屋号とは?個人事業主が知っておきたい意味や決め方、雅号との違いを解説
個人事業主の方で、これから開業を検討するにあたって、屋号の決め方、つけ方に迷っている方も多いのではないでしょうか。本記事では屋号の基本知識から使う場面、つける際のポイント、注意点、申請方法などをご紹介します。
個人事業を始めようとしている方や屋号のつけ方に悩んでいる方、申請方法などを含めて網羅的に知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
- 【この記事のまとめ】
- 屋号は、個人事業主やフリーランスが事業を営む際の名称です。契約や銀行口座の開設などで使用されますが、法的な拘束力はありませんので、使用しなくても活動可能です。
- 商号は法人名で法務局に登記が必要ですが、屋号は個人の事業名で法的な拘束がありません。屋号は店舗や事務所名を付けることが多く、事業内容を反映した名称にするのが一般的です。
- 屋号を決める際は、わかりやすさや覚えやすさを重視し、事業内容が伝わる名称にします。独自ドメインの取得やエピソードのある名称にすると、集客や印象向上に役立ちます。
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屋号とは

屋号とは、個人事業主やフリーランスが事業を営むときの名称(名前)です。法人(会社)においては会社名と同様の意味合いを持ちます。
屋号については国税庁も以下のように定義をしています。
「屋号(又は雅号)とは、個人事業主の方が使用する商業上の名のことです。」
また、個人事業主やフリーランスなど個人でビジネスを展開している場合には、契約の際に屋号を入れる場合もあります。ただし契約の主体はあくまで個人になるので、いれる場合は屋号+個人名となります。店舗や事務所を構える場合には、店舗名や事務所名を屋号とすることがあります。
なお、屋号がなくても個人事業主やフリーランスとして活動することができます。例えば、ブログ運営やアフィリエイト、YouTubeなどで活動している場合は屋号ではなく個人名で対応することが可能です。
屋号と商号の違い
屋号と類似した用語に商号があります。商号とは会社名(法人の名称)です。商号の場合は法務局に登記する必要があり、法的な拘束があるといえます。具体的には株式会社や合同会社などを設立する際は、商号として法務局に登記することになります。
また、商号には「株式会社」や「合同会社」などを入れる必要があります。ほかにも使用できる文字に制限があったり、同じ住所で同じ商号は使用できなかったりなど、商号を決める際は一定のルールがあります。そのため、商号だけでどのような会社であるかを判断できない場合があります。
一方の屋号は個人が事業を行う際の名称であり、法的に拘束がありません。屋号を決めずに活動できる場合があることは既述のとおりです。また、屋号は「●●酒店」「△△事務所」「□□サロン」など、業種を一目で判断できる名称にする点が一般的です。
屋号と雅号の違い
雅号(がごう)も屋号と区別しにくい用語です。雅号は芸術家、作曲家、作家など、芸術・芸能関係の方が仕事上で名乗る別名です。ペンネームや芸名などをイメージするとわかりやすいでしょう。
本名が「鈴木太郎」で芸名が「加藤太郎」であれば、加藤太郎が雅号です。仕事をするうえで本名と異なる名前で活動することで、プライバシーが守れるなどのメリットがあります。
一方、屋号は芸術・芸能関係の活動をする以外の個人事業主やフリーランスなどが、事業につける名称です。また、店名や事務所名などを名称にする点が雅号とは異なります。
【例】屋号はどんな時に使う?

