色申告には、手続きや書類作成の手間を減らせるメリットがあります。
- 白色申告は青色申告とは異なり、税務上のメリットがありません。
- 白色申告とは
- 白色申告と青色申告の違い
- 承認申請書提出の有無
- 青色申告特別控除の有無
- 赤字繰り越しの有無
- 記帳方法の違い
- 会計業務が苦手な方や売上の低い事業者は白色申告がおすすめ
- 白色申告の必要書類
- 収支内訳書
- 確定申告書
- 各種控除の証明書
- 本人確認書類
- 年間の所得金額が分かる書類
- 銀行口座が分かるもの
- 白色申告で必要になる書類の作成方法
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用する
- 確定申告ソフトで作成する
- 手書きで作成する
- 白色申告の提出方法
- 所轄税務署へ直接提出する
- 所轄税務署へ郵送で提出する
- e-Taxで申告する
- 白色申告の注意点
- 原則毎年3月15日までに確定申告が必要
- 確定申告を忘れると延滞税や無申告加算税などのペナルティがある
- 帳簿は7年間の保存義務がある
- まとめ
「確定申告」の期間は毎年2月16日から3月15日です。
「起業の窓口」では、確定申告の方法、青色申告や白色申告の基礎知識、手続きの流れ、節税のコツなどを詳しく解説しています。
ぜひ、「確定申告」に関する他の記事もご覧ください。
白色申告とは
白色申告とは、確定申告における申告方法の一つです。1年間の所得や納税額を計算して申告する確定申告には、白色申告と青色申告の2つがあります。
確定申告の際には収支の帳簿付けが義務付けられていますが、青色申告の場合は原則として複式簿記、白色申告の場合は単式簿記での申告が必要です。
青色申告の複式簿記は借方・貸方を用いて取引を記録しなければいけませんが、白色申告の単式簿記であればお小遣い帳のようなイメージでシンプルに帳簿付けが可能です。
白色申告はシンプルで簡単な帳簿付けが可能な申告方法となります。
ただし、白色申告には青色申告にある最大65万円の青色申告特別控除がないため、税務上のメリットを得られません。
白色申告と青色申告の違い
白色申告と青色申告の主な違いは以下の通りです。
白色申告 | 青色申告 | |
---|---|---|
承認申請書の提出 | 不要 | 必要 |
青色申告特別控除 | なし | 最大65万円 |
赤字繰り越し | できない | 最長3年間の赤字繰り越しが可能 |
記帳方法 | 単式簿記(簡易簿記) | 原則として複式簿記 |
ここでは、白色申告と青色申告の違いについて解説します。
承認申請書提出の有無
白色申告と青色申告は、承認申請書提出の有無が異なります。
白色申告の場合は承認申請書を提出する必要はありませんが、青色申告で確定申告をするためには、事前に青色申告承認申請書を所轄税務署に提出しなければいけません。
青色申告承認申請書は、青色申告を行う年の3月15日まで(その年の1月16日以降に開業したり不動産の貸付けをした場合は開始から2ヶ月以内)に提出が必要です。
提出期間を過ぎてしまった場合は、その年は青色申告ができません。
青色申告を希望する場合は、国税庁のホームページや税務署で書類を取得し、期限内に作成および提出を済ませましょう。
なお、WEB版e-Taxソフトでも申請書の作成および提出が可能です。
青色申告特別控除の有無
白色申告と青色申告の大きな違いは、青色申告特別控除の有無です。
青色申告には最大65万円の青色申告特別控除が設けられており、年間の所得から差し引いた金額が課税所得となるため、節税対策としてのメリットがあります。
一方、白色申告には青色申告特別控除がないため、経費を除いた1年間の所得すべてが課税所得となります。
10万円・55万円・65万円の青色申告特別控除を受けるための要件は以下の通りです。
10万円 | 55万円 | 65万円 | |
---|---|---|---|
記帳方法 | 単式簿記(簡易簿記) | 複式簿記 | 複式簿記 |
損益計算書と賃借対照表の提出 | 損益計算書のみ | ◯ | ◯ |
期限内の申告 | – | ◯ | ◯ |
電子申告または電子帳簿保存法の要件を満たした電子帳簿保存 | – | – | ◯ |
