個人事業主が受けられる融資制度|融資審査のポイントや注意点を解説
個人事業主が事業資金を調達する方法の1つに融資があります。
日本政策金融公庫や銀行、信用金庫、地方自治体、ノンバンクなど、さまざまな金融機関が個人事業主も活用できる融資制度を用意しています。
個人事業主が融資を受けるためには、事業の収益性や返済能力、信用情報などの条件を満たすことが重要です。
自己資金が少ない場合や、資金繰りが厳しい状況での融資審査は厳しくなるため、余裕を持って融資を検討するようにしましょう。
この記事では、個人事業主が受けられる融資制度の種類や融資審査のポイント、融資を受ける際の注意点について詳しく解説します。
- 【この記事のまとめ】
- 個人事業主向けに、日本政策金融公庫は「新規開業資金」など複数の融資制度を提供しています。無担保での借り入れが可能で、創業から7年以内の方に適しています。
- 地方自治体や信用金庫は地域密着型で柔軟な融資を提供しています。金利はやや高い傾向がありますが、地域特有の支援が受けられる点が特徴です。
- 個人事業主の融資審査では、事業計画、自己資金、信用情報が重視されます。事業状況に応じた適切な融資額を設定し、無理のない返済計画が求められます。
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詳しくは次の記事をご覧ください。フリーランス保護法の概要、制定された背景や具体的な内容などを解説しています。
個人事業主が受けられる融資制度
個人事業主が利用できる融資制度には、いくつかの選択肢があります。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫とは、日本政府が100%出資する金融機関です。
日本政策金融公庫は、個人事業主が利用できる融資制度を複数用意しています。中でも代表的なものが「新規開業資金」です。
「新規開業資金」は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした融資制度であり、原則として無担保で融資を受けられます。
日本政策金融公庫は小規模事業者への融資に積極的な点が大きな特徴です。
銀行融資
銀行でも、個人事業主向けの融資を行っています。
銀行から融資を受けたい場合は、普段から付き合いのある担当者に相談するか、融資窓口に直接問い合わせましょう。
長期の借り入れが可能で、比較的大きな金額を借りられる場合がありますが、融資審査は比較的厳しい傾向にあります。
事業の収益性や返済能力などが重視されるため、創業間もない個人事業主には難しい場合もあるでしょう。一般に銀行が個人事業主に融資を行う場合は後述する地方自治体の融資制度を活用します。
信用金庫の融資
信用金庫は地域密着型の金融機関であり、個人事業主向けの融資にも積極的です。
地元の中小企業や個人事業主を支援するため、融資審査も比較的柔軟な傾向にあります。
また、その地域に密着したサポートを受けられるのも特徴です。日本政策金融公庫に比べると金利が高い傾向にありますが、それでも選択肢の1つに入るでしょう。一般に信用金庫が個人事業主に融資を行う場合は後述する地方自治体の融資制度を活用します。
地方自治体の融資制度
地方自治体によっては、個人事業主も利用できる融資制度を設けている場合があります。
例えば、東京都では「東京都中小企業制度融資『創業』」があり、個人事業主も利用できる制度の1つです。
「お住いの都道府県・市区町村名+融資」といった検索ワードで調べてみると、業種や用途ごとにさまざまな融資制度が出てくるでしょう。
融資制度の条件や金額は自治体によって大きく異なるため、申し込み前にしっかりと確認することが大切です。
また、融資とは異なり、補助金や助成金は返済不要です。返済の負担がない分、資金繰りが楽になるという利点があります。ただし、申請には補助金や助成金の目的に事業内容が合致していることが求められます。詳しくは次の記事をご覧ください。
ノンバンクの融資
ノンバンクとは、預金業務を行わないお金を貸すことに特化した金融機関のことです。
個人事業主向けの融資を行っているところが多く、審査がスピーディーで、銀行や公的機関と比べて融資までの時間が短いのがメリットです。
また、担保が不要なところもあるため、資金調達の選択肢の1つとなるでしょう。
ただし、金利が比較的高めである点が難点です。他の金融機関に比べて金利が高いことから、返済負担が大きくなる可能性があります。
ノンバンクによって信頼性も異なるため、利用する際は慎重な選択が必要です。
融資のほかに、クラウドファンデングも資金調達の方法としては有効です。詳しくは次の記事をご覧ください。
個人事業主が融資を受けるための基礎知識
個人事業主が融資を受ける際には、いくつかの基礎知識を理解しておく必要があります。
融資を受けるための条件
個人事業主が融資を受けるためには、事業の収益性や返済能力、信用情報などの条件を満たす必要があります。
融資制度を利用する際は審査が発生し、その審査に通らなければ融資を受けることはできません。
事業計画が明確で、安定した収入が見込めることが重要です。
また、過去の借入履歴や延滞の有無などの信用情報も確認されることもあるため、普段から信用情報を良好に保っておくことが大切です。
融資を受けるタイミング
個人事業主が融資を受けるタイミングは、主に事業の立ち上げ時の創業資金と事業が軌道に乗ったあとの運転資金や設備資金が必要なときの2つのケースが考えられます。
事業の立ち上げ時は、開業資金や設備費用などの初期投資にかかる資金を調達するために、金融機関から融資を受けるケースが多いです。
一方、事業が軌道に乗った後も、運転資金が不足する場合や設備投資が必要な場合に融資を検討することがあります。
事業が安定していない状態での融資は難しい場合が多いため、融資の申し込みタイミングには注意が必要です。
融資を受ける際は事業の状況や資金需要を十分に見極め、事業計画を立てることが重要です。
個人事業主に対する融資審査のポイント
金融機関が個人事業主に対して融資審査を行う際には、一般的に以下のようなポイントを考慮します。
