不動産開業における戦略とは?事前に必要な項目と具体的な流れ

不動産業を開業するには、経営形態の決定や事業資金の調達、運営など、さまざまな準備が必要です。
また、開業に向けた準備だけでなく、開業した後の集客方法や営業戦略、リピート率の向上なども併せて考えておかなければなりません。
不動産業は開業が多い業種ですが廃業数も多いため、準備を怠ってしまうと事業が続かないリスクもあります。
スムーズに不動産業を始めるためにも、準備から開業後の流れまでしっかり押さえておきましょう。この記事では、不動産業開業における戦略や事前に必要な項目、具体的な流れを紹介します。
- 【この記事のまとめ】
- 不動産業は事業内容によって開発・流通・管理に分類されます。
- 不動産業を始めるためには宅地建物取引業免許の取得が必要な場合があります。
- 不動産業を成功させるためには資金計画や集客戦略が重要です。
不動産開業とは

はじめに、不動産業の種類や特徴、必要な資格を詳しく解説します。
不動産業の種類と特徴
不動産業には、大きく分けて開発、流通、管理があります。以下の表は、不動産業の種類と特徴をまとめたものです。
不動産業の種類 | 特徴 | 業務内容例 |
開発 | 土地の仕入れから建物の建設、販売まで一連の流れを手がけます。住宅建設や商業施設の企画、都市開発なども行います。 |
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流通 | 不動産オーナーと顧客を結びます。仲介事業と不動産代理販売があり、仲介手数料によって収益を得るのが特徴です。 |
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管理 | 不動産オーナーから委託を受けて不動産の管理業務を行います。公共施設や商業施設の管理などを行う場合もあります。 |
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不動産業といえば売買仲介や賃貸仲介のイメージがありますが、法人や個人が不動産投資や運用を行うために設立した会社も不動産業に含まれます。
また、不動産業の中には宅建業と呼ばれるものがあり、これは不動産売買や賃貸仲介を行う業者を指します。
不動産開業に必要な資格
不動産業(宅建業)開業に必要な資格は宅地建物取引士(宅建士)です。
不動産業(宅建業)を開業する際、各事務所に一定人数以上の宅建士を設置する義務があります。一定人数とは、一つの事務所の従事者5人に対して1人以上です。
ただし、自身が宅建士を持っていなくても、宅建士を持っている従業員を雇うことで事業を始めることができます。
宅地建物取引士の試験は毎年7月頃に案内が行われ、10月の第3日曜日に試験が行われます。誰でも受験できる試験ですが、合格率は約16%前後と難関です。
不動産開業前に必要なこと

