許認可とは?必要となる業種や具体的な種類について解説

許認可には5つの種類があり、業種によって種類や申請先などが異なります。許認可が必要であるにも関わらず、手続きを行わないまま事業を行うと罰則を受けるケースもあります。スムーズに手続きを進めていくためにも、許認可について正しく理解しておきましょう。
この記事では、許認可の概要や必要となる業種、具体的な種類を紹介します。
- 【この記事のまとめ】
- 事業を始める際には、業種によって必要な許認可の申請が必要になる場合があります。
- 許認可は事業を行う際に必要な手続きで、届出・登録・許可・認可・免許の5種類があります。
- 許認可の費用や申請期間は業種や届出先によって異なるため事前に確認が必要です。
許認可とは

許認可とは、特定の事業を始めるにあたって、必要となる手続きのことをいいます。公共の安全や秩序を維持するために設けられているもので、許認可の手続きを行うことによって事業を行えるという制度です。
申請先となる行政機関は事業の種類によって異なり、都道府県知事や大臣、市区町村長、保健所、警察署、税務署などさまざまです。
また、許認可には有効期限が設けられているものもあり、一定期間が経過すると更新手続きが必要になることがあります。
許認可が必要な理由
許認可が必要な理由は、一定基準を満たした者に対して事業を行う権利を与えることにより、国民の安全や健康を守るためです。
許認可がなければ誰でも自由に事業を始められる状態となり、安全性に問題があったり、低品質のサービスが出てきたりするといったリスクがあります。例えば、食品や医療関連の事業であれば、無許可の営業によって衛生管理が不十分となり、健康被害が生じる可能性もあるでしょう。
また、許認可が必要であるにも関わらず、許認可を取らずに事業を行うと以下のようなペナルティを受けるリスクもあります。
- 営業停止処分
- 刑事罰を受ける
- 金融機関からの借入ができない
- 取引金額の制限
無許可で事業を行うことにより、営業停止処分や刑事罰を受ける可能性があります。
また、金融機関に融資の申し込みをする際には、許認可の証明書類の提出を行うのが一般的です。許認可を得ていなければ提出書類を揃えることができず、融資を受けられなくなってしまいます。
許認可の取得を怠ることにはさまざまなリスクがあるため、事業を始める前には必要な許認可を調べ、早めに手続きすることが大切です。
許認可の5つの種類

一般的に許認可には5つの種類があるため、それぞれの違いを把握しておくことが重要です。
ここでは、許認可の種類と特徴を解説します。
「届出」とは、行政機関への事業内容報告の手続き
許認可の届出とは、行政機関に法令で定められている「事業内容を報告する(届け出る)」手続きです。
行政機関が事業内容を把握し、必要に応じて適切な指導や管理を行えるようにするために存在します。
届出は事業に違法性がなく審査基準を満たしていれば、届出は受理されるのが一般的です。ただし、事業者の判断に任される任意の届出だけではなく、提出しなければ事業が始められない届出もあるため注意しましょう。
届出が必要な例としては、深夜12時以降に酒類を提供する飲食店を営業する場合などがあります。
「登録」とは、名簿に記載され事業が可能になる手続き
登録とは、行政機関に書類を提出して名簿に登録されることで事業を行える手続きのことです。
書類の提出や試験の合格、財産など登録の種類に応じて条件を満たす必要があります。
登録の場合は、名簿に記載されるまで事業を開始できませんが、提出書類に不備がなければ、スムーズに登録が完了します。
登録が必要な事業としては、旅行業などがあります。これらの事業では、自由に事業を行うと利用者が不利な立場になるケースがあることから、登録制となっています。
「許可」とは、審査を経て特定事業が認められる手続き
許可とは、行政機関に申請を行って審査等に通過すると、公共の安全や秩序の維持などが重視されている事業ができるようになる手続きです。
許可が下りなければ事業を行うことはできず、許可なく事業を開始した場合は、処罰の対象となる可能性もあります。
現地調査や詳細な審査を行うケースが多く、要件が備わっていても、行政機関の判断で不許可になるケースもあります。また、届出や登録に比べると時間がかかることも多いため、時間に余裕を持って準備をしなければなりません。
許可が必要な事業として、料理を提供する飲食店であれば「飲食店営業許可」、薬を販売する薬局であれば「薬局開設許可」が必要です。
「認可」とは、基準を満たす事業を行政が認める手続き
認可とは、行政機関が事業者に対して法律で定められた基準を満たしていると認める手続きのことです。通常、事業者が申請を行って、行政機関が確認することで認可されます。
認可は許可とは異なり、禁止されている行為を許すための許認可ではありません。認可が必要にもかかわらず受けずに行われた行為は無効になります。また、認可を取っていなくても行える事業もあります。
例えば、私立学校や幼稚園などは認可が必要である一方、保育園は認可を受けていなくても事業を行うことができます。実際には認可を受けた方が助成を受けやすいなどの特徴があるため、認可を受ける方が一般的です。
「免許」とは、資格を満たし事業開始が認められる手続き
免許とは、行政機関に申請を行って一定の資格を持つ場合に事業の開始を認めてもらう手続きのことです。
免許がなければ事業を行うことができません。免許は高度な専門性、公共の安全に関わる業種に対して設けられているもので、基本的に免許取得には厳格な審査が行われます。
また、事業を行うための免許を申請する際にはあらかじめ必要な資格を取得していることが必須条件です。例えば、宅地建物取引業などが挙げられます。
業種別に見る必要な許認可