屋号は単なる「事業の名前」にとどまらず、社会的信用を高めたり、経理をスムーズにしたりする役割を担います。ここでは、屋号の主な使用シーンを4つに分けて詳しく解説します。
開業届や確定申告での使用
屋号は、個人事業主が事業を開始する際に開業届や、確定申告で使用します。
どちらも屋号欄の記入は義務ではありませんが、事業をわかりやすく示せるため、記載する方が望ましいです。
開業届の提出時や確定申告時には、以下のような場面で屋号を使用します。
- 開業届の「屋号」欄に記載(任意だが明確な事業名を示せる)
- 確定申告書や青色申告決算書、収支内訳書への屋号記入
- 青色申告承認申請書と同時提出することで節税効果(最大65万円控除)
- 屋号入りの書類を融資や取引先説明の際に提示すると信用形成に有効
屋号の記入をしておけば、取引や税務処理の際に事業の一貫性を証明でき、後から屋号を決めた場合でも、次回の確定申告書に記載すれば問題ありません。
屋号は単なる名称ではなく、個人事業の信頼性を高める資料として活用できます。
屋号入りの銀行口座開設
屋号を決めている個人事業主は、「屋号+氏名」名義で銀行口座を開設できます。
屋号がない場合は、個人名義で事業用口座を作る形でも問題ありませんが、屋号付き口座を作ると事業の信頼性や経理の明確化につながります。
多くの銀行では屋号のみの名義では口座を開設できず、「●●工場 山田太郎」といった形式が必要です。
開業届の屋号欄が空欄でも、まずは個人名義口座を開設し、屋号を決定後に再登録することも可能です。
なお、法人用の口座は法人登記完了が前提のため、屋号を決める前や登記前には開設できません。
個人事業主の段階では、屋号付き口座を活用し、事業と個人の収支を明確に分けて管理することを心がけましょう。
契約書や請求書に記載するケース
屋号は、日常的な取引の中で作成される各種書類に記載できます。
屋号を用いることで、書面上でも明確に「事業としての活動」であることを示しやすくなり、取引先からの信頼性向上につながります。
主な使用例は以下の通りです。
- 見積書や請求書、納品書、領収書
- 契約書、発注書、取引基本契約書
- 名刺や封筒、チラシなどの販促資料
これらの書類に屋号を明記しておくと、事業の専門性やブランドイメージを伝えやすくなり、取引先の帳簿上でも屋号が記録されるため、スムーズな取引管理が可能です。
さらに、現在のインボイス制度においても、屋号を記載した適格請求書の発行が認められています。屋号の掲載は義務ではないものの、顧客への印象や信頼性を高める実務的な工夫といえるでしょう。
屋号を使わない場合との違い
屋号を使わずに個人名のみで事業を行う場合も問題ありません。実際、開業届や確定申告書の屋号欄を空欄で提出しても受理されます。
屋号を使う場合と使わない場合の違いは、以下のとおりです。
| 屋号を使う場合 | 屋号を使わない場合(個人名義) |
|---|---|
|
|
屋号はあくまで任意ですが、ビジネス名義での取引や信頼性の向上、事業の規模拡大などを想定している場合は、屋号を付けておくとメリットが大きくなります。
一方で、個人名だけで始めるのであれば、手続きがシンプルでスピーディに事業をスタートできます。どちらを選ぶかは、取引形態や事業の方向性によって最適な方法を選びましょう。
屋号のつけ方のポイント

屋号を決めるときはいくつかのポイントを押さえて、最適な名称になるようにしましょう。下記の内容を確認して、屋号を考えていきましょう。
- わかりやすく、覚えやすい
- 読みやすい
- 検索エンジンでヒットしやすい
- 独自ドメインが取得できる
- エピソードがわかる
- ターゲット顧客を意識する
- 将来的な事業拡大を見越す
- 商標権との重複に注意する
わかりやすく、覚えやすい
「わかりやすい」というのは、屋号をみて事業内容が判断できるかどうかです。屋号から事業内容が判断できることで、営業効果が期待できます。
読みやすい
屋号を読みやすくすることも意識するとよいでしょう。読みやすい屋号は覚えやすさにつながり、集客やリピートにつながります。読み方がわかりにくい屋号とは、例えば横文字の使用があげられます。横文字を使う場合は適度に入れ込み、顧客の読みやすさを意識するとよいでしょう。
