個人事業主がアルバイト先で源泉徴収なしの場合は確定申告が必要?手順や必要性を紹介
しかし、アルバイトで源泉徴収が引かれるほど収入がなかった場合、確定申告は必要なのか、疑問を感じる人もいるでしょう。
この記事では、個人事業主がアルバイト先で源泉徴収がない場合の対応や重要性、確定申告の手順を解説します。
- 【この記事のまとめ】
- アルバイトの源泉徴収とは給料から天引きされる「所得税」のことです。
- 個人事業主とアルバイトを併用した場合でも確定申告が必要です。
- 確定申告によって個人事業主のマイナス分を相殺できる場合があります。
「確定申告」の期間は毎年2月16日から3月15日です。
「起業の窓口」では、青色申告や白色申告の基礎知識、手続きの流れ、節税のコツなどを詳しく解説しています。
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個人事業主がアルバイトをしたときの源泉徴収について
ここでは、個人事業主がアルバイトをしたときの源泉徴収について「個人事業主(事業所得)」と「アルバイト(給与所得)」をふまえて詳しく解説します。
なお、2023年9月の法律を基準に作成しております。制度や必要書類の提出に関しては変更となる場合があるため、最新の情報は国税庁のホームページをご確認ください。
源泉徴収とは
源泉徴収とは、アルバイト(従業員)の給料から所得税分を事業主が差し引く制度です。事業主は源泉徴収を毎月行うことで、従業員は自ら税金(所得税)を収める必要がなくなります。
アルバイト従業員の場合、1年間(1/1〜12/31)の総収入額を正確に予測できないため、毎月の収入に対して天引きを行い、事業主が原則として翌月の10日までに支払っています。
多少の誤差が発生してしまうため、事業主は年末に「年末調整」を行うことで正確な金額を算出します。年末調整によって正確な金額が計算され、税金を支払いすぎていた場合に返金されるのが還付金です。
ただし、個人事業主とアルバイトを併用してる方は、個人事業主の「事業所得」とアルバイトの「給与所得」の両方を確定申告時に申告する必要があります。青色申告や白色申告では個人事業主で得た収入(事業所得)を記入するとともに、同じ確定申告書内にある給与所得の項目にアルバイトで得た金額を記入してください。
なお、源泉徴収票の提出については、2019年4月1日以後から源泉徴収票の添付が不要になりました。また保存義務も不要です。
アルバイトで源泉徴収がない場合とは
ただし、アルバイトの場合でも扶養家族がいない方は、月収がおよそ88,000円を超えてしまうと、源泉徴収の対象となるため注意が必要です。
個人事業主で事業所得がある人は、アルバイトの収入を月収88,000円以下に抑えることで源泉徴収されません。
そのため、個人事業主が本業なのか、アルバイトが本業なのかを明確にして働き方を考えましょう。
源泉徴収がなくても源泉徴収票は発行される
源泉徴収票は源泉徴収される金額が0円(103万円以下の所得)でも発行されます。
事業主によって多少の誤差はありますが、年末調整後の12月から1月中に発行されることがほとんどです。
源泉徴収額が0円だった場合でも、勤務先から源泉徴収票を受け取り、確定申告の時期まで保管しておきましょう。
確定申告書には、受け取った源泉徴収票に記載されている源泉徴収額や所得金額の記入が必要です。源泉徴収票は確定申告時に提出不要ですが、正確な金額の記入のためにも必ず用意しておきましょう。
源泉徴収票がない場合はどうする?
ここでは、源泉徴収票を紛失、または受け取っていない等の理由で、手元にない場合の対処法について詳しく解説します。
源泉徴収票を紛失した場合
源泉徴収票を紛失してしまった場合、雇用主に再発行を依頼してください。
源泉徴収票は事業主が雇用者から再発行の要望があった場合、再発行することが義務付けられています。事業主が拒否をすれば所得税法違反に問われる可能性があるため、紛失した場合でも再発行してもらえます。
また、アルバイト先が倒産してしまった場合でも、破産管財人(弁護士)に連絡をすれば再発行が可能です。なお、破産管財人の連絡先が不明の場合は、税務署で理由を説明のうえ「源泉徴収票の不交付の届出書」を提出すれば確定申告時に対応してもらえます。
アルバイトで得た1年間の総収入額が記載された源泉徴収票は、確定申告時にも必要になるため、大切に保管しましょう。
アルバイト先から源泉徴収票をもらえなかった場合
アルバイト先から源泉徴収票をもらえなかった場合は、アルバイト先へ連絡して発行を依頼してください。
源泉徴収票は、原則として翌年の1月末までには発行されます。もし、その時期にアルバイトをしていなかった場合は、アルバイト先へ連絡して郵送などで源泉徴収票を送ってもらうようにしましょう。
また、アルバイトを辞める予定の場合は退職日に「退職手続きが完了したら源泉徴収票を自宅へ送付してください」と会社側に伝えるとスムーズです。
確定申告前に所得の種類と計算方法を把握
所得には、事業所得・給与所得・不動産所得などがあり、所得の種類ごとに決まったルールによって課せられる税額が決まります。
ここでは、所得の種類と計算方法を詳しく説明します。
事業所得
個人事業主として事業で得た所得は、すべて「事業所得」として分類されます。事業で得た収入の勘定科目を「売上」として計上し、仕入れ・通信費・運送費・家賃・水道光熱費・ガソリン代などの業務上でかかった費用を「経費」として計上します。
