個人事業主は家族への給与を経費にできる!節税効果・青色事業専従者給与も解説
家族を従業員として雇い給与を支払う場合は、経費として計上可能ですが、青色申告と白色申告では経費にできる上限が異なります。また、青色申告者の場合、従業員とした家族への給与が経費にできるだけなく、最大65万円青色申告特別控除が受けられたり、税金面で大きなメリットがあります。
この記事では、個人事業主が家族への給与を経費にする方法や家族を雇う際に必要な手続き、節税効果、青色申告がおすすめである理由について詳しく解説します。
- 【この記事のまとめ】
- 青色申告であれば家族への給与を全額経費として計上可能です。
- 白色申告は家族への給与を最大86万円まで控除可能です。
- 青色申告は控除や赤字繰越などさまざまな方法で節税が可能です。
- 所得税とは?基本の考え方
- 専従者と専従者給与
- 要件を満たせば家族への給与を経費にできる
- 個人事業主が家族へ支払う給与を経費にする方法
- 白色申告者の場合:事業専従者控除
- 青色申告者の場合:青色事業専従者給与
- 事業専従者控除と青色事業専従者給与の違い
- 個人事業主が家族を雇う際に必要な手続き
- 白色申告者:手続き不要
- 青色申告者:青色事業専従者給与に関する届出書を提出
- 個人事業主の家族への給与額はいくらまで?決め方は?
- 求人サイト・求人情報誌などを参考にする
- 源泉徴収税(所得税)のない範囲に留める
- 個人事業主が家族への給与を経費にする節税効果は?
- 青色事業専従者給与と配偶者控除、どっちが得?
- 節税対策なら青色申告がおすすめ!5つのメリット
- 青色申告なら専従者給与を全額経費にできる
- 貸倒引当金を経費にできる
- 最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
- 赤字を繰り越せる
- 少額減価償却資産の特例が受けられる
- まとめ
「確定申告」の期間は毎年2月16日から3月15日です。
「起業の窓口」では、確定申告の方法、青色申告や白色申告の基礎知識、手続きの流れ、節税のコツなどを詳しく解説しています。
ぜひ、「確定申告」に関する他の記事もご覧ください。
2024年11月1日より、フリーランス保護法が施行されます。
組織に所属せずに働くフリーランスが安心して働ける環境を整備するために、フリーランスと企業などとの発注事業者間の取引の適正化(契約書等により取引条件を明示する)が主な目的です。
詳しくは次の記事をご覧ください。フリーランス保護法の概要、制定された背景や具体的な内容などを解説しています。
所得税とは?基本の考え方
所得税とは、毎年1月1日から12月31日の1年間に個人で稼いだ所得に対して課税される税金です。会社員として給料をもらっている人、個人事業主として売上がある人、不動産による所得がある人、1年を通して何らかの所得があれば課税対象になります。
例えば、個人事業主の所得税は、売上から必要経費や控除額を差し引き、残った金額が課税所得となり、1年間の所得が高いほど、納税する所得税額が高くなります。
また、所得税を支払うのは、原則所得があった年の翌年です。個人事業主としてのビジネスが軌道に乗り、所得が高くなる場合は、翌年に支払う所得税分を確保しておく必要があります。
その他、高額な所得を稼いだ場合は前払い制度を利用することも可能です。スポーツ選手や芸能人などの高額年俸を稼ぐ人は、翌年の所得税が高額になるため、予定納税という前払い制度を利用します。これは、確定申告時に一括で払う負担を軽減させるのが目的です。
また、個人事業主が従業員を雇い、給与から源泉徴収を天引きするのも所得税の納付方法の一つです。
専従者と専従者給与
個人事業主が雇用する家族従業員を専従者、専従者への給与を専従者給与といいます。専従者になるためには、個人事業主などの納税者と生計を一にする配偶者もしくは、その他の親族というのが条件です。
例えば、夫婦でインターネットショップを開業し、夫が個人事業主で妻を従業員にした場合、税法上では妻が専従者となります。
要件を満たせば家族への給与を経費にできる
事業者が雇う専従者の給与は、一定の条件を満たせば経費計上が可能です。ただし、青色申告事業者と白色申告事業者では経費計上できる金額が以下のように異なります。
申告状況 | 経費に算入可能な範囲 |
---|---|
青色事業専従者給与(青色申告) | 支払った金額の全額 |
事業専従者控除(白色申告) | 配偶者86万円まで、配偶者でなければ専従者一人につき50万円 |
経費に算入可能な金額に大きな差があるため、専従者への給与が高い場合は、青色事業専従者給与の方が節税効果を期待できます。
個人事業主が家族へ支払う給与を経費にする方法
専従者となる家族へ支払う給与を経費にする方法や要件は、白色申告と青色申告で異なります。
ここでは、家族へ支払う給与を経費にする方法や条件を解説します。