検索エンジンでヒットしやすい
他にも、近年では事前にインターネット検索やSNSで検索をしてから利用する顧客が存在します。検索エンジンでヒットしやすい屋号にすることで、集客につなげることが可能です。例えば「●●事務所」とするよりも「新宿●●事務所」と地域名を入れることで、検索エンジンでヒットしやすくなります。
独自ドメインが取得できる
ホームページを開設する場合は、屋号を独自ドメインで使えるかをご確認ください。「△△サロン」と屋号を検討した際は「△△」の部分で独自ドメインが取得できるかを確認します。
屋号と独自ドメインを同じにすることで統一感があり、顧客も覚えやすいでしょう。ただし、独自ドメインで必ずしも屋号を入れなければならないわけではありません。自由に設定したい方は、自分が管理しやすいように屋号に関係なく希望するドメイン名にしてもよいです。
エピソードがわかる
屋号を決定する際のエピソードや意味を持たせることで、顧客の印象に残りやすくなります。
例えば、コンビニのセブンイレブンは「営業時間が7時~23時まで」だったことが由来しています。オリジナルの造語にすることで、顧客の記憶に残すことが可能でしょう。
ターゲット顧客を意識する
屋号を考える際は、届けたい顧客層を意識して決めることが重要です。誰に向けたサービスなのかを明確にすると、屋号の方向性が定まり、印象に残る名称を作りやすくなります。
例えば、若年層向けなら親しみやすい言葉やトレンドを取り入れ、高齢層向けなら信頼感を与える言葉を選ぶと効果的です。ターゲットに合わせた屋号設計は、覚えてもらいやすく集客にもつながります。
将来的な事業拡大を見越す
屋号を付けるとき、現在の事業内容に特化した名前にすると、後に展開する新サービスや商品と合わなくなる場合があります。
例えば、「●●デザイン」から飲食や小売に拡大する場合、屋号が業種に縛られると印象が合わなくなります。将来どの分野まで発展させたいかを考慮し、幅広く使える屋号を選びましょう。
業種や地域名を限定せず、汎用性のある名称にすると、複数事業でも統一したブランドとして認知されやすくなります。
商標権との重複に注意する
屋号を決める際は、商標登録された名前を無断で使用すると、商標権の侵害にあたり、使用差止や損害賠償を求められる恐れがあるため、既存の商標と重ならないかを必ず確認しましょう。
商標権は「特許庁」に登録した名称を独占して使える権利で、同業種や類似サービスで使用するとトラブルの原因になります。
検討中の屋号が登録済みかどうかは、特許庁の「商標検索システム(J-PlatPat)」で確認できます。
個人事業主向けの良い屋号のつけ方

個人事業主が屋号を決める際には、事業内容や業種の特性に合わせた発想が求められます。
特にクリエイターや専門職、副業など働き方が多様化する中で、屋号は自分の活動を象徴する“ブランド名”のような役割をもっています。
顧客に事業の目的や魅力を伝えながらも、覚えやすく信頼を得られる名称にすることが大切です。ここでは、業種や働き方に応じた良い屋号づくりの考え方を解説します。
クリエイターや専門職の屋号の工夫
クリエイターや専門職が屋号を考える際は、自身のスキルや専門性を的確に伝えると同時に、顧客の印象に残る独自性を組み合わせることが重要です。
例えば、デザイナーやフォトグラファーなどのクリエイティブ業種であれば、「〇〇デザイン」「△△ラボ」といった職種と関連性のある言葉を組み合わせると、屋号だけで提供内容が伝わりやすくなります。
また、英語や造語をほどよく使うとブランド性を高められますが、読みづらさを避ける工夫も欠かせません。
屋号には自分の技術力や信念、作品の世界観を反映させ、ブランディングの軸となる名称に整えることが理想的です。
副業・兼業での屋号の考え方
副業や兼業として屋号を使う場合は、本業との関係性と事業の独立性を両立させる工夫が求められます。
屋号をもつことで、本業とは異なるブランドとして認識され、外部の取引先にも専門的で信頼できる印象を与えられるでしょう。