業種や事業によって必要な許認可は変わります。
ここでは、業種別に必要な許認可を解説します。
業種 | 許認可の種類 | 申請先 |
---|---|---|
飲食業 | 届出・許可 | 保健所、警察署、消防署など |
小売業 | 許可・免許 |
|
建設業 | 許可 | 都道府県、国土交通省 |
運送業 | 許可・認可 |
|
旅行業 | 登録 | 運輸局または都道府県 |
宿泊業 | 許可 | 保健所 |
不動産業 | 免許 | 都道府県 |
人材派遣業 | 許可 | 都道府県労働局 |
理容・美容業 | 届出 | 保健所 |
介護業 | 許可 | 都道府県または市町村 |
飲食業
飲食業を始めるためには、以下のような許認可が必要となります。
- 飲食店営業許可
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届
- 防火対象物使用開始届出書
一般的な飲食店を開業する場合、保健所に申請して飲食店営業許可を取得しなければなりません。建物を飲食店や店舗の用途で使用する場合は、使用開始の7日前までに管轄の消防署に届出が必要です。
また、午前0時から午前6時までに営業し、店内で主に酒類を提供する場合は、営業開始の10日前までに管轄警察署に届出を行います。ただし、ファミリーレストランなど主食と認められる食事をメインに提供している飲食店は除外されます。
飲食店の営業許可証を得るための条件については以下の記事でも詳しく解説しています。
小売業
小売業を始めるために必要な許認可は事業内容によって異なります。
食肉や魚介類を加工して販売する場合は、保健所の営業許可が必要です。たばこを販売する場合は財務局、酒類を販売する場合は税務署など、販売するものによって申請先が異なります。
また、リサイクルショップや古本屋のように中古品の売買を行う際には、警察署に古物商許可の申請が必要です。許認可までには1ヶ月~2ヶ月ほどかかる場合もあるため、時間に余裕を持ち、申請書類に不備がないように注意しましょう。
建設業
建設業を始めるためには、営業所が複数の都道府県におよぶ場合は国土交通大臣、単一の都道府県内であれば都道府県知事からの建設業許可が必要です。
国土交通大臣の建設業許可の場合は、広範囲での事業展開ができる一方、申請費用が高額で審査が長期化しやすいデメリットがあります。一方、都道府県知事許可は申請費用がおさえられて審査期間が短い一方、事業展開できる範囲が狭くなります。
建設業許可は「軽微な建設工事」のみを請け負う場合には必要ありません。軽微な建設工事とは、以下が該当します。
- 建築一式工事の場合:工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事または延べ床面積が150㎡未満の木造住宅工事
- 建築一式工事以外の場合:工事1件の請負金額が500万円未満の工事
また、建設業許可は下請契約の規模等により「一般建設業」と「特定建設業」に区分されます。工事の全部または一部を下請に出す場合の下請契約金額の総額が税込み4,500万円以上(建築一式工事では同7,000万円以上)の下請契約を締結する場合は「特定建設業」の許可が必要です。
運送業
運送業を営むには、事業内容に応じた許可や認可が必要です。一般貨物自動車運送事業や旅客自動車運送事業は国土交通大臣の許可が必要で、軽貨物運送業は届出制となっています。事業の種類ごとに要件や申請先が異なるため、注意が必要です。
旅行業
旅行業を営むには、観光庁または都道府県知事の許可を受ける必要があります。許可は取扱業務の範囲に応じて「第一種・第二種・第三種旅行業」に分類されます。
宿泊業
宿泊業は、施設ごとに許認可を取得する必要があります。旅館業営業許可は保健所に申請します。また、住宅宿泊事業・旅館業・旅行業では許認可の種類や申請先の行政機関が異なるため、注意が必要です。
不動産業
不動産業を営むには、宅地建物取引業の免許が必要です。申請窓口は各都道府県に指定されています。
人材紹介業
人材紹介業を始めるには、職業を紹介する側と人材を紹介する側、それぞれで許可を取得する必要があります。人材派遣業許可は都道府県労働局に申請します。
美容業
美容室と理容室では、それぞれ別の許認可が必要です。開設届の提出に加え、美容師免許または理容師免許の取得が求められます。理容所、美容所の開設届は保健所に申請します。
介護業
介護保険を利用した介護サービスを提供し、介護報酬を受けるには、自治体に事業者指定申請を行い「指定介護事業者」となる必要があります。介護サービスの種類や事業所ごとに自治体の指定を受ける必要があるため注意が必要です。例えば、訪問介護と通所介護を行う場合、それぞれのサービスごとに指定を受ける必要があります。また、指定介護事業者の要件は提供する介護サービスによって異なります。
その他の業種
上記で紹介した業種以外にも、業種ごとにさまざまな許認可が必要です。例えば、探偵業を始める場合には警察署に届出をしなければなりません。倉庫業を始める場合は運輸局での登録が必要です。
サービス業を始める場合、事業内容によって必要な許認可は異なります。許可のみで事業を始められる業種もあれば、理容・美容業のように専門の免許を持っていなければ事業を始められない業種もあります。
事業を始めるにあたって、どのような許認可が必要か事前に調べておきましょう。
なお、同じ業種でも許認可制度の変更によって申請方法が変わる場合もあります。事業を始める際は、どんな許認可が必要になるかを理解すると共に、最新の情報をチェックするようにしましょう。
許認可の申請方法

