一人会社の設立費用はいくら?個人事業主とは異なる準備や必要書類を解説
2006年の会社法成立により、一人でも会社を起こせるようになって以来、個人事業でなく一人会社を設立して事業展開をする経営者が増えています。一人会社を設立する際は、事前に個人事業主との違いや設立の流れを把握しておくことが大切です。
そこでこの記事では、一人会社の特徴とメリット・デメリットや、設立の手順を詳しく解説します。一人会社を設立しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 【この記事のまとめ】
- 一人会社の設立は、社会的信用の向上や節税面で大きなメリットがあります。
- 会社法により資本金1円から設立可能ですが、形態に応じた初期費用が必要です。
- 設立後は社会保険への加入や厳格な会計管理が義務付けられ、維持コストが発生します。
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一人会社の「お金」にまつわる基本知識

一口に一人会社といっても、その形態はさまざまです。
一人会社は従業員を雇わずに社長ひとりで経営している法人を指すため、株式会社・合同会社・合名会社など経営方針によって選択できます。
しかし、選択する会社形態によって、必要なコストは大きく変わります。
ここでは、一人会社の「お金」にまつわる基本知識を理解していきましょう。
一人会社とは?資本金はいくら必要?
一人会社とは、従業員を雇わずに社長がひとりで経営している会社です。
法律上は株式会社や合同会社、合名会社などに分類され、個人事業主とは異なる法人格を持ちます。2006年に成立した「会社法」によって会社を設立するための条件が緩和されたことで一般化しました。
一人会社は、株式会社の場合、次の条件を満たせば設立できます。
旧商法では株式会社の設立に少なくとも1,000万円の資本金と3名の取締役を用意する必要がありましたが、現在は撤廃されています。そのため、資本金1円、取締役1名からでも設立が可能です。
なお、上記は株式会社設立時の条件です。一人会社には別の形態もあり、それぞれメリット・デメリットがあります。
どの会社形態がコスパがいい?(株式会社・合同会社・合名会社の設立費用と維持コスト)
一人会社を設立する際の会社形態は、主に以下の3つです。
| 会社形態 | 設立費用 | 維持コスト |
|---|---|---|
| 株式会社 |
合計:16万7,000円~ |
|
| 合同会社 |
合計:6万円~ |
|
| 合名会社 |
合計:6万円~ |
|
コスパの高い会社形態を見つけるには、それぞれの設立費用と維持コストの比較が必要です。
株式会社は社会的な信用度が高い反面、設立費用は16万7,000円~と高めです。登録免許税や定款認証費用がかかるため、初期費用がかさみます。合同会社や合名会社の設立費用は6万円~で、株式会社よりも安く抑えられます。定款認証が不要な点が、費用差に大きく影響するでしょう。
なお、これらの設立費用は電子定款を使用した場合の金額です。紙の定款を使用する場合は、収入印紙代4万円が別途かかります。
また、維持コストは、税金や社会保険料、税理士への報酬などの共通コストに加え、株式会社の場合は、決算公告費用、役員の就任・重任に関する費用、株主総会開催費用などが必要になるケースもあります。
一人社長の役員報酬はどう決める?
