個人事業主は固定資産税を経費にできる?家事按分や特例を解説
個人事業主は固定資産税を経費計上できますが、すべてを経費にはできません。固定資産税は、事業用とプライベート用の使用割合をもとに、事業用で使っている部分のみを経費にできます。
本記事では、固定資産税の特徴や仕訳方法、経費にできる税金などについて解説します。個人事業主の方で固定資産税の仕訳方法やそれ以外で経費にできるものがわからない場合は、本記事を参考にしてください。
- 【この記事のまとめ】
- 固定資産税は、土地や建物に課される税金で、個人事業主が使用するパソコンなども対象となる場合があります。土地・建物は固定資産税、機器類は償却資産税として扱われます。
- 自宅をオフィスとして使用する場合、個人事業主は固定資産税を業務用部分に限り経費として計上できます。床面積や業務時間に基づいて合理的に按分することが重要です。
- 固定資産税には、耐震改修や新築住宅、省エネ改修などに対する減税特例措置があり、条件を満たすと税額が減額されます。各措置の申請期限を守り、適用条件を確認しましょう。
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固定資産税とは?
固定資産税は、土地や建物に対して課される税金です。
家やマンション、店の建物、土地を所有している人は固定資産税を支払う必要があります。
土地や建物だけではなく、10万円以上の価値があるパソコンといった機器も固定資産として認識されます。ただし、取得価格が20万円未満で3年以内に一括で「減価償却」したものは対象外です。
土地や建物とパソコンといった機器は、税金の扱いが異なり、土地や家の税金は固定資産税、ほかの機器の税金は「償却資産税」と呼びます。
参考:総務省「固定資産税」
個人事業主は固定資産税を経費にできる!
個人事業主が自宅を事務所やオフィスとして使用している場合、固定資産税を経費に計上できます。
しかし、事業所やオフィスの家賃の全額は経費にできません。自宅内の業務用スペースとプライベートスペースの割合に基づき、事業部分のみを経費として認めることを家事按分といいます。
按分の計算方法には、床面積の使用割合や、自宅での業務時間・日数に基づくものがあり、いずれの場合も、合理的な基準で計算することが求められます。
個人事業主の固定資産税の仕訳方法!
個人事業主の固定資産税の仕訳方法は、以下の2つです。
- 固定資産税を納めた日に経費計上する
- 固定資産税の金額が確定した日に経費計上する
固定資産税は国税や地方税などの税金に該当するため、「租税公課」という勘定科目で経費として計上します。
どちらの方法を選んでも問題ないので、自分が作業しやすい方を選んでください。
固定資産税を納めた日に経費計上する
固定資産税を実際に支払った日に経費計上する方法は、賦課決定日にはお金を支払っていないため仕訳を行いません。
たとえば固定資産税が20万円の場合、賦課決定日には経理をせず、年4回に分けて税金を支払った日に毎回経費処理を行います。
通常、税額が確定した日に経理処理をするのが一般的ですが、この方法では毎回記録することが必要なため忘れないようにしましょう。
固定資産税の金額が確定した日に経費計上する
固定資産税は、毎年1月1日に持っている固定資産に基づき課される税金です。
税額が確定したとき、つまり市区町村からの納税通知書が届いた日に経費として計上します。
たとえば、固定資産税が20万円で、年4回に分けて納める場合、各回5万円ずつ支払います。しかし、税額確定の日に20万円すべてを経費として計上するので、未払いの分は「未払金」として記録されることは留意しておきましょう。
固定資産税を減税できる特例措置
固定資産税には、減税できる特例措置があり、それぞれ申請条件があります。
本章では、固定資産税を減税できる特例措置を5つ紹介します。
あとから自分が条件に当てはまっていても、減税措置を利用できないため、事前に確認しておきましょう。
耐震改修に対する措置
耐震改修に対する措置は、家の耐震性を向上させ、良質な家を次世代に引き継ぐための支援策です。
措置を利用して耐震工事を行うと、翌年度分の固定資産税が2分の1に減額されます。
措置の主な適用条件は以下のとおりです。
- 1982年(昭和57年)1月1日以前から所在する家屋であること
- 現行の耐震基準に適合する耐震改修であること
- 耐震改修工事費が、50万円(税込)を超えていること
- 店舗等併用家屋の場合、床面積の2分の1以上が居住用であること
- 改修工事を2026年(令和8年)3月31日までに行っていること
耐震工事を検討していて条件を満たしている場合は申請してみましょう。
新築住宅にかかる税額の措置
新築住宅の減税措置は、家を建てる人の初期費用を減らし、質のよい住宅を増やすための支援策です。居住水準を向上させ、良質な住宅を形成することを目的とした減税措置になります。
減税措置を活用することで、新築の家の固定資産税が一戸建ては3年、マンションは5年間、2分の1に減額されます。
申請できる適用期間は2026(令和8)年3月31日までとなっているので、適用期間中に新築住居を購入する予定の方は制度を利用しましょう。
長期優良住宅化リフォームに関する措置
