NPO法人の設立は難しい?メリットやデメリットと設立手順を詳しく解説
NPO法人の設立は、株式会社や合同会社のような一般的な法人よりも要件が厳しく、簡単には設立できません。
NPO法人は、非営利組織としての活動を国が認め、利益を目的にしない法人格です。
NPO法人設立には細かな要件、提出書類、審査などが必要になるため、十分な期間を設けしっかりと準備しておくことが求められます。
この記事では、NPO法人のメリットやデメリット、具体的な設立手順について解説します。
- 【この記事のまとめ】
- NPO法人は非営利組織で、社会的な課題解決を目的とし、収益を利益配分に使わず社会貢献に充てます。設立には特定の公益活動が必要です。
- NPO法人設立には、設立費用が安い、社会的信用が高い、税制優遇があるなどのメリットがありますが、時間や書類の準備に手間がかかります。
- 設立には最低3ヶ月かかり、20業種に限定された活動範囲と、10人以上の社員が必要など、条件を満たさなければ設立できません。
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NPO法人とは
NPOとは、Non-Profit Organizationの略称で、主に社会的な課題の解決や公益活動を行う「非営利組織」を指します。
この活動をする団体のうち、国に法人格を認められた法人がNPO法人です。
NPO法人は、株式会社や合同会社などの一般的な法人とは異なり、利益を目的にしないという特徴を持っているため、活動の収益を個人や団体の利益に還元することなく、社会貢献に活用します。
NPOのイメージでは、ボランティア活動や社会貢献活動する団体だけを想像するかもしれません。
しかし、NPOには以下の20業種の分野が含まれます。
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 環境の保全を図る活動
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 科学技術の振興を図る活動
- 経済活動の活性化を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 消費者の保護を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
- 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
引用:特定非営利活動(NPO法人)制度の概要|内閣府 NPOホームページ
NPO法人は上記の20業種の分野に該当する活動内容であり、不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的とするものです。
NPO法人の設立要件
NPO法人を設立するには、特定非営利活動促進法に基づき、以下の設立要件を満たす必要があります。
- 特定非営利活動を主たる目的とすること
- 営利を目的としないこと(※1)
- 宗教活動や政治活動を主たる目的としないこと
- 特定の公職者(候補者を含む)または政党を推薦・支持・反対することを目的としないこと(※2)
- 10人以上の社員を有すること
- 社員の資格を得喪するにあたって、不当な条件を付さないこと
- 報酬を受け取る役員の数が、役員総数の3分の1以下であること
- 暴力団でないこと、または暴力団もしくはその構成員・その構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制の下にないこと
※1「営利を目的としない」とは、団体の構成員に対し収益を分配したり財産を還元したりすることを目的としないことです。特定非営利活動に必要な資金や運営費に充てるために、特定非営利活動に支障がない限り、特定非営利活動に係る事業以外の事業(その他の事業)を行うことができます。
※2「政治活動」には、具体的な施策の提言や推進は含まれません。
NPO法人の設立を検討する場合は、あらかじめ要件を理解しておきましょう。
NPO法人設立のメリット
NPO法人には、株式会社や合同会社のような一般的な法人とは異なり、設立費用の安さ、社会的信用度、優遇措置などのさまざまなメリットがあります。
ここでは、NPO法人設立のメリットについて解説します。
設立費用が安い
NPO法人を設立する場合、設立費用が安いというメリットがあります。
例えば、株式会社を設立する場合には、定款の認証手数料として30,000~50,000円、設立登記費用として150,000円が必要となり、最低でも180,000円以上の費用がかかります。
また、行政書士等に依頼すれば、さらに費用がかかるため、負担は大きくなるでしょう。
しかし、NPO法人の場合は登録免許税法第2条の対象外になるため、申請に手数料が発生しません。