他にも、所得の種類が山林所得のみの場合は控除額が55万円になるなど、さまざまな要件が定められています。要件を守れなかった場合は、青色申告特別控除を受けられません。
赤字繰り越しの有無
白色申告と青色申告では、赤字繰り越しの有無が異なります。白色申告では赤字繰り越しはできませんが、青色申告では最長3年間可能です。
例えば、事業開始1年目は50万円の赤字、2年目も50万円の赤字、3年目は100万円の黒字となった場合、2年間で発生した100万円の赤字を3年目の黒字から差し引くことができます。
一方、白色申告では年度ごとの申告となるため、所得から差し引けるのは赤字が発生した年のみです。
事業を行う際、思ったように利益が出ず赤字が発生するケースは少なくありません。そのため、長期的な事業を営む予定があれば、青色申告の赤字繰り越しが節税対策に効果的です。
記帳方法の違い
白色申告と青色申告では記帳方法が異なります。
白色申告の場合は単式簿記での帳簿付けが可能なため、簿記の専門知識がなくても比較的スムーズです。単式簿記は、単純に発生した取引を記帳するだけの形式となります。
日付 | 摘要 | 収入 | 支出 | 残高 |
---|---|---|---|---|
5月1日 | 売上 | 100,000 | 100,000 | |
5月2日 | 水道光熱費 | 10,000 | 90,000 |
単式簿記を使った場合、上記のようなお小遣い帳のイメージで記帳していきます。
一方、複式簿記は借方・貸方を用いながら2つ以上の勘定科目を使って記帳しなければいけません。上記同様の取引が発生した場合、複式簿記では以下のように記録します。
日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
5月1日 | 現金 | 100,000 | 売上 | 100,000 |
5月2日 | 水道光熱費 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
このように複式簿記では帳簿付けが複雑になってしまうため、専門的な知識が必要だったり、税理士への依頼が必要になるケースも少なくありません。
会計業務が苦手な方や売上の低い事業者は白色申告がおすすめ
白色申告には、以下のようなメリットとデメリットが挙げられます。
メリット | デメリット |
|
|
白色申告の主なメリットは、手続きや書類作成の手間の削減です。
一方で、青色申告控除の対象外となり、万が一赤字になってしまった場合でも翌年へ繰り越しできないことがデメリットとして挙げられるでしょう。
そのため、会計業務が苦手な方や売上の低い事業者は白色申告がおすすめです。
節税対策よりも会計業務にかかる手間を減らし、本業に費やす時間を増やしたほうが事業の発展につながります。
白色申告の必要書類
白色申告の確定申告には、さまざまな書類の用意が必要です。ここでは、白色申告で必要になる書類について解説します。
収支内訳書
収支内訳書は、1月1日から12月31日までの収入と支出をまとめた書類です。売上の金額、仕入れや交通費などの経費の内訳を記帳した帳簿に沿って記入していきます。
白色申告は単式簿記で帳簿を付けているため、基本的には収入と経費それぞれの合計額を記載するだけです。
また、確定申告時に帳簿提出の必要はありませんが、7年間の保存義務があるため大切に保管しておきましょう。
そのほか、収支内訳書は一般用・不動産所得用・農業所得用に分かれているため、自らが営む事業に合わせた用紙を使用してください。
確定申告書
確定申告書は1年間で発生した所得から経費や控除額を差し引き、必要な納税額を算出するための書類です。
確定申告書は第一表と第二表に分かれており、それぞれ記入する項目が以下のように異なります。
第一表 | 第二表 |
---|---|
|
|
第一表には所得額や控除額、計算した納税額を記入し、第二表には第一表に記載した金額の内訳を記入します。
また、第二表の項目に記載された数字は第一表の該当箇所と連動しており、相違があった場合はどちらかの記入ミスとなるため、帳簿と見比べて確認しておきましょう。
各種控除の証明書
