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インボイス制度で領収書はどう変わる?領収書作成のルールと発行・受領の注意点

インボイス制度で領収書はどう変わる?領収書作成のルールと発行・受領の注意点
【この記事のまとめ】
  • 土インボイス制度により、領収書は「適格請求書」または「適格簡易請求書」の一つとなり、特定の記載内容が必要です。
  • 取引年月日、登録番号、適用税率などが含まれ、仕入税額控除を受けるための重要な証拠書類としての役割を果たします。
  • 適格請求書の発行に必要なシステム構築、電子インボイスへの対応、領収書の保存・管理方法について把握しておくことが重要です

インボイス制度の実施により、領収書の記載内容にも変化が生じたため、領収書の発行や受領をしている企業は新しい対応が求められています。
しかし、インボイスに対応しきれていない企業も多く、何から手をつければいいか悩んでいる方も少なくありません。本記事では、インボイス制度における領収書がどのように変化したのか、領収書作成のルールや発行・受領時の注意点、仕入税額控除への対応などについて解説していきます。
領収書を正しく扱うためにも、新しい変化に対応するための準備を始めましょう。

インボイス制度による領収書の変化

インボイス制度による領収書の変化

最初に、インボイス制度によって領収書がどのように変化するのか、どのような役割を持っているのか解説します。領収書を正しく扱うためにも、基礎的な部分はしっかりと理解しておきましょう。

領収書は「適格請求書」のひとつ

インボイス制度における領収書は、適格請求書または適格簡易請求書の位置づけにある書類です。適格請求書とはインボイスの正式名称で、仕入税額控除を受けるために必要な取引内容を証明する証憑書類のことを指します。
領収書だけでなく、仕入明細書や納品書も適格請求書に含まれるため、仕入額控除を受ける際は必要事項をすべて記載しなければなりません。また、適格請求書を発行するためには、課税事業者にならなければならないため、適格請求書発行事業者に登録申請をして認められる必要があります。
領収書は取引の記録を残すだけでなく、仕入税額控除を受けるための証拠ともなるため、より重要な書類として扱われるようになりました。

領収書の保存義務と保存期間

適格請求事業者は、返品や値引きなどの取引を証明する適格返還請求書の交付や、修正した適格請求書の交付を行う義務もあります。
さらに重要なのは、交付した適格請求書の保存義務と保存期間についてです。
保存義務は、適格請求書の写しを保存する義務を指し、7年間の保存期間を守らなければなりません。保存方法については紙媒体で保存するか、スキャンして電子保存するかのどちらかを選択できます。
電子保存する場合は紙の原本を破棄してもよいとされているため、書類管理の手間や印刷代の節約にもなります。
加えて電子帳簿保存法では、真実性の確保と可視性の確保が重要視されているため、電子帳簿保存法上の要件を満たした適切な書類の保存を心がけましょう。
参考:令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて

領収書作成のルール

領収書作成のルール

インボイス制度における領収書作成では、決められたルールの中で正しい請求書を作成しなければなりません。
ひとつでも間違っていると正式な書類と認められず、訂正や修正を行う手間がかかってしまいます。

適格請求書として必要な記載内容

新しい領収書を作成する際は、インボイス導入前の領収書で記載していた内容も含めて、以下8つの事項を 記載しなければなりません。

  1. 取引年月日
  2. ☆登録番号
  3. 適格請求書発行事業者の名称もしくは氏名
  4. 書類の交付を受ける事業者の名称もしく氏名
  5. 取引内容
  6. 税率ごとに合計した取引金額(税込もしくは税抜き価格)
  7. ☆適用税率
  8. ☆税率ごとに区分した消費税額等

☆の記載内容は、インボイス制度で新しく必要になった記載部分となるため、今までの領収書に追加して記載する必要があります。
また、修正の手間を省くためにも、書類作成時は記載内容に漏れがないか確認をしてから発行しましょう。

