確定申告で屋号欄の記入は必須?何を書けばよいのか、付け方や変更方法も解説
個人事業主やフリーランスがビジネスを立ち上げる際に、大切な看板として用いられる「屋号」。一方で、屋号の申請・登記は義務づけられておらず、確定申告書への記載も必須ではありません。そのため、「屋号は必要なのか?」「書類上はどのように書くべきか?」についてお悩みの方も多いのではないでしょうか。
当記事では、屋号の基礎知識から付け方のポイントやメリット、確定申告との関連性について詳しく解説します。
- 【この記事のまとめ】
- 確定申告書には屋号の記入欄がありますが、空欄で提出しても問題ありません。屋号の記載は義務ではなく任意であり、個人名で活動する場合は屋号の記入は不要です。ただし、屋号と個人名の両方がある場合は、セットで記入することが可能です。
- 屋号を確定申告書に記載しなくてもよいのは、屋号が個人事業主にとって必須の要素ではないためです。開業届の提出時も屋号は任意ですが、屋号を持たない場合や名称が決まっていない場合も記入の必要はありません。
- 屋号は確定申告以外でも、開業・廃業届や名刺、請求書など多くの場面で使用されます。屋号を持つことで社会的信頼が得られ、業務効率が向上するため、特に個人事業主にとって屋号の設定はメリットが多いと言えます。
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確定申告で屋号欄の記入は必須?
確定申告書には屋号の記入欄が設けられていますが、空欄で提出しても手続き上の問題はありません。これらの記載は、義務ではなく任意となるため、書類を埋めるために屋号名を考えなくてもよいことになります。
仮に、個人事業主としての個人名で活動している場合も、屋号の書き込みは不要です。一方で、屋号と個人名の両方を持っているケースでは、「屋号+個人名」をセットで記入しても構いません。屋号欄の書き方には、法的な規定はないのです。
なぜ確定申告の屋号欄は書かなくてもよいの?
確定申告書に屋号を記載しなくてよい理由は、個人事業主・フリーランスにとって屋号自体が営利活動に不可欠なものではないからです。
ちなみに、個人事業主が起業するにあたっては、税務署に開業届を提出する義務があります。こちらの届出書にも屋号の入力欄がありますが、屋号を付けたくないほかに、名称が決まっていない場合にも記入する必要はありません。
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そもそも屋号とは
屋号とは、個人事業者(自営業者)が商業目的で使用する店舗名、事業所名などの名称のことです。「お店の広告塔」や「看板」としての役割を持つほかに、ビジネスの主体・方針を周知する意味でも用いられています。
屋号は、法人の会社名(商号)に該当し、名称を付けることでブランドイメージを高める効果も期待できます。とはいえ、特にフリーランスは使用していない場合も多いです。
また、屋号とよく似た意味合いの言葉に、「雅号」があります。雅号とは、作家や画家などの芸術家が商業用に名づける、風流な別名のことです。具体的には芸名やペンネーム、俳号などがあり、自身の特徴や作風をアピールする役割も担っています。
なお、屋号に関する詳しい内容は、下記リンクでも解説していますのであわせてご参照ください。
確定申告以外で屋号を使うシーン
屋号は確定申告のほかに、以下のような各種手続きやビジネスシーンにおいても多用されています。
- 開業・廃業届
- 名刺
- 事業用銀行口座の名義
- 看板
- 領収書
- 請求書
- 見積書
- 契約書
開業にあたって屋号を設定することで、社会的な信用を得られ、契約や交渉などをスムーズに進めることができます。
また請求書や見積書に屋号を記載できるほかに、屋号付きの銀行口座を作れることから金銭管理がしやすくなります。屋号を用いない場合に比べて、さまざまな場面での業務効率化やビジネスの推進につなげることが可能です。
屋号を付けた方がよいメリット
確定申告時に屋号を登録すると、客観的に事業内容を理解してもらいやすくなるなど、有利に働くケースがあります。そのほかにも、個人事業主・フリーランスが屋号を付けるメリットとしては、以下4つの点が挙げられます。
- 屋号つきの銀行口座を開設できる
- 社会的な信頼度が高まり、商談や取引の可能性が広がる
- 法人化の際に、過去の実績を提示しやすい
- 自身のブランディングやイメージ戦略に役立てられる
事業口座とプライベート口座をしっかり分離させたい場合は、屋号表記を用いるのがおすすめです。また、法人化する際は、過去の業績とともにそのまま名称を引き継げるため、長期的なイメージ戦略にも重要な役割を果たしてくれます。
屋号の付け方
屋号を付ける際は、看板や印鑑などに使用する場面も考慮しながら、慎重に取り決めなくてはなりません。屋号名の決め方にルールはほとんどありませんが、下記に抑えておきたいポイントを3つ取り上げました。
- 事業内容を想像しやすい
- 検索でヒットしやすい
- 覚えやすく読みやすい
