起業で成功しやすい業種は?廃業データと取材した起業家の選び方から解説
起業すれば必ず成功する業種はありませんが、続けやすさには業種ごとの傾向があります。日本政策金融公庫が2016年に開業した企業を追った調査では、2020年末までに廃業した割合は建設業や個人向けサービス業で低く、飲食店・宿泊業や小売業で高めでした。
業種の名前だけで決めるより、これまでの経験を活かせるか、初期費用と固定費を抑えられるか、継続して売上が入る仕組みを作れるか、お金を払う人が増えている分野かの4つの条件で候補を比べてみましょう。

- 記事監修
起業で成功しやすい業種はありますか
起業で成功しやすい業種を一つに決めることはできません。同じ業種でも、長く続く会社もあれば早くに閉じる会社もあるからです。ただし、開業した人のその後を追ったデータを見ると、廃業した割合が低めの業種と高めの業種ははっきり分かれます。まずは業種ごとの傾向を知り、そのうえで自分に合うかを考える順番がおすすめです。
業種だけで成功が決まるわけではない
日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業から平均1年3カ月ほどの企業のうち、採算が黒字基調と答えた割合は67.0%でした。業種が同じでも、黒字の会社と赤字の会社が混ざっています。
起業の窓口が取材した起業家54人の話を読むと、44人がこれまでの仕事の経験やスキルについて語っていました。どの業種を選んだかと同じくらい、その業種で自分が何を活かせるかが、事業を続ける力になっています。
続けやすさには業種ごとの傾向がある
一方で、業種によって開業後の続けやすさに差があるのも事実です。飲食店・宿泊業や小売業は廃業する割合が高めで、建設業や個人向けサービス業、医療・福祉は低めでした。
こうした傾向は、候補の業種を比べるときの材料になります。公的なデータとあわせて、数字の読み方の注意点も確認しておきましょう。
データで見ると続けやすい業種はどれですか
業種ごとの続けやすさは、日本政策金融公庫の開業後の追跡調査と、中小企業白書の業種別の開業率・廃業率で確かめられます。2つの調査は対象も数え方も違うので、1つの数字だけで判断せず、どちらでも同じ傾向が出ている業種に注目しましょう。
開業後に廃業した割合を業種別に見る
日本政策金融公庫の新規開業パネル調査は、2016年に開業した企業3,517社を2020年末まで追いかけた調査です。全体では8.9%が廃業し、89.7%が事業を続けていました。業種別の廃業の割合は次のとおりです。
| 業種 | 2020年末までに廃業した割合 |
|---|---|
| 建設業 | 5.2% |
| 個人向けサービス業 | 5.8% |
| 運輸業 | 6.6% |
| 卸売業 | 6.7% |
| 事業所向けサービス業 | 7.0% |
| 医療、福祉 | 7.2% |
| 製造業 | 7.6% |
| 情報通信業 | 7.7% |
| 教育、学習支援業 | 11.8% |
| 不動産業 | 12.1% |
| 小売業 | 13.2% |
| 飲食店、宿泊業 | 14.7% |
調査の対象は日本政策金融公庫が融資した企業で、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けた年でもあります。業種によって回答した企業の数に差があり、情報通信業は91社でした。
開業も廃業も多い業種と少ない業種
中小企業白書(2023年版)は、雇用保険に加入している事業所をもとに業種別の開業率と廃業率を出しています。2021年度は宿泊業・飲食サービス業が開業率11.2%・廃業率4.7%で、どちらも最も高い業種でした。生活関連サービス業・娯楽業も開業率6.2%・廃業率4.4%と、入れ替わりが盛んです。
反対に、医療・福祉は開業率3.9%・廃業率2.3%、教育・学習支援業は開業率4.7%・廃業率2.5%で、廃業率が低めでした。全産業では開業率4.4%・廃業率3.1%です。従業員を雇っていない事業所は数に入っていないため、一人で始める起業の実態とは違う点に注意してください。
