副業で青色申告はできる?必要書類や提出方法を解説

副業では、青色申告ができる場合とできない場合があるため、注意が必要です。
副業をしている方のなかには、「青色申告ってなに?」「どんなメリットがあるの?」と考えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、副業で青色申告はできるか、青色申告するメリット、デメリット、必要な書類、提出方法について詳しく解説します。
副業で青色申告できるか知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
- 【この記事のまとめ】
- 副業では、青色申告ができる場合とできない場合がある
- 副業の青色申告では、メリット・デメリットの両方を確認しておくべき
- 副業で青色申告する際は、青色申告決算書・確定申告書・寄附金受領証明書・控除証明書・本人確認書類などを揃え、窓口や郵送などで提出する
副業で青色申告はできる?

副業をしているからといって、必ず青色申告が利用できるわけではありません。利用するためには一定の条件を満たす必要があるため、注意しなければなりません。
ここでは、青色申告の概要や条件などについて解説します。
そもそも青色申告とは?
青色申告とは、日々の取引を所定の帳簿に記帳し、その記帳に基づいて正しく確定申告を行うことで税金などの面で優遇を受けられる制度です。
確定申告は1年間の所得から、源泉徴収されていた所得税や所得控除を加味して所得税を計算する手続きを意味します。
確定申告の際に青色申告を行うと、基礎控除48万円(所得額合計が2,400万円以下の場合)に加えて最大65万円の青色申告特別控除を適用できます。
節税を重視する人にとって、青色申告は欠かせない制度といえるでしょう。ただし、副業では青色申告がほとんど利用できないため、注意が必要です。
以下の記事でも青色申告について解説しているため、あわせてご参照ください。
ほとんどは青色申告できない
青色申告するためには、以下の3種類の所得のうち、いずれかを得ている必要があります。
- 事業所得
- 山林所得
- 不動産所得
事業所得は自分自身で事業を行って得た所得、山林所得は山林の伐採または譲渡によって得た所得、不動産所得は不動産の賃貸や売買によって得た所得を指します。
上記以外の所得は青色申告の対象外となるため、副業の多くが利用できない可能性が高いです。所得の種類には他にも給与所得や譲渡所得がありますが、同様に青色申告は利用できません。
サラリーマンが副業を行う場合でも業務の内容によっては雑所得に分類されるため、青色申告を選択できないケースがほとんどです。
どうすれば青色申告できるのか
副業で青色申告するためには、事業として行っていることが必要です。
青色申告をしたい場合は、青色申告を適用したい年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したには、その事業開始の日から2月以内。)までに管轄の税務署に所得税の青色申告承認申請書を提出する必要があります。
以下の記事では青色申告に開業届が必要な点について解説しているため、あわせてご参照ください。
白色申告との違い
事業所得、山林所得、不動産所得の確定申告では、青色申告のほかに白色申告が利用できます。両者には以下のような違いがあるため、あらかじめご確認ください。
青色申告 | 白色申告 | |
記帳義務 | あり | あり |
記帳方法 | 複式簿記(10万円特別控除の場合は簡易な帳簿も認められる) | 簡易な帳簿 |
事前申請 | 必要 | 不要 |
節税効果 | 大きい | 小さい |
青色申告と白色申告はどちらも記帳義務がある点は共通していますが、申告できる所得の種類、記帳方法、事前申請、節税効果の面で異なります。
また、青色申告は一般的には簿記の原則に従って記帳するのに対し、白色申告は簡易な帳簿で記帳する必要があります。
その他、事前申請の有無や節税効果の大小が異なるため、どちらが自分に適しているのか状況に応じて判断すると良いでしょう。
副業で青色申告するメリット

副業で青色申告できる人は一部に限られますが、仮にできた場合は青色申告特別控除が受けられたり、損失を最大3年間繰り越せたりなど、さまざまなメリットがあります。
ここでは、副業で青色申告するメリットについて詳しく解説します。
青色申告特別控除を受けられる
青色申告特別控除では最大65万円の控除が受けられ、所得額から差し引いて計算できるため、適用されれば大幅な節税効果が見込めます。
しかし、最大65万円の控除を受けるためには特定の条件を満たさなければいけません。
- 事業所得があること
- 複式簿記で記帳を行うこと
- 青色申告決算書(貸借対照表+損益計算書)を添付すること
- 申告期限内に申告すること
- e-Taxを利用すること(例外あり)
青色申告特別控除で最大65万円の控除を受けるためには、事業で得た所得に関して複式簿記で記帳を行い、青色申告決算書を添付しなければなりません。
ほかにも申告期限内に申告したり、e-Taxを利用したりする必要があります。
副業を始めたばかりの人は青色申告をする機会自体ほとんどありませんが、もし青色申告する場合は特定の条件を満たしておく必要があることを忘れないようにしましょう。
貸倒引当金を経費計上できる
貸倒引当金を経費計上できるのも、青色申告のメリットです。
青色申告を利用すると、売掛金の未回収に備える資金である貸倒引当金を経費として計上できるため、節税効果が期待できます。具体的には売掛金の最大5.5%を計上できます。
貸倒引当金の経費計上は白色申告でもできますが、一括評価ではなく個別評価という方法で実施されるのが通例であるため、より端的に節税効果を生むなら青色申告の方が便利です。
家族の給与を経費計上できる
青色申告の承認を受け、青色事業専従者給与に関する届出手続を行うと、家族に対する給与を青色事業専従者給与として必要経費にできるため、節税効果が期待できます。
なお、家族の給与の経費計上は白色申告では認められていませんが、事業専従者控除が受けられます。控除額は具体的には配偶者で86万円、その他の親族で50万円となります。
事業にかかる費用を経費計上できる
事業を始めるにあたって購入した設備や備品を経費計上できるほか、事業で継続的に必要となるランニングコストの一部を経費計上できます。
副業で事務所を借りる人は少ないですが、事業用として物件を借りた場合は家賃も経費計上できるため、より節税効果が期待できるでしょう。
なお白色申告でも経費計上は可能です。
損失を最大3年間繰り越せる
青色申告では、損失を最大3年間繰り越すことが可能です。
例えば、確定申告で100万円の損失が発生した場合、翌年の所得から100万円を差し引けます。仮に翌年の所得が30万円の場合、さらに翌年の所得を70万円差し引けます。
所得を差し引くことができれば、課税される所得が減り、より節税効果が見込めるため、損失が発生しそうな場合は青色申告で繰り越すと安心です。
副業で青色申告するデメリット

