新規就農の方法について知ろう!農業を学ぶ方法や必要な資金

自ら開業して農業を始める「新規就農」が注目されています。
新規就農は、年齢や経歴に関わらず、新しいキャリアをスタートできることが魅力ですが、始めるためには十分な事前計画や農地の確保、資金準備などが必要です。
新規就農にかかる課題を解消するため、国や自治体ではさまざまな制度を設けています。国や自治体の支援を有効活用するためには、正しい知識を身に付けておくことが大切です。
この記事では、新規就農の方法や農業の学び方、必要な資金について詳しく解説します。
- 【この記事のまとめ】
- 新しく農業を事業として行うことを新規就農といい、雇用就農と独立就農があります。
- 新規就農するためには、農地の確保や資金調達が必要になります。
- 新規就農で成功するためには栽培品目の選定や販路の確保、収支計画が重要です。
新規就農とは

新規就農とは、新たに農業を事業として始めることです。農地を探すところから始まり、作物の選定や販路の開拓など、すべての工程を自分で行う必要があります。
新規就農は、自らの裁量で農業経営を行えることや、一日のスケジュールが自由に組みやすいことがメリットです。また、地域農業の活性化に貢献し、地域コミュニティの強化にもつながります。
一方、新規就農で収益を得るためには、農業の知識を学んだり、栽培技術を習得したりなどといった努力が必要です。販路を探すための営業活動も必要になるため、メリットだけではなく、事業運営のためのコストにも目を向けることが大切です。
なお、農業を副業で始めたいという方は、以下の記事をご参照ください。
新規就農に向けた知識と技術を習得するには

準備なしで農業を開始してしまうと、失敗するリスクが高まります。成功するためには、必要な知識や技術を事前に習得しておくことが重要です。
ここでは、新規就農に向けた知識と技術を習得する方法を解説します。
農業の基礎知識を学ぶ
新規就農を目指すのであれば、まずは農業に関する基礎知識を学びましょう。
農業に関する知識を深く学ぶ方法として、農業の専門学校やセミナー、講座などがあります。しっかりと農業の知識を身につけたいという方におすすめです。
費用や時間をかけるのが難しい場合は、農業関連の書籍や参考書を購入して独学で勉強するのも一つの手段です。独学は自分のペースで農業の知識をじっくり得たい方におすすめです。
また、農業研修や農業法人で勤務をする方法もあります。それぞれプロの農家の元で働きながら学べるため、農家の仕事や流れを知ることができます。
栽培技術の習得方法
新規就農に向けて栽培技術の習得も重要です。
栽培技術を習得するのであれば、農業研修や農業法人で勤務し、実践的な技術を学ぶのがおすすめです。また、国や自治体、農業系の企業が行っている新規就農者向けのサポート事業に参加するのもよいでしょう。
日本には四季があり、地域ごとの気候に合わせた作物の選定や栽培を行う必要があります。一般的に風土や気候を無視した栽培だと、いい作物はできないため、栽培技術を学ぶ際は地域の風土や気候に目を向けることも大切です。
経営管理スキルの重要性
新規就農では、経営管理スキルも重要になります。
新規就農は農業経営であり、作付けから出荷までを一つのプロジェクトとして適切に管理しなければなりません。収支計画や資金計画の立案も重要で、初期投資や運転資金の管理能力も求められます。
また、消費者のニーズを把握し、販路開拓や販売戦略を立案することも重要です。安定した農業経営を実現するのであれば、コミュニケーション能力やIT活用能力も身につけておくと、状況に合わせて柔軟に対応できるようになります。
新規就農の方法の選択

