なりすましの被害から学ぶ-商標登録の重要性

ある日突然、自社の商品を装った「偽サイト」が現れ、顧客からのクレームが殺到──。 こんな事態が、実際に多くの中小企業やスタートアップに降りかかっています。
このようなケースは決して他人事ではありません。どのような備えが必要でしょうか。
今回は、なりすまし被害がどのように発生し、どれほど深刻な影響を及ぼすか、そしてその対策としてなぜ商標登録が重要なのかを、具体的な事例を交えて分かりやすく解説します。
- 【この記事のまとめ】
- 商標未登録の中小企業は偽サイト被害に対処できず、信頼を失い風評被害が拡大する事態に発展しました。
- 商標登録があれば、偽アプリや偽アカウントにも迅速に法的対応が可能となり、ブランドを守る力になります。
- ブランドは企業の資産です。特にスタートアップは早期に商標登録を行い、信頼と事業成長を支える備えが必要です。
なりすましとは何か?
「なりすまし」とは、他人や他社になりすまして、WebサイトやSNSアカウントを開設し、不正な利益を得る行為です。詐欺目的で偽の商品やサービスを販売したり、ユーザー情報を盗んだりといった被害が報告されています。
特にインターネットを活用したビジネスが主流となっている現代において、中小企業やスタートアップでも油断はできません。認知度が高まるにつれて、ブランドが「狙われる」リスクは急激に上昇します。
実例:地方の飲料メーカーを襲った”偽ブランド被害”
長野県で創業した無添加ジュースを製造・販売するある中小企業。地元の果物を使った手作りジュースが人気を集め、SNSでもフォロワーが増えていました。
しかし、ある日「ここのサイトで買ったらジュースが届かない」という苦情が届きます。調査したところ、そっくりなブランド名とロゴを使った偽サイトが登場しており、正規品と偽って粗悪品を販売していたのです。
この企業は商標登録をしておらず、対応は後手に回りました。結果、消費者の信頼を失い、SNS上には批判の声が相次ぎました。さらに、検索エンジンの検索結果には偽サイトが上位に表示されるなど、深刻な風評被害にまで発展しました。
商標登録をしていればどうなっていたか?
商標登録をしていれば、
- 偽サイト運営者に対して「差止請求」や「損害賠償請求」などの法的措置が可能
- ドメイン紛争処理制度(JPドメイン名紛争処理など)に基づく対応もスムーズ
- SNS運営会社に対し、商標権を根拠にアカウントの削除を依頼可能
つまり、事前に商標権を確保しておけば、被害が拡大する前に法的に強く対応できた可能性が高いのです。
スタートアップも無関係ではない
「当社はまだ小さいから」「話題になるほどの会社じゃないし」と思っている方も多いかもしれません。しかし、むしろ立ち上げ時期だからこそブランドの信用は命綱です。
たとえば、あるITスタートアップが、独自のアプリ名で話題を集めていたところ、類似名で偽アプリがリリースされ、Google Play上でユーザーが混乱する事態に。
この企業は事前に商標登録を済ませており、すぐにGoogleに削除申請を行い、迅速な対応につなげました。逆に、商標登録がなければ正当性を示す手段がなく、偽物の拡散を止められなかった可能性がありました。
被害の種類とその影響
なりすましによる被害は、実際には以下のように多岐にわたります
- 消費者の誤認・混乱:偽サイトや偽商品によって、正規ブランドと勘違いした消費者が被害を受ける。
- 風評被害・信頼低下:SNSや口コミで悪評が広まり、ブランド価値が下がる。
- 売上の減少:偽物との価格競争、または購買意欲の低下。
- 検索エンジン対策の無効化:偽物サイトが検索結果の上位に現れ、公式サイトの集客に悪影響。
これらの被害は、規模の大小に関係なくすべての事業者にとって深刻です。
商標登録がもたらす3つのメリット
商標登録を行うメリットは主に以下の3つになります。
- 法的権利を確保できる:専用使用権や差止請求など、商標法に基づく法的手段が使える。
- 信頼性の可視化:登録商標をサイトや商品に表示することで、消費者に「正規品」の証としてアピールできる。
- 被害の早期発見・対応が可能:SNSや検索広告などでの監視・削除申請がスムーズになる。
「今さら遅い」ではなく「今からできること」
スタートアップにとって、ブランドは「アイデンティティ」そのものです。 そして、誰よりもそのブランドに価値を感じているのは、他ならぬ創業者自身でしょう。
だからこそ、ブランドを守るための行動は、事業の初期段階から「必要な経費」として捉えるべきです。
まとめ:ブランドは「資産」であり、商標登録でしっかりプロテクトすることが肝要です。
なりすまし被害は、誰にでも起こり得る現実的なリスクです。そしてそれは、ビジネスの成長とともに増加します。だからこそ、早い段階でブランドを守る仕組み=商標登録を整えることが極めて重要です。
次回は、実際に商標登録をどう進めるか、登録後にどう活用するかについて、さらに具体的に解説していきます。
- 記事監修
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GMOブランドセキュリティは、「すべてのブランドにセキュリティを」というスローガンを掲げ、インターネット上のブランド侵害リスクに対して、監視サービスや権利行使のサポートを行っています。権利行使の前提となる商標・ドメインの取得や管理も提供しており、ワンストップでブランドを守ることが可能です。2023年12月時点で約1,800社にサービスをご利用いただいています。
GMOブランドセキュリティ株式会社
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