起業したいけどスキルがないときは?スキルなしで始められる起業の形と身につけ方・頼り方
【この記事のまとめ】
- 起業そのものに、特別なスキルや資格は要りません(許可が要る一部の業種を除く)。足りない分は、自分で持つ、身につける、人に頼るの3つで埋められます。
- スキルがなくても始めやすいのは、専門の技能が要りにくい仕事、本部の仕組みを借りるフランチャイズ、人の技能を組み合わせる事業です。
- 学ぶのは売る仕事に近いものから。税金や手続きは専門家に、手間のかかる作業は外注に任せることもできます。
起業したいけれど、人に売れるようなスキルが何もない。そう感じて、一歩目を出せずにいる人は少なくありません。起業そのものには、特別なスキルや資格の条件はありません。必要になるのは、お客さんに渡す仕事と、事業を回す仕事の2つで、どちらも最初から全部を自分でこなせる必要はありません。足りない分は、仕事を受けながら身につけるか、人に頼って埋めていけます。
起業の窓口が取材した起業家が、知識の足りないところをどう補ったかもあわせて紹介します。

- 記事監修
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起業したいけどスキルがない人でも起業できますか
スキルがなくても起業はできます。開業届を出して個人事業主として始めるのに、資格や技能の試験はありません。ただし、事業を続けるには、お客さんにお金を払ってもらえる仕事と、それを届けて回していく力が要ります。この2つをどう手当てするかを先に考えておくと、何から手をつければよいかが見えてきます。
起業で求められるスキルは2種類あります
1つは、お客さんに渡す仕事そのもの(料理を作る、文章を書く、部屋を片づけるなど)の腕です。もう1つは事業を回す力で、お客さんを見つけること、お金の出入りを記録すること、届出や申告の手続きなどが入ります。
| 種類 | 中身の例 | 最初の手当て |
|---|---|---|
| お客さんに渡す仕事の腕 | 作る、教える、代わりに作業する | 自分の経験を使うか、仕事を受けながら身につける |
| 事業を回す力 | お客さんを見つける、お金を記録する、手続きをする | 最低限を自分で覚え、判断が要る部分は専門家に頼る |
スキルがないと感じている人の多くは、前者の腕が足りないと考えています。けれども実際には、後者の事業を回す力も同じくらい必要です。こちらは会社員として働いているだけでは身につきにくいものなので、起業の準備の中で、必要な分から覚えていけば足ります。起業に役立つ知識やスキルの一覧は、起業に必要な知識とスキルでまとめています。
足りない分は自分で持つ・身につける・人に頼るの3つで埋められます
足りないスキルの埋め方は3つあります。1つ目は、これまでの仕事や暮らしの経験を使うこと。2つ目は、小さく仕事を受けながら、必要な分だけ身につけること。3つ目は、専門家や外注先、仲間、公的な窓口に頼ることです。

3つは、どれか1つを選ぶものではありません。たとえば、接客の経験は自分で持っているものとして使い、集客の方法は仕事をしながら身につけ、税金の計算は税理士に任せる、のように組み合わせます。自分では当たり前だと思っている経験の見つけ方については、起業したいけどアイデアがないときの記事で、これまでの仕事と得意なことの書き出し方として紹介しています。
スキルがなくても始めやすい起業の形は?