長期優良住宅化リフォームの特例措置は、耐震や省エネの工事とあわせて住宅の耐久性を上げる工事を行い、長期優良住宅として認められた場合に適用される支援策です。
条件を満たすと、翌年度の固定資産税から3分の2が減額されます。
長期優良住宅化リフォームに関する措置の主な適用条件は以下のとおりです。
- リフォーム後の床面積が50㎡以上280㎡以下
- 店舗等併用住宅の場合は床面積の1/2以上が居住用
- 補助金額等を除いた工事費用が50万円を超える一定の耐震改良工事、または工事費用が60万円を超える一定の省エネ改修工事の実施
- 2026年(令和8年)3月31日までに工事完了
上記の条件を満たす工事を行う方は、減税措置を活用して固定資産税を控除しましょう。
省エネ改修に関する特例措置
省エネ改修の特例措置は、家のエネルギー効率を向上させるための支援策です。エネルギー効率の高い、良質な家を次世代に継続して利用できるようにすることが目的になります。
省エネ改修が適用となる、主な工事は以下のとおりです。
- 窓の断熱改修工事(必須)
- 床・天井・壁等のの断熱工事
- 高効率空調機の設備設置工事
- 高効率給湯器の設備設置工事
- 太陽熱利用システムの設備設置工事
- 太陽光発電設備の設置工事
特例措置の適用条件は以下のとおりです。
- 省エネ改修後の断熱部位が、いずれも平成28年基準を新たに満たしていること
- 2014年(平成26年)4月1日以前から所在している家屋であること
- 賃貸住宅でない家屋であること
- 省エネ改修工事に要した費用から補助金等を差し引いた額が、60万円(税込)を超えていること
- 床面積が登記簿表示上で50㎡以上280㎡以下であること⑥店舗等併用家屋の場合は、床面積の2分の1以上が居住用であること
- 改修工事を2026年(令和8年)3月31日までに行っていること
- 改修工事が完了した日から3カ月以内に条例に基づき申告書を提出
措置を利用して省エネ工事を行うと、その後住み始めた年の所得税から一定の金額が控除されます。
バリアフリー改修に関する措置
バリアフリーの改修措置は、その後住み始めた年の所得税から一定減額される措置です。小さな子どもから高齢者まで幅広い世代が住みやすく、良質な家を増やすことを目的としています。
バリアフリー改修が適用となる、主な工事は以下のとおりです。
- 介助用の車いすで容易に移動するため、通路または出入口の幅を拡張
- 階段の匂配の緩和
- 浴室の床面積増加、浴槽をまたぎの高さの低いものに交換、固定式の移乗台の設置、身体の洗浄を容易にする水栓器具の設置または交換
- 便所の床面積増加、座便式の便器に取り替え、座便式の便器の座高を高くする
- 便所、浴室、その他の居室や玄関並びにこれらを結ぶ経路への手すりの取付け
- 便所、浴室、その他の居室や玄関並びにこれらを結ぶ経路の段差の解消
- 開戸を引戸や折戸に交換、開戸のドアノブをレバーハンドルに交換、戸の開閉を容易にする器具を設置
- 便所、浴室、その他の居室や玄関並びにこれらを結ぶ経路の床材料を滑りにくいものにする
また、特例措置の適用条件は以下のとおりです。
- 居住者がA~Cのいずれかに該当する(A:工事完了年の翌1月1日時点で65歳以上、B:要介護認定または要支援認定を受けている、C:障がいのある方
- 新築された日から10年以上を経過した家屋(賃貸を除く)
- バリアフリー改修後の床面積が50㎡以上280㎡以下
- 店舗等併用住宅の場合は床面積の1/2以上が居住用であること
- 補助金等を除いた対象工事の工事費用が50万円(税込)を超える
- 2026年(令和8年)3月31日までに工事完了
- 改修工事が完了した日から3ヶ月以内に条例に基づき申告書を提出する
ただしバリアフリー改修を行う住宅には、「65歳以上」「要介護または要支援の認定を受けている」などの条件に当てはまる人が居住していることが必須となります。
個人事業主が固定資産税以外で経費にできる5つの税金
本章では、個人事業主が固定資産税以外で経費にできる税金を5つ紹介します。
- 償却資産税
- 消費税
- 自動車税(軽自動車税)
- 個人事業税
- 不動産取得税
それぞれ詳しく見ていきましょう。
償却資産税
償却資産とは、事業に使用する資産のうち、一定期間以上使用するものを指します。たとえば建物や機械、家具などが該当し、取得した年から一定の年数にわたって経費として計上できます。
個人事業主の場合、償却資産を取得すると税法上定められた償却率に基づき、毎年一定の額を経費として計上可能です。たとえば10年で償却する機械を100万円で購入した場合、毎年10万円を償却費として経費計上できます。具体的な償却率や計上方法は、税法や資産の種類によって異なるので、専門家に聞くのがおすすめです。
なお経費計上は、所得税の計算時に利益を減少させる要因となり、税負担を軽減する効果があります。
消費税
消費税課税事業者は、仕入れ時に支払う消費税を経費として計上できますが、消費税を納めていない免税事業者は経費にできません。
消費税の経費計上の方法は、会計の取り扱い方によって変わります。
税込みで会計をする方法である税込処理方式を使っている場合、支払った消費税を経費に加えられます。
しかし、税を除いて会計をする方法の税抜処理方式を採用している場合、消費税は特定の勘定科目に記録され、普通の経費とは区別されるため注意が必要です。
