定款とは?なぜ必要なのか、記載内容やひな形・変更方法もわかりやすく解説
会社を設立する際に必要な定款ですが、その詳細について知っている人は多くないのではないでしょうか。
本記事では、定款の概要と定款認証を受けるまでに必要なことを説明します。これから会社を設立したい人や、設立の前に知識が欲しい人はぜひ最後までご覧ください。
- 【この記事のまとめ】
- 定款は会社設立に必須の書類で、会社の目的や組織、運営ルールを記載します。記載内容には必須項目と任意項目があり、会社のルールブックとして機能します。
- 定款は会社運営の基本ルールを定め、トラブルを防ぐ役割があります。公証役場での認証を経て効力を持ち、株主や経営者間の合意をスムーズにします。
- 定款の作成には紙と電子の方法があり、ひな形は日本公証人連合会から入手可能です。変更時は特別決議が必要で、登記申請を伴う場合は費用が発生します。
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定款(ていかん)とは
定款とは、会社を設立する際に必須となる書類のことです。そもそも「定款」という言葉は、「公益法人・会社・協同組合などの社団法人とはの目的・組織・活動などに関する根本規則、またはそれを記載した書面」を意味します。
定款の記載内容は必須項目と任意項目の2つです。会社にとっての決まりごとを記載することから、定款は会社にとってのルールブックともいえます。具体的に記載するのは、会社の住所や名称といった基本情報に加え、事業方針や株についての取り決めなどの項目についてです。
また、定款の保存についてもルールがあります。まず部数については設立した会社側で一部、公証役場で一部をそれぞれ保管します。会社を経営している間は必ず保管を義務付けられています。
定款はなぜ必要?
定款には、大きな目的が2つあります。「会社運営の基本ルールを定める」ためと、「予期せぬトラブルを未然に防ぐ」ためです。
公証役場で定款を提出し認証を受けることで定款は効力が発生します。有効になった定款は会社設立の登記が完了後は会社運営の基本ルールとしての役割を果たします。
また、会社間のみではなく、株主や経営者間にも効力を発揮します。何かの行き違いや異なる主張が生まれた場合、定款によってルールを定めておけばスムーズに治めやすく、また、会社で起こる可能性のある株式取引などの金銭的トラブルからも会社を守ることにつながります。
定款はその他にも、助成金の利用、法人口座の開設、行政機関への各種申請の際に提出を求められることがあります。
定款の作り方とひな形
以前は紙で作成するのが一般的でしたが、最近では電子で作成することも可能になりました。ここでは、紙と電子、それぞれの作り方について説明します。なお、紙・電子どちらでも使えるひな形は日本公証人連合会「定款記載例」にて公開されています。
作成するにあたって、まずはどのような規模感の会社にするのかを決めましょう。会社規模によって記入項目に少なからず差があります。
- 取締役の人数(1名か、1名以上か)
- 取締役会設置の有無(有の場合、取締役3名、及び監査役1名が必要)
定款の記載事項の決まりは変わりませんが、フォーマットの項目の細かさなどに影響があるため、記載する前に考えておきましょう。
定款を紙で作成する場合
下記は日本公証人連合会が公開している、定款の記載例になります。
画像引用元:日本公証人連合会「定款の記載例」
紙で定款を作成する場合、特に記載内容以外の決まりはありません。
- 用紙サイズや向き
保存の利便性を考えると用紙サイズはA3かA4サイズを推奨します。A3の場合は2つ折りにして使用し、A4サイズの場合は片面のみに記載しましょう。用紙の向きは縦向きが一般的です。 - 表紙
表紙の有無にも決まりはありません。作成した場合には、「定款作成日」、「認証日」、「会社設立日」、と社名を記載します。なお、裏ページなどに収入印紙の貼り付けが必要ですので、その分のスペースを空けておきましょう。 - 本文
本文は例のように条と章に分け、関連を結び付けて記載します。日本公証人連合会のページに会社規模ごとのサンプルがありますので、イメージに合ったフォーマットを利用するとよいでしょう。 - 綴じ方
枚数が多いため、平綴じの左2か所止めがおすすめです。見開きの冊子のように仕上がります。枚数が多い場合には、一般的なサイズのホッチキスでは針の強度が弱いため、業務用の大型機を使用しなければまとめて止められません。 - その他の注意事項
訂正の際には可能な限り書き直しをしましょう。万が一原紙での訂正が必要な際には、二重取り消し線を使用します。修正液の使用や塗りつぶしは不可です。また、完成した定款には契印をする必要があります。
定款を電子で作成する際のひな形
電子定款は修正もしやすく、はじめての作成の際には特におすすめです。ただし、電子定款には、必要な専用機器もあり、所持していない場合には購入しなければいけません。
電子定款の際に必要なもの
電子定款の際に必要なものは下記になります。
- マイナンバーカード
- 読み取り用ICカードリーダライタ
- 電子署名が可能な編集ソフト(Adobe Acrobatなど)
電子定款を使用する際の流れ
電子定款を使用する際の流れは下記のとおりです。
- 編集ソフトで定款を作成する
- 記載内容に間違いがないかを公証役場で事前確認を依頼する
- 了承が得られたらPDF化する
- PDF化された定款に電子署名を入れる