一人社長の役員報酬は、会社と個人の税金に直結する重要な要素です。役員報酬は、会社設立後の事業年度開始日から3か月以内に決定する必要があります。
原則として、事業年度の途中で変更した役員報酬は損金算入が認められません。例えば、利益が出そうだから途中で増やすといった調整はできません。
実際には、会社の利益見込みと個人の生活費、社会保険料の負担を踏まえて設定します。報酬を高くすると個人の所得税や社会保険料が増え、低くすると会社側に利益が残り法人税が発生します。
このバランスを踏まえ、無理のない水準で決定することが重要です。
一人社長でも節税できる代表的な方法
一人社長でも、会社を活用することで節税の選択肢は広がります。法人と個人を分けて考えられるため、個人事業主よりも経費計上や所得分散がしやすくなるからです。
例えば、役員報酬として所得を分けることで、税率の急激な上昇を抑えられる場合があります。また、社宅制度を利用した家賃の一部負担や、退職金の準備なども代表的な方法です。
ただし、無理な節税は否認リスクを高めるため、実態に合った運用を心がけることが前提になります。
制度を正しく理解し、長期的に安定した節税を行うことが重要です。
個人事業主と一人会社の違い

個人事業主と一人会社は、働き方は似ていても制度やお金の扱いは大きく異なります。
ここでは、税金や保険、信用面から見た両者の違いについて詳しく解説します。
税金の種類と税率の違い
税金面では所得が増えるほど一人会社のほうが有利になる傾向があります。
個人事業主には所得税(累進課税)および住民税が課されます。
一人会社(法人)には法人税、法人住民税、法人事業税が課されます。
例えば、事業利益が大きくなった場合、個人事業主では高い所得税率が適用されますが、一人会社では役員報酬として分けることで税負担を調整しやすくなります。
この仕組みの違いが、事業拡大を考える人にとって会社設立を検討する理由の一つと言えるでしょう。
社会保険・国民健康保険の違い
社会保険の扱いも、個人事業主と一人会社では明確に異なります。個人事業主は国民健康保険および国民年金に加入します。一人会社(法人)は健康保険および厚生年金保険(社会保険)に加入します。
個人事業主の場合、保険料は前年の所得を基に計算され、全額自己負担です。一方、法人の場合、健康保険料および厚生年金保険料は会社と個人で折半負担します。
例えば、負担額だけを見ると高く感じることもありますが、将来受け取る年金額は厚生年金のほうが手厚くなります。
短期的な負担だけでなく、長期的な保障を含めて考えることが重要です。
対外的な信用力・取引条件の違い
事業を外に向けて広げていく場面では、個人事業主と一人会社の立場の違いが表れやすくなります。
個人事業主は、これまでの実績や本人の信頼性を評価される一方、事業としての規模や継続性に慎重な目を向けられることがあります。
一人会社は法人登記されているため、取引先や金融機関の判断材料となる場合があります。
法人名義で契約を結べることで、選択できる取引条件の幅が広がることもあります。事業拡大を検討する場合、この違いは判断材料の一つになります。
一人社長に向いている人・向いていない人

一人会社は自由度が高い反面、向き不向きがはっきり分かれる働き方でもあります。
ここでは、一人社長に向いている人と向いていない人の特徴について詳しく解説します。
一人社長に向いている人の共通点
一人社長に向いているのは、自分で判断し、行動の結果を受け止められる人です。意思決定から実行、結果責任までを一人で担う場面が多いためです。
例えば、売上が伸びないときも、環境や他人のせいにせず改善点を探せる姿勢が求められます。また、完璧を目指しすぎず、まず動いてから修正できる柔軟さも重要です。
一人会社では、誰かに背中を押してもらう機会は多くありません。その分、自分の基準で優先順位を決め、淡々と積み上げていける人ほど安定しやすくなります。
孤独を過度に不安に感じない人は適応しやすい傾向があります。
一人社長で失敗しやすい人の特徴
一人社長としてつまずきやすいのは、勢いだけで会社を作ってしまう人です。事業計画や資金の見通しが曖昧なまま進めると、想定外の出費に振り回されやすくなります。
例えば、売上が安定する前から固定費を増やし、資金繰りが苦しくなるケースも少なくありません。また、すべてを自分で抱え込み、相談や外注を避ける姿勢もリスクになります。
一人会社は自由度が高い一方、判断が主観的になりやすい環境です。客観的な意見を取り入れられないまま進むと、判断のズレに気づきにくくなります。
自分の弱点を認められない人ほど、失敗を長引かせやすくなります。
会社設立前に自己診断しておくべきポイント
会社を作る前には、自分自身の考え方や生活状況を整理しておく必要があります。特に、毎月どれくらいの生活費が必要か、売上が不安定な時期を耐えられるかは重要な視点です。