起業する人が多い業種
日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業した業種はサービス業が27.7%で最も多く、医療・福祉が16.7%、飲食店・宿泊業が14.5%と続きました。開業費用は平均975万円、中央値は600万円で、250万円未満で開業した人も20.1%います。
人が多い業種は、それだけ始めやすい一方で競争も起きやすくなります。飲食店・宿泊業は開業する人が多く、廃業する割合も高い業種でした。この調査も対象は日本政策金融公庫が融資した開業1年以内の企業なので、融資を受けずに小さく始めた人の数字は含まれていません。
成功しやすい業種に共通する条件は何ですか
業種を問わず、続けやすい事業には共通する条件があります。これまでの経験やスキルを活かせること、初期費用と毎月の固定費を抑えられること、継続して売上が入る仕組みを作れること、お金を払う人が増えている分野であることの4つです。取材した起業家の事例とあわせて紹介します。

これまでの経験やスキルを活かせる
経験のある業種なら、最初のお客さんを見つけやすく、失敗しやすい点も前もって分かります。体験型リゾートを運営する株式会社MAGMAの福永祐大さんは「全く新しい分野に挑戦するよりも、これまでの知見を活かして価値を磨き込んでいく方が成功確率は高いと考えていたんです」と話しています。
資格取得講座を運営する株式会社NOUSENの中村信明さんも、10年以上勤めた教育・学習支援の会社で得た経験を活かし、同じ業界で起業しました。
初期費用と固定費を抑えられる
店舗の家賃や在庫の費用がかからない業種は、売上が少ない時期も出費が膨らみにくく、立て直しの時間を稼げます。人事コンサルティングで起業した株式会社アクティブ アンド カンパニーの大野順也さんは、業種を選んだ理由として「初期投資が比較的少なく、自分の人的リソースだけでも立ち上げが可能だった」ことを挙げています。
生成AIの研修事業で起業したMichikusa株式会社の臼井拓水さんも、固定費をかけないためにオフィスを借りずに始めました。
継続して売上が入る仕組みを作れる
一度きりの取引で終わる事業は、毎月新しいお客さんを探し続ける必要があります。月額の契約や定期的な利用がある事業なら、売上の見通しを立てやすくなります。
電力事業などを手がける株式会社NEXT ONEの斉藤徹さんは、営業の成果に売上が左右される状態を見直し、「継続的に収益が積み上がるストック型の事業をつくる必要がある」と考えて新しい事業に参入しています。
お金を払う人が増えている分野である
興味のある分野でも、お金を払う人がいなければ事業は続きません。AI検索への対策を支援するアムール株式会社の沖野耕基さんは、会社員時代に同じ分野のサービスを出したときは、ほとんど売れなかったと振り返っています。
その後「お金を払ってでもやりたい」と考える企業が増えてきたと感じ、その変化を見て起業しました。同じ事業でも、始める時期によって売れ行きは変わります。
4つの条件に当てはまりやすい業種はどれですか
4つの条件に当てはまりやすいのは、自分の知識や技術を売る業種です。Web制作やコンサルティング、オンラインの教室、家事代行などが代表的です。ただし、どれを選んでも自分の経験と合わなければ条件は満たせません。これらの例は、自分の経験に近いものを探す手がかりとして使ってください。
知識や技術を売るWeb制作やコンサルティング
Web制作やデザイン、コンサルティングは、パソコンと自分の技術があれば始められ、在庫を持ちません。前職で同じ仕事をしていた人なら、以前の取引先や知人から最初の仕事を得やすいのも利点です。
サイトの保守や顧問契約のように、納品したあとも月額で続く契約を組み合わせると、継続して売上が入る仕組みを作れます。反対に、未経験から始めると技術を身につけるまでの時間と、実績がない中での集客が負担になります。
場所を借りずに始められる教室や代行サービス
