税務調査の対象になりやすい個人事業主とは?調査の種類や流れ、対策も紹介
個人事業主として起業を考える中で、税務調査の影響や対策について疑問に感じたこともあるでしょう。税務調査は注意しておくべき点が多いものですが、あらかじめ不安を解消する方法もあります。
本記事では、個人事業主が税務調査の対象になるリスクや、それを回避するための実用的なアドバイスをお伝えします。個人事業主としての活動をスムーズに進めるためにも、税務トラブルから守るための知識と戦略を練っておきましょう。
- 【この記事のまとめ】
- 税務調査の対象になりやすい個人事業主には、確定申告を怠ったり、現金商売を主に行っている人が多いです。
- 売上が急上昇している場合や開業から3年以上経過している個人事業主も調査対象になりやすいです。
- 税務調査に備えるためには、帳簿管理や確定申告を正確に行い、誠実に質問に答えることが重要です。
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ぜひ、「確定申告」に関する他の記事もご覧ください。
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税務調査の対象になりやすい個人事業主の特徴
ここでは、税務調査の対象になりやすい個人事業主の特徴を6つ紹介します。
- 確定申告をしていない
- 申告漏れが多い職業に就いている
- 現金商売がメインの職業に就いている
- 売上が急上昇している
- 開業から3年以上経過している
- 売上や経費に不審点がある
それぞれ見ていきましょう。
①確定申告をしていない
確定申告を怠っていると、税務調査の対象になりやすいです。
収入や支出を正確に記録し、誠実に申告する必要があり、これを怠ると税務署に収入の過小申告または不申告と判断されます。調査の対象にされる可能性も高く、確定申告を怠れば不正確な収支情報が税務署に提供され、未納税金の支払いや罰金のリスクが生じます。
正確な確定申告は、税務トラブルを回避し、事業を安定させるために必要なのです。
②申告漏れが多い職業に就いている
たとえばフリーランスのクリエイター、コンサルタント、また居酒屋経営者などは、申告漏れが多い傾向があります。収益を現金取引やクライアントからの直接支払いで受け取っている場合、収支の追跡が難しく、誤って申告を怠るケースが多いためです。
また、専業の個人事業主として活動する方も、複雑な税務ルールに詳しくないことから誤った申告をするリスクがあります。
申告漏れが多いと、税務調査の対象になる可能性が高いです。専業として活動していく場合、収支管理と確定申告は慎重に行いましょう。
③現金商売がメインの職業に就いている
現金を主要な取引手段とする職業、たとえば小売店経営者、美容師、飲食店経営者などは、税務調査の対象になりやすいです。現金取引は収支を曖昧にしやすく、誤って収入を過小申告することがあります。
また現金を頻繁に扱う業種も税務署から正確な記録を要求されやすく、それに応えない場合は調査の対象となりやすいです。
税務トラブルを防ぐためには、厳密な帳簿管理と正確な収支の記録を心がけましょう。
④売上が急上昇している
税務署は急激な売上の変動に注目しており、収益に疑義が生じる可能性がある場合は調査の対象となることがあります。
具体的には、年間の売上が1,000万円以上を超える場合が対象となるひとつの目安です。所得税の納税額が増加するので、税務署に目を付けられやすいです。
なお、所得税に関しては以下の記事でも解説しているので、節税のポイントも含めてぜひご参考ください。
「所得税は年収いくらからかかる?年収の壁や節税するポイントについても解説」
⑤開業から3年以上経過している
開業から3年以上経過していると、新規事業者に比べて過去の経済活動の記録が蓄積されているため、税務署が詳細な調査を行いやすくなっています。
過去3年以上にわたる収支データが税務署に提供されるため、収入の過少申告や支出の過多申告などが明るみに出る可能性も高いです。開業後も税務ルールを遵守し、信頼性のある経済活動を続ければ、税務調査リスクを軽減できます。
⑥売上や経費に不審点がある
収支データに疑義が生じると、税務署はその原因や正確性を確かめるための調査を行う機会が多くなります。
売上に関しては、収入を過小申告している可能性や、嘘の取引記録がある場合に疑われやすいです。一方で経費に関しても、適切でない経費の計上や、事実と異なる経費の証拠が提供されている場合は疑念を抱かれやすいです。
透明性と信頼性の高い帳簿を意識して、税務申告の際は不審点を取り除きましょう。
そもそも個人事業主への税務調査とは?