例えば、収入が数か月減っても精神的に余裕を保てるかどうかで、判断の質は大きく変わります。また、仕事と私生活の境界をどう引くかも確認しておきたい点です。
一人社長は時間の使い方が自由な反面、オンとオフが曖昧になりがちです。自分に合った働き方をイメージできているかを見直すことで、設立後のギャップを減らしやすくなります。
一人会社を設立するメリット

一人会社を設立すると、個人事業主として事業に取り組むよりも有利になる場合があります。一人会社を設立するメリットは、以下の5点です。ここからは、それぞれのメリットを詳しく紹介します。
- 信用度が向上する
- 所得税の負担を軽減できる可能性がある
- 経費計上の幅が広がる
- 有限責任になる
- 失敗した場合の再挑戦がしやすい
信用度が向上する
一人会社は、社員がひとりでもあくまで法人です。収益や借金は会社のものとなり、プライベートと事業が明確に分けられるため、個人の責任の下で収支を管理する個人事業主よりも信用度が向上します。事業拡大の計画を立てているのであれば、株式会社としての経営がおすすめです。
会社の印象がよいほど、取引先の新規開拓をする際や金融機関から融資を受ける際に有利です。特に設立や経営上の制約が多い株式会社として設立すると信用度が高くなります。
所得税の負担を軽減できる可能性がある
一人会社で一定額以上の所得を得ると、個人事業主でいるよりも節税できる可能性があります。
個人事業主には所得金額に応じて税率が最大45%まで上がる所得税が課せられるのに対し、法人では最大でも税率23.2%の法人税が課せられるためです。したがって、所得金額が大きくなるほど、法人税の方が高い節税効果が期待できます。
具体的に節税効果が高くなるのは、収入から諸経費を差し引いた所得が概ね800万円になってからです。現在個人事業主として収入を得ている方は、年間所得が800万円以上になった場合には法人化を検討してみてください。
経費計上の幅が広がる
個人事業主よりも経費として計上できる支出の幅が広がることも、一人会社のメリットといえます。例えば、次のような支出が経費として計上可能です。
- 役員報酬
- 退職金
- 生命保険料
- 出張時の日当
経費計上分は法人税法上の損金になるため、節税につながります。
有限責任になる
株式会社や合同会社では、借金を負ったとしても返済の責任が「出資額の範囲内」に限られ、社長個人で弁済する必要がありません。
つまり、事業が大きく失敗したとしても自分の財産は失わずに済み、リスクを最小限に留められるのです。
ただし、融資を受ける際に社長が個人保証した場合は、連帯責任を負うことになります。多くの場合、中小企業や一人会社の社長は金融機関から個人での連帯保証を求められるため、有限責任のメリットを完全に得られるとは限らないことに注意してください。
失敗した場合の再挑戦がしやすい
一人会社は、仮に事業がうまくいかなかった場合でも、次の行動に移りやすい仕組みがあります。法人は個人とは切り離された存在のため、整理や清算を行うことで一区切りをつけやすくなります。
例えば、個人事業主として多額の負債を抱えるよりも、影響範囲を限定しやすい点が特徴です。また、事業経験そのものは個人のキャリアとして残ります。
失敗を経て別の事業に挑戦したり、再び会社を作ったりすることも現実的な選択肢です。一人会社は、挑戦と見直しを繰り返しやすい器として機能します。
一人会社を設立するデメリット・注意点

一人会社の設立にはメリットだけではなく、注意しなければならないポイントもいくつかあります。一人会社を設立する代表的なデメリットが、次の7点です。
- 税理士でないと確定申告が難しい
- 法人口座との区別が必要となる
- 設立費用がかかる
- 死亡時は会社を存続できない
- 社会保険料の負担額が増える可能性がある
- 赤字でも発生する固定コストに注意
- 役員報酬は原則として期の途中で変更できない
税理士でないと確定申告が難しい
一人会社は法人である以上、貸借対照表や損益計算書、各種税務申告書類を作成した上で申告・納税しなければなりません。
納税手続きはソフトで計算できるような個人の確定申告とは異なり、専門知識を持つ税理士でないと対応が困難です。経理業務なども自分ひとりで行うとなると、本来の業務に集中できなくなることも考えられます。
そのため、大半の場合、税理士にお願いする必要があるでしょう。
法人口座との区別が必要となる
一人会社では、個人と法人の口座を厳密に使い分け、双方の資産をしっかりと区別しなければなりません。
事業の収支はこれまで使っていた個人の口座ではなく、別途開設した法人用の口座で管理する必要があります。法人では個人事業主と違って事業の収入を生活費に充てたり、自分の給与額を自由に変えたりすることもできません。
個人と法人の資産を明確に分けることで、信用度の向上という法人ならではのメリットを享受できることを忘れないようにしましょう。
設立費用がかかる
前述したとおり、一人会社の設立には個人事業主と異なり設立費用がかかります。