オンラインの教室や講座、家事代行、SNSの運用代行は、店舗を借りずに始められます。教える内容や代行する作業に自分の経験があれば、経験を活かすことと費用を抑えることを同時に満たせます。
月謝や定期契約で続けて利用してもらえる形にすれば、継続して売上が入る仕組みにも近づきます。一方で、始めやすい分だけ同じサービスを出す人も多く、価格だけで比べられやすい点には注意が必要です。誰に向けたサービスなのかをはっきりさせましょう。
自分に合う業種はどう選べばいいですか
候補の業種が決まったら、4つの条件に当てはめて比べ、許可や資格が必要かを確かめてから、小さく試してみましょう。いきなりお金をかけずに順番に確かめると、合わない業種に気づいたときの損を小さくできます。

候補の業種を4つの条件で比べる
まず、気になる業種を2〜3個書き出し、4つの条件に当てはまるかを1つずつ確かめます。経験を活かせるか、始めるのにいくらかかり毎月いくら出ていくか、継続して買ってもらえる形にできるか、お金を払う人がいるか、の順に考えると比べやすくなります。
当てはまらない条件があっても、すぐに候補から外す必要はありません。在庫費用がかかる業種なら注文を受けてから仕入れる、店舗が必要な業種なら小さな場所から始めるなど、足りない条件を補えるかを考えてみましょう。
許可や資格が必要かを確かめる
業種によっては、開業の前に許可や資格が必要です。飲食店を開くには保健所で飲食店営業の許可を受ける必要があり、建設業では一定の規模を超える工事を請け負うと建設業の許可が必要になります。
許可の要件や取得にかかる期間は、業種や地域によって違います。候補の業種が決まったら、管轄の役所や専門家に早めに確認しておきましょう。資格が必要な業種や起業に役立つ資格は、起業に必要な資格をまとめた記事で紹介しています。
小さく試してから広げる
業種を決める前に、会社員を続けながら少人数のお客さんに試してもらうと、本当にお金を払ってもらえるかが分かります。反応があれば、売上と費用を見積もって事業計画にまとめましょう。
計画の立て方は事業計画書の作り方を解説した記事で、アイデアの候補がまだないときは起業したいけどアイデアがないときの始め方をまとめた記事で確認できます。
飲食店や小売業で起業するときは何に気をつければいいですか
飲食店や小売業は、データで見ると廃業する割合が高めの業種ですが、続けている起業家もいます。店舗の家賃や仕入れで出ていくお金が大きくなりやすいので、開業費用と毎月の固定費を先に見積もり、資金繰りと集客を開業前から考えておきましょう。取材した起業家の中にも、家賃を抑える場所選びや、資金繰りや集客での苦労を話した人がいます。
開業費用と毎月の固定費を先に見積もる
店舗を構える業種は、内装や設備の費用に加えて、売上がなくても家賃が毎月かかります。イベント型のカフェ&バーを3店舗運営するCafe&Bar Paletteの山崎琴乃さんは、最初の店舗について「初期費用を抑えるために人通りの少ない家賃の安い場所に小規模な店舗を構えました」と話しています。
自分で集められるお客さんの数と見込める売上から、赤字にならない家賃の物件を選んだそうです。必要な資金の目安は、起業に必要な資金を解説した記事で確認できます。
資金繰りと集客を開業前から考えておく
売上が立っていても、仕入れの支払いが先に来ると手元のお金が足りなくなることがあります。業種は違いますが、マーケティングツールを開発する株式会社LeanGoの平井翔吏さんは、利益の計算に偏りがあり、キャッシュの見方が弱かったため、数字上は黒字でも資金繰りに苦しむ場面があったと振り返っています。
集客も同じです。株式会社SHIFT AIの木内翔大さんは学生時代に開いたイベントについて「当時は集客について何もわからず、結局赤字になってしまったんです」と話しています。お客さんを集める方法は、開業前に決めておきましょう。
業種の候補を広げたいときはどうすればいいですか
業種の一覧から経験と重なるものを探す
起業の窓口では、業種や働き方ごとの一覧を用意しています。初心者向けの業種を広く見たいときは起業におすすめの業種・職種の一覧、個人事業主として始められる仕事を探すなら個人事業主におすすめの職種の記事、会社を辞めて独立しやすい仕事を探すなら独立開業しやすい仕事をまとめた記事が参考になります。