適格簡易請求書の発行が可能な事業者と記載内容

インボイスにはすべての項目を記載しなければならない適格請求書と、一部記載内容を省ける適格簡易請求書があり、領収書もその2つの区分に分けられます。
適格簡易請求書であれば、氏名や名称などを書かずに済むため、スムーズな領収書作成が可能です。
しかし、適格簡易請求書の発行が可能な事業所は以下の7つに限られます。

  1. 飲食業
  2. 小売業
  3. タクシー業
  4. 旅行業
  5. 駐車場業
  6. 写真業
  7. その他これらの事業に準ずる事業で不特定多数に資産の譲渡等を行う事業

以上の企業は、不特定多数との取引が必要になるため、業務負担の軽減として適格簡易請求書が認められています。
しかし、氏名や名称の記載は省けますが、登録番号や適用税率、税率ごとに区分した消費税額等は記載しなければなりません。
必要事項がなければ正式書類にはならないため、内容を簡単にまとめるものではなく、必要最低限な情報に絞ることが可能な書類だと考えた方がいいでしょう。

消費税の端数処理

消費税の端数処理については、今まで明確なルールは設けられていませんでした。
しかし、インボイス制度では、領収書も含め1つの適格請求書または適格簡易請求書において、税率ごとに1回の端数処理を行わなければなりません。
つまり商品やサービスごとに端数処理を行うのではなく、インボイス内の税率ごとで1回のみ端数処理が行えるルールとなり、今までの計算方法を変える必要があります。
端数処理の計算方法については、四捨五入や切り捨て、切り上げなどありますが、事業者ごとに任意で決めることが可能です。
したがって、端数処理の方法を全社で統一しておけば領収書の管理に混乱することもなくなるでしょう。
また、取引先から端数処理の方法について希望があった場合は、話し合いをしてどのような処理を行うのか取り決めておくことをおすすめします。

3万円未満の領収書で仕入税額控除を受ける方法

3万円未満の領収書で仕入税額控除を受けるためには、インボイス制度における記載条件を満たしている領収書が必要になります。
これまでは、領収書がなくても帳簿で仕入税額控除を受けられていましたが、3万円未満でも領収書を作成することを忘れないようにしましょう。
しかし、以下のような取引をした場合は領収書の発行が免除されます。

  • 郵便ポストに差し出された場合のみの、郵送切手を対価にする郵送サービス
  • 3万円未満の自動サービス機・自動販売機の課税資産の譲渡等
  • 無条件委託方式かつ共同計算方式で生産者を特定しない場合の、森林組合または漁業協同組合等に委託する農林水産物の譲渡
  • 出荷者から委託を受けた受託者が、卸売りの業務として行う生鮮食品等の譲渡
  • 3万円未満の公共交通機関のバスや鉄道、船舶による旅客の運送

交通機関の運賃については、手回り品料金や入場料金を除く1回ごとの取引価格(税込)のみが該当します。
加えて、自動サービス機類は、サービスの提供から支払いまで機械装置のみで完結する、コインランドリーやATMの手数料などに限定されるため、間違えないように注意しましょう。

インボイス制度における領収書の書き方

インボイス制度における領収書の書き方

続いて、インボイス制度における領収書の書き方について解説します。
今までの領収書に必要項目を追加して記載するだけで正式な書類として認められるため、書き方さえ覚えてしまえばそこまで複雑なものではありません。

適格請求書としての領収書の書き方

適格請求書としての領収書には、今までの領収書に「登録番号」「適用税率」「税率ごとに区分した消費税額等」の追記が必要になります。3つの必須項目が抜けていると正式な書類として認めてもらえません。
以下のポイントに注意して、正しい領収書を作成しましょう。