例えば、本業が会社員で副業としてライターを行う場合、「□□ライティング」「△△ワークス」など、活動内容を明確に示す屋号をつけると効果的です。
さらに、複数の業種を掛け持ちする際は、共通イメージをもつシンプルな名称にしておくと柔軟に対応できます。
副業でも屋号を使用することで、活動の一貫性を保ちつつ、名刺や請求書、SNS運用などで統一感あるブランディングを実現できます。
屋号を決める際に役立つツールや方法

屋号を考える際には、独自のアイデアだけでなく、効率的に候補を広げたり客観的に検証したりするためのツール活用が欠かせません。
ここでは、屋号を決める際に役立つ主なツールや方法を解説します。
屋号自動生成ツールの活用
屋号を決める段階で悩む人は多く、「アイデアが浮かばない」「他と被らない名前を作りたい」と感じる場合に役立つのが屋号自動生成ツールです。
AIを活用したネーミング支援ツールを使うと、短時間で多くの候補を得られ、発想の幅を大きく広げられます。
特に以下のようなツールは無料で利用でき、初心者でも使いやすい点が魅力です。
- Canva「ビジネスネームジェネレーター」
- GMO「nomyne(ノミネ)ネーミング支援サービス」
- Renderforest「名前メーカー」
- Shopify「AIビジネス名ジェネレーター」
- Squarespace「ネームクリエイター」
これらのツールでは、事業分野やキーワードを入力すると、数十種類の候補を自動で提示してくれます。
さらに、響きや長さ、独自性を考慮したネーミング案を生成できるため、視覚的にも覚えやすい屋号を見つける手助けになります。
AI生成ツールの中には、同時にドメイン名の空き状況を確認できるものもあり、オンライン展開を意識した屋号選びにも便利です。
ただし、ツール任せにせず、自身の事業目的や理念に合っているかを見極め、候補を手動で洗練させる過程が重要です。
生成された名前をそのまま使うのではなく、自分の想いやビジョンを込めて調整することで、より説得力のあるブランド名に仕上がります。
最終的には、発想を支援する道具としてAIツールを活用し、「人の感性で整える」バランスが理想的です。
ドメイン検索やSNSチェック
せっかく良い屋号を考えても、既にドメインやSNSアカウントが使用されていると、ブランディングが難しくなります。
そのため、屋号候補を決めた段階で、早めにドメインとSNSアカウントの利用可否を確認しておくことが大切です。
特に以下のようなツールを使えば、複数のサービスをまとめて検索でき効率的です。
- DomainTyper(独自ドメイン[.com][.jp]などの空き状況を検索)
- GMO「nomyne(ノミネ)ネーミング支援サービス」(商標・ドメイン・既存ブランドの使用可否を自動検索)
- GoDaddy ドメイン検索(候補名の登録可否を即時判定)
- Namechk(SNSアカウント名とドメイン名を同時にチェック)
これらを使うと、候補の屋号がWeb上で一貫して使えるかをスピーディーに把握できます。
ドメインとSNS名が一致していれば、顧客が検索で迷わず見つけられるため、認知度・信頼度の向上につながります。
一方で、すでに使用されている場合は、つづりの一部を省略したり、地域名を追加したりして工夫するのが効果的です。
インターネット検索やSNSチェックは、屋号を決めた「あと」ではなく「決める前」に行うべき工程です。
第三者からのフィードバックをもらう
屋号は自分では良いと思っても、他人から見た印象が異なる場合があるため、最終決定前に第三者からのフィードバックを得ることが非常に重要です。
家族や友人、同業者に加え、SNSアンケート機能を活用して複数の候補名を提示し、どの屋号が信頼性や印象の良さで評価されるかを確かめましょう。
特に、屋号の響き・漢字表記・スペルなどは、人によって受け取り方が大きく異なり、第三者の意見を聞くことで、自分では気付かない誤解やネガティブな連想を事前に防げます。
また、アンケートの集計結果を可視化することで、客観的に選定基準を定めやすくなります。ビジネスの第一印象を左右する屋号は、感覚的な判断に頼らず、社会的な視点から精査することが大切です。
屋号の参考例