新規就農には雇用就農からの独立と独立就農の2種類があります。自分に合った選択をするためにも、それぞれの特徴やメリット、注意点を把握しておきましょう。
ここでは、新規就農の種類を解説します。
雇用就農
雇用就農とは、企業として農業生産を行っている農業法人で従業員として働き、給料をもらう就農スタイルです。
勤務先となる農業法人にはさまざまな種類や規模があり、家族経営で小規模に事業を行っているところもあれば、加工や商品開発を幅広く手がけている法人もあります。
雇用就農のメリットは、多額の資金が不要なことや、会社員と同じように安定した給料を受け取れることです。働きながら農業の知識や技術を習得できるため、雇用就農から独立する方も多いです。
一方、雇用就農のデメリットとして挙げられるのは、自由な働き方が難しいことや、収入に上限があることです。自由を求めて新規就農を選んだ方にとっては、思うような働き方ができない可能性もあります。
独立就農
独立就農とは、自ら農業経営者として起業して農業を始めることです。
作物の選択や栽培方法、販売戦略などすべて自分で決めることができ、成功すれば高収入を得られる可能性もあります。労働時間や休日なども自分で決められ、農閑期には長期休暇を取ることも可能です。
一方で、初期投資に多額の資金がかかることや収入が不安定になりやすいデメリットがあります。自然相手の仕事であるため、気象状況によっては収穫しても売り物にならないケースもあるでしょう。
また、農業経験が少ない場合は、技術やノウハウを習得するまでに時間がかかる場合もあります。
新規就農する農地の確保

新規就農をする場合は、自分で農地を確保する必要があります。ここでは、新規就農で農地を確保する際のポイントを解説します。
農地を探す方法
農地を探すのであれば、全国農業委員会ネットワーク機構が運営・管理しているeMAFF農地ナビがおすすめです。eMAFF農地ナビは、農地台帳や農地に関する情報を地図で公開しており、地目や面積、権利設定の状況などが把握できます。
気になる農地があった場合、賃貸借や売買についての相談窓口は農業委員会事務所となります。
また、農地を入手したい地域に知り合いの農家がいる場合、その方に直接聞いてみるのもよいでしょう。農家は横同士のつながりが深い場合も多く、どこの土地が空いているかなどの情報を提供してくれるかもしれません。
農地の借り方と購入の注意点
農地を借りたり購入したりする場合、農業委員会の許可を得る必要があります。
農地の具体的な利用計画をまとめた書類を提出し、以下について協議が行われたうえで、許可・不許可の決定が下されます。
- 申請農地を含め、所有している農地または借りている農地のすべてを効率的に耕作すること(すべて効率利用要件)
- 法人の場合は、農地所有適格法人の要件を満たすこと(農地所有適格法人要件)
- 申請者又は世帯員等が農作業に常時従事すること(農作業常時従事要件)
- 申請農地の周辺の農地利用に影響を与えないこと(地域との調和要件)
これらの条件等を満たすことによって、農業委員会から許可が得て、農地を借りたり購入したりできます。不安に感じる場合は、事前に農業委員会に相談しておくとスムーズです。
農地バンク制度の活用
新規就農に必要な農地を確保するために、農林水産省が行っている農地バンク制度を活用するのもよいでしょう。
農地バンク制度は、農地中間管理機構が仲介する形で農地のスムーズなマッチングをサポートするサービスです。農地中間管理機構がニーズに合った農地を選んでくれるだけではなく、貸し手と直接交渉を行わずに話を進められるメリットもあります。
農地バンク制度で農地を借りるためには、市町村が地域計画(目標地図)を作成し、目標地図において農地を耕作する者として決定される必要があります。
新規就農にかかる資金の準備