氏名または名称・登録番号
  • 領収書を発行する事業者の氏名や名称では、屋号がある場合、屋号の記載が必要
  • 登録番号は、法人番号がある事業者は「T + 法人番号」、法人番号がない場合は「T + 13桁の固有番号」を記載しなけれならない
取引内容
  • 今までの領収書には取引内容の明細が書かれていないことがあるため、但し書きで取引内容を記載する必要がある
  • 軽減税率対象の記載も必要なため、「☆」や「※」などの記号を使って見分けられるようにしておくこと。加えて、記載した記号が軽減税率対象の品目を表していることを欄外などで説明する必要もある
税率ごとに区分した適用税率もしくは消費税額等
  • 「税率ごとに区分した消費税額等」を記載する場合は品目ごとで、税込価格と内消費税額をそれぞれ記載する
  • 「適用税率」を記載する場合は、10%対象と8%対象に分け、品目ごとの税込価格をそれぞれ記載する
税率ごとに区分して合計した「税抜き」もしくは「税込み」の対価の額 税込みで合計の対価を記載する場合は、「標準税率10%」と「軽減税率8%」で区分する
例: 5万円の商品(10%)と4万円の商品( 8%)を購入した場合

  • 税込み価格 (10%): 55,000円
  • 税込み価格(8%):43,200円

適格簡易請求書としての領収書の書き方

適格簡易請求書の場合は、今までの領収書に記載する内容に加え、「登録番号」「税率ごとに区分した消費税額」もしくは「適用税率」が必要になります。
登録番号と消費税額・適用税率の書き方は、適格請求書と同様の書き方をすれば問題ありません。
また、小売店や飲食店などでは、不特定多数との取引が発生するため、業務の負担軽減の目的で一部項目の省略が認められます。
国税庁が公開している領収書のイメージサンプルがあるため、どのように まとめればいいかわからない場合は、イメージサンプルを参考に請求書を作成しましょう。
基本的にインボイスに必要な記載内容がすべて書かれていれば、請求書のフォーマットは発行事業者が自由にできます。
出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要 ーインボイス制度の理解のためにー」

インボイス制度の領収書を発行する際の注意点

インボイス制度の領収書を発行する際の注意点

領収書作成のルールや領収書の書き方を覚えたら、次は領収書を発行する際の注意すべきポイントを押さえておきましょう。
業務をスムーズにするだけでなく、情報漏洩などのトラブルを回避するためにも確認しておくことをおすすめします。

適格請求書と適格簡易請求書を発行するためのシステムが必要

適格請求書と適格簡易請求書で求められる記載内容が異なるため、各請求書を発行するためのシステム構築が不可欠です。
氏名や取引内容だけでなく、登録番号や適用税率などを手動ですべて管理するのは現実的ではありません。
番号振りや計算などを自動で行ってくれるシステムがあれば業務の手間を省けます。
また、端数処理の計算方法や品名の書き方などを会社で統一しておくと、領収書管理時に混乱することもなくなるため、領収書作成のルールも取り決めておきましょう。
適格請求書を発行するためのシステム構築と社内ルールの統一は慣れるまで大変ですが、最初に作り上げてしまえば柔軟に対応することが可能です。
企業や個人のみでは、請求書発行のシステムを作るのが難しい場合は、税理士やシステム開発会社などに相談してみるとよいでしょう。

電子インボイスへの対応

システム構築に共通する部分でもありますが、紙媒体ではなく電子インボイスへの対応も考えていかなければなりません。
取引数の少ない小規模な会社であれば紙媒体でも保存は可能です。しかし、大企業や不特定多数の取引を行う飲食業やタクシー業などで手書きをしていては処理が追いつかなくなってしまいます。
また、ペーパーレス化やDXへの関心も高まってきているため、電子メールやEDI取引でのやり取りが必要になる場面も増えてくるでしょう。
電子インボイス化には時間やお金も必要になりますが、業務が円滑になるほか印紙代や印刷代の節約にもなります。

電子データ保存とセキュリティ構築

電子インボイス化するにあたり、電子データ保存とセキュリティの構築も重要です。電子データで交付した領収書は、電子帳簿保存法に則った電子データであれば紙媒体の代替になります。
しかし、電子データで保存するためには、情報漏洩やウイルスによるデータの破損が起こらないようにセキュリティ構築をしなければなりません。暗証番号やウイルス対策ソフトなどはもちろん、日々の管理や更新なども必要になるでしょう。
書類を発行するシステムだけでなく、データを守り完全に運用していける環境が整ってはじめて電子インボイスの準備が整ったといえます。