定款の認証手数料・収入印紙代・登録免許税といった登記費用のほかにも、印鑑作成代や登記簿謄本の取得手数料などがかかります。資本金1円から設立できるとはいえ、資本金があまりに少ないと取引先や金融機関からの信用を獲得しづらいため、資本金もある程度の額は必要です。
死亡時は会社を存続できない
一人で会社を設立すると、代表取締役である自分が万が一死亡したときに会社を存続できないリスクがあります。
ただし、株式会社の場合、死亡時に株式を相続した人が新たな取締役を選任すれば事業の継続は可能です。合同会社でも、相続に関するルールを定款に記載することで対処できます。税理士と相談し、会社の存続については早めに決めておきましょう。
社会保険料の負担額が増える可能性がある
法人には社会保険への加入義務があります。
ところが国民年金から厚生年金保険に切り替わると、保険料の負担額が高くなる可能性が高いです。負担額が増えると将来もらえる金額は増えるため一概にデメリットとはいえませんが、一時的な支出が増えて経営難に陥らないよう気をつけてください。
赤字でも発生する固定コストに注意
一人会社では、利益が出ていない状況でも発生する費用があります。法人住民税の均等割(赤字でも発生)や税理士顧問料などが代表例です。
例えば、売上が立たない期間でも、一定の支出は避けられません。個人事業主であれば発生しないコストも多く、精神的な負担につながることがあります。
赤字が続くと、固定費がじわじわと資金を圧迫します。事業が軌道に乗るまでの期間を想定し、どこまで耐えられるかを事前に考えておくことが現実的です。
役員報酬は原則として期の途中で変更できない
一人会社では、役員報酬の扱いに注意が必要です。役員報酬は事業年度開始日から3か月以内に決定し、その後は原則として変更できません。
例えば、思ったより利益が出たから報酬を増やすといった調整は認められないケースが多くなります。また、途中で変更すると税務上の扱いが不利になる可能性もあります。
収入の見通しが甘いまま報酬を決めてしまうと、生活や資金繰りに影響するでしょう。設立初期ほど慎重な判断が求められるポイントです。
一人で会社を作るときの手順

一人会社を設立するには、おおまかに次のような手順を踏みます。最後に、各ステップでどのような作業が必要なのか見ていきましょう。
- 会社の必要情報を整理
- 実印の作成
- 定款の作成
- 資本金の払い込み
- 法務局で申請
- 設立後に行う必要手続きに着手
1:会社の必要情報を整理
まずは設立する会社の必要情報を整理します。最低限決めておくべき基本事項は、以下のとおりです。
- 商号
- 本店所在地
- 資本金
- 設立日
- 会計年度
- 事業目的
- 株主や役員の構成
あらかじめ基本情報をまとめておくことで、定款作成に役立ちます。
2:実印の作成
社名が決まったら会社の実印を作成します。実印は設立登記を申請するときに必要です。
オンラインで登記申請するのであれば実印がなくても設立できますが、設立後に使用することを考慮するとこのタイミングでの作成をおすすめします。一緒に法人口座開設に使う銀行印と、請求書等の書類に押印する角印(社印)も作成しておくとよいでしょう。
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3:定款の作成
定款(ていかん)とは、ステップ1で定めた会社の基本ルールをまとめた書類です。定款の記載項目は、大きく「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分けられ、絶対的記載事項に不備があると定款は無効になります。
定款は作成後、本店所在地と同じ都道府県の公証役場に提出し、認証手続きを行います。定款の作成方法には紙と電子(PDF)があり、電子定款は紙の定款認証でかかる4万円の収入印紙代を用意する必要がありません。また、合同会社の場合は定款の作成は必須ですが、認証は不要です。
4:資本金の払い込み
定款が認証されたら、出資金(資本金)を払い込みます。
会社設立登記はまだ済んでいないため、振込先は発起人、つまり自身の個人口座です。資本金が1円以上あれば申請はできますが、極端に少額だと資金不足に陥る場合があります。目安として、融資など他の資金調達手段と合わせて、初期費用+運転資金3ヶ月分程度の金額を用意しておきましょう。
5:法務局で申請
続いて「株式会社設立登記申請書」や定款などの必要書類をそろえ、法務局で登記申請を行います。
なお、マイナンバーカード等で公的個人認証サービス電子証明書を取得しICカードリーダーライタを用意すれば、オンライン完結で申請可能です。
申請後、不備がなければ1週間~10日程度で登記が完了し、会社設立が正式に認められます。
6:設立後に行う必要手続きに着手
会社設立が完了した後も、次のような手続きが必要です。
- 法人税の届出
- 健康保険・年金への加入
