法人の印鑑証明の登録方法から取得方法・注意点を解説
法人の印鑑証明は、法務局でしか取得できない書類です。契約書などに押印された代表印が本物と証明するために、添付が必要になります。
この記事では、法人の印鑑証明とはなにか、取得前に必要な準備、具体的な取得方法や注意点について解説します。
- 【この記事のまとめ】
- 法人の印鑑証明は法務局でしか登録・発行ができません。
- 法人の印鑑証明は事前に印鑑登録が必要です。
- 発行方法は、窓口・証明書発行請求機・郵送・オンラインの4種類があります。
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法人の印鑑証明とは
法人の印鑑証明とは、法人の代表印が本物の実印であると証明する書類です。印影・本店所在地・商号・代表者の役職・氏名・生年月日・発行年月日などの情報が記載されています。
法人の印鑑証明書の主な利用目的は、取り引きの安全性を確保するのが目的です。個人の印鑑証明と利用目的は同じですが、法人の場合は法務局に届け出て登録を行い、必要に応じて発行します。
例えば、代表印が押印された契約書に印鑑証明書を添付することで、本物の実印だと証明されて、より安全性の高い取り引きを確保できるでしょう。印鑑証明の提出によって、押印された代表印が偽造されたものではないという証明になれば、代表印の偽造などのリスク回避にも役立ちます。
法人の印鑑証明は、会社を運営をしているときにあらゆる場面で使用します。代表的な契約で法人の印鑑証明が必要な場面は以下の通りです。
- 法人名義の不動産や自動車を売買するとき
- 融資を受けるとき
- 会社間の重要な契約を交わすとき
法人の印鑑証明は印鑑カード(印鑑証明発行時に必要なカード)を持っていれば、法務局本局もしくは法務局の出張所の窓口で即時発行が可能です。
その他には、郵送申請やオンライン申請がありますが、取得までに時間がかかる部分がデメリットになります。
届出を行った法人印(実印)は、代表者の個人的なものではなく、法人としての意思を決定するときに使用する大切な印鑑です。
むやみに押印するものではないため、取り扱いには注意しましょう。
法人の印鑑証明取得前に必要な準備
法人の印鑑証明書を取得する前に、あらかじめ法務局で印鑑登録が必要です。
ここでは、法人の印鑑証明を取得する前に必要な準備について解説します。
印鑑の準備
法人で使用する印鑑は、実印(代表者印、丸印、法人実印)、銀行口座登録用の銀行印、請求書や見積書に使う会社角印の3種類を用意するのが一般的です。
実印と銀行印を同一の印鑑で登録している事業者もいますが、万が一紛失や盗難にあった場合に銀行口座の預金が抜き出されてしまうリスクがあるため、実印は分けた方がおすすめです。
印鑑は3本セットで販売されていることが多く、街中にあるハンコ屋さんやインターネットショップで購入できます。
ただし、実印のサイズは法務省のルールで定められています。
会社の設立の際に登記する代表者印サイズは“1辺が1cmの正方形よりも大きくて、1辺が3cmの正方形よりも小さいこと”と定められおり、規格外の印鑑では登録ができないため、注意しましょう。
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法務局で印鑑登録を行う
印鑑が用意できたら、法務局で印鑑登録を行います。
法人の印鑑登録で必要なものは以下の通りです。
- 用意した代表者印(会社実印)
- 届け出る本人の実印
- 本人の印鑑証明書(発行後3か月以内)
法務局では印鑑届書に必要事項を記入して、実印となる印鑑を押印した書類を提出します。添付書類として代表者個人の印鑑証明書も必要になるため、あらかじめ登録・発行を済ませておきましょう。
法務局に本人が出向いて印鑑登録する場合には、印鑑届書の印鑑提出者本人という項目にチェックを入れて本人の住所や氏名を記入しますが、設立代行などを依頼して代理人が印鑑証明を登録する場合には、印鑑届書に付帯する委任状を記入する必要があります。