各項目の詳細については、具体例を挙げながら1つずつ解説していきます。
事業内容を想像しやすい
屋号は、事業内容を端的に表現したネーミングであることが重要です。以下に、業種別に用いられている屋号の名称をリストアップしましたのでご参照ください。
- 物販:〇〇屋、〇〇商店、〇〇本舗
- ライター業:〇〇文筆事務所、オフィス〇〇
- デザイン業:〇〇デザイン、〇〇事務所、〇〇アトリエ
- web制作業:スタジオ〇〇、〇〇システム
- 士業:個人名+士業名+事務所
- その他:〇〇堂、〇〇コンサルティング、〇〇企画、〇〇工房、〇〇フォトスタジオ、〇〇地名
屋号名を考えるにあたっては、なるべくシンプルで覚えてもらいやすく、ブランドイメージに見合ったものを選択することが大切です。また、営業範囲をある地域を中心に絞りたい場合は、屋号にその地名を加えることも効果的でしょう。
検索でヒットしやすい
屋号はインターネット検索の手間が少なく、容易に発見できる名前にしましょう。アルファベットや数字が混在しているような複雑な屋号は避けたほうが無難です。
具体案としては、文字入力がしやすい短めな造語や、そこにプラスして「スタジオ」「事務所」などの定番のキーワードを組み合わせる方法があります。
検索で上位表示される屋号は集客に有利となるため、類似の名称がほかにないかどうかもあらかじめ調べておきましょう。
覚えやすく読みやすい
屋号には、さまざまな言語・数字・記号などを用いることができますが、語感はなるべくシンプルにまとめましょう。
一般的に読めない外国語や特殊な読み方をする漢字は、記憶に残りにくく、書類上や電話連絡でも不備を招いてしまうかもしれません。
文字数が適度な長さで読みやすく、ユニークかつ事業者の思いが込められた屋号であることが理想的です。
屋号を付けるときのNG例
屋号名には、法人の会社名に比べて細かな規定はありませんが、最低限守らなければならないルールが存在します。屋号を取り決める際に、避けるべきNGワードを以下に3つ列挙しました。
- 法人格にのみ使用が許可されている名称
- 特定の事業や業種を表す名称
- 商号登記や商標登録をされている名称
「〇〇会社」「〇〇法人」などの名称は、会社と誤認されるワードに該当するため、屋号に用いることは違法です。そのほか、「○○銀行」「○○証券」「〇〇保険」も、銀行法や労働金庫法で使用を禁じられています。
すでに商号登記または商標登録されている名前も法律に抵触するかもしれないため、あらかじめ検索しておきましょう。特に、同一の市区町村で同じ名称を登録してしまうと、顧客側の誤解や思わぬトラブルの原因となります。
また、屋号欄に「デザイナー」「プログラマー」などの職業名をそのまま記入してしまうのも不適切な例です。
屋号の登録・変更方法
屋号の登録・変更における法的機関への手続きは、いずれも特に必要ありません。なお、登録に関しては税務署へ「開業届」を提出する際、任意で屋号を記載することで完了します。
一方、屋号の変更についても、確定申告書や決算書に新しい屋号名を記入することで承認されます。あるいは、屋号の変更をリアルタイムで届け出たいケースでは、開業届を改めて提出し直すことでも受理してもらえます。
その場合は、開業届の「その他参考事項」に屋号変更の旨を説明書きするとよいでしょう。
屋号に関してよくある質問
最後に、屋号に関する代表的な質問の回答を紹介します。個人事業主・フリーランスならではの困りごとや、疑問の解消にお役立てください。
青色申告の場合に屋号の記入は必須?
確定申告時の青色申告・白色申告を問わず、屋号欄への記入は義務ではありません。青色申告は白色申告よりも節税効果が高い分、申告内容を詳細に伝える必要がありますが、いずれも屋号は届け出不要です。
屋号付き口座は開設するべき?
個人事業主が屋号付きの銀行口座を開設するメリットは、下記のとおりです。
- 得意先からの信頼感・安心感を得られる
- 公私の区別できるため、金銭管理の利便性が高まる
屋号が入っていることにより、振込時の認識ミスが減るなどの効果にも期待できるでしょう。
また、経理業務や確定申告の手間が省けるなどの利点もあります。なお、屋号付き口座のメリットや開設方法については、以下のリンク先で詳細をご確認ください。
まとめ
屋号は「個人事業者の看板」でありながら、申請・変更の手続き義務がなく、確定申告時の空欄も認められています。一方で屋号には、事業のイメージアップや実務の効率化につなげられるなど、さまざまなメリットがある点も解説してきました。
個人事業主・フリーランスであれば、確定申告をきっかけに屋号を取り決め、ビジネスの新たな足がかりとされる方も少なくありません。屋号の登録は、確定申告書に記載するだけで完了できるため、この記事を参考に自身に合った選択をしましょう。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
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