スキルに自信がないうちは、専門の技能が要りにくい仕事から始める、本部の仕組みを借りる、人の技能を組み合わせる、の3つの形が始めやすいです。どれも、自分の腕だけで勝負しなくてよい点が共通しています。
| 形 | 例 | 自分で用意するもの | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 専門の技能が要りにくい仕事 | 家事代行、片づけ・清掃、事務作業の代行、買い物の代行 | 丁寧さ、時間、連絡の早さ | 値段で比べられやすい。中古品の売買など、許可が要る仕事もある |
| 本部の仕組みを借りる | フランチャイズへの加盟 | 加盟金などの資金、本部の方針に沿って運営する時間 | 加盟金やロイヤリティがかかり、運営の自由は契約の範囲内 |
| 人の技能を組み合わせる | 場所やイベントを用意して技能や人気のある人に来てもらう、受けた仕事を得意な人に振る | お客さんと技能を持つ人をつなぐ段取り | 頼む相手との取り決めを先に書面にしておく |
専門の技能が要りにくい仕事から始めます
家事代行や片づけ、事務作業の代行のように、特別な技能より、丁寧さや約束を守ることが評価される仕事があります。会社や家庭で毎日していることの延長で始められ、道具も手持ちのもので足りることが多い仕事です。
ただし、始めやすいぶん値段で比べられやすく、単価は上がりにくい傾向があります。続けながら、片づけの後の収納の提案まで引き受けるなど、少しずつ得意な分野を作っていくと、選ばれる理由が増えます。中古品を仕入れて売る仕事には古物商の許可が要るなど、扱うものによっては許可や届出が必要です。始めやすい業種の一覧は、初心者向けの起業におすすめの業種で紹介しています。
本部の仕組みを借りるフランチャイズに加盟します
フランチャイズは、本部が作った商品やサービス、店の運営方法を使わせてもらい、その対価を本部に払って事業をする方法です。開業前の研修や運営の手引きを用意している本部もあり、その業界の経験がないところから始める人もいます。
一方で、加盟金やロイヤリティがかかり、商品や値段、営業時間などは契約の範囲内でしか変えられません。小売や飲食のフランチャイズで加盟金などを求める本部には、契約の前に、本部の事業の概要や契約の主な内容を書面で渡して説明することが、中小小売商業振興法で義務づけられています。書面を受け取ったら、解約するときの条件や、支払うお金の総額を確かめてから決めましょう。注意点はフランチャイズで起業するときのポイントでまとめています。
人の技能を組み合わせる事業を作ります
自分に技能がなくても、技能を持つ人とお客さんをつなぐ仕組みを作れば、事業になります。場所やイベントを用意して人気のある人に来てもらう、受けた仕事を得意な人に振って取りまとめる、といった形です。
起業の窓口が取材したCafe&Bar Paletteの山崎琴乃さんは、看護師として働いていたころ、起業に関する知識がほとんどない状態から準備を始めました。創業時の集客では、すでにファンを持つ友人を一日店長として迎えることで、集客とブランディングの知識がなくてもお客さんが集まる形を考えたと話しています。自分に足りない部分を、人の力を借りる前提で事業の形に組み込んだ例です。詳しくは山崎さんのインタビュー記事をご覧ください。
足りないスキルはどう身につければいいですか
起業の前にすべてを学ぼうとせず、売る仕事に近いスキルから順に、小さく仕事を受けながら身につけていくと進めやすくなります。事業を回す基礎は、市区町村の創業塾のような公的な講座でまとめて学ぶこともできます。

学ぶ順番は売る仕事に近いものから決めます
最初に身につけるのは、お客さんに渡す仕事そのものです。次に、お客さんに知ってもらい声をかける方法、その次に売上と経費の記録、最後に届出や申告の手続き、の順で考えると、学ぶことが多すぎて止まってしまうのを防げます。
| 順番 | 身につけること | 身につけ方の例 |
|---|---|---|
| 1 | 売る仕事そのもの | 知り合いから安い値段で引き受け、感想を聞いて直す |
| 2 | 見つけてもらう方法 | SNSや紹介で知らせ、反応のあった伝え方を残す |
| 3 | お金の記録 | 会計ソフトや表計算で、売上と経費を毎月つける |
| 4 | 手続き | 開業届や確定申告の流れを知り、判断が要る部分は専門家に聞く |
起業の準備を資格の勉強から始める人もいますが、資格が要る業種でなければ、取ってから始める必要はありません。資格が役立つときは、起業に資格は必要かの記事で確認できます。
知識がほとんどない状態から学びながら準備した例
先に紹介した山崎さんは、起業に必要な知識を一人で学びながら事業計画書を作ったと話しています。看護師の夜勤の前後で仕入れや契約を進め、わからないことがあればすぐにメモを取って調べ、知識を少しずつ足していったそうです。
一方で山崎さんは、その分野での経験が自分にあることも大事だと話しています。山崎さん自身、メイド喫茶で働いていた経験や、看護師時代にイベントを企画した経験が、お店の運営に生きているそうです。スキルが足りないと感じていても、まったく関わったことのない分野より、少しでも経験のある分野を選ぶと、学ぶ量を減らせます。
