個人事業主でもIT導入補助金を利用できる!申請方法や注意点を解説
個人事業主でも、IT導入補助金を利用してITツールを導入することができるのをご存じでしょうか。
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等がITツールを導入する際に、その経費の一部を国が補助する制度です。
補助金の種類によって申請枠や公募回数、必要な書類などが異なるため、事前の確認が重要となります。
この記事では、個人事業主がIT導入補助金を利用する際のポイントや申請方法、必要書類について詳しく解説します。
- 【この記事のまとめ】
- IT導入補助金は、中小企業や個人事業主がITツールを導入する際、国が経費の一部を補助する制度です。労働生産性の向上や業務効率化を目的としており、会計ソフトや受発注システムなど幅広いツールが対象となります。
- IT導入補助金は個人事業主も利用可能で、要件を満たせば補助を受けられます。小規模事業者の場合、補助率が優遇される枠があり、日本国内での事業活動や最低賃金遵守などの条件も必要です。
- IT導入補助金には複数の申請枠があり、通常枠やインボイス枠、セキュリティ対策推進枠などがあります。補助率や補助額は導入するソフトウェアやハードウェアの種類、事業規模に応じて異なります。
- IT導入補助金とは?
- 個人事業主でもIT導入補助金を利用できる!
- IT導入補助金の申請枠
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数社連携IT導入類枠
- IT導入補助金を利用する方法・手順
- 導入する内容を決める
- アカウントを準備する
- 交付を申請する
- 審査結果を受け取る
- 対象となる事業を行う
- 補助金を受け取る
- 個人事業主がIT導入補助金を申請する際に必要な書類
- 個人事業主がIT導入補助金を利用する際の注意点
- 申請書類を事前に準備しておく
- 補助金の対象を確認しておく
- 補助金の種類ごとに公募回数が異なる
- ホームページ作成には適用されない
- 補助金を賢く活用したい方は、「起業の窓口」のサービス利用を!
2024年11月1日より、フリーランス新法(フリーランス保護法、フリーランス保護新法)が施行されます。
組織に所属せずに働くフリーランスが安心して働ける環境を整備するために、フリーランスと企業などとの発注事業者間の取引の適正化(契約書等により取引条件を明示する)が主な目的です。
詳しくは次の記事をご覧ください。フリーランス新法の概要、制定された背景や具体的な内容などを解説しています。
IT導入補助金とは?
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者等がITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入する際に、その経費の一部を国が補助する制度のことです。
労働生産性の向上や業務の効率化を目的としており、ITツールの導入を通じて、事業者の競争力強化を図ることを目指しています。
補助対象となるITツールは、会計ソフトや受発注システム、顧客管理システムなど、幅広い分野にわたります。
補助金額は、ITツールの導入経費の一部が対象であり、補助上限額は5万円から3,200万円までさまざまです。
ITツールを導入したい中小企業・小規模事業者等にとって、IT導入補助金は非常に魅力的な制度といえるでしょう。
補助金と助成金の違いについては、こちらの記事をご覧ください。
個人事業主でもIT導入補助金を利用できる!
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が主な対象ですが、個人事業主でも利用することができます。
個人事業主がIT導入補助金を利用するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
まず、「中小企業・小規模事業者等であること」が条件の1つです。一部の申請枠で優遇が受けられる「小規模事業者」の定義は以下の通りです。
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):常勤の従業員が5人以下
- サービス業のうち宿泊業・娯楽業:常勤の従業員が20人以下
- 製造業そのほか:常勤の従業員が20人以下
参考:IT導入補助金2024事務局ホームページ|TOPPAN株式会社
小規模事業者の定義を満たすことで、通常よりも補助率がよくなるなどの優遇を受けられます。
ただし、これらの定義以外にも、「日本国内で事業を営んでいること」や「従業員の最低賃金が地域別最低賃金以上であること」などの条件も満たす必要があります。
また、IT導入補助金には審査があり、その審査でITツールを導入することによる適格性などが評価されるため、申請したからといって必ず補助金を受け取れるとは限りません。
申請にあたっては、ITツール導入の目的や効果、導入計画などの事業計画の策定が求められます。
IT導入補助金の申請枠
IT導入補助金には、事業者のニーズに合わせたさまざまな申請枠が用意されています。
通常枠
通常枠は、幅広い業種の中小企業・小規模事業者等が対象となる申請枠です。
企業の課題やニーズを解決できるITツールの導入費用を軽減させる枠であり、生産性向上や業務の効率化を目指せます。
以下のような業務プロセスを保有するソフトウェアを導入する際に申請が可能です。通常枠の対象となる業務プロセスは次の通りです。
- 顧客対応・販売支援
- 決済・債権債務・資金回収管理
- 供給・在庫・物流
- 会計・財務・経営