- 申請用総合ソフトを利用して電子認証を公証役場に依頼をする
- 公証人の認証を受けたら公証役場に認証済データを受け取りに行く
定款に記載する内容
定款に記載する内容は以下の3つに分かれます。
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
それぞれの詳しい内容を解説していきます。
絶対的記載事項
記載内容は会社法の第27条で定められており、公証役場に定款を提出する際に1つでも不足があると申請が許可されません。いずれの事業種類を選んだとしても、もれなく記載するように心がけましょう。
なお、絶対的記載事項については、修正するのに再申請が必要な場合や、事項によっては変更するのみで費用が発生するものもあります。絶対に修正できないものではありませんが、内容についてはよく検討をしてから記載するようにしましょう。
- 商号
設立する会社の名称を記載します。 - 目的
どのような事業を行うのかを記載します。 - 本店所在地
事業を行う本拠地を記載します。ただ、実際に事業を行っている必要はありません。あくまで書類上のものであり、自宅事務所としたり、レンタルスペースを設定したりすることは可能です。記載必須項目は最小行政区画と定められているため、市町村や東京都の特別区までとして、後々に移転することも考え、最低限にするのが一般的です。 - 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
いわゆる資本金を記載します。法律上では資本金に最低額はないため、1円でも記載可能です。ただし、設立当初の融資を受ける際には実績もほぼないため、資本金は審査項目として重要視される傾向にあります。会社の信用を示す意味も大きいため、記載する金額は現実的且つ不利にならないように考慮しなければなりません。 - 発起人の氏名(名称)及びに住所
定款を作成して会社の設立を企画した人を発起人と呼びます。発起人が7人以上必要なときもありましたが、現在は1人いれば問題はありません。印鑑証明書に記載している正式な住所を記載します。発起人は個人ではなく法人でも可能ですので、会社名を記載する場合もあります。
相対的記載事項
必須項目とは違うものの、該当する項目を設定したときには記載をしなければ効力が無くなる項目です。記載については可能であれば専門家に相談するのをおすすめします。
変態設立事項
相対的記載事項のなかでも、会社の収益につながる最も重要な項目のことです。特に現物出資などの金銭以外の財産部分については、相場が変わってしまうため、他の発起人や出資者とのトラブルにつながる危険性が高く、注意する必要があります。具体的項目は以下の4つです。
- 現物出資
金銭以外の出資についての情報(出資した人の氏名や資産詳細、割り当てる発行株式の数など)を記載する項目です。例えば土地や車、不動産などの資産が現物物資に該当します。 - 財産引受
発起人が会社設立された後を条件として財産を譲り受ける内容(主に誰がいくらくらいの譲渡を許諾したのか)について記載します。 - 発起人の受ける特別利益や報酬
発起人が会社設立を成功した際に受ける報酬について記載します。 - 会社の設立費用
設立時に必要とした例外的な費用を記載します。
株式に関する取り決め事項
株式の設立時発行数や金額、発行総数など、株式に関する事項を定款の記載で取り決められます。ただし、公証役場提出時に定款に未記載の場合でも、株式成立までに発起人全員の同意があれば後から取り決めを行うことも可能です。また、株式譲渡についての規則を記載することもでき、不利益な相手への株式売買の禁止など、予想されるトラブルを防止する項目も記載できます。
各役職、組織、監視体制設置、運用についての決定事項
監査、代表取締役、監査会、取締役、会計参与、会計監査役などの設置、選抜といった取り決めを記載します。これらの役職は設置が必須ではありませんが、設置の有無でその後の経営に影響が発生するため、メリットデメリットを比較して慎重に検討しましょう。
任意的記載事項
内容についての制限はなく、社会的秩序や公序良俗に反する行為などでなければ問題はありません。記載する内容は自由ですが、記載をすることで会社設立の際にルールが制定できます。例は以下のとおりです。
- 定時株主総会の招集時期
- 取締役や監査会役員の人数
- 役員報酬の決定について
- 株券再発行時の方法について
定款の認証手続き
定款は作成しただけでは効力がありません。株式会社の場合は、公証役場で認証を受ける必要があります。
定款を公証役場に持ち込み、各施設に必ず1人以上は在籍する公証人に認証を依頼します。
定款の認証手続きが必要なケース
認証が必要か不要かは、会社の分類によります。設立する会社が「株式会社」の場合は定款の認証手続きが必要です。「合同会社」や「合資会社」、「合名会社」とされる持分会社の場合には、定款は作成しますが認証手続きを必要としません。
定款の認証手続きに必要な書類
認証手続きに必要な書類は以下のとおりです。
株式会社の場合 | 一般社団法人、一般財団法人の場合 | |
---|---|---|
必要書類 |
|
|
2018年11月30日より、新たに実質的支配者の申告が必要になりました。法人の行う事業経営を実質的に支配することが可能な人を申告しなければいけません。株式会社であれば「持ち株50%以上を所持している個人」、社団法人などであれば「事業活動に有効な権力を有する個人」などを申請します。
定款の認証手続きにかかる費用
