店舗兼住宅を建てたい方必見!メリット・デメリットやおすすめの間取りについて解説
店舗兼住宅は、生活と仕事の場を一体化させる魅力的な選択肢として注目を集めています。自宅で事業を営むことができるこの形態は、多くの起業家や自営業者にとって理想的でしょう。
しかし一方で、いくつか注意すべき点があるのも事実です。例えば、初期費用や固定資産税といった税金など、様々な課題が考えられます。
この記事では、「店舗兼住宅」のメリットだけでなく、デメリットについても解説していきます。
- 【この記事のまとめ】
- 店舗兼住宅は通勤時間削減やテナント料節約が魅力ですが、プライベートとの境界が曖昧になる課題もあります。
- 店舗兼住宅の設計では、建築規制や初期費用に留意し、事業や生活に適した間取りを慎重に計画することが大切です。
- 固定資産税や償却資産税など税金の管理が重要です。専門家の助言を活用し、経済的メリットを最大化しましょう。
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店舗兼住宅とは何?
店舗兼住宅とは、ひとつの建物の中に生活空間と事業用スペースの両方の機能を併せ持ち、双方を自由に行き来できる構造の建物のことです。例えば、1階をカフェや美容室などの店舗にし、2階を住居にするといったイメージが一般的でしょう。
似たものに店舗兼併用住宅がありますが、構造や建築法上の扱いが異なります。店舗兼住宅は生活空間と仕事空間が一体化しているため、よりプライベートな空間で仕事ができるのに対し、店舗併用住宅は店舗部分と住宅部分が構造的に分かれており、それぞれ独立した建物のように建てられていることが多いです。そのため、店舗部分を賃貸に出すなど、柔軟な利用が可能です。
また店舗併用住宅は、商業地域など店舗を建てられる地域に建てられることが多いです。一方で、店舗兼住宅は条件を満たせば、住環境の保全を最優先に定められた第一種低層住居専用地域など、住宅地にも建てられる場合があります。
店舗兼住宅のメリット4つ
店舗兼住宅には、以下のようなメリットが挙げられます。
- 通勤時間がかからない
- テナント料が必要ない
- 固定資産税を抑えられる可能性がある
- 住宅ローンが適用できる可能性がある
それぞれ見ていきましょう。
通勤時間がかからない
まず、通勤時間がかからないという大きな利点があります。
仕事場と生活の場が同じ建物内にあるので長時間の通勤が不要となり、時間とエネルギーの大幅な節約が実現可能です。家族との時間を増やしたり、自己啓発やビジネスの拡大に時間を充てたりできるでしょう。
テナント料が必要ない
次に、テナント料が必要ないという経済的なメリットがあります。
一般的に、商業施設や繁華街で店舗を構えるには高額なテナント料が発生しますが、店舗兼住宅では自己所有の建物内に店舗を設けるため、この費用を大幅に削減できるのです。これは特に起業初期や小規模事業者(スモールビジネス)にとって大きな経済的メリットとなり、ビジネスの安定性と成長性に寄与します。
固定資産税を抑えられる可能性がある
さらに、固定資産税を抑えられる可能性があるという税制面でのメリットも見逃せません。
日本の税制では、居住用部分と事業用部分で固定資産税の計算方法が異なり、居住用部分には軽減措置が適用されるため、全体を事業用として使用するよりも税負担が軽くなる場合があります。条件としては、住宅部分の床面積が一定割合以上であることなどが挙げられます。
ただし、これを最大限に活用するには適切な設計と申請が必要であり、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
住宅ローンが適用できる可能性がある
店舗兼住宅の建築には、一般の住宅ローンが適用できる可能性がある点も金融面におけるメリットでしょう。ただし住宅ローン控除を受けるには、いくつかの要件があります。
たとえば、建物全体のうち住宅部分が50平米以上ある床面積の2分の1以上を占めている場合、その建物はあくまで「住宅」として捉えられる可能性が高いです。また、工事が完了した日もしくは取得日から6ヶ月以内に住宅部分を自分自身で居住するために利用した場合、住宅ローン控除の対象となります。
店舗兼住宅のデメリット3選
一方で店舗兼住宅には、以下のようなデメリットも考えられます。
- プライベートとの境界線があいまいになりやすい
- 建築エリアや店舗面積に制限がある
- 初期費用が高くなる可能性がある
具体的にどういうことなのか、それぞれ見ていきましょう。
プライベートとの境界線が曖昧になりやすい
まず、プライベートとの境界線があいまいになりやすいという課題があります。生活空間と仕事空間が物理的に近接しているため、仕事時間外でも仕事のことが頭から離れにくくなったり、逆に仕事時間中に家事や私用に時間を取られやすくなったりします。
これは、ワークライフバランスを崩す原因となる可能性があり、長期的には精神的な疲労やストレスの蓄積につながるかもしれません。この問題に対処するには、物理的・心理的な境界線を意識的に設ける努力が必要です。例えば、店舗と住居の間に明確な区切りを設けたり、仕事時間と私生活の時間を厳格に分けたりするなどの工夫が効果的です。
また店舗兼住宅は、住居と店舗が一体となっているため、一般的な住宅よりも多くのセキュリティリスクを抱えています。防犯カメラやアラームを設置したり、火災など緊急時の対応マニュアルを作成したりすると有効でしょう。
建築エリアや店舗面積に制限がある
建築エリアや店舗面積に制限があるという点も大きな課題でしょう。店舗兼住宅の建築には、法律や条例による様々な制限が設けられています。