新規就農にはお金がかかるため、資金計画を立てて資金準備を行う必要があります。
ここでは、新規就農にかかる資金準備で知っておきたい目安や注意点、補助金・助成金の活用法を解説します。
全国新規就農相談センターの経営シミュレーションによると作物別の新規就農に必要な資金の目安は以下の通りです。
- 水稲:約625.8万円
- 施設野菜:約528.5万円
- 果樹:約509.3万円
上記のように一定の資金が必要となります。資金調達を行う場合は時間がかかる場合があるため、早い段階で相談を始めることが大切です。
資金調達の方法と注意点
新規就農を始めるためには多くの資金が必要となるため、自己資金で用意することが難しい場合は、公的融資制度を活用するのがおすすめです。
公的融資制度には、最大3,700万円まで無利子で借りられる青年等就農資金や、農業計画、経営改善計画に基づいて低金利で借りられる農業経営基盤強化資金などがあります。
ただし、融資制度には適用条件があるため、自分が該当するかどうか事前に確認しておくことが大切です。また、資金調達ばかりを考えるのではなく、その後の返済計画も立てておきましょう。収益見込みを試算し、どの程度を返済に充てるかを明確にしておく必要があります。
補助金・助成金の活用方法
新規就農の初期費用を抑えるためには、国や自治体が実施している補助金・助成金を活用するのも方法の一つです。
農林水産省が行っている制度としては以下があります。
- 就農準備資金:最大12.5万円/月が最大2年間交付される
- 経営開始資金:最大150万円/年が最大3年間交付される
いずれも49歳以下という年齢制限がありますが、融資と違って条件を満たすと返済する必要はありません。
他にも補助金・助成金にはさまざまな種類があるため、農林水産省や自治体の公式サイトを参考にしましょう。
起業時に活用できる補助金・助成金は以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
新規就農の計画の立て方

新規就農は計画や事前準備が大切です。
ここでは、新規就農の計画の立て方を解説します。
栽培品目の選定
新規就農では、安定した収入を継続的に得るために栽培品目の選定が重要です。
栽培品目の選定では、以下のようなポイントを考慮します。
- 市場規模が大きい栽培品目を選ぶ
- 単価が高い栽培品目を選ぶ
- 年間栽培できる栽培品目を選ぶ
- 初期コストが抑えられる栽培品目を選ぶ
- 作業が機械化しやすい栽培品目を選ぶ
これらを意識しながら、気候や風土に合った栽培品目を絞っていきます。
また、一般的に露地栽培なら翌年に栽培品目を変えることもできますが、果樹や特定の施設栽培の場合は途中で変えることは困難です。まずは、いろいろ試せる露地栽培から始めたり、農業法人で働いたりしつつ、自分に合った栽培品目を見つけていくのがよいでしょう。
販路の確保と販売戦略
新規就農者が安定した収益を得るためには、販路の確保や販売戦略が必要になります。
農業における主要な販路は農協(JA)であり、生産から販売まで手厚いサポートが受けられるため、新規就農の販路としておすすめです。他にも、スーパーや直売所で販売したり、飲食店に直接販売したりする方法もあります。
近年ではオンラインでの販売も積極的に行われており、広範囲にアプローチできることや自身で価格設定できるなどのメリットがあります。
また、効果的に販売を行うためにも、ターゲット市場の明確化やブランド構築などが重要です。SNSやイベント活動を通じ、自分の農産物を広める活動も積極的に行いましょう。
収支計画の立て方
新規就農において、収支計画は安定した農業経営を実現するために欠かせません。
収支計画は以下のステップで立てていきましょう。
- 作物の選定
- 作物の収穫量を予測
- 販売価格の設定
- 年間の売上高を見積もる
- 経費を計算する
- 1~5を元に収支計画表を作る
収支計画は現実と異なる部分があるため、楽観的に見積もるべきではありません。地域特性や実績データなどを参考に、できるだけ現実と近い収支計画を作ることが重要になります。
また、農業は市場環境や気候条件にも左右されるため、柔軟性を持たせた計画を立てましょう。
まとめ
この記事では、新規就農の方法や農業の学び方、必要な資金などを解説しました。
事業として新しく農業を始めることを新規就農といい、資金調達や農業の知識、販路の確保などが必要です。新規就農には、農地バンクや補助金・助成金制度が多くあるため、これらを活用することで始めやすくなります。
新規就農は自然相手の仕事ができることや、地域とのつながりが深まるなど、多くのメリットがあります。手をかけた分だけ成果が得られるため、やりがいを感じやすいのも魅力です。
農業に興味があるという方は、新規就農という働き方を検討してみるのもよいでしょう。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修のもとに制作したものです。
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