また、デジタル庁の“法人設立ワンストップサービス”や法務省の“登記・供託オンライン申請システム”を使って法人登記をオンラインで行う場合は、手続きの流れで実印を押印した届出書をスキャナー等でPDF化し、添付することで印鑑登録が可能です。
印鑑カードの交付を受ける
会社設立の登記終了後に“印鑑カード”が法務局から発行されます。
印鑑カードがないと法人の印鑑証明を発行できないため、“印鑑カード交付申請書”を法務局に提出して、必ず発行手続きを行いましょう。
その他、郵送でも印鑑カードの申請は可能です。手数料分の収入印紙を貼り付けた印鑑カード交付申請書、切手付きの返信用封筒を同封して法務局へ郵送してください。
印鑑カードを持っていれば、法務局もしくは法務局の出張窓口で即時発行が可能です。
しかし、紛失してしまった場合などは再発行手続きだけでなく、不正利用のリスクがあるため、しっかりと管理して大切に保管するようにしてください。
法人の印鑑証明書の取得方法
印鑑登録が済むと、法務局もしくは法務局の出張窓口、証明書発行請求機、郵送申請、オンラインで印鑑証明書の申請が可能になります。
個人の印鑑証明とは異なり、法人の印鑑証明は各市区町村の役所で発行できないため、注意してください。
ここでは、法人の印鑑証明を取得する方法を解説します。
法務局の窓口で取得
法人の印鑑証明は、法務局本局や法務局出張所の窓口で取得可能です。また、印鑑カードがあれば、全国の法務局本局や法務局出張所で発行ができます。
窓口での印鑑証明書の取得手順は以下の通りです。
- 印鑑登録証明書交付申請書に会社の商号、会社等の住所、印鑑提出者の資格、氏名、生年月日、および印鑑カード番号を記入する。
- 決められた手数料額に当たる収入印紙を貼り付ける。
- 印鑑カードを添えて、法務局の窓口に提出する。
発行が完了すると、法務局の係員が発券した整理番号を読み上げます。そこで印鑑証明の内容を確認して、問題なければその場で受け取れます。
なお、窓口での印鑑証明書の発行手数料は1通450円です。
証明書発行請求機で取得
法務局本局や法務局出張所の窓口付近に証明書発行請求機が設置されている場合があり、窓口よりも簡単に印鑑証明書の発行が可能です。
ただし、場所によっては証明書発行請求機がなく、窓口での対応のみの場合があるため注意してください。
証明書発行請求機があれば、印鑑カードを挿入して、本店の都道府県を選択し、会社名を入力するだけで、申請内容が明記された紙が発行されます。
印鑑登録証明書交付申請書の記入は必要ありません。
申請内容を明記した紙を印紙販売所へ提出して、必要な金額の印紙を購入します。その後、窓口の担当者に呼ばれたら、印紙を指定の用紙に貼り付ければ印鑑証明の発行ができます。
なお、証明書発行請求機での印鑑証明書の発行手数料は1通450円です。
郵送申請で取得
法人の印鑑証明は、郵送で交付申請も可能です。
法務局のホームページの申請書様式から、印鑑証明書交付申請書をダウンロードして印刷します。
窓口申請と同様に、法人の商号や本店、印鑑提出者の資格、氏名、生年月日および印鑑カード番号を記載するとともに、印鑑カードと返信用封筒・郵便切手を同封して郵送してください。
また、印鑑証明書交付申請書は、印鑑カード番号が記載してあり、とても大切な書類です。紛失を防ぐためにも、郵送する場合は書留や配達証明が付帯した方法で送るのがおすすめです。
取得までの期間は各法務局の混雑状況によって異なりますが、約3~5営業日程度で返送されます。
なお、郵送申請での印鑑証明書の発行手数料は1通450円です。
オンライン申請で取得
印鑑証明書をオンラインで申請する場合は、インターネットが利用できるパソコン、印鑑カード、商業登記電子証明書が必要です。
法務局が提供する“申請用総合ソフト”を利用して、印鑑証明書の交付を申請しますが、オンラインでできるのは申請のみで、印鑑証明書の受取りはできません。