会社員のうちに副業や社内の仕事で経験を積みます
今の仕事を続けながら、週末や空いた時間に小さく仕事を受けてみると、収入を保ったまま、売る仕事の腕とお客さんの反応を確かめられます。始める前に、勤め先の就業規則で副業が認められているかを確認しておきましょう。
会社の中でも、営業や経理、企画など、起業後に活かせる業務に手を挙げて関わる方法があります。お客さんへの提案や、売上と経費の管理を会社の仕事として経験しておくと、給料をもらいながら、事業を回す力を身につけられます。週末を使った始め方は週末起業の記事で紹介しています。
市区町村の創業塾で経営の基礎を学びます
事業を回す力をまとめて学びたいときは、市区町村が地域の商工会議所や金融機関などと連携して開く創業塾や、継続した個別相談が使えます。このうち、経営、財務、人材育成、販路開拓の4つの知識がすべて身につく内容として、国の認定を受けた市区町村の計画に載っているものを、特定創業支援等事業といいます。原則として4回以上、1か月以上かけて学ぶ形です。
受講を終えて市区町村から証明書の交付を受けると、会社を設立するときの登録免許税の軽減、信用保証の創業関連保証の特例、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金での優遇、小規模事業者持続化補助金〈創業型〉の申請などに使えます。それぞれに条件があり、実施の有無や日程も市区町村ごとに違うため、創業支援の計画の認定を受けた市区町村を確かめ、お住まいや事業を始める予定の市区町村の窓口に問い合わせてみましょう。融資の考え方は起業の融資の記事で紹介しています。
人に頼るにはどんな方法がありますか
頼り方は、判断が要ることを専門家に任せる、手を動かす作業を外注する、自分にない技能を持つ仲間と組む、公的な窓口で相談する、の4つです。何を自分でやり、何を頼むかの線を先に引いておくと、お金と時間の使い方が決まります。

税金や登記の判断は専門家に任せます
税金の計算や申告は税理士、会社の登記は司法書士、許可の申請書類は行政書士、社会保険や労務の手続きは社会保険労務士と、それぞれの専門です。何を任せられるかは資格ごとに法律で決まっているため、相談する内容に合った専門家を選びます。
取材したFREEDiVEの今井渉平さんは、経営については何も分からない状態からのスタートだったと振り返ります。簿記を少し勉強していたものの、実際の処理や必要な書類は分からず、会計や税務は専門家に聞き、外注に頼って起業の準備を進めたそうです。詳しくは今井さんのインタビュー記事をご覧ください。
税金のことを誰に聞けばよいか迷ったら、GMOオフィスサポートが紹介する税理士に無料で相談できます。GMOオフィスサポートは、起業の窓口を運営する会社です。
手を動かす作業は外注します
ホームページの制作やSNSの運用、デザイン、帳簿の入力のように、時間のかかる作業は、得意な人に外注できます。クラウドソーシングのサービスを使えば、個人で仕事を受けている人にも、小さな単位で頼めます。
先に紹介した山崎さんも、内輪の集客だけで終わらないよう、SNSの運用や検索対策を外注したと話しています。従業員を雇わず個人で働いている人に仕事を頼むときは、頼む側が1人で起業した人でも、頼んだ内容や報酬の額、支払期日などを、書面やメールなどですぐに伝えることがフリーランス法で決まっています。口約束で始めず、業務委託契約書の要点を押さえておきましょう。
自分にない技能を持つ仲間と組みます
売る仕事の腕を持つ人と、営業や事務が得意な人が組めば、お互いに足りないスキルを補えます。共同で起業するときは、誰が何を担当するか、お金をいくら出すか、抜けるときにどうするかを、始める前に話し合って書面に残しておきます。
取材したデジライズの茶圓将裕さんは、共同での起業を重ねたものの、メンバーそれぞれのスキルが足りず、うまくいかなかったと振り返っています。その経験から、共同で始めるなら、この人でなければと確信できるメンバーと出会うことが大事だと話しています。仲間に頼るときほど、相手の技能と信頼を確かめてから組みましょう。詳しくは茶圓さんのインタビュー記事をご覧ください。
公的な無料の窓口で相談します
何から頼めばよいか分からない段階では、公的な窓口に相談して整理する方法があります。国が設置しているよろず支援拠点は、創業を予定している人の相談にも、何度でも無料で応じています。地域の商工会議所や商工会、市区町村の創業支援の窓口でも、創業の相談を受け付けています。
相談に行くときは、やりたい仕事、自分にある経験、足りないと思うスキルを1枚に書いて持っていくと、話が早く進みます。相談先ごとの違いは起業相談はどこにすればいいかの記事でまとめています。起業の窓口に無料で会員登録すると、起業・経営支援を行うV-Spiritsによる1時間の無料相談も受けられます(初回のみ)。
スキルがないまま起業するときに避けたいこと
スキルがない不安につけ込む勧誘に乗ること、資格や勉強だけで時間を使うこと、最初から大きなお金をかけることの3つは避けておきましょう。どれも、始める前に失うものが大きくなりやすい行動です。スキルが足りないと感じているときほど、早く追いつこうとして、お金や時間を一度に使いがちです。使う額と期間の上限を先に決めておくと、立ち止まって考える余裕が残ります。