以下の計算式を用いて、1年間の所得を計算します。
- 売上-経費-青色申告特別控除額=事業所得
給与所得
一方、アルバイトで得たお給料を「給与所得」に分類します。給与所得は事業主に雇用されるサラリーマンやアルバイトが給料としてもらっている収入となり、個人事業主の売上で発生した収入とは別です。
給与所得は、確定申告時に「事業所得」とは別の項目「給与所得」に記入します。記入する金額は源泉徴収票に記載されている「支払金額」と「源泉徴収額」です。
現在は源泉徴収票の提出は不要になっていますが、総所得の金額に対して翌年の住民税や保険料が変わるため、正確な金額を入力しましょう。
不動産所得
不動産所得とは、土地や建物の貸付、地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付けなどで得た所得を指します。自分が所有している住宅を貸したり、駐車場を貸し出して得た所得です。
これらの方法で得た不動産所得には所得税がかかるため、確定申告が必要になります。
ただし、年間で不動産所得が20万円以下の場合は、確定申告が不要です。また、不動産所得が赤字の場合は確定申告によって総所得額を抑えることができます。
住宅の賃料・土地代・賃貸物件の更新料・敷金などが収入、固定資産税・損害保険料・「減価償却」費・修繕費などが経費となり、以下の計算式を用いて不動産所得金額を算出可能です。
- 不動産で得た収入-必要経費=不動産所得
例えば、個人事業主でもありマンションのオーナーでもあるが、同時にアルバイトを行う人は確定申告時に、事業所得・給与所得・不動産所得の3つの所得を申告しなくてはいけません。
アルバイトをする個人事業主の確定申告手順
ここでは、アルバイトをする個人事業主が確定申告をする手順を詳しく解説します。
アルバイト先から源泉徴収票をもらう
まず、アルバイト先から源泉徴収票をもらいます。
確定申告時には、アルバイトで得た所得金額が正確に分かる源泉徴収票が必要です。受け取った源泉徴収票に、支払金額と源泉徴収金額が記載されていることを確認しましょう。
確定申告書の記入
受け取った源泉徴収票をもとに確定申告書の記入を行います。確定申告書には、個人事業主として得た事業所得と、アルバイトで得た給与所得の両方の金額を入力してください。
確定申告書は手書きで作成することも可能ですが、確定申告書を作成するソフトや、国税庁のサイトにある確定申告書作成コーナーを利用することで、簡単に作成でき、作成時間の短縮が可能です。
源泉徴収額の記入
源泉徴収が引かれている場合は、確定申告書第二表「源泉徴収税額」の項目に、源泉徴収票に記載された源泉徴収税額を入力してください。
源泉徴収票を確認して、源泉徴収額を正確に記入しましょう。
確定申告書の提出・税金の納付
確定申告書作成後は、毎年2月16日から3月15日までに管轄税務署に提出します。税務署の窓口で直接提出もできますが、郵送やe-Taxによって提出すると便利です。
また、確定申告によって確定した所得税も毎年3月15日までに、以下の方法で納付してください。
- 指定された金融機関の預貯金口座からの振替納税
- e-Taxによる電子納税
- クレジットカードによる納付
- QRコード※によるコンビニエンスストアで納付
- 金融機関または税務署の窓口での現金納付
- スマホアプリ納付(2022年12月より)
アルバイトをする個人事業主の確定申告はなぜ必要か
個人事業主でもアルバイトでも収入がある以上、確定申告は義務です。
ここでは、アルバイトをする個人事業主が確定申告をする必要性を詳しく解説します。
アルバイト先で払いすぎた税金の還付がある
アルバイト先で払いすぎていた税金の還付を受けるためにも、確定申告は必要です。
アルバイトの場合でも扶養家族がいない方は月収がおよそ88,000円を超えると、源泉徴収として給料から天引きされるようになります。事業主は天引きした金額を年末調整によって正確な金額を算出しますが、個人事業主としての事業所得がある場合は、自分で確定申告書を作成して、正確な税金を計算しなければいけません。
所得税を多く支払っている場合は、還付されます。
本業のマイナスを相殺できる
個人事業主として働きながらアルバイトをしている場合、確定申告によって本業である個人事業主の赤字分を相殺することができます。
例えば、事業の売上が20万円以下の状態でアルバイト先が年末調整をしていれば、確定申告の義務はありません。
しかし、本業にマイナスがある場合、確定申告によって事業所得の赤字分を給与所得から差し引いて所得税の計算が可能です。その分、総所得を減らせるため、払いすぎた所得税が還付される可能性があります。
ただし、赤字を繰り返して申告をすることは事業所得の定義である「継続的に利益を得ること」から外れるため、雑所得(雑損失)への振替を税務署から指摘される可能性があります。
まとめ
個人事業主として年間売上が20万円を超え、あわせてアルバイトをした場合、源泉徴収額がなかったとしても確定申告時には1年間の給与所得額を申告する必要があります。
個人事業主としての事業所得とアルバイトの給与所得の両方から、住民税や保険料が計算されます。源泉徴収額がなかったとしても、収入を申告しない場合は脱税を疑われるケースがあるため、毎年2月16日から3月15日までに管轄税務署でしっかり申告を行いましょう。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。