ここでは、副業で青色申告するデメリットについて詳しく解説します。
記帳が負担になる
青色申告を利用するためには、日々の取引について一般的に複式簿記で記帳する必要があるため、帳簿ができない人にとってはハードルが高いと感じるかもしれません。
作成した帳簿は7年保存する必要があるため、管理面でも一定の負担がかかります。
一方で、帳簿は経営状況を明確にする資料となるほか、収入があることを証明する資料にもなるため、今後も一定の収入を得られる見込みがある場合は、作成しておくと良いでしょう。
税務署に申請が必要となる
青色申告するためには、あらかじめ管轄の税務署に申請する必要があります。
事前に申請していない場合は、確定申告時に青色申告が利用できないため、注意しなければなりません。
具体的には、申告を適用したい年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したには、その事業開始の日から2月以内。)までに管轄の税務署に所得税の青色申告承認申請書を提出する必要があります。
例えば、2024年以前から事業を行っている人が2025年分の所得に対して青色申告する場合、2025年3月15日が提出期限です。
帳簿の保存が必要となる
青色申告に限ったことではありませんが、帳簿に関する書類は7年間保存する必要があります。
確定申告に関する書類はもちろん、現金預金の取引に関する書類も7年間保存する必要があるため、注意が必要です。
一方で、帳簿に関連する書類はプリントアウトせずデータのまま保存できるため、工夫次第では保管スペースの圧迫を避けられます。
むしろ、電子帳簿保存法により2024年1月1日から帳簿の電子保存が義務化されているため、データで受け取った証憑類はデータで保存する必要があります。
副業の青色申告に必要な書類

副業で青色申告したい場合、青色申告決算書・確定申告書・その他の証明書類が必要です。
ここでは、副業の青色申告に必要な書類について詳しく解説します。
青色申告決算書
青色申告決算書は、1年間の収入や経費をまとめる書類です。
全部で4枚あり、以下の書類で構成されています。
- 1枚目:損益計算書
- 2~3枚目:損益計算書の内訳
- 4枚目:貸借対照表
青色申告の際は上記の書類を作成し、管轄の税務署に提出します。なお、青色申告決算書には一般用様式のほかに、現金主義様式・農業所得様式・不動産所得様式があるため、要注意です。
確定申告書
確定申告書は、1年間の所得をまとめる書類です。
全部で2枚あり、以下の書類で構成されています。
- 第一表
- 第二表
青色申告の際は、上記の書類を作成し、管轄の税務署に提出します。
なお、建物や土地、株式の譲渡所得がある人など、分離課税の申告をする人は第三表、損益申告をする人は第四表も必要となるため、注意しましょう。
その他の証明書類
青色申告の際、所得控除や税額控除を受ける場合は証明書類の添付が必要です。
- 所得控除:医療費控除や生命保険料控除など全部で15種類
- 税額控除:住宅ローン控除などが該当
所得控除は所得税の計算時に所得から差し引ける金額で、基礎控除や生命保険料控除など全部で15種類、税額控除は所得税から直接差し引ける金額で、住宅ローン控除などが該当します。
上記の控除を申告する際は証明書類が必要なため、状況に応じてまとめておきましょう。
どちらも忘れずに申告することで、所得税のみならず住民税の節税にもつながるため、確定申告時には必要な書類をすべてまとめておくことが重要です。
副業の青色申告の提出方法

副業の青色申告の提出方法は、主に以下の三つです。
- e-Taxで提出する
- 窓口で提出する
- 郵送で提出する
e-Taxは、国税電子申告・納税システムのことで、インターネット上で確定申告などの各種手続きができるシステムです。
e-Taxを利用する場合は利用者識別番号を取得する必要がありますが、すべてインターネット上で完結するため、わざわざ窓口に出向いたり郵送したりする必要がありません。
管轄の税務署では窓口や郵送での提出にも対応しているため、自分に合った方法で提出してください。
提出方法がわからない場合は、税務署に直接相談しましょう。どのような書類を作成すれば良いかわからないという人は、職員に相談するか、税理士に代行してもらうことをおすすめします。
まとめ
副業は収入が限られるため、青色申告をすることはほとんどありません。年間で数万円〜十数万円ほどしか所得がない場合は、確定申告自体が不要です。
一方で、副業の年間所得が20万円を超える場合は確定申告が必要となるため、数十万円ほど稼ぐ見込みがある場合は、確定申告の準備を進めましょう。
なお、起業して本格的に仕事をする場合は起業の窓口にご相談ください。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
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