- 法人口座の開設
各種届出の提出期限に間に合うよう、時間の余裕を持って着手しましょう。ひとりでの対応が難しい場合、税理士や社会保険労務士といった専門家に代行依頼できます。
一人会社の設立に必要な書類

一人会社の設立に必要な書類は、以下の2つです。
- 登記申請関連
- 定款の認証手続き関連
事前に準備しておくと、一人会社の設立手続きをスムーズに進められるでしょう。
また、設立後にも必要な書類があるため、確認しておきましょう。
登記申請関連
会社を設立し、法務局へ登記申請を行う際は、複数の書類が必要です。
まずは、登記申請書です。会社の基本情報を記載する中心的な書類で、会社の商号や本店所在地、資本金、役員の情報などを正確に記入しなければいけません。
また、会社の印鑑を登録するための印鑑届書も提出します。印鑑届書には、会社の実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。
加えて、役員が就任を承諾したことを示す就任承諾書や、役員の印鑑証明書も添付書類として必要です。これらの書類は会社の法的な存在を確立し、取引の際に必要となる信頼性を担保するために欠かせません。
定款の認証手続き関連
定款とは、会社の目的や組織、事業活動に関する根本的な規則を定めたものです。
一人会社を設立する際は定款を作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。
なお、認証手続きでは、作成した定款の原本を提出します。会社法で記載が義務づけられている事項は、以下の通りです。
- 会社の商号
- 目的
- 本店所在地
- 資本金の額
また、定款が適法に作成されたことを証明するため、発起人全員の印鑑証明書の提出も必要です。公証役場での認証を受けると、内容が法的に有効であると認められます。
設立後すぐに必要になる追加書類一覧
会社の登記が完了すると、事業を進めるために各所へ提出すべき書類が続きます。設立直後はやることが重なりやすいため、全体像を把握しておくことが重要になります。
主に必要となる書類は、次の通りです。
- 税務署へ提出する「法人設立届出書」
- 「青色申告の承認申請書」
- 都道府県税事務所および市区町村への設立届出書
- 社会保険の「新規適用届」「被保険者資格取得届」
- 法人口座開設時に求められる登記事項証明書および印鑑証明書
例えば、青色申告の承認申請書は提出期限を過ぎると、その年度は適用を受けられません。社会保険の手続きも、遅れると後からまとめて対応することになり、負担が増える傾向があります。
設立直後の段階で必要書類を洗い出し、提出順を整理しておくことで、事業運営に集中しやすくなります。
一人会社の設立前に検討しておくべきこと

一人会社の設立前に検討しておくべきことは5つあります。
- 会社名の決め方と注意点
- 登記先の選び方
- 資本金はいくら必要か?
- 定款は電子か紙か?
- 将来の事業拡大を見据えた設計が重要
これらを事前に検討すると、設立後のトラブルを防げるため、スムーズな経営につながるでしょう。
会社名の決め方と注意点
会社名を決める際は、株式会社や合同会社といった法人形態を含める必要があります。
ただし、既存の会社と同一、または類似しすぎる会社名は避けるべきです。
特に、同一住所に同じ会社名が登記されている場合、登記が認められません。インターネットで類似商号がないか検索したり、法務局で調査したりするとトラブルを回避できます。
また、会社名に公序良俗に反する言葉や、誤解を招くような表現を使わないよう注意しましょう。
本店所在地の選び方
会社設立登記は、本店所在地を管轄する法務局で行います。自宅を本店所在地とする場合は、自宅の住所を本店所在地にします。
賃貸物件の場合は、賃貸契約書で事務所利用が許可されているかを確認しましょう。
また、バーチャルオフィスを利用する方法もあります。これは、実際にオフィスを構えなくても住所を借りられるサービスです。
初期費用を抑えたい場合や、自宅住所を公開したくない場合に有効といえるでしょう。ただし、許認可が必要な事業の場合は、許認可が取れないケースがあるため、事前に確認が必要です。
資本金はいくら必要か?
資本金の額は、会社の信用力や事業の安定性を示す上で欠かせない要素です。現在は資本金1円から会社を設立できますが、事業内容によって適切な資本金は異なります。
例えば、許認可が必要な事業の場合、許認可の取得要件として一定額以上の資本金が求められる可能性があるため注意が必要です。また、金融機関からの融資を受ける際や取引先との契約において、資本金の額が信用力に影響を与える場合もあります。
設立当初の運転資金や、事業が軌道に乗るまでの生活費も考慮に入れ、無理のない範囲で資本金を設定しましょう。数ヶ月分の運転資金に相当する額を資本金として用意すると、事業をスムーズに開始できる可能性が高まります。
定款は電子か紙か?