社会的信用が高い傾向にある
NPO法人は社会的信用が高い傾向にあるメリットがあります。
NPO法人の場合は、世間的に社会貢献を行う活動として認識されており、難しい設立要件を満たしていることも加わって、信頼度は高い傾向にあります。
税制面で優遇があり節税が可能
NPO法人を設立すると、税制面の優遇措置があるため、節税効果が高いメリットがあります。
株式会社などの場合、売上に対して法人税や消費税が加算され、税金を納めなければいけません。
しかし、NPO法人は公益法人とみなされるため、非営利活動で得た所得について課税されることはありません。
ただし、非営利活動で得た所得が課税されることはありませんが、収益事業を行なって得た所得には課税されます。
またNPO法人であっても、所得額が黒字もしくは赤字に関係なく、資本金や従業員数に応じて課税される法人住民税の均等割は支払い義務があります。
印紙税については、印紙税法においてNPO法人の事業に関わる領収書については免税されます。ただし、契約書に添付する収入印紙については、通常通り課税されるため、注意しましょう。
NPO法人設立のデメリット
NPO法人の主なデメリットは一般的な法人とは異なる難しい設立要件です。
要件を満たさない場合は設立ができず、事業計画が予定通りに進まなくなってしまうことがあります。
ここでは、NPO法人設立のデメリットについて解説します。
設立に3ヶ月以上かかる
NPO法人の設立は、最低でも3ヶ月から半年程度の時間がかかるのがデメリットです。
所轄庁に提出する書類作成が約1ヶ月、申請書類の縦覧や審査に約2ヶ月、所轄庁での審査後の登記申請をするのに約1週間~1ヶ月かかるため、スムーズに手続きが進んでも3ヶ月以上の時間がかかります。
もし、書類の不備や審査に通過できない事由がある場合には、半年以上かかるケースもあるため、先の予定を考えた事業計画が必要です。
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詳しくは「【できるのか?】ChatGPTを使ってたった1時間で事業計画書を書くアラフォー起業家。《小説「AI起業」シリーズ#01》」をご覧ください。
また、NPO法人の申請には専門的な知識が必要になるため、株式会社などの設立よりも難易度が上がります。
行政書士と司法書士に設立代行を依頼するのが一般的です。
活動業種に制限がある
NPO法人の活動業種には制限があります。分類された20業種に該当しない場合、NPO法人を設立できません。
株式会社や合同会社の場合、法律上で違反がなければ、ほとんどの業種で設立可能ですが、NPO法人の場合は主たる活動内容が20業種に分類されていることが条件です。
NPO法人を設立する際は、専門家に相談して、事業内容が20業種に該当するのか、確認するのがよいでしょう。
設立には10名以上の社員が必要
NPO法人を設立するには、最低でも10名以上の社員が必要です。
設立時には、社員を10名集めて、3名以上の理事と1名以上の監事を置くことが必要です。
10人という基準を満たすのは簡単ではありませんが、社員にできる条件は低くなっており、人が集まらずやむを得ないときは未成年者や外国人、親族や家族を入れることができます。
しかし、NPO法人の総会では社員1人1票ずつ議決権が与えられます。
そのため、社員を増やしすぎてしまうと、重要事項の決定で経営者の方針トラブルを招く場合があるため、注意してください。
NPO法人設立の手順
NPO法人設立の手順は以下の通りです。
- 活動内容の明確化
- 設立発起人会の開催・設立総会の開催
- 管轄庁へ設立認証の申請
- 縦覧・審査・認証
- 法人設立の登記
- NPO法人設立後の届け出と諸手続き
ここでは、NPO法人を設立するための具体的な手順を解説します。
要件に沿った活動内容を決める
NPO法人を設立する際は、まず要件に沿った活動内容を決めていきます。
活動内容は、法律で定められた20業種に該当する必要があります。
もし、行いたい活動の内容が20業種に該当しない場合は、類似する業種で設立するか、NPO法人の枠を外れて、株式会社や合同会社などの一般的な法人として起業するかを決めなくてはいけません。
類似する業種で設立すればNPO法人として活動可能ですが、自分のやりたい活動とズレが生じてしまう場合は、活動内容の見直しがおすすめです。類似する業種で設立したことによって、本来の求めていた活動ができなければ意味がありません。
そのため、20業種の内容を正確に把握して、活動内容を慎重に決定しましょう。
設立発起人会・設立総会の開催
次は、NPO法人を設立する人を集めて設立発起人会を開きます。
設立の目的や具体的な活動内容、法人名代表者、入会金や年会費など、これからNPO法人をするうえで基盤となる内容を決めていきます。
設立発起人会が終わると、設立総会を開催します。