不動産業を開業するためには入念な事前準備が欠かせません。ここでは、不動産開業前に必要なことを解説します。
経営形態の選択
不動産業を開業するにあたって、経営形態を個人事業主か法人のどちらにするか選ぶ必要があります。
個人事業主は開業の経費を抑えつつ、最小限の手続きやリスクで始められる点がメリットです。一方、税金の優遇措置が少なく実績がないと取引先の信用を得るまでに時間がかかります。
法人は、お客様や取引先からの信頼を得やすいメリットがあります。一方、社会保険加入が義務付けられたり、設立にコストがかかったりなど費用面での負担が大きい点に注意が必要です。
それぞれにメリットとデメリットがあり、開業資金や事業規模で最適な経営形態は異なります。
すぐに事業を始めたいものの、多くの資金を用意できないという方は個人事業主からスタートして、一定の売上や利益が出たら法人化にするのもよいでしょう。
開業資金の見積もりと調達
不動産業を始めるにあたって、まずは開業資金の見積もりと資金の調達方法を考えておきましょう。
事務所を設置する場合は初期費用が高くなります。条件を満たせば自宅でも開業できるため、初期費用を抑えるなら自宅を事務所にするのも一つの方法です。
資金調達は自己資金で賄う以外に、第三者から出資を受けたり、日本政策金融公庫から融資を受けたりする方法があります。融資を受ける際は、事業計画の作成や必要書類の準備が必要です。
資金調達に関しては以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
事務所の設置と要件
不動産業を開業するためには、宅地建物取引業免許の審査に通過しなければなりません。宅地建物取引業免許の審査では、事務所に以下の要件が満たされているかチェックされます。
- 従事者人数分以上の事務机と椅子のある執務場所
- 執務場所と明確に区別された応接場所
- 開通済みの固定電話
また、自宅を事務所にする場合は事務所専用の出入口があることや、居住スペースと独立していることが条件です。
新たに事務所を設置する場合は、マンションやオフィスを借りたり、店舗テナントを借りたりするのがよいでしょう。
宅地建物取引業免許の取得方法
宅地建物取引業免許を取得するためには、主たる事務所を置く都道府県に申請を行い、知事の承認を得る必要があります。
免許を取得するためには審査に通過する必要があり、以下の欠格事由に一つでも当てはまると免許の取得はできません。
- 免許を不正取得している
- 破産しており復権を得てから5年経過していない
- 禁固以上の刑に処されたことがある
- 罰金刑を受けてから5年が経過していない
- 暴力団に所属している
- 事務所に専任の宅建士を設置していない
- 心身の故障により宅建業を適正に営むことができない者
- 役員等が欠格事由に該当する
宅地建物取引業免許の取得には、営業保証金の供託が義務付けられています。
この制度は、不動産取引は高額になることから、消費者保護の観点から取引相手が損失を受けた際に損失を弁済するための制度です。
営業保証金の金額は1,000万円ですが、不動産保証協会に加入した場合は60万円(主たる事務所の場合)を納付すれば営業保証金の供託は免除されます。
宅建協会への加入手続き
営業保証金の供託を免除して不動産業を始める場合は、宅建協会または全日本不動産協会に加入する必要があります。
宅建協会に加入する場合は、免許申請後に事務所所在地を管轄する支部に連絡し、必要書類の準備と提出を行いましょう。
入会申込書等の必要書類を持参して支部担当者との面談を行いますが、オンライン申請に対応しているところもあります。
不動産開業までの具体的なステップ

円滑に不動産開業を進めていくためにも、具体的な流れを把握しておきましょう。ここでは、不動産開業までの具体的なステップを紹介します。
STEP1:免許申請に向けた準備
不動産開業のための免許申請に向けて、以下の準備を行いましょう。
- 事務所の場所を決める
- 経営形態を決める
- 宅建士を設置する
事務所の場所を決める際、マンションやテナントを借りる場合は立地や間取りが重要になります。家賃の安さだけでなく、公共交通機関の利便性や人気のエリアを選ぶことがポイントです。
また、再開発エリアであれば単路線より広い範囲のエリアを取り扱うことができます。
STEP2:必要な書類と申請方法
不動産開業の申請窓口は、本店事務所の所在地がある都道府県庁の宅地建物取引業担当課です。
提出が必要な法定書類は都道府県庁で入手し、必要事項を記入していく流れとなります。また、商業登記簿謄本や身分証明書などの公的証明書や、事務所外観・内部の写真も用意が必要です。
必要書類を揃えたら、副本用としてコピーも取っておきましょう。
STEP3:開業後の初期運営のポイント
開業後の初期運営では、他社にない強みを作り差別化を図ることがポイントです。
数ある不動産会社との競争を勝ち抜くためには、「この会社なら任せられる」「この会社なら安心できる」などの信頼感が重要になります。
例えば、マイノリティに特化した物件の仲介に特化したり、ペット物件を取り扱ったりなど、ターゲットを絞ると差別化しやすいでしょう。
また、同業他社や不動産オーナー、地域の工務店など、さまざまな人脈を構築しておくことも大切です。
不動産開業における資金計画