定款は電子定款と紙の定款のどちらを選ぶかで、設立費用が変わります。
紙の定款で作成すると、印紙税として4万円が必要です。
一方、電子定款で作成すると、印紙税がかかりません。電子作成をするには、PDF化した定款に電子署名を付与する必要があります。
また、電子署名を行うには、マイナンバーカードとICカードリーダー、または電子証明書発行サービスを利用します。これらを自身で準備するのは手間がかかるため、司法書士などの専門家に依頼しましょう。
将来の事業拡大を見据えた設計が重要
一人会社を設立する際は現在の事業だけではなく、将来の展開も意識しておくことが重要です。
例えば、事業目的を必要最低限に絞りすぎると、新しい取り組みを始めるたびに定款変更が必要になります。
役員構成や株式の持ち方についても、今後人を入れる可能性があるかどうかで設計は変わります。最初から完璧に決める必要はありませんが、方向性だけでも整理しておくと判断がしやすくなるでしょう。
一人会社は柔軟に動ける反面、設計が甘いと後から手間が増えやすいです。少し先を見据えた準備が、長く続けるための土台になります。
一人会社の設立後にやるべきこと

一人会社の設立後にやるべきことは、以下の通りです。
- 法人口座を作る準備
- 会社印鑑の種類と使い分け
- 必要な契約や登録の進め方
- 税務署などへの提出書類
- 社会保険・労働保険の手続き
- 会計ソフト・クラウドサービスの準備
- 一人社長でも顧問契約を検討すべき理由
設立後に漏れなく進めると、会社の事業活動をスムーズに開始できるでしょう。
法人口座を作る準備
会社を設立した後にまずやるべきことは、法人口座の開設準備です。
法人口座は、会社の資金と個人の資金を明確に区別するために欠かせません。
口座がないと、経費精算や税務処理が複雑になり、会社の信用力にも影響を与える可能性があります。
口座の開設には、以下の書類が必要です。
- 会社の登記簿謄本
- 印鑑証明書
- 定款の写し
- 代表者の本人確認書類
金融機関によっては、事業計画書や許認可証の提出を求められる場合もあります。最近は、法人口座の開設審査が厳しくなっているため、複数の金融機関を検討し、早めに手続きを始めましょう。
会社印鑑の種類と使い分け
事業を円滑に進めるには、3つの会社印鑑を用意し、適切に使い分ける必要があります。
- 会社実印
- 会社銀行印
- 会社角印
会社実印は法務局に登録する代表印で、契約書や登記申請など、重要な書類に押印します。会社銀行印は、法人口座の開設や手形、小切手などに使用する印鑑です。
会社角印は、見積書や請求書、領収書など、日常業務で頻繁に使う書類に押印します。
それぞれ使用する場面が異なるため、混同しないよう管理しましょう。
必要な契約や登録の進め方
会社を設立したら、事業を始める上で必要な契約や登録を進めなければいけません。
例えば、オフィスを借りる場合は賃貸借契約、事業に必要なサービスを利用する場合は契約の締結です。通信回線や電気、ガスなどのインフラ契約も法人名義に切り替えましょう。
また、事業内容に応じて許認可が必要な場合があります。飲食店であれば営業許可、人材紹介業であれば有料職業紹介業許可など、事業を行うために必要な許認可を各行政機関に申請します。
これらの契約や登録を怠ると、事業活動に支障をきたすだけでなく、法的な問題に発展する可能性もあるため注意してください。
税務署などへの提出書類
会社設立後は、税務署や都道府県税事務所、市町村役場へ複数の書類を提出しなければいけません。
税務署へは法人設立届出書を提出し、法人として税金を納めることを知らせます。
また、給与を支払う場合は、給与支払事務所等の開設届出書を提出します。青色申告を希望する場合は、青色申告の承認申請書も提出しましょう。
これら以外にも、消費税関連の届出書や源泉所得税に関する届出書など、会社の状況に応じて必要な書類があります。提出期限が設けられている書類が多いため、設立後は速やかに準備を進めてください。
社会保険・労働保険の手続き
一人会社であっても、代表者が1人であれば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が必要です。
健康保険や厚生年金保険の加入手続きは、会社の所在地を管轄する年金事務所で行います。健康保険・厚生年金保険新規適用届などを提出しましょう。
従業員を雇用する場合は、労働保険(労災保険・雇用保険)への加入も必要です。労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークで手続きを行います。
