電子帳簿保存法で電子データでの保存が義務化!個人事業主が知っておくべき注意点や準備を解説
電子帳簿保存法は、事業を営む際に発行された領収書や請求書などの取引情報、会計ソフトを用いて作成した帳簿や取引書類の電子データでの保存を認める法律です。
2024年1月1日から電子帳簿保存法の改正によって、メールやインターネット上で行われた電子取引に対する取引情報の電子データ保存が義務化されています。
制度の対象は法人だけではないため、個人事業主やフリーランスといった事業を営むすべての方が対応しなければいけません。
電子帳簿保存法の改正が行われた背景には、経理処理の円滑化や生産性の向上、経理担当のテレワーク推進があります。
この記事では、個人事業主も対象になる電子帳簿保存法の要件、対応するための準備や注意点について詳しく解説します。
- 【この記事のまとめ】
- 電子帳簿保存法は、取引情報や取引書類の電子データでの保存を認める法律です。
- 2024年1月以降の電子取引は、個人事業主でも電子データでの保存が義務付けられています。
- 電子帳簿保存法の違反は重大なペナルティが課せられるため、早急な対応が必要です。
2024年11月1日より、フリーランス保護法が施行されます。
組織に所属せずに働くフリーランスが安心して働ける環境を整備するために、フリーランスと企業などとの発注事業者間の取引の適正化(契約書等により取引条件を明示する)が主な目的です。
詳しくは次の記事をご覧ください。フリーランス保護法の概要、制定された背景や具体的な内容などを解説しています。
個人事業主も対象になる電子帳簿保存法で定められた3つの制度
事業を営むうえで発行された取引情報や取引書類の電子データ化を認める電子帳簿保存法は、主に以下3つの制度に分類されます。
制度名 | 内容 | 対応義務 |
---|---|---|
電子取引データの保存 | メールやインターネットを介して受け取った請求書や領収書などに関するルール | 2024年1月1日から義務化 |
電子帳簿等保存 | 会計ソフトを用いて作成した帳簿や書類を電子データに関するルール | 任意で対応可能 |
スキャナ保存 | 紙で発行された請求書や領収書などの取引関係書類に関するルール | 任意で対応可能 |
それぞれの制度によって定められたルールに従い、該当する取引情報や取引書類を電子データとして保存しなければいけません。
また、電子取引については2024年1月1日から義務化されているため、個人事業主は早急な対応が必要です。
ここでは、電子帳簿保存法で定められた3つの要件について詳しく解説します。
電子取引
電子取引は、2024年1月から義務化されています。
メールやインターネット上で発行・受領した電子取引の取引情報を、そのままの電子データで保存しなければいけません。
例えば、クラウドサービスを利用して発行された領収書は、印刷して保存するのではなく、電子データとして保存・管理が必要になります。
電子取引において発行された以下の書類は、電子データでの保存が必要です。
- 注文書
- 契約書
- 送り状
- 領収書
- 見積書
- 請求書
電子取引で発行された該当する書類は、印刷せずにそのままの形で保存しておきましょう。
なお、2023年12月31日までの電子取引に該当する書類は、印刷して税務調査のときに提示できれば問題ありません。
また、電子データでの保存が必要になる取引の具体例は以下の通りです。
- クラウドサービスのサイト上で請求書や請求書を発行した場合
- メールを使って領収書や請求書の発行および受領した場合
- クレジットカードの利用明細データをダウンロードした場合
- 交通系ICカードの支払データを発行する場合
- ペーパーレスタイプのFAX機器を用いて送受信した場合
- EDI(電子データ交換)を用いて取引をした場合
- CDRやDVD、フラッシュメモリなどの記録媒体を介して請求書や領収書を受領した場合
他にも、改ざん防止のためにタイムスタンプを付与、日付・金額・取引先で検索できる機能、すぐにデータを確認・出力できるディスプレイやプリンタの用意などが要件として定められています。
電子帳簿等保存
電子帳簿等保存は、電子帳簿や電子書類を印刷せずに電子データのままでの保存が可能になる制度です。
パソコンの会計ソフトなどを用いて作成した帳簿や書類は、印刷して保管する必要はありません。
ただし、2024年5月時点では任意となるため、対応したい個人事業主のみ対応するようにしましょう。
電子帳簿や電子書類に該当する電子データは以下の通りです。
- 会計ソフトで作成した仕訳帳、総勘定元帳、経費帳、売上帳、仕入帳などの帳簿
- 会計ソフトで作成した損益計算書、貸借対照表などの決算関係書類
- パソコンで作成した見積書、請求書、納品書、領収書などを取引相手に紙で渡したときの書類の控え
なお、会計ソフトを用いて書類を作成する場合、最低限以下の要件を満たす必要があります。