個人事業主への税務調査は、税務署が納税者の申告内容や納税状況を確認するプロセスです。
税務調査は、「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。それぞれの違いを見ていきましょう。
任意調査
任意調査は、税務署による納税者の自主的な協力を得て行われる税務調査の形態です。この調査では、納税者自身が税務署に対して申し出を行い、自主的に納税処理の正確性を確認してもらうのを意味します。
自分に脱税の思いあたりがなく、申告内容に疑念がないのであれば、任意調査に応じましょう。税務署はあらかじめ調査の実施について通知し、合意を得た上で調査を進行します。この際、調査に協力する姿勢が求められるため、誠実な情報提供を行うことが任意調査の進行にも影響します。
納税者と税務署が協力することで、信頼性ある税務行政が実現可能なのです。
強制調査
強制調査は、脱税の摘発や税務規律の維持を目的に行われるため、逃れるのは難しい調査です。国税局査察部が主導し、納税者の事業所や自宅を訪れ、申告内容や記録の確認を行います。
強制調査は、脱税を隠す悪質である場合や、脱税額が1億円を超えるなど重大な疑念がある場合に、裁判所の令状を取得した上で実施されます。これは、国税当局が脱税や不正申告に対して厳正な対応をとる手段であり、納税者にとっては厳しい状況となるでしょう。
強制調査に対して、納税者が拒否や妨害を行うと、刑事罰の対象となります。そのため、調査の際には国税当局の指示に従うことが法的に求められるのです。
個人事業主が税務調査の対象となる確率は0.5%〜1.0%
個人事業主が税務調査の対象となる確率は、国税庁の最新データによれば、0.5%から1.0%の範囲にあります。
これは、個別の税務申告に基づいてランダムに調査が行われるのではなく、複数の要因に基づいて選出される可能性が示唆されています。
令和3年度に確定申告した人の数 | 656.9万人 |
令和3年度の税務調査(所得税の調査)の数 | 3.1万件令和3年度に確定申告した人の数 |
税務調査の対象は、納税者の収支や申告内容に不審が生じた場合、または特定の要因が重なる場合に選出される傾向です。これには売上の急激な増加、現金主義の事業、過去の調査で不正確な情報提供があった場合などが含まれます。
ただし、税務調査の対象に選ばれる確率は低いため、正確な税務申告と帳簿管理をしておけば安心できるでしょう。
税務調査の流れ
税務調査の流れは、以下の4ステップです。
- 税務署から連絡を受ける
- 税務調査に必要な書類を準備する
- 税務調査が実施される
- 調査結果が届く
順に見ていきましょう。
1.税務署から連絡を受ける
税務調査の流れとして、最初に税務署からの連絡があります。
通常、税務署は特定の年度について調査を行う旨の通知を納税者に送付します。この通知には調査の対象期間や必要な書類の提出期限が明示されます。納税者はこの通知に従い、必要な情報や書類を提供しなければなりません。
税務署からの連絡は、調査の進行において必要なステップであり、誠実かつ迅速な対応が求められます。
2.税務調査に必要な書類を準備する
まず調査の対象期間に関連するすべての帳簿、収支明細、領収書、請求書、銀行取引記録などを整理します。特に、課税対象となる収入と支出に関する正確な証拠書類を記入しておく必要があります。
また、前回の確定申告書類や申告書のコピー、納税証明書、経費の概要なども提出するように指示されることもあるため、準備しておきましょう。
3.税務調査が実施される
税務調査が実施される際、税務署の調査官が指定した期間内で調査作業を行います。通常は、事業所や自宅を訪問し、申告内容や帳簿の点検、収支データの確認が主な作業です。
調査官は納税者に対して、調査の対象期間や目的について説明し、必要な書類や情報の提供を要求します。調査の進行中には、申告内容や法令遵守を確認するために質問が行われ、不明な点や疑義がある場合には詳細な調査が行われます。納税者との協力と正確な情報提供が、税務調査の進行に影響します。