設立総会では、設立する発起人以外の社員も入れて、全員で行うのが決まりです。設立発起人会で決定した内容を全体に周知して、正式に決定されます。
この設立総会の結果を証明する議事録が設立認証に必要になるため、事前に書記役を決めて内容をまとめるようにしてください。
所轄庁へ設立認証申請
次は所轄庁への設立認証申請です。
NPO法人を設立するには、所轄庁へ設立認証の必要書類を提出をして申請手続きを行います。
設立認証の申請手続きに必要な書類は以下の通りです。
- 定款
- 役員名簿
- 役員の就任承諾書及び誓約書の謄本
- 役員の住所又は居所を証する書面
- 社員のうち 10 人以上の氏名及び住所又は居所を示した書面
- 認証要件に適合することを確認したことを示す書面
- 設立趣旨書
- 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
- 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
- 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書
書類提出後は、2週間の縦覧、最長2ヶ月の審査を経て認証するかを決定します。
1週間に満たない場合であれば書類の不備(内容に影響を与えない明らかな誤記や誤字脱字など)を修正可能ですが、期間を過ぎてしまった場合、修正できなくなってしまうため、記入ミスなどの不備がないように注意してください。
所轄庁とは、その主たる事務所が所在する都道府県の知事(その事務所が一の指定都市の区域内のみに所在する特定非営利活動法人にあっては、当該指定都市の長)となります。
縦覧・審査・認証
提出した書類は、受理された日から2週間、市民が自由に閲覧できるように公開されます。
縦覧で公開される主な書類は以下の通りです。
- 定款
- 役員名簿
- 設立趣旨書
- 設立年度の事業計画書および活動計算書
- 設立翌年度の事業計画書および活動計算書
その他に、申請理由、申請年月日、NPO法人の名称、代表者の氏名、事務所の所在地などが公表されます。
インターネットで閲覧できる自治体もありますが、閲覧場所は自治体によって異なるため、各自治体のホームページで確認してください。
2週間の縦覧後は、2ヶ月以内の審査を経て、設立の認証または不承認の決定を書面にて通知します。
法人設立の登記
NPO法人の設立認証が完了したら、設立登記を行います。
NPO法人は認証書が届いてから2週間以内に法人設立の登記申請をしなければいけません。
登記申請に必要な添付書類は以下の通りです。
●定款
●認証書
●就任承諾書
手続きを行う場所は、管轄の法務局です。
2週間という限られた時間内で設立登記を進めるため、約2ヶ月の審査が行われている間に登記に必要な書類を準備しておきましょう。
NPO法人設立後は届け出を行う
最後に、NPO法人設立後に届け出を行います。
各都道府県の税務署や年金事務所、労働基準監督署などに法人設立の届け出が必要です。
登記事項証明書など、さまざまな書類が必要になるため、所轄庁のホームページで必要書類を確認しておきましょう。
例えば、従業員を雇用して給与の支払いがある場合には、以下の書類提出が必要です。
提出先 | 必要書類 |
---|---|
税務署 | 給与支払事務所等の開設届出書など |
年金事務所 | 新規適用届、被保険者資格取得届、異動届など |
労働基準監督署 | 保険関係成立届、適用事業報告書、概算保険料申告書 |
公共職業安定所 | 保険関係成立届、雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届 |
また、もし収益事業を同時に運営する場合は、税務署へ収益事業開始届出書と法人設立届出書の提出が必要です。
まとめ
NPO法人は、法律で定められた20業種の活動を行い、利益を求めない社会貢献を主な活動をする非営利組織です。
株式会社や合同会社などの一般的な法人の設立とは異なり、書類提出とあわせて活動内容を公表する縦覧や所轄庁の審査・認証が済んで、はじめて設立可能になります。
NPO法人の活動は、ボランティア活動や環境保全だけでなく、学校法人、労働組合、人権保護などのさまざまな社会貢献に関する業種が含まれており、業種にあわせた書類の作成が必要になってくるでしょう。
NPO法人設立に必要な書類作成などは個人でも可能ですが、専門的な知識が必要になってくるため、記入ミスや不備がないようにするためにも、士業などの専門家に依頼するのがおすすめです。
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- 記事監修
-
- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。