- システムの説明書や事務処理マニュアル、ディスプレイを備えておくこと
- 税務職員からデータのダウンロードを求められた場合、すぐに出力または提示できる環境を整えておくこと
出典:国税庁(はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存(電子帳簿等保存)
また、訂正削除履歴の残るシステム利用など、一定要件を満たした場合は優良な電子帳簿として扱われ、過少申告加算税を5%軽減する措置や65万円の青色申告特別控除を受けられます。
スキャナ保存
スキャナ保存は、紙の領収書や請求書をスマホやスキャナで読み取り、電子データでの保存を認める制度です。
従来は紙で発行・受領した書類はそのまま保存する必要がありましたが、要件を満たせば電子データとして保存可能になります。
2024年5月時点では任意となりますが、紙の書類を保管するスペースを削減できたり、紛失や劣化を防げるメリットがあります。
他にも電子データでの保存は、セキュリティ面での強化にもつながるでしょう。スキャナ保存が認められる要件は以下の通りです。
入力期間の制限 |
|
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読み取りについて |
|
タイムスタンプの付与 |
|
バージョン管理 |
|
必要な装置 |
|
検索機能の確保 |
|
出典:国税庁(はじめませんか、書類のスキャナ保存)
スキャンしたデータは、速やかに出力できる環境を整えておかなければいけません。
また、契約書や納品書、請求書や領収書などの重要書類は、電子データと帳簿の関連性を相互に確認できるようにしておく必要があります。
厳しい要件であるものの、書類の保管スペース削減や紛失の劣化を防げたりと、多くのメリットがあります。
要件を満たせられるのであれば、個人事業主でも積極的に対応しておくとよいでしょう。
個人事業主が知っておくべき電子帳簿保存法の注意点
ここでは、個人事業主が知っておくべき電子帳簿保存法の注意点を解説します。
65万円の青色申告特別控除の適用には優良な帳簿の要件を満たす必要がある
青色申告をする個人事業主は、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。
しかし、e-Taxによる申告もしくは優良な電子帳簿の要件を満たさなければ、最大55万円の控除しか適用されません。
優良な電子帳簿として認められる要件は、以下の通りです。
- 訂正削除の履歴が残るシステムの利用
- 電子データと帳簿間で相互関連性があること
- 取引金額・取引金額・取引先名による検索機能があること
また、要件を満たしたうえで以下2点を事前に税務署へ提出する必要があります。
- 国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書
- 国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書
2024年1月以降の電子取引は電子データの保存が義務化されている
2024年1月以降の電子取引は、電子データの保存が義務化されています。
電子帳簿等保存やスキャナ保存は任意の対応で問題ありませんが、2024年1月以降の電子取引によって発行・受領する領収書や請求書などの取引情報は、すべて電子データで保存しなければいけません。
従来のように受け取ったデータを印刷して保存ができないため、注意が必要です。
※ただし、システム的または業務的に電子データ保存の要件を満たすことが困難な事業者については、単に電子データで保存するだけでよいといった緩和措置が設けられています。
電子帳簿保存法に違反するとペナルティが課せられる
電子帳簿保存法に違反するとペナルティが課せられます。例えば、電子取引を電子データとして保存しなかった場合のペナルティは以下の通りです。
- 青色申告の取り消し
- 追徴課税
- 100万円以下の罰金
電子帳簿保存法の違反や電子データの改ざんが発覚した場合は、厳しいペナルティが課せられてしまいます。
特に、2024年1月以降の対応を義務付けられている電子取引の電子データ保存は忘れやすいため、違反にならないように十分に注意しましょう。
電子帳簿保存法に向けた個人事業主の準備
個人事業主が電子帳簿保存法に対応する場合、さまざまな機器の準備や保存規定を決めていかなければいけません。
電子帳簿等保存やスキャナ保存に関しては任意となりますが、電子取引は2024年1月1日から義務化されているため、すぐでも対応できる準備が必要です。
ここでは、電子帳簿保存法に向けた個人事業主の準備について解説します。
対象となる電子取引の有無を確認
電子帳簿保存法に対応する場合、まずは営む事業で対象となる電子取引がないかを確認してください。