4.調査結果が届く
調査官は調査結果をまとめ、その内容に基づいて納税者に対する詳細な報告書を作成します。この報告書には、調査の結果、発見された問題点や誤り、修正すべき項目、納税者への課税金額の変更などが記載されます。
調査結果が納税者に通知されたら、報告書を確認し、提出すべき書類や納付期限などを確認します。なお、調査の結果に不満や疑義がある場合には、納税者は異議申し立ての権利が使えます。納税者としては、報告書の内容を理解し、必要な修正を行い、適切に税金を納付することが求められるのです。
税務調査の結果が届いたら、迅速かつ正確な対応が必要となるため覚えておきましょう。
個人事業主がするべき税務調査の対策
では、個人事業主がするべき税務調査の対策はどうすればいいのでしょうか。
主な対策方法として、以下の4つがあります。
- 領収書や書類の整理を行う
- 確定申告は正しく行う
- 質問には誠実に答える
- 税理士に相談する
自分に合った方法はどれか、具体的に見ていきましょう。
領収書や書類の整理を行う
領収書や書類の整理は、個人事業主にとって税務調査に備えるための重要なステップです。まず、収支や経費に関する領収書や請求書などの書類を整理し、正確な帳簿を維持するのが税務申告の基本です。なお、整理された書類は調査時や確定申告時に正確な情報提供に役立ちます。
領収書や書類は税務法に基づき、確定申告から7年間保管する必要があります。これは、税務署からの調査や照会に対応するために重要な期間です。
また、電子帳簿保存法に基づき、電子化された帳簿や書類も適切に保存する必要があります。整理された書類は、課税所得の正しい計算や節税対策の立案にも不可欠です。
確定申告は正しく行う
税務調査の多くは、無申告や過少申告のケースから発生しています。そのため、確定申告は正確さが不可欠です。
まず、収支や経費に関する正確な情報を提供し、収入と支出を正しく申告します。また帳簿付けを日頃からきちんと行い、収支を記録して領収書や請求書などを管理しましょう。これにより、確定申告の際に必要な情報を迅速に取得できます。
もっとも重要なのは、ミスのない確定申告を心がけることです。誤った情報や漏れがないように、丁寧に書類を作成し、ミスのないように証拠書類を揃えましょう。
質問には誠実に答える
調査官とのコミュニケーションにおいても、誠実さが信頼を築くカギとなります。税務調査は、毎年正しく申告していても対象になる場合があるものです。
調査官は納税者に対してさまざまな質問を投げかけ、申告内容や記録の正しさを確認します。申告内容に問題なければ、調査は迅速に終了することもあります。そのため、質問に対しては誠実に答えましょう。
税理士に相談する
税理士は、税務調査における安心感と効果的な対応をサポートしてくれるパートナーです。税務調査は一人で対応するのが難しい場合があるため、専門家である税理士に依頼して立ち会ってもらうこともおすすめです。調査官とのコミュニケーションを進めていくため、質問にも的確に答えてくれます。
また、調査の事前にアドバイスをもらえたり、書類の整理や申告内容の点検を手伝ってもらったりすることも可能です。万が一の場合には、税理士から法的なアドバイスに加え、適切な対応策を受けられます。
まとめ
今回は、個人事業主にとって税務調査について詳しく解説しました。起業を考える方々にとって、税務調査は不安要素かもしれませんが、正しい知識を持って対策を講じておけば、安心して対応できます。
税務調査の準備にあたっては、正確な確定申告、領収書や書類の整理、税理士のサポートなどが大切です。ぜひ次の記事を参考にしてください。
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- 記事監修
-
- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。