取引価格と関係なく領収書を発行しなければならない

インボイス導入後は取引価格が3万円未満であっても、領収書を発行しなければ仕入税額控除が適用されません。したがって、取引額の大小にかかわらず領収書を発行する必要があります。
しかし、支払い対価の額が1万円未満である場合は、一定の事項が記載された帳簿のみの保存でも仕入額控除が認められる負担軽減処置が受けられます。
また、負担軽減処置の対象は、基準期間における課税売上高が1億円以下もしくは、特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者である点には注意が必要です。

インボイス制度の領収書を受領する際の注意点

インボイス制度の領収書を受領する際の注意点

最後に、インボイス制度の領収書を受領する側が注意すべきポイントについて解説します。
領収書を発行する時だけでなく、受領する際にも義務があったり、電子インボイスに対応できるように環境を整えたりしなければなりません。

領収書受領時の内容確認が必要

適格請求書や適格簡易請求書を受領する際に、記載事項に抜けや不備があると仕入額控除を受けられなくなってしまいます。
したがって、領収書を受領した場合は、登録番号から記載内容、消費税の区分まで正しく書かれているかどうかの内容確認が必要です。
また、記載されている内容が間違っている場合は、領収書を発行した取引先に修正してもらったものを再度提出してもらわなければなりません。さらに、企業ごとの保存方法や端数処理方法に違いがあると、混乱が生じる可能性もあるでしょう。
以上のことから、さまざまな確認をしなければならない受領担当者の負担も考えていかなければなりません。

適格請求書と適格簡易請求書の仕分け作業が必要

領収書を発行する際には、適格請求書と適格簡易請求書を使い分けがされるため、受領した領収書がどちらなのか仕分ける作業が必要になります。
また、2029年10月までの間は免税事業者も含めた、一部仕入税額控除が受けられる領収書の仕分もしていかなければなりません。
さらに、税率ごとでの分類も含めれば18種類にもわたる区分が必要になるため、手作業で行うのにも限界があるでしょう。
したがって、分類ごとで自動に領収書を仕分けてくれるシステムの導入なども検討する必要があります。

領収書の保存・管理方法の確立

領収書を受領した側にも、保存と管理方法の確立が求められます。紙媒体もしくは電子インボイスを活用するのかは企業によって異なるため、さまざまな保存や管理方法に対応できる体制を作らなければなりません。
したがって、取引先と相談しながら自社がどのようなシステムを構築していくのか慎重に判断する必要があります。現状は対応できていても、新しい方法は時代と共に変化していくため、長い目で見た対応をしていきましょう。

帳簿の保存だけで仕入れ税控除が認められる場合もある

インボイスの領収書作成では、インボイス前の3万円未満の取引のように帳簿の保存だけで仕入税控除が認められるケースが多数存在します。したがって、保存する帳簿が仕入税額控除の対象になるのかについても確認しなければなりません。
どのような領収書が正式の書類として認められるのか、どういった取引が仕入税控除になるのかなど、受領側も発行側も正しい知識を持っておくことが大切です。
どちらかに認識違いがあった場合、間違いが認識されずに保存されたり、修正が必要になったりなどの手間がかかってしまいます。

まとめ

インボイス制度における領収書作成の方法や、領収書の役割などについて解説しました。
領収書は仕入税額控除を受けるための、適格請求書や適格簡易請求書としての効力をもった書類となるため、正しい記載内容を守った適切なものでなければなりません。
紙媒体や電子保存などの保存・管理はもちろん、仕入税額控除が認められる取引や免除を受けられる取引についての知識も求められます。さらに、領収書の仕訳や管理などの業務も増えるため、 円滑に業務が実行できるシステムの構築も大切です。
電子化に伴うセキュリティの構築や、仕分け作業の自動化なども含め、領収書発行・受領のための環境を整えていきましょう。

記事監修
中野裕哲
中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
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