- 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
- その他業務固有のプロセス
- 汎用・自動化・分析ツール(単体での使用は不可)
通常枠の補助率は1/2以内です。補助額は、1プロセス以上が5万円〜150万円未満、4プロセス以上が150万円〜450万円以下となります。
インボイス枠(インボイス対応類型)
インボイス枠(インボイス対応類型)は、インボイス制度の導入に伴い、中小企業や小規模事業者の会計ソフトや決済ソフトなどのソフトウェア、それに付随して導入するPCやタブレットなどのハードウェアの購入を支援する枠です。
インボイス枠(インボイス対応類型)の目的は、インボイス制度に対応した企業間取引のデジタル化を推進することにあります。
補助率と補助額は、ソフトウェアとハードウェアの種類によってそれぞれ異なります。
【インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフト】
補助率 | 補助額 |
---|---|
3/4以内、4/5以内※1 | 50万円以下※2 |
2/3以内 | 50万円超〜350万円以下※3※4 |
【PC・ハードウェア等】
補助対象 | 補助率 | 補助額 |
---|---|---|
PC・タブレット等 | 1/2以内 | 10万円以下 |
レジ・券売機等 | 20万円以下 |
※1 中小企業は3/4、小規模事業者は4/5
※2 会計・受発注・決済のうち1機能以上を有することが機能要件
※3 補助額50万円超の際の補助率は、補助額のうち50万円以下については3/4(小規模事業者は4/5)、50万円超については2/3
※4 会計・受発注・決済のうち2機能以上を有することが機能要件
参考:インボイス枠(インボイス対応類型)|IT導入補助金2024
小規模事業者に該当する個人事業主がインボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフトを導入する場合、補助額が50万円以下の部分については、補助率が4/5以内となります。
インボイス枠(電子取引類型)
インボイス枠(電子取引類型)は、インボイス制度に対応した受発注システムの導入に活用できる申請枠です。
発注者がインボイス制度対応のITツールを導入し、受注者である中小企業・小規模事業者に対して無償で提供する場合に、その導入費用の一部を支援するという制度です。
補助率は中小企業・小規模事業者が2/3以内で、その他事業者が1/2以内です。補助額については、事業者の種類に関わらず0~350万円以下となります。
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠は、サイバー攻撃等のセキュリティリスクへの対策を講じるためのITツール導入に活用できる申請枠です。この申請枠の目的は主に以下の2つです。
【セキュリティ対策推進枠の目的】
- サイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避すること
- サイバー攻撃被害が供給制約や価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや、生産性向上を阻害するリスクを低減すること
補助率は1/2以内、補助額は5万円〜100万円です。
セキュリティ対策の必要性が認められることが条件となるため、自社のセキュリティリスクを適切に評価しておく必要があります。
対象となるサービスについては、「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」をご確認ください。
複数社連携IT導入類枠
複数社連携IT導入類枠は、複数の中小企業・小規模事業者等が連携してITツールを導入する際に利用できます。
データの収集・分析を利用したデジタルマーケティングを行うことで、当該地域の来街者増や回遊性向上等を図り、生産性の向上に繋げられます。
複数社連携IT導入類枠の補助率と補助額については以下の通りです。
補助対象経費 | 補助率 | 補助額 | ||
---|---|---|---|---|
基盤導入経費 | ソフトウェア | 3/4以内、
4/5以内※1 |
50万円以下×グループ構成員数 | 3000万円以下※2 |
2/3以内※1 | 50万円超〜350万円以下×グループ構成員数 | |||
ハードウェア(PC・タブレット等) |
1/2以内 |
10万円×グループ構成員数 | ||
ハードウェア(レジ・券売機等) | 20万円×グループ構成員数 | |||
消費動向等分析経費 | 2/3以内 | 50万円×グループ構成員数 | ||
その他経費 | 2/3以内 | 200万円以下※3 |
※1 補助額のうち50万円以下については補助率は3/4以内(ただし、小規模事業者は4/5以内)、50万円超については補助率は2/3以内
※2 基盤導入経費と消費動向分析経費の合計額は3000万円が上限
※3 補助額上限は【基盤導入経費と消費動向等分析費の合計額】×10%×2/3(補助率)もしくは200万円のいずれか小さい額
IT導入補助金を利用する方法・手順
IT導入補助金を利用するには、一定の手順を踏む必要があります。
導入する内容を決める
IT導入補助金を活用して導入するITツールの内容を決めるためには、自社の課題や目的を明確にし、それに合致したITツールを選定することが重要です。
導入計画を立てる際は、ITツールの活用方法や期待される効果なども具体的に示すことが求められます。
また、選定したITツールが補助対象となるかどうかを確認することも忘れてはいけません。