これらの制限は、主に都市計画法や建築基準法、各地方自治体の条例などに基づいており、居住環境の保護や商業地域と住宅地域の適切な区分、防火・防災対策などを目的としています。例えば、用途地域による制限では、住居専用地域において店舗の床面積が厳しく制限される場合があります。
また、建ぺい率・容積率の制限や、防火地域における構造や使用材料の制限なども考慮しなければなりません。これらの制限は、店舗兼住宅の設計や事業計画に大きく影響するため、計画段階から地域の法規制を十分に調査し、専門家に相談することが不可欠です。
初期費用が高くなる可能性がある
初期費用が高くなる可能性があるという経済的な課題も見逃せません。店舗兼住宅の建築は、一般の住宅に比べて初期費用が高くなる傾向があります。
これは主に、店舗部分に必要な特殊な設備や構造、そして住居部分と店舗部分を適切に区分するための追加的な工事が必要となるためです。例えば、店舗用の強化床、防音・遮音工事、特殊な衛生設備、電気設備の増強、バリアフリー対応など、一般住宅には不要な設備や工事が必要となることがあります。これらの要因により、一般的な住宅と比較して、建築費用が20%〜30%程度上昇することも珍しくありません。
店舗兼住宅におすすめの間取り
店舗兼住宅におすすめの間取りは、事業の種類や家族構成、生活スタイルによって大きく異なります。
一般的には、以下のような項目を考慮するとよいです。
- 1階部分を店舗区画にできる
- 住宅と店舗の動線が分けられる
- 大きなサッシで外から店内が見せられる
- お客様用または従業員用のトイレを設置できる
- バックヤードを確保できる
- 入口をバリアフリーにできる
- 駐車場を設置できる(必要に応じて)
- 防犯カメラおよびセキュリティサービスを設置できる
まず、店舗兼住宅の間取りを考える上で重要なのは、店舗部分と住居部分の明確な区分です。具体的には、店舗と住居の出入り口を別にする、階層で分ける、または建物内で完全に独立したスペースを設けるなどの方法があります。
次に考慮すべきは、店舗の種類に応じた機能的なレイアウトです。例えば、飲食店の場合は厨房などのバックヤード、入口のバリアフリー配置が重要になりますし、小売店の場合は商品展示スペースや在庫保管場所の確保が必要です。また、顧客用の駐車場やトイレなども考慮に入れる必要があります。
なお住居部分については、家族の人数や年齢構成に応じた快適な生活空間を確保するようにしましょう。
店舗兼住宅にかかる税金
店舗兼住宅にかかる税金は、以下の3つです。
- 固定資産税
- 償却資産税
- 所得税
固定資産税
固定資産税は、土地や建物などの不動産に対して課される地方税です。店舗兼住宅の場合、この税金の計算方法が少し複雑になります。というのも、住居部分と事業用部分で課税評価額の算出方法が異なるためです。
一般的に、住居部分には住宅用地の特例が適用され、税負担が軽減されます。例えば、200平方メートル以下の小規模住宅用地であれば、課税標準額が評価額の6分の1に軽減されます。
一方、店舗部分には通常の固定資産税が課されます。したがって、店舗と住居の面積比率が税額に大きく影響します。ただし、自治体によって細かい規定が異なる場合があるので、地元の税務署や市役所に確認することが重要です。
また、固定資産税の評価額は3年ごとに見直されるため、定期的に税額が変動する可能性があることも覚えておく必要があります。
償却資産税
償却資産税は、事業用の機械や備品、設備などに対して課される地方税です。店舗兼住宅の場合、店舗部分で使用する什器や設備が課税対象となります。例えば、レジや冷蔵ショーケース、テーブルや椅子、オフィス機器などが該当します。
これらの資産の取得価額から、法定耐用年数に基づいて計算された減価償却費を差し引いた金額が課税標準額となります。償却資産税は毎年1月1日時点で所有している資産に対して課税され、通常、その年の1月末までに申告しなければなりません。
ただし、課税対象となる償却資産の合計額が一定金額(多くの自治体では150万円)未満の場合、申告が不要となることがあります。新たに店舗兼住宅を始める際には、初期投資の段階で将来の償却資産税も考慮に入れた設備計画を立てることが賢明です。
所得税
所得税は個人の収入に対して課される国税です。店舗兼住宅を運営する場合、事業から得られる収入は事業所得として課税対象となります。
ただし、経費を差し引いた利益に対して課税されるため、適切な経費管理が重要になります。店舗兼住宅の場合、住居部分と店舗部分の経費を明確に区分する必要があります。例えば、電気代や水道代、修繕費などは、店舗部分に関するものだけが経費として認められます。
また、建物の減価償却費も重要な経費項目となりますが、こちらも店舗部分のみが対象となります。所得税は累進課税制度を採用しているため、所得が増えるほど税率が高くなります。そのため、長期的な視点での税務戦略が必要になるでしょう。
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店舗兼住宅は、生活空間と事業用スペースを一体化した建物です。通勤時間の削減やテナント料の節約など、多くのメリットがあります。一方で、プライベートと仕事の境界線が曖昧になりやすく、建築規制や初期費用の高さなどのデメリットもあります。間取りは事業内容や家族構成に応じて慎重に設計する必要があります。税金面では、固定資産税、償却資産税、所得税について理解し、適切に管理することが重要です。店舗兼住宅は、ワークライフバランスの向上と事業の効率化を両立させる可能性を秘めた選択肢といえます。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修のもとに制作したものです。
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