申請用総合ソフトを使って交付申請を行って、インターネットバンキング等で手数料を支払い、窓口もしくは郵送での受け取りを選択します。
手数料は通常の申請方法よりも安く、窓口受け取りの場合は390円、郵送受け取りの場合は410円です。
ただし、窓口受け取りを選択した場合は、受け取りに印鑑カードが必要となるため、忘れずに持参してください。
法人の印鑑証明書を取得する際の注意点
ここでは、法人の印鑑証明書を取得する際の注意点を解説します。
発行手数料がかかる
法人の印鑑証明書の発行方法には、さまざまな方法がありますが、いずれも発行手数料がかかります。
それぞれの申請方法でかかる手数料は以下の通りです。
申請方法 | 手数料 |
---|---|
法務局の窓口で申請 | 450円 |
証明書発行請求機で申請 | 450円 |
郵送で申請 | 450円 |
オンラインで申請 | 窓口受け取り:390円 郵送受け取り:410円 |
手数料については大きな金額の差はありませんが、オンライン申請であれば手数料を抑えられます。
また、郵送で申請や受け取る場合は、郵送料金や返信用封筒の費用が必要です。
郵送やオンライン申請の場合は時間がかかる
法人の印鑑証明を郵送やオンライン申請した場合は、取得するまでに時間がかかります。
混雑状況によって異なりますが、取得するまでの目安は以下の通りです。
申請方法 | 取得までの日数 |
---|---|
法務局の窓口申請 | 即時 |
郵送申請 | 3~5営業日 |
オンライン申請 | 1~3営業日 |
また、法務局の営業日は毎週月曜日~金曜日の平日のみです。土曜日・日曜日・祝日・年末年始(12/29〜1/3)は営業していないため注意してください。
法務局の休みに重なってしまった場合は、取得までに時間がかかってしまうため、印鑑証明を利用する日が決まっていれば、曜日などを考慮して申請を行いましょう。
3ヶ月以内に取得した印鑑証明を求められる場合が多い
法人の印鑑証明を求められる場面では、発行から3ヶ月以内の印鑑証明を求められる場合がほとんどです。
印鑑証明書に有効期限は設けられていないものの、一般に3ヶ月以内に取得した印鑑証明書が必要になります。
そのため、法務局に行った際に多めに取得しても、必要なときに有効な書類として提出ができません。
金融機関との融資契約や賃貸借契約、車のローン契約など、必要な時は都度新しい印鑑証明を取得するようにしましょう。
法人の印鑑証明はコンビニで発行できない
法人の印鑑証明は、コンビニで発行できません。
個人の印鑑証明はマイナンバーカードがあれば、コンビニのマルチコピー機で発行が可能ですが、法人の場合は印鑑カード所有していても発行できないため、注意してください。
印鑑証明が必要な際は、法務局の営業日を確認して、余裕を持って取得するようにしましょう。
まとめ
印鑑証明は、法人の代表印が本物の実印であると証明する書類です。会社としての意思決定を証明する実印が本物であることを証明し、取引の安全性を確保します。
そのため、金融機関との融資契約、賃貸借契約などの重要な契約の際の書類に、実印の押印が必要となり、あわせて印鑑証明書の提出が求められ場合があります。
ただし、法人の印鑑証明の発行は事前に法務局で印鑑登録が必要です。
印鑑登録が済んでいれば、法務局の窓口、法務局の証明書発行請求機、郵送、オンライン申請で印鑑証明の取得が可能です。
郵送やオンライン申請の場合は、手数料も安く法務局に出向く手間を省けますが、発行に時間がかかってしまうデメリットがあるため、すぐに印鑑証明を取得したい場合は、法務局の窓口もしくは証明書発行請求機で発行するのがよいでしょう。
法人を経営するにあたって印鑑証明が必要になる場面が多々あります。経営者は印鑑証明書の発行方法を知り、スムーズな取り引きを心がけましょう。
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- 記事監修
-
- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。