アカウントを準備する
IT導入補助金の申請には、「gBizIDプライム」アカウントの取得が必要です。
「gBizIDプライム」は、オンラインでの行政手続きを行うために必要なアカウントです。取得には、マイナンバーカードもしくは、印鑑証明書もしくは印鑑登録証明書、登録印などが必要となります。
gBizIDの公式サイトの申請書作成画面で、アカウントの取得が行えます。
また、「SECURITY ACTION」の宣言と、「みらデジ」ポータルサイトでの「経営チェック」も申請前に行いましょう。
交付を申請する
「gBizIDプライム」アカウントを取得後、IT導入補助金の交付申請を行います。そのためには導入するツールを登録している支援事業者に支援を依頼する必要があります。IT導入支援事業者よりマイページの開設などのサポートを受けることで初めて交付申請に進むことができます。
IT導入支援事業社と協力をして交付申請を行うため、信頼できる支援事業者を見つけることが大切です。
審査結果を受け取る
交付申請後、事務局による審査が行われます。
交付が決まると、交付決定通知書として申請者に通知されます。
なお、交付決定前の契約や発注は補助金の対象外となるため、ITツールの契約や購入は交付が決まってから進めるようにしましょう。
対象となる事業を行う
交付決定通知書を受け取ることで、いよいよ対象となる事業を開始することができます。
補助対象となるITツールを導入し、導入計画に沿って事業を進めていきます。
事業完了後は報告書の提出が必須となるため、請求書や支払った証明となる用紙は必ず保管しておきましょう。
補助金を受け取る
事業完了後は、IT導入補助金の実績報告書を提出します。
実績報告書では、事業の成果や補助金の使途などを詳細に報告する必要があり、事業計画書との整合性が求められます。
事務局による確定検査が行われ、補助金額が確定した後、指定の口座に補助金が振り込まれるという流れです。
補助金の受け取りをもって、IT導入補助金の一連の流れは完了となりますが、補助終了後も効果の報告が必要です。
個人事業主がIT導入補助金を申請する際に必要な書類
個人事業主がIT導入補助金を申請するためには、事前にいくつかの書類を準備する必要があります。
まず、「gBizIDプライム」アカウントの取得に必要な書類として、マイナンバーカードもしくは、印鑑登録証明書と登録印が挙げられます。
個人事業主がIT導入補助金を利用する際の注意点
個人事業主がIT導入補助金を利用する際には、以下のような注意点があります。
申請書類を事前に準備しておく
前述した通り、IT導入補助金の申請には、さまざまな書類の提出が求められます。
特に、「gBizIDプライム」アカウントの取得に必要な書類や、交付申請時の事業計画などは、準備に時間を要する場合があります。
申請期限に間に合わないと、補助金が申請できなくなるため、早めに準備を始めることが大切です。
また、申請書類の記載内容に不備や誤りがあった場合は、修正を依頼され時間がかかったり、書類不備ということで却下されたりする可能性があるため、十分に注意して書類を作成しましょう。
補助金の対象を確認しておく
IT導入補助金の対象となるITツールは、申請する補助金の種類によって異なるため、事前に補助金の対象を確認しておきましょう。
ITツールの導入費用や利用期間なども、補助金の対象となる条件が設けられている場合があります。
これらの条件を満たしていない場合、補助金の交付を受けられないこともあるため、対象や条件には注意が必要です。
補助金の種類ごとに公募回数が異なる
IT導入補助金には、通常枠やセキュリティ対策推進枠など、さまざまな種類があります。
補助金の種類ごとに公募の回数や時期が異なるため、自社が申請する補助金の公募スケジュールを確認しておくことが重要です。
例えば、2024年の通常枠では、2024年7月時点で2024年中に6回の実施が予定されていました。それぞれ締切日や交付決定日、事業実施期間が異なるため注意が必要です。
補助金の公募スケジュールについては、IT導入補助金2024の公式サイト「事業スケジュール」で確認できます。
ホームページ作成には適用されない
2023年度までは「デジタル化基盤導入枠」という枠があったため、ECサイトを補助金を使って作成することができました。
しかし、「デジタル化基盤導入枠」は既に廃止されているため、2024年度からは原則として、個人事業主がIT導入補助金を利用して自社や顧客のECサイトを作成することはできません。
ホームページの作成は2023年でもIT導入補助金の対象外です。
2024年度からは、「インボイス枠(インボイス対応類型)」が登場し、会計ソフトや受発注ソフトなどのソフトウェアが主な補助対象となりました。
補助金を賢く活用したい方は、「起業の窓口」のサービス利用を!
IT導入補助金は、個人事業主にとってITツールの導入コストを抑えつつ、業務効率化や生産性の向上を図るための魅力的な制度です。
補助金を利用するためには、申請の内容次第では最低賃金などの要件を満たす必要がありますが、要件を満たせば幅広いITツールの導入に活用できます。
申請するにあたっては、「gBizIDプライム」アカウントの取得や事業計画の作成など、正確な手順を踏む必要があります。
また、補助金の種類や対象となるITツール、公募スケジュールなどを事前に確認し、計画的に申請を進めることが重要です。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修のもとに制作したものです。
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