屋号の決め方を踏まえて、参考例を確認しましょう。参考例を調べることで、ご自身が屋号を決める際のイメージが膨らみます。下記の屋号例をご紹介しますのでご覧ください。
- 店舗を運営している場合の屋号例
- 事務所・オフィスを構える場合の屋号例
- 店舗や事務所などを構えない場合の屋号例
店舗の場合の屋号例
店舗を運営をする個人事業主の屋号は、店名をそのまま屋号にすることがあります。店名は自らの苗字を使う場合もあり、例えば「田中商店」などが挙げられます。
また、複数の店舗を運営するときなどは、店名以外を屋号にする場合もあります。複数の店舗を運営している、なおかつ取り扱う商品がそれぞれで異なる場合などに、いずれかの店舗の店名を屋号にすると後々に管理しにくいからです。
店舗の屋号例は、下記の内容をご覧ください。
- 【屋号の例】
-
- ○○工房
- ○○サロン
- ○○ベーカリー
- ○○屋
- ○○商店
- ○○堂 など
事務所・オフィスの場合の屋号例
事務所やオフィスを構える場合の屋号は、「○○オフィス」や「○○企画」「○○設計事務所」などとつけることがあります。店舗の場合と同様で、自らの事業がイメージしやすい屋号にするといいでしょう。また、自らの苗字を使う場合もあるでしょう。
事務所・オフィスの屋号例は、下記の内容をご覧ください。
- 【屋号の例】
-
- ○○オフィス
- ○○企画
- ○○設計事務所
- オフィス○○
- ○○office
- チーム○○
- ○○制作
- ○○デザイン
- ○○design
- ○○塾
- ○○舎
- ○○スタジオ
- スタジオ○○ など
店舗や事務所などを構えない場合の屋号例
店舗や事務所を構えないフリーランスや個人事業主の場合は、主にどのような業務を行っているかを意識して屋号を決めましょう。近年ではライターやエンジニアなどの職種で独立する場合があるため、取り組む業務を屋号に取り入れていることも多いです。
フリーランス・個人事業主の屋号例は、下記の内容をご覧ください。
- 【屋号の例】
-
- ○○システム
- ○○プロジェクト
- エンジニア○○
- ○○ソリューション
- ○○制作
- ○○デザイン
- ○○クリエイト
- ○○ライティング
- ○○編集
- ○○企画
- ○○テラー など
屋号をつける際の注意点

屋号は自由に決定したいところですが、注意点もあります。下記では4つの注意点をご紹介しますので、屋号を決める際に活かしてください。
- 法人や特定の業種と誤認されるような名前はつけられない
- 紛らわしい屋号は避ける
- 極端に長い屋号は避ける
- 記号の使用は避ける
法人や特定の業種と誤認されるような名前はつけられない
屋号をつける際は、法人や特定の業種と誤解されるような名前をつけることができません。具体的には「○○株式会社」「○○法人」などのような屋号をつけることができません。既述のとおり、株式会社などの会社名は商号であり、法務局に登記をした法人しか利用できないからです。
また、「○○銀行」「○○証券」など、法律で定められている特定の業種の名称を屋号にすることもできません。誤認されるような屋号でなければご自身の屋号にすることが可能ですが、すでに存在する屋号は避けておきましょう。思わぬトラブルになるケースがあるからです。
なお、すでに使われている屋号はインターネット検索などで調べてみましょう。事務所や店舗のサイトを開設していればヒットする可能性があります。商号に関しては、国税庁のサイトをご利用ください。
紛らわしい屋号は避ける
紛らわしい屋号に関しても避けた方がいいでしょう。例えば、同業他社ではなくても、開業や活動地域に所在するほかの事業者と同じ屋号をつけると紛らわしくなります。場合により、先に屋号としてつけた事業者とのトラブルが考えられます。
また、すでに商標登録されている商品名やサービス名を屋号にすると、権利侵害に該当する可能性があります。商標登録されている名称と似通った屋号もトラブルになることがあるためご注意ください。なお、商標登録されている名称を調べるには下記のページをご利用ください。
極端に長い屋号は避ける