不動産開業では資金計画が重要です。ここでは、不動産開業における初期費用の目安や運転資金の確保、補助金の活用法などを解説します。
初期費用の内訳と目安
不動産業の開業にかかる初期費用の目安は、400〜1,000万円です。不動産開業には以下の費用がかかります。
- 事務所設置費用
- 宅建協会の入会金
- 宅地建物取引業免許の申請手数料
- 営業保証金
- 設備機器費用
- 広告宣伝費
また、開業後3ヵ月程度の運転資金も別途準備することが望ましいです。どれくらいの初期費用がかかるかは、事業規模や形態によっても変わります。
初期費用を抑えるためにはスモールスタートで始め、少しずつ規模を拡大していくのがよいでしょう。
運転資金の確保と管理
不動産業を始めるにあたって、不動産の仕入れやオフィス関連費用、人件費などの運転資金を確保しておく必要があります。
運転資金は月の売上高の3ヵ月分が目安です。月の売上高が100万円なら300万円の運転資金は確保しておきましょう。
開業前は具体的な売上高がわからないため、事業計画書や見込みの資金繰り表を作成して予想を立てておくことが重要です。
融資や補助金の活用方法
不動産業では、融資や補助金を活用することで事業の拡大や安定的な運営につながります。
融資を活用することで、仕入れやプロジェクトにかかる高額な資金の調達も可能となる場合もあります。
また、不動産業に活用できる補助金としてものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金などがあります。
補助金には申請の受付期間が設定されているものもあるため、早めに確認しておきましょう。起業時に活用できる補助金や助成金は以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
不動産開業後の集客戦略

不動産業で収益を安定させるためには、集客が重要です。ここでは、不動産開業後の集客戦略を解説します。
オンライン集客の方法
不動産業の集客では、インターネットを活用したオンライン集客が効果的です。オンライン集客の方法には以下があります。
- 自社ホームページの運用
- SNSの活用
- 不動産ポータルサイトへの掲載
- コンテンツマーケティング
- Web広告
- Googleビジネスプロフィールの活用
- メルマガ
オンライン集客はリアルタイムで情報発信ができ、時間や場所の制約を受けないことがメリットです。
オンライン集客ではターゲット層を明確化し、そのニーズに合致したコンテンツや広告戦略を展開することが重要です。
また、オンライン集客の効果を定期的に分析し、必要に応じて戦略を見直す必要もあります。
オフライン集客の方法
不動産業では、インターネットを使わないオフライン集客も効果的です。オフライン集客の方法には以下があります。
- 新聞広告、折込チラシ
- 看板設置
- イベントやセミナーの開催
- ポスティング
- DM
- CM放送
オフライン集客は顧客と直接接触できる機会を作り、商品やサービスの魅力を伝えやすいことがメリットです。
オフライン集客は、特に中高年層へのアプローチに効果的で、物件の周辺地域をターゲットにすることがポイントになります。
また、オンライン集客と組み合わせると相乗効果が期待できるでしょう。
顧客維持とリピート率向上のコツ
不動産業の集客活動は顧客を獲得するだけでなく、その後も継続的に関わりを持ち、最終的にはリピーターになってもらうことが大切です。
例えば、物件契約後も定期的に連絡を取り、アフターフォローやサービスを充実させることで、顧客満足度の向上につながるでしょう。
具体的には、引越し後の地域や生活に役立つ情報の提供、不安に対するアドバイスなどが挙げられます。
ただし、不動産業は競合他社との競争が激しいため、特定の顧客に時間をかけすぎるのもリスクがあるため注意が必要です。
無理に一人の顧客にこだわらず、見込みの高い他の顧客に切り替えるなど柔軟な対応も欠かせません。
まとめ
この記事では、不動産開業における戦略や事前に必要な項目、具体的な流れを解説しました。
不動産業(宅建業)の開業には事務所、資金、宅地建物取引業免許、宅建士が必要です。これらの条件さえ満たせば、宅建業を始めることができます。
ただし、不動産業で安定した収益を出すためには、ターゲットやニーズに合った事務所の立地、事業形態を明確にすることが大切です。
不動産開業で失敗しないためにも、ぜひ本記事を参考にして効果的な戦略を立てましょう。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修のもとに制作したものです。
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