参考:個人事業主の消費税|一般社団法人 全国青色申告会総連合
自動車税(軽自動車税)
自動車税は、自動車を所有している方に課税される道府県税です。個人事業主が業務用として自動車を使用している場合、自動車税(軽自動車税も含む)は経費として計上でき、自動車税は地方税であるため、毎年支払う必要があります。
自動車を事業用と私用の双方で利用している場合、全額を経費として計上できないため、事業用と私用の割合を明確にし、比率に応じて経費計上する必要があります。たとえば車の使用を事業用が70%、私用が30%とした場合、自動車税の70%を経費として計上可能です。
経費計上を行う際は、車の使用目的や使用率の根拠となる運転手帳やガソリンの領収書などの資料を保存しておくことが重要です。
個人事業税
個人事業税は、都道府県に支払う税金で、前年の収益に基づいて税金が計算されます。
特定の業種の個人事業主は、個人事業税を支払わなければなりませんが、年間の所得が290万円以下の場合は、税金は免除されます。
年間の所得に応じて個人事業税を支払い、その支払った金額を経営の経費として計上可能です。
利益計算時に経費を差し引くことが可能で、所得税の課税対象となる利益が減少し、節税効果が期待できます。
参考:個人事業税|東京都主税局
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物を新たに取得した際に都道府県に納める地方税です。
税金は取得した不動産の価値に基づき計算されるもので、個人事業主が事業用途で不動産を購入した場合に発生します。
経営においては、不動産取得税も「租税公課」という経費のカテゴリーに含まれるため、納税した不動産取得税は経費として計上可能です。
個人事業主が事業のために不動産を購入した際には、取得に伴い発生する不動産取得税を経費として計上でき、税務上のメリットを受けられます。
個人事業主が固定資産税以外で家事按分できる主な3つの経費
本章では、個人事業主が固定資産税以外で家事按分できる主な経費を3つ紹介します。
- 地代家賃
- 水道光熱費
- 通信費
個人事業主が税金を納める際には、家事按分する必要がある税金がいくつかあり、全額は経費計上できないため注意が必要です。
地代家賃
事業で使っている事業所やオフィスの家賃は地代家賃として計上でき、部屋全体のなかで仕事に使っている部分の面積の割合で計算します。
たとえば全体が50m²で家賃が12万円のマンションの場合、20m²をオフィスとして使っていると、該当部分は全体の40%(20m² ÷ 50m²)になります。
割合で家賃を計算すると、4万8,000円(12万円 × 0.4)が経費として計上可能です。
また、自分で家を所有している場合でも、同じように仕事のためのスペースの割合を考慮して、家の費用や税金、保険料などを経費にできます。
水道光熱費
水道光熱費の経費計上は、使用した時間や日数をもとに割り振りますが、具体的な数字を厳密に出すのが難しいため、適切な割合を使って計算します。
たとえば自宅でのオフィス作業が月に150時間だった場合、全体の時間(30日×24時間=720時間)のなかでの使用率は、150時間 ÷ 720時間 = 約20%です。
その月の水道光熱費が1万円の場合、1万円の20%、つまり2,000円を経費として計上できます。
通信費
通信費の経費計上は、使った時間や日数で割り振ります。そのため水道代と同様、具体的な数字を出すのは難しいので、適切な割合を考えて計算する必要があります。
たとえば週7日のうち4日間業務で使った場合、使用率は4日 ÷ 7日 = 約50%となり月の携帯料金が1万円で、業務での使用率が70%だったら、7,000円を経費として計上できます。
通信費の経費計上も、現実の使用状況を元に適切な割合で計算することが大切です。
個人事業主が経費にできないもの
税金以外にも、個人事業主自身の給料や福利厚生、私的な買い物や飲食代など個人事業主の生活や健康にかかる出費は経費になりません。
税金が所得に基づくものか、または物やサービスに基づくものかをチェックすることで、必要経費かどうかを見分けられます。
しかし、罰金や科料のような特定のケースでは、判断が難しい場合があるため、具体的な状況での確認が必要です。
個人事業主が経費にできるもの・できないものについて詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
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まとめ
本記事では、固定資産税の特徴や仕訳方法、経費にできる税金などについて解説しました。自宅をオフィスとして使っている個人事業主は、固定資産税を経費として計上可能ですが、オフィスの家賃全額を経費としては認められないため、家事按分で経費計上する必要があります。
個人事業主の方で、固定資産税やそれ以外で経費にできるものかどうか判断が難しい方は、税理士など専門家のサポートを検討しましょう。
「起業の窓口」では、個人事業主の方々に向けて、業務効率化のヒントや成功事例、最新のビジネス情報など、お役立ち情報を提供しています。
ぜひ、「個人事業主」に関する他の記事もご覧ください。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。