誰でも稼げるとうたう高額な講座にすぐ申し込みません
スキルがなくても短い期間で稼げる、といった誘いで、高額な講座やサポートの契約を勧められることがあります。その場で申し込まず、契約書と料金の総額を持ち帰って確かめ、家族や公的な窓口に相談してから決めましょう。
学ぶためにお金を払うこと自体が悪いわけではありません。何を、どのくらいの期間で、いくらで教わるのかを書面で確かめ、払う額を、失っても生活に響かない範囲に収めておくと安心です。契約で困ったときは、消費者ホットライン188で身近な相談窓口を案内してもらえます。
資格の勉強や準備だけで時間を使いません
資格や知識は、あれば安心できますが、取ること自体が目的になると、いつまでも始められません。許可や資格が要る業種でなければ、まず小さく仕事を受けてみて、足りないと分かったものから学ぶほうが、学ぶ量を絞れます。勉強しすぎず、専門家に任せる範囲を決める考え方は、起業に必要な知識とスキルの記事でも触れています。
最初から会社の設立や大きな借入をしません
スキルや経験が足りないうちは、店舗を借りる、設備をそろえる、会社を設立する、といった大きなお金がかかる準備を急がなくても大丈夫です。個人事業主として小さく始め、売上が見えてから形を整える順番でも間に合います。お金をかけずに始める方法は、0円起業のアイデアの記事で紹介しています。
起業したいけどスキルがない人からよくある質問
スキルがないまま起業を考える人から、よく聞かれる質問に答えます。アイデアが無いとき、年代による違い、用意するお金、向き不向き、会社を辞める時期の5つです。アイデア・年代・お金のことは、それぞれ詳しい記事も案内するので、気になる問いから読んでみてください。
Q. アイデアもスキルもないときは何から始めればいいですか?
アイデアから探すなら、起業したい理由、これまでの仕事と得意なこと、身近な困りごとの3つを書き出すところから始めてみましょう。書き出し方と、取材した起業家のアイデアの見つけ方は、起業したいけどアイデアがないときの記事で紹介しています。候補が出たら、この記事の3つの形のどれで始めるかを当てはめると、足りないスキルがはっきりします。
Q. 30代・40代・50代で始め方は変わりますか?
スキルの埋め方そのものは、年代で変わりません。変わるのは、家族やお金の事情と、会社員として積んできた経験の中身です。年代が上がるほど、自分で持っているものとして使える経験は増えるため、まずは今の仕事で任されてきたことを書き出してみましょう。年代ごとの事情を踏まえた始め方は、30代、40代、50代の記事でそれぞれまとめています。
Q. 50万円くらいで起業できますか?
業種によります。家事代行や事務作業の代行のように、手持ちの道具で始められる仕事なら、大きな初期費用をかけずに始められる場合があります。店舗や設備が要る業種や、フランチャイズへの加盟では、それより多くかかることがあるため、始めたい仕事の費用の内訳を先に調べてみましょう。資金の目安と集め方は起業資金の記事で確認できます。
Q. 起業に向いていない人はいますか?
スキルの有無で向き不向きが決まるわけではありません。ただ、全部を自分でやろうとして人に頼れない、失ってよいお金と時間の上限を決めずに始める、といった進め方は、続けるうえで苦労しやすくなります。足りない部分を学ぶか頼るかを決め、上限を決めてから始めてみましょう。
Q. 会社を辞めてからスキルを身につけてもいいですか?
辞めてから学ぶこともできますが、収入が途絶えた状態で学ぶと、お金の不安で焦りやすくなります。勤め先の就業規則で認められていれば、会社員のうちに週末などで小さく仕事を受け、売る仕事の腕とお客さんの反応を確かめてから、辞める時期を決める方法もあります。会社を辞めて起業するときの準備は、脱サラの記事でまとめています。
スマホで開業届を出すならこちら!

まとめ
起業したいけどスキルがないと感じても、起業そのものに特別なスキルや資格は要りません。求められるのは、お客さんに渡す仕事の腕と、事業を回す力の2つで、どちらも最初から全部を自分で持っている必要はありません。
始めるときは、専門の技能が要りにくい仕事、本部の仕組みを借りるフランチャイズ、人の技能を組み合わせる事業から、自分に合う形を選びます。足りないスキルは、売る仕事に近いものから順に、小さく仕事を受けながら身につけ、税金や手続き、手間のかかる作業は、専門家や外注先、仲間、公的な窓口に頼りましょう。
まずは、やりたい仕事と、自分にある経験、足りないと思うスキルを1枚に書き出してみてください。何を学び、何を頼むかが見えてきます。起業の準備全体の進め方は、起業は何から始めるかをまとめたページで確認できます。

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- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修または独自調査(アンケート)に基づいて制作したものです。
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