認証手続きの費用としてかかるものは「認証手数料」、「収入印紙代」、「謄本交付手数料」の3つが一般的です。このうち、「収入印紙代」の4万円は固定費であり、「認証手数料」は会社の設立時の資本金の額によって変わります。
- 100万円未満の場合…3万円
- 100万円以上300万円未満の場合…4万円
- その他の場合…5万円
「謄本交付手数料」は謄本1枚につき250円のため、作成した定款の枚数によって金額は変化するものの、目安としては2000円程度とされています。
なお、電子定款の場合には収入印紙代4万円の支払いが不要になるので、電子証明書付きのマイナンバーカードなどが別途必要にはなるものの、金額面のメリットは大きいといえるでしょう。
定款の認証手続きの流れ
認証完了するまでの具体的な流れは、以下のとおりです。
- 作成した定款を事前に公証人に確認してもらうため、データ送信またはFAXやメールで定款を送付する
- 公証役場から事前チェック結果の連絡を受ける
- 認証手続き可能になり次第、認証希望日を公証役場に予約する
- 必要書類を持参して公証役場に出向く
- 認証を受けて完了
電子定款の場合と紙定款の場合で少し申請の仕方が変わります。また、公証役場によっても手続きの順番が違う可能性もあるため、申請する公証役場に事前に確認すると安心です。
定款を変更する際の手続き
変更する際は、「原始定款」ではなく、「現状の定款(現行定款)」を変更します。厳密には「原始定款」の変更はできません。「原始定款」とは認証時に提出した最初の定款のことであり、「現行定款」は変更を積み重ねて更新した定款を指します。
株主総会決議を行い、決議を採択したのちに申請します。なかでも2つの条件がある特別決議の開催が必要です。条件とは「発行総株数の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合はその割合)を超える株主の出席」、「参加した議決権を所有する株主の3分の2以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にはその割合)の同意」をともにクリアしなければいけません。
定款変更の手続きにおける登記必要事項
内容が「登記必要事項」に該当する場合には、更に法務局へ登記申請を行います。
主な登記必要事項は、以下の通りです。
- 商号
- 目的
- 本店もしくは支店の所在場所
- 資本金額
- 発行可能株式総数
- 発行済み株式総数並びにその種類及び数
- 取締役の氏名
- 代表取締役の氏名及び住所
- 公告方法についての定め
「登記必須事項」は一見定款の「絶対的記載事項」と「相対的記載事項」と一致するように見えますが、相対的記載事項の一部が該当しません。なお、「登記必要事項」に該当しない場合でも、定款変更には特別決議の採択は必須条件です。
定款変更の手続きの流れ
実際に変更手続きをする流れは、以下のとおりです。
- 特別決議を取りまとめ、議事録を作成する
- 登記申請が必要な場合には法務局で登記を行う
- 変更内容によっては税務署や役所への申請を行う
- 作成した議事録は会社で保管する
定款変更にかかる費用
変更にかかる費用は、登記申請不要であれば無料です。登記申請をする場合には申請1件で3万円の「登録免許税」が必要となります。ただし、本店移転の場合のみ別途3万円が必要です。そのため、その他の変更と本店移転がある場合には、各3万円で計6万円が発生します。
さらに、支店所在地の変更には別途9千円がかかります。もし自分で行わずに司法書士に依頼した場合には相応の報酬が必要となり、大体2~7万円程度の費用が追加で必要となるでしょう。
定款に関するよくある質問
ここからは、定款に関するよくある質問に回答していきます。
定款はどこでもらう?
すでに作成された定款をもらうには、2つの方法があります。
- 公証役場へ謄本申請
公証役場で認証を受ける際に1通定款を提出しますが、その際に定款は20年間保管されることになっているため、申請をすると入手できます。ただし、この方法で入手できるのは「原始定款」のみです。定款作成後に定款変更を行った場合の内容は反映されていません。現行定款は基本的に会社保管分しかありませんので注意しましょう。 - 法務局へ閲覧申請
法務局では定款を5年間保管しているため、期間内であれば閲覧することができます。
定款は誰でも取得できる?
定款の取得や閲覧は、誰でもできる訳ではありません。
通常、一般社員は取得ができません。万が一、定款を会社が紛失した場合には、会社で復元することになります。もし、一般社員が定款を取得したいとなった場合は、まず会社に相談してみましょう。
次に閲覧についてです。会社法で定款の閲覧請求権が認められてはいるものの、定款の閲覧請求が可能なのは要求する会社の債権者か株主のみです。
ただし、例外的に閲覧したい会社を管轄している法務局で「登記事項証明書」を請求すると閲覧できるケースがあります。その場合に閲覧できるのは「登記事項」、「取締役氏名」、「事業目的」など登記された項目のみです。
まとめ
定款は会社を設立するうえでなくてはならないものであり、その作成には詳しい知識が必要になります。ひな形を利用すれば自分でも作成可能で、専門家に依頼するよりも費用は安く済むでしょう。ただし、長く保管されるものですし、容易に変更できるわけではないことを留意しておいてください。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。