白色申告者の場合:事業専従者控除
白色申告事業者が家族従業員への給与を経費にする際は、以下の条件を満たして家族を専従者にする必要があります。
- 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族である。
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
- その年を通じて6か月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事している。
白色申告の場合は、専従者への給与は事業専従者控除となり、配偶者86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円まで経費計上が可能です。
例えば、妻と子どもを専従者にした場合、86万円+50万円=136万円が経費に計上可能です。
青色申告者の場合:青色事業専従者給与
青色申告事業者が家族従業員への給与を経費にする際は、以下の条件を満たして家族を専従者にする必要があります。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族である。
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
- その年を通じて6か月を超える期間(年の中途での開業など、一定の場合には事業に従事することができる期間の1/2を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事している
青色申告の場合は、専従者への給与が事業専従者給与となり、支払った給与額の全額が経費に計上可能です。
例えば、配偶者の給与が年間110万円、親族への給与が年間50万円だった場合でも、全額の160万円が経費計上できます。
事業専従者控除と青色事業専従者給与の違い
事業専従者控除と青色事業専従者給与の違いは経費計上できる金額だけではありません。
青色申告事業者で家族を従業員(青色事業専従者)にする場合は、管轄税務署へ事前の届け出が必要です。届出書を提出する期限も青色事業専従者給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日までと定められています。
もし、1月16日以後に開業した場合や新たに専従者を追加した場合は、青色申告事業者として開業した日や家族を専従者にした日から、2ヶ月以内の提出が義務付けられています。
個人事業主が家族を雇う際に必要な手続き
ここでは、家族を専従者として雇う際に必要な手続きを解説します。
白色申告者:手続き不要
白色申告の場合は、事前の手続きは不要です。
ただし、確定申告時に以下の項目の記入が必要になります。
- 確定申告書第二表の事業専従者に関する事項(55)
- 確定申告書第一表その他欄の専従者給与(控除)額の合計額(55)
- 収支内訳書の専従者控除(20)と事業専従者の氏名等
これらの項目を記入して、確定申告と収支内訳書を確定申告時に提出してください。
青色申告者:青色事業専従者給与に関する届出書を提出
青色申告事業者の場合、青色事業専従者給与に関する届出書の提出が必要です。
以下の項目を記入して管轄の税務署へ家族を専従者にした日から、2ヶ月以内に提出してください。
- 専従者の氏名
- 続柄
- 仕事内容・従事の程度
- 資格等
- 給与額
- 支給日
- 賞与額
- 昇給の基準
なお、雇用した日から2か月以内と記載がありますが、家族への給与の必要経費算入を開始する日という認識で問題ありません。
個人事業主の家族への給与額はいくらまで?決め方は?
ここでは、個人事業主の家族への給与額の決め方について解説します。
求人サイト・求人情報誌などを参考にする
求人サイトや求人情報誌を参考に、専従者である家族が、実際に行う業務内容で決めるのも一つの方法です。
例えば、妻に経理業務と備品の管理を行う総務業務をしてもらう場合には、求人雑誌で同じ職種を探し、平均相場を参考に決めるのがよいでしょう。
職種ごとの平均相場から給与額を決めるため、極端に給与が高くなったり、少なくなったりすることを防げます。
源泉徴収税(所得税)のない範囲に留める
源泉徴収税(所得税)のない範囲内に留めるのも、効率的な給与額の決め方です。
専従者である家族への給与だとしても、給与を受け取る家族は給与額に応じて所得税や住民税が課せられます。例えば、年間の給与が100万円超で住民税の対象となり、103万円超で所得税が発生します。
この範囲内に家族への給与額を抑えれば、家族に所得税がかかりません。
また、青色事業専従者給与の場合、経費にできる金額に上限がないため、給与を高額にすることも可能ですが、世帯全体でかかる所得税や保険料を考慮しながら決めるのがよいでしょう。
個人事業主が家族への給与を経費にする節税効果は?