屋号の長さには十分に考慮してください。長すぎる屋号は、顧客が覚えにくかったり発音しにくかったりするからです。例えば「La cafetería ○○」のように、横文字の羅列は一見おしゃれですが一度目にしただけではなかなか覚えにくいでしょう。「○○珈琲店」など、できるだけ端的に意味が伝わる屋号を意識しましょう。
ただし、極端に屋号が短いと、顧客が聞き取りにくかったり事業内容が伝わりにくかったりします。長すぎず短すぎないバランスを考えて屋号をつけましょう。
記号の使用は避ける
屋号に記号を使用することはできるだけ避けましょう。屋号にはさまざまな記号が使用できます。しかし、個人事業から法人化を目指す場合に、商号で使用できない記号があります。将来的に法人化を目指し、屋号を商号にしたい場合には特に注意が必要です。
商号で使用できない記号には、「@」「!」「?」「%」「☆」などがあげられます。また、ギリシャ文字などの一部の記号なども商号に使うことができません。
屋号の申請方法

屋号の申請方法は、開業届に記載する方法と確定申告時に記入する方法があります。下記でそれぞれの方法を簡潔にご紹介します。
管轄する税務署に「開業届」を提出する方法
管轄する税務署に「開業届」を提出する方法は以下になります。
- 【必要な書類】開業届
- 開業届は「個人事業の開業・廃業等届出書」が正式名称です。開業を予定するエリアを管轄する税務署に届出を行います。納税地や氏名などとともに屋号を記入する欄があります。なお、開業届の書式などは、下記のページからダウンロードできます。
確定申告時に記入する方法
確定申告時に記入する方法は以下の通りです。
- 【必要な書類】確定申告書、所得税青色申告決算書、収支内訳書
- 開業届を提出するタイミングで屋号が決まっていない場合は、確定申告の際に屋号を登録することが可能です。確定申告書、所得税青色申告決算書、収支内訳書のいずれにも屋号を記入する欄があります。
各書類に屋号を記入することで登録完了となります。確定申告の様式は下記のページをご覧ください。
参考:国税庁「確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告)」
また、確定申告での屋号の記入については下記記事で詳しく解説しています。
屋号入りの銀行口座開設の流れ
屋号付き銀行口座を開設する際は、開業準備と金融機関での手続きを順に進める必要があります。基本的な流れは以下の通りです。
- 税務署に開業届を提出する
- 金融機関を選び、準備書類を揃える
- 金融機関で申込手続きを行う
屋号付き口座は基本的に窓口での手続きが必要です。近年は、ネット銀行(例:GMOあおぞらネット銀行、PayPay銀行)でもオンラインで申し込めます。
口座開設の審査には1〜3週間かかることもあるため、早めに申請しておくと安心です。
屋号の変更方法

屋号の変更は、個人事業主にとって自由度の高い手続きですが、信頼関係や取引環境への影響もあるため慎重さが求められます。
ここでは、屋号を変更する際の主な方法と注意点を詳しく解説します。
開業届で変更する場合
屋号を変更する場合、税務署への開業届の再提出は義務ではありませんが、書面で証明を残したいときには新しい屋号を記載した開業届を提出できます。
提出時にコピーへ受領印を押してもらえば、屋号変更の正式な証明書類として利用可能です。
また、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」を提出する方法もあり、こちらも受領印付きの控えを得られます。
ただし、確定申告時に新しい屋号を記載すれば税務上の変更は完了するため、急いで届出する必要はありません。
銀行口座開設や融資申請の際に屋号証明が求められる場合は、あらかじめ届出を行っておくと安心です。
確定申告での変更方法
屋号を変更した際に最も手軽な方法は、次回の確定申告書に新しい屋号を記載する方法です。
確定申告書や青色申告決算書、収支内訳書の屋号欄に変更後の名称を記入すれば、税務署に対して正式に屋号変更を伝えられます。
旧屋号を併記する必要はなく、新しい屋号のみを記載すれば問題ありません。年度途中で屋号を変更した場合でも、確定申告時に新屋号を記載するだけで手続きは完了します。