資金使途
融資審査では、借入金の使途が事業目的に合致しているかが重要なポイントとなります。事業の運転資金や設備投資など、明確な資金使途であることが求められます。
また、資金使途が事業計画と整合性があるかどうかも審査されるため、説得力のある説明が必要です。
資金使途が不明確だったり、事業目的と関係なかったりする場合は、融資が認められない可能性が高くなるでしょう。
事業計画
個人事業主の事業計画は、融資審査の重要な判断材料の1つです。
事業の収益性や成長性、市場性などが評価されるため、説得力のある事業計画を作成する必要があります。
また、事業計画が実現可能かどうかも審査のポイントとなります。計画が甘く、根拠が乏しい事業計画を立ててしまうと、審査に通りづらくなるため入念な準備が必要です。
自己資金
個人事業主が融資を受ける際は、自己資金が十分にあると審査が有利に進みます。
自己資金が十分にあることは、事業に対する経営者の意欲や準備の表れと見なされ、返済リスクを低く評価する材料となるのです。
一般的に、自己資金は30%以上あることが望ましいとされていますが、事業内容や融資金額によって異なるため、自己資金の基準は一概にはいえません。しかし利用する融資制度によっては自己資金の割合が明確に示されている場合もあります。
自己資金の割合は、事業の実情に合わせて適切に設定することが重要です。
経営状態
個人事業主の経営状態も、審査時の重要ポイントの1つです。
売上高や利益率、資金繰りなどの財務状況が評価の対象となり、事業の安定性や将来性、競合他社との比較なども考慮されます。
経営状態が良好で、返済の可能性が高いと判断されれば、融資が認められる可能性が高くなります。
一方、財務内容が悪化している場合や事業の先行きが不透明な場合は、融資審査が通りづらくなるため注意が必要です。
融資希望額
融資希望額は、事業規模や資金使途に見合った適切な金額であるかが評価されます。
融資希望額が事業計画や返済能力に対して過大である場合、返済リスクの観点から、融資が認められない可能性が高くなります。
余裕を持って経営を進めるために融資希望額を高くしてしまいがちですが、融資を断られるリスクもあるため、事業規模に見合った金額を設定しましょう。
返済能力
個人事業主の返済能力は、融資審査の重要な判断基準の1つです。事業からの売上や費用、利益などを基に、返済能力が評価されます。
返済能力が十分でないと判断されると、審査に通らず、融資を受けられない可能性が高くなります。
また、返済期間や返済方法なども審査のポイントとなるため、無理のない返済計画を立て、確実に返済できる見通しを示すことが重要です。
ご自身の返済能力を確認する方法の詳細を確認したい場合は税理士などのプロに相談すると良いでしょう。
信用情報
個人事業主の信用情報は、融資審査に大きな影響を与えます。個人の借入履歴や延滞の有無、クレジットカードの未払いなどが確認されます。
信用情報に問題がある場合、融資が認められない可能性が高くなるため、日頃から信用情報を良好に保つように努めることが大切です。
個人事業主が融資を受ける際の注意点
ここでは、個人事業主が融資を受けるときに注意すべきポイントについて解説します。
自己資金が0だと難易度が上がる
自己資金が全くない状態では、事業に対する経営者のコミットメントが低いと見なされ、融資が認められない可能性が高くなります。
また、自己資金がない場合、返済リスクが高いと判断される可能性もあるため、融資審査の難易度が上がります。
自己資金は事業の実情に合わせて、できる限り準備しておくことが望ましいといえるでしょう。
資金がショートする前に融資を検討する
資金繰りに困ってから融資を検討するのは得策ではありません。
資金がショートした状態では、事業の継続性が危ぶまれるため、融資審査に通過しにくくなります。
そのため、資金需要を予測し、余裕を持って融資を検討することが重要です。計画的に資金調達を行うことで、より有利な条件で融資を受けられる可能性があります。
必要書類はもれなく準備する
融資審査では、各金融機関が定める書類を提出する必要があります。主に以下のような書類の提出が求められます。
【提出が求められる書類の一例】
これらの書類準備に不備があると、審査が進まず、融資が遅れる可能性があります。
信用力を低下させる要因にもなるため、必要書類はもれなく準備することが大切です。
「起業の窓口」の特集ページ「AI×起業」では、AIを活用して事業計画書を簡単に作成する方法を紹介!
詳しくは「【できるのか?】ChatGPTを使ってたった1時間で事業計画書を書くアラフォー起業家。《小説「AI起業」シリーズ#01》」をご覧ください。
私的流用は絶対に行わない
融資金はあくまでも事業目的で使用するものであり、私的流用は厳禁です。
融資金を個人的な用途に使用した場合、資金使途違反とみなされ、今後の融資が受けられなくなる可能性があります。場合によっては、一括返済を求められることもあるでしょう。
そのため、融資金の使途は事業計画に沿ったものに限定し、適切に管理することが求められます。
融資金の私的流用は、個人事業主にとって致命的なリスクとなりうるため、絶対に避けなければなりません。
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出典:FREENANCE
個人事業主は、日本政策金融公庫や銀行、信用金庫、ノンバンクなどで融資を受けることができます。
融資を受けるためには、事業の収益性や返済能力、信用情報などの条件を満たす必要があり、融資審査では資金使途や事業計画、自己資金の割合、経営状態などが重要なポイントとなります。
自己資金が少ない場合や、資金繰りが厳しい状況での融資審査は通過が難しくなるため、資金ショートする前に余裕を持って融資を検討することが賢明です。
また、融資審査に必要な書類は漏れなく準備し、融資金は事業目的に限定して使用する必要があります。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。