家族への給与を経費にすることによって、雇用主である個人事業主の課税所得が下がり、所得税や住民税の節税が可能です。
給与額を上げるほど雇用主の税負担は軽減されますが、給与額によっては専従者である家族へ税金が課せられます。専従者の条件にもあるように、専従者は生計を一緒にしている家族です。家族の税負担が増えすぎた場合、世帯で支払う金額が上がってしまうケースがあります。
事業規模だけでなく、課せられる税額などを考慮して給与額を決めていくのが、最も高い節税効果を期待できるでしょう。
青色事業専従者給与と配偶者控除、どっちが得?
配偶者を専従者として雇用した場合、青色事業専従者給与と配偶者控除を併用できません。
そもそも、青色事業専従者給与と配偶者控除では、節税に対する考え方が異なります。青色事業専従者給与は、事業主の経費を増やすために効果的な節税方法に対して、配偶者控除は所得控除を増やすために効果的な節税方法です。
青色申告の場合、結果的にどちらを利用しても節税に繋がりますが、事業の損益状況や家庭方針によって選択は難しくなります。
一方、白色申告を行っている場合は、支払う給与額によって節税効果が異なります。
配偶者控除の上限は38万円、事業専従者控除の上限は86万円です。つまり、配偶者控除の上限38万円以下の給与額に設定してしまうと損になってしまいます。
38万円以下であれば配偶者控除、それ以上であれば事業専従者控除の利用がお得です。
節税対策なら青色申告がおすすめ!5つのメリット
ここでは、青色申告のおすすめの理由を5つ解説します。
青色申告なら専従者給与を全額経費にできる
青色申告であれば、青色事業専従者給与は1年間で支払った給与をすべて経費として計上できるため、節税対策としては効果的です。
白色申告者の家族従業員への給与も経費計上は可能ですが、配偶者は86万円、その他の親族は50万円と経費計上できる金額に制限があります。
貸倒引当金を経費にできる
青色申告では、貸倒引当金を経費として計上できます。貸倒引当金とは、取引先やクライアントが万が一倒産してしまった場合に受ける損害を充当させることができる勘定科目です。
倒産などは予期できないため、毎月の仕訳で貸倒引当金を使って経費計上することで収入額を下げられます。
しかし、高額な貸倒引当金を計上すると、利益を誤魔化している可能性を税務署に疑われるため注意してください。
最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
青色申告の最大の魅力は、確定申告時に最大65万円の青色申告特別控除が受けられることです。
事業所得から最大65万円の青色申告特別控除を控除できるため、課税所得を大幅に下げることが可能です。課税所得が下がった結果、所得税や住民税の金額も下がり、大きな節税効果が見込めます。
なお、最大65万円の控除を受けるためには、e-Taxによる申告または、優良な電子帳簿の保存要件を満たしている場合に限ります。
管轄の税務署へ確定申告書類を直接提出した場合は、控除額が55万円になるため、注意してください。
赤字を繰り越せる
青色申告では赤字になった場合でも、翌年以降の最長3年間は繰り越せます。
赤字繰越があり、翌年以降に黒字になった場合、黒字部分を前年の赤字で相殺して課税所得を下げることができるため、効果的な節税対策です。
少額減価償却資産の特例が受けられる
青色申告の場合、少額「減価償却」資産の特例を受けられます。
少額減価償却資産の特例とは、30万円未満で購入した備品などの減価償却資産を、費用として一括で経費計上できる制度です。一定の条件を満たせば、青色申告者のみ少額減価償却資産の特例を利用することができます。
少額減価償却資産の特例を受ければ、高額な備品でもその年に経費として処理できるため、高い節税効果が見込めます。
青色申告について、さらに知りたい方は次の記事をご覧ください。
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まとめ
個人事業主は、家族従業員である専従者への給与を経費として計上可能です。
ただし、経費計上可能な金額は、青色申告の場合は全額、白色申告の場合は最大86万円に設定されています。専従者への給与額が86万円を超える場合は、青色申告の選択がおすすめです。
また、青色申告には専従者の給与を全額経費計上できるだけではなく、貸倒引当金の計上、青色申告特別控除、赤字の繰り越し、少額減価償却資産の特例など、さまざまなメリットがあります。
個人事業主として事業を長期的に継続する場合、青色申告のほうが高い節税効果を期待できるでしょう。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
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