届出書類を提出していなくても、確定申告書上での記載によって税務署は屋号変更を認識するため、特別な手続きは不要です。
屋号変更時の注意点(口座・契約書など)
屋号を変更する際は、税務上の手続きだけでなく各種取引や事務関連の変更も伴うため、慎重な対応が求められます。
特に以下の項目は、忘れやすいポイントとして確認しておきましょう。
- 屋号付き銀行口座の名義変更(開業届の控えや確定申告書を提出)
- 契約書や請求書の屋号表記を新名称に統一
- 名刺、看板、パンフレット、ウェブサイトの記載を更新
- インボイス制度の登録情報(適格請求書発行事業者公表サイト)の修正
- 取引先への屋号変更通知を行い、誤認防止を徹底
これらの手続きには時間やコストが発生するため、スケジュールを立てて段階的に進めると効率的です。
既存顧客との信頼関係が築かれている場合は、変更後のブランド認知に影響が出ないよう注意しましょう。
屋号に関するよくある質問

屋号に関しては、さまざまな疑問を持つ場合があります。下記の内容で屋号に関するよくある質問をご紹介しますので、屋号を決める際に活用してください。
屋号にはアルファベットや数字は使える?
屋号にアルファベットや数字を使うことは可能です。ただし、既述のとおり、顧客がわかりにくい屋号にならないようにご注意ください。アルファベットや数字のほかにも、ひらがな、カタカナ、漢数字も使えます。
屋号におすすめの画数はある?
屋号におすすめの画数を明確にご紹介することは難しいものの、画数で診断する屋号や商号占いが存在します。縁起の良い画数の字を使いたいと考えているのであれば、占いなどで屋号の運勢や業種との相性などの診断を検討しましょう。
屋号のアイデアが浮かばず決まらないときはどうする?
屋号がなかなか決まらないときは、事業の理念や信念などを振り返ってみてください。それらをもとに検討するとよいでしょう。
理念や信念、事業に関する用語から、造語にすることも方法のひとつです。それでもアイデアが浮かばないときは、さまざまな屋号や商号の由来を調べてみてください。由来を理解することで屋号のアイデアに活かせる場合があります。
ビジネスのネットセキュリティに「GMOセキュリティ24」

個人事業主やフリーランスにとって、屋号は、事業内容や活動内容を周知する際に有効な名前です。屋号をつける際のポイントや注意点、具体例を参考にして最適な屋号をつけるようにしましょう。
あなたの会社の顔となるウェブサイトのアドレス(ドメイン)や、会社の名前(商標)は、大切な財産です。セキュリティに関する疑問や問題解決には、「GMOセキュリティ24」がおすすめ。24時間無料で「パスワード漏洩・Webサイトリスク診断」「セキュリティ相談AIチャットボット」が利用できます。詳しくはこちらをご覧ください。
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- 記事監修
-
- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修または独自調査(アンケート)に基づいて制作したものです。
- ※掲載している情報は、記事公開時点の法令・税制・商品・サービス等に基づくものであり、将来的に変更される可能性があります。
- ※アンケート調査に関する記述は、特定の調査対象者からの回答結果および編集部の見解を含んでおり、内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
- ※記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、すべての方に当てはまるものではありません。個人の状況に応じた具体的な助言が必要な場合は、専門家にご相談ください。
- ※情報の利用や判断、実施については、ご自身の責任で行っていただきますようお願いいたします。
- ※本記事に掲載された内容の転載・複製はご遠慮いただき、引用の際は必ず出典をご明記ください。
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