領収書や請求書などの取引情報を、メールやインターネット上で発行および受領している場合は、準備を進めなければいけません。
すべての取引を紙で発行・受領していれば対応の必要はありませんが、何らかの部分で該当する取引を行う個人事業主がほとんどです。
例えば、有料の会計ソフトを利用していた場合はインターネット上で領収書が発行されるため、電子取引に該当します。
他にも、インターネットの利用料金なども領収書が紙で発行されないケースが多いため、電子帳簿保存法の対応が必要になってくるでしょう。
多くの個人事業主は何らかの電子取引を利用しているため、さまざまな準備が必要です。一度、取引先を確認して電子取引に該当するものがないどうかを調べておきましょう。
各要件に対応できる環境の整備
電子帳簿保存法に対応するには、各要件に対応できる環境の整備が必要です。
例えば、電子データの改ざんを防ぐためタイムスタンプを付与できるシステムが必要になります。
タイムスタンプを付与するには、インターネット環境のほか、時刻認証局との契約や専用システムを導入しなければいけません。
また、電子データを保存する設備、検索要件を満たすソフトの導入、税務調査があった際にすぐに出力できるディスプレイやプリンタが必要です。
導入に費用がかかるものもありますが、各要件を満たさないと電子データとして認められないため、環境の整備を進めましょう。
なお、スキャナ保存の制度は任意となるため、対応する場合のみスキャナなどの準備が必要です。
電子帳簿保存法に対応した会計ソフトの導入
電子帳簿保存法に対応した会計ソフトの導入も必要です。
電子帳簿保存法において定められた要件を満たした会計ソフトは、JIIMA認証と呼ばれる『電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証』や『電子取引ソフト法的要件認証』を取得しています。
利用する会計ソフト選びでお悩みであれば、JIIMA認証取得の有無を基準にするとよいでしょう。
クラウド会計ソフト freee会計は、JIIMA認証取得済みの会計ソフトで、2024年1月から義務化された電子帳簿保存法に完全対応しています。
さらに、過少申告加算税の軽減措置や65万円の青色申告特別控除の対象となる優良電子帳簿の自動作成も可能です。
全プラン完全対応となっているため、電子帳簿保存法の対応の手間を減らしたい方は、ぜひご活用ください。
電子データを保管する場所用意して保存するファイル名をきめる
電子帳簿保存法に対応するために、電子データの保管場所を用意しなければいけません。
パソコンに内蔵されたハードディスクへの保存でも問題ありませんが、CDRやDVD、フラッシュメモリなどの記録媒体への保存もひとつの方法です。
ただし、万が一の紛失や故障のリスクがあるため、クラウド上のドライブへの保存がおすすめです。
クラウド上のドライブであれば、どこからでもアクセス可能でセキュリティ面も強いため、安心して利用できるでしょう。
また、電子データを保存する際はファイル名の規定を作らなければいけません。
検索要件として取引年月日・取引金額・取引先名が定められているため、これらの項目を含めたファイル名に変更するとよいでしょう。
例えば、『20250501_◯◯株式会社_10000_請求書.pdf』のようにファイル名を指定しておくと、検索要件をクリアできます。
上記例では、日付_取引先名_取引金額_書類名の順でファイル名が付けられています。ファイル名の指定はありませんが、検索要件を守れるファイル名に指定しましょう。
まとめ
電子帳簿保存法は、取引情報や取引書類を電子データとしての保存を認める法律です。一定要件を満たした領収書や請求書、帳簿などは電子データによる保存が認められます。
電子帳簿やスキャナ保存は任意の対応で問題ありませんが、電子取引に係る電子データは2024年1月以降、紙での保存ができません。
電子データのままでの保存が義務付けられており、個人事業主やフリーランスは早急に対応する必要があります。
電子データを保存する際は、改ざん防止のためのタイムスタンプ、検索要件をクリアできる機能、電子データをすぐに確認出力できるディスプレイやプリンタの用意が必要です。
また、帳簿付けする際にも電子帳簿保存法に対応する会計ソフトの導入が必要になるでしょう。
クラウド会計ソフト freee会計は、電子帳簿保存法に完全対応した会計ソフトです。
電子帳簿保存法の要件を満たしたことを認める『電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証』や『電子取引ソフト法的要件認証』を取得しており、2024年1月1月以降の会計処理も問題なく進められます。
優良電子帳簿の自動作成にも対応しているため、65万円の青色申告特別控除を受けたい個人事業主の方は、ぜひご活用ください。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。