社会保険や労働保険は、従業員の福利厚生だけでなく、万が一の補償にもつながります。
会計ソフト・クラウドサービスの導入
設立後の早い段階で、会計ソフトやクラウドサービスを導入しておくと、日々の管理が楽になります。取引をその都度記録することで、月末や決算時の負担を軽減しやすくなります。
例えば、銀行口座やクレジットカードと連携できる会計ソフトを使えば、入力作業を減らすことも可能です。請求書作成や経費精算をクラウドで一元管理することで、作業の属人化を防ぐ効果もあります。
後から整えようとすると手間が増えるため、最初から仕組みを作っておくことが重要です。
一人社長でも顧問契約を検討すべき理由
一人社長は、すべての判断を自分で行う立場にあるため、専門家との顧問契約が心強い支えになる場面もあります。
税務や会計の判断を自己流で進めると、後から修正が必要になることも少なくありません。例えば、役員報酬の設定や経費の扱いは、初期の判断がその後に影響します。
顧問契約があれば、定期的に相談できる環境が整い、不安を抱え込まずに済みます。必須ではありませんが、事業に集中するための選択肢として検討する価値は十分にあるでしょう。
一人会社の創業時に役立つ補助金・助成金一覧

一人会社の創業期は、資金面の余裕が事業の安定に直結します。
ここでは、一人会社の立ち上げ時に活用しやすい代表的な補助金・助成金について解説します。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、一人会社を含む小規模事業者が販路開拓や業務効率化に取り組む際に活用できる制度です。
広告宣伝費やホームページ制作費、設備導入費など、幅広い用途が対象になります。
例えば、新規顧客獲得のためのチラシ作成や、ECサイト構築にかかる費用も補助対象になるケースがあります。補助額には上限がありますが、自己負担を抑えながら事業の基盤を整えられる点が特徴です。
申請には事業計画書の提出が必要となり、将来の売上や取り組み内容を具体的に示すことが求められます。創業直後で資金に余裕がない段階でも、比較的取り組みやすい補助金として知られています。
事業承継・M&A補助金
事業承継・M&A補助金は、既存事業を引き継いで一人会社を立ち上げる場合に検討される制度です。親族内承継や第三者承継、M&Aを通じて事業を引き継ぐ際の費用負担を軽減する目的があります。
例えば、専門家への相談費用や、引き継ぎに伴う設備投資が補助対象になることがあります。
ゼロから事業を始めるのではなく、すでに顧客や実績のある事業を引き継ぐ場合、初期リスクを抑えやすい点が特徴です。
一人会社として新たに経営を担う場合でも、制度を上手く活用することで、資金面の不安を軽減しながらスタートできます。事業承継を視野に入れている人にとって、検討価値のある補助金です。
IT導入補助金
IT導入補助金は、業務効率化や生産性向上を目的としてITツールを導入する際に利用できる制度です。
一人会社でも対象となり、会計ソフトや顧客管理システム、予約管理ツールなどが補助対象になります。
補助を受けるためには、事前に登録されたITベンダーを通じて申請する必要があります。
初期投資を抑えつつ、事業運営を効率化できる点は創業期にとって大きな利点です。日々の業務負担を軽くし、事業に集中できる環境を整えたい場合に有効な選択肢になります。
メリットやデメリットをよく考えて一人会社の設立を
一人会社の設立は、自由度や信用面、税務面での選択肢が広がる一方、設立費用や手続き、継続的な管理負担も伴います。個人事業主より有利になる場面がある反面、すべての人に最適とは限りません。
重要なのは、制度の良し悪しだけで判断せず、自分の事業規模や将来像、資金状況に合っているかを見極めることです。
設立前に十分な準備を行い、設立後の運営まで具体的に想定しておくことで、後悔の少ない選択につながります。
一人会社は目的ではなく手段の一つです。自分にとって最も納得できる形を選ぶ視点が、長く事業を続けるうえでの土台になります。
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画像引用元:GMOあおぞらネット銀行
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
GMOインターネットグループ株式会社はGMOあおぞらネット銀行株式会社を所属銀行とする銀行代理業として、円普通預金の受入れを内容とする契約の締結の媒介を行います。
銀行代理業許可番号:関東財務局長(銀代)第335号
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