確定申告の際には、社会保険や小規模企業共済などの支出を所得から控除が可能です。実際に控除を受けるためには、各種控除の証明書を添付して提出しなければいけません。
書類添付が必要になる主な控除は以下の通りです。
控除の種類 | 必要な添付書類 |
---|---|
社会保険料控除 | 控除証明書等 |
小規模企業共済等掛金控除 | 支払った掛金額の証明書 |
生命保険料控除 | 支払額などの証明書 |
地震保険料控除 | 支払額などの証明書 |
医療費控除 | 医療費控除の明細書や医療費通知、各種証明書 |
寄付金控除 | 寄付先からの受領証や証明証 |
出典:国税庁(〔令和4年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き〕申告書に添付・提示する書類)
各種控除を受ける場合は、確定申告時に証明書を添付して提出してください。なお、社会保険料控除に該当する国民健康保険料は、控除証明書の提出は必要ありません。
本人確認書類
白色申告の確定申告時には、マイナンバーカードの提示またはコピーの添付が必要です。
ただし、マイナンバーカードをお持ちでない方は、個人番号の分かる通知カードや住民票とともに以下のような本人確認書類の提示が必要です。
- 運転免許証
- 健康保険証
- パスポート
- 在留カード
- 身体障害者手帳
なお、本人確認書類をコピーする場合や確定申告書を郵送する場合は、書類とともに添付してください。
年間の所得金額が分かる書類
白色申告の確定申告時には、年間の所得金額が分かる書類が必要です。
事業所得であれば収支内訳書を作成しますが、給与所得がある方は源泉徴収票などを用意してください。
源泉徴収票に記載された内容をもとに確定申告書を作成するため、正確な金額を知るために必要になります。
なお、給与所得や退職所得および公的年金等の源泉徴収は添付不要です。
銀行口座が分かるもの
確定申告書の作成にともない、払いすぎた税金がある場合は還付金を受け取れます。
還付金の受け取りには、確定申告書へ銀行口座情報を記載するため、銀行口座番号の分かる通帳などを用意しておきましょう。
なお、還付金の還付は1ヶ月から1ヶ月半ほどかかります。
白色申告で必要になる書類の作成方法
白色申告で必要になる書類の作成方法は、主に以下の3つです。
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用
- 確定申告ソフトの利用
- 手書きでの作成
ここでは、作成方法ごとのメリット・デメリットについて解説します。
国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用する
国税庁の確定申告等作成コーナーの利用で、白色申告に必要な書類を作成可能です。
表示される画面の案内に従って収入や経費、控除額などの必要項目を入力するだけで確定申告書や収支内訳書が完成します。
指示に従えば簡単に作成できるだけでなく、ソフト購入費用などを抑えられるメリットがあります。
ただし、利用方法が分かりにくいデメリットもあるため、売上や経費などの動きが少ない方におすすめの方法です。
確定申告ソフトで作成する
確定申告ソフトの利用でも白色申告に必要な書類の作成が可能です。
確定申告ソフトの多くは、ユーザビリティに優れた作りとなっており、初めて確定申告をする方でもスムーズに必要書類を作成できます。
また、銀行口座やクレジットカードとの連携が可能なソフトもあり、入力ミスの発生を防げるメリットもあります。
ただし、なかには有料のソフトもあるため、コスト面がデメリットとして挙げられます。
手書きで作成する
確定申告に必要な書類を紙で用意すれば、手書きでも作成可能です。
税務署に確定申告書を取りに行く、もしくは国税庁のホームページから印刷して必要書類を用意します。
手書きで作成する場合は、電卓を用いて計算する必要があるため、計算ミスや記入ミスが懸念されるでしょう。
ただし、紙ベースの確定申告書であれば、作成に関する不明点を税務署で直接相談可能です。
そのため、パソコンを使って作成するのが難しい方や、相談しながら作成したい方におすすめの方法です。
白色申告の提出方法
白色申告による確定申告の提出方法は、以下の3つです。