事業を始めるにあたって、許認可の申請はスムーズに進めていくことが大切です。
ここでは、許認可の申請方法を解説します。
必要書類の準備
事業を始める際は、その業種で許認可が必要かを確認し、必要であれば書類を準備しましょう。
基本的には業種ごとに申請用フォーマットが用意されており、ダウンロードして必要事項を記入し、そこに記載されている書類を用意します。
書類は事業内容や地域によって異なるため、書類漏れがないように事前確認が重要です。また、特定の業種では資格証明書や実務経験証明などが求められる場合もあります。
許認可が不要な業種であれば、そのまま事業を開始しても問題ありません。
申請先の行政機関
許認可の申請先となる行政機関は、都道府県や国土交通省、保健所、警察署などさまざまです。
基本的には事業所を管轄する行政機関への申請となりますが、事業の規模や業種によっては、省庁の行政機関への申請が必要になることもあります。
行政機関には事前相談窓口が設置されていることが多いため、必要な書類や手続きについて直接確認することも可能です。
申請にかかる期間と費用
許認可申請にかかる期間や費用は、業種や申請先によって大きく異なります。
例えば、飲食業許可の場合は費用が数千円から数万円程度です。一方で、運送業許可の場合は費用が十数万程度かかります。
業種や申請先によっては期間や費用が多くかかる場合もあるため、事前確認をしたうえで事業開始の準備を進める必要があります。
また、許認可は法律の専門家に依頼して進めることも可能です。スムーズに手続きを行える一方で、別途費用がかかるため、予算と相談しながら検討しましょう。
まとめ
本記事では、事業を始めるにあたって行政機関に申請が必要となる許認可について詳しく解説しました。
事業を始める場合、業種によっては届出・登録・許可・認可・免許などの許認可が必要になります。許認可を得ないまま事業を開始すると、場合によっては罰則を受けるケースもあるため注意が必要です。
許認可の種類や費用、期間は業種や申請先によって異なるため、事前に確認しておきましょう。種類によっては費用や時間がかかることもあるため、慌てないためにも早めに調べておくと安心です。
また、許認可にはさまざまな書類や手続きが必要となるため、法律の専門家に依頼して代行してもらうのも選択肢の一つです。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修のもとに制作したものです。
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