自宅で始めたいなら自宅で起業できる仕事の記事、お金をかけずに始めたいなら0円で始められる起業アイデアの記事、女性の起業で選ばれている職種を知りたいなら起業する女性におすすめの職種の記事も見てみましょう。一覧を見るときは、名前を知っている業種よりも、自分が仕事で関わったことのある業種に注目すると候補が見つかりやすくなります。
迷ったら専門家に相談する
候補を絞れないときや、許可や資金の準備に不安があるときは、起業の相談を多く受けてきた専門家に話を聞いてもらうと整理しやすくなります。自分では当たり前だと思っていた経験が、業種を選ぶ強みとして見えてくることもあります。
起業の窓口に無料で会員登録すると、起業・経営支援を行うV-Spiritsによる1時間の無料相談を受けられます(初回のみ)。4つの条件で整理した候補を持って相談してみましょう。

起業で成功しやすい業種についてよくある質問
起業して儲かる業種はどれですか?
「この業種なら必ず儲かる」と言える業種はありません。同じ業種でも、単価や固定費、お客さんが続けて利用してくれるかで利益は大きく変わります。在庫や店舗を持たずに自分の技術を売る業種は、売上に対して出ていくお金が少ないため、利益を残しやすい傾向があります。
儲かるかどうかは、業種を決める前に1か月の売上と費用を見積もって確かめましょう。家賃や仕入れのように売上がなくても出ていくお金を先に書き出すと、利益が残るかを判断しやすくなります。
起業する人が一番多い業種は何ですか?
日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、サービス業が27.7%で最も多く、医療・福祉が16.7%、飲食店・宿泊業が14.5%でした。対象は日本政策金融公庫が融資した企業です。
起業する人が多い業種は、始め方の情報や相談先が見つかりやすい一方で、競合も多くなります。人が多いことを理由に選ぶより、自分の経験と合うかで判断しましょう。
未経験でも起業しやすい業種はありますか?
家事代行やネットショップ、Webライターなどは、特別な資格がなくても始められるため、未経験から起業する人もいます。ただし、始めやすい業種ほど競合も多く、経験がないと実績を示しにくい点に注意が必要です。
未経験の業種を選ぶなら、会社員を続けながら副業として小さく試し、技術と実績を身につけてから本格的に始めると失敗したときの負担を抑えられます。自分の仕事の経験と少しでも重なる業種を探すのもおすすめです。
起業の成功率はどれくらいですか?
起業の成功率を示す決まった数字はありません。中小企業白書(2026年版)によると、2024年度の廃業率は3.7%でした。これは雇用保険に加入している事業所の数で見たもので、起業した会社だけの数字ではありません。
生存率の数字は調査ごとに対象や数え方が違うため、読み方に注意が必要です。年数ごとの数字と読み方は、起業の成功率を解説した記事で紹介しています。
まとめ
起業すれば必ず成功する業種はありませんが、データを見ると続けやすさには業種ごとの傾向があります。日本政策金融公庫の調査では、廃業した割合は建設業や個人向けサービス業で低く、飲食店・宿泊業や小売業で高めでした。
業種を選ぶときは、これまでの経験を活かせるか、初期費用と固定費を抑えられるか、継続して売上が入る仕組みを作れるか、お金を払う人が増えている分野かの4つで候補を比べましょう。許可や資格が必要かを確かめ、小さく試してから広げると、合わなかったときの損を小さくできます。
起業の準備全体の進め方は、「起業は何から始めるか」をまとめたページで確認できます。
- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修または独自調査(アンケート)に基づいて制作したものです。
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