- 所轄税務署へ直接提出する
- 所轄税務署へ郵送で提出する
- e-Taxで申告する
ここでは、提出方法ごとの注意点を解説します。
所轄税務署へ直接提出する
白色申告に必要な書類は、所轄税務署へ提出可能です。
確定申告書等作成コーナーや確定申告ソフトを使って作成した書類を印刷して、直接提出します。
提出時に控えを一緒に提出すると、収受印を押してもらえます。収受印が押された控えは、さまざまなシーンで利用する場合があるため、大切に保管しておきましょう。
ただし、2025年1月以降の確定申告からDX化の一環として、収受印が廃止されます。
また、確定申告期間中の税務署は混雑が予想されます。税務署によっては入場整理券が配布され、手続きに時間がかかる場合があるため、注意しておきましょう。
所轄税務署へ郵送で提出する
作成した書類は、所轄税務署へ郵送で提出可能です。混雑する税務署へ足を運ぶ必要がないため、時間を無駄にすることなく提出できるでしょう。
ただし、確定申告書は信書に該当するため、宅配便ではなく郵便物や信書便物として送ってください。
また、控えが必要な場合は返信先を記入した返信用封筒と控えを同封する必要があります。
e-Taxで申告する
e-Taxを利用すれば、自宅からインターネット経由で必要書類の提出が可能です。
ただし、マイナンバー方式でe-Taxを利用するには、マイナンバーカードとともにICカードリーダライターや読み取りに対応したスマートフォンが必要です。
また、ID・パスワード方式で提出する場合は事前に発行しておく手間がかかります。
青色申告であれば、65万円の青色申告特別控除を受けるための要件となりますが、白色申告の場合は税務上のメリットがないため、必要な機器がある場合のみおすすめの方法です。
白色申告の注意点
ここでは、白色申告の際に気をつけておくべき注意点を解説します。
原則毎年3月15日までに確定申告が必要
確定申告の提出期限は原則毎年3月15日までです。しかし、提出方法によって期限が以下のように異なります。
提出方法 | 提出期限 |
---|---|
所轄税務署へ直接提出 | 3月15日 |
所轄税務署へ郵送で提出 | 3月15日消印 |
e-Taxで申告 | 3月15日24:00まで |
申告期間を過ぎた場合でも提出は可能ですが、期間後申告となり無申告加算税や重加算税が発生する場合があります。
確定申告を忘れると延滞税や無申告加算税などのペナルティがある
確定申告を忘れてしまった場合、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課せられます。
本来、確定申告によって計算される所得税は原則毎年3月15日までが納税期限となるため、日数の経過に応じて延滞税がかかります。
延滞税の税率は遅れた期間によって異なりますが、最大14.6%です。
また、無申告加算税は確定申告を忘れてしまった場合に課せられます。本来納付すべき税金の50万円までは15%、50万円以上は20%が税率です。
帳簿は7年間の保存義務がある
白色申告は必要書類の提出が完了すれば終わりではありません。帳簿には7年間の保存義務があるため、提出後は大切に保管しておく必要があります。
また、領収書などに関しては5年の保存義務が設けられていますが、帳簿と同様に7年間保管しておくと、何かトラブルがあった際に便利です。
まとめ
白色申告は確定申告における申告方法の一つで、青色申告承認申請書を提出していない場合は白色申告となります。
白色申告は事前申請の必要がなく、単式簿記によって帳簿付けが簡単なメリットがある一方で、青色申告のように最大65万円の青色特別申告控除を受けられなかったり、赤字繰り越しができなかったりと税務上のメリットがありません。
あくまで手続きや書類作成の手間を削減できる申告方法となります。そのため、初めて確定申告を行う方や売上の低い事業者に白色申告はおすすめです。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修のもとに制作したものです。
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