【未知株式会社】ポテンシャル人財に光を当て、誰もが輝ける世界の創造へ
学生時代、服に魅せられてファッションデザイナーを志すも、センスの壁に直面し挫折。その後、アパレルショップ運営を目指し、ネット販売を学ぶためITベンチャーに入社しました。
しかし、メンタル不調で1年で退職。転機となったのは、友人の誘いで参画した「株式会社フリープラス」の創業でした。メンバーの早期離脱、アパレル事業の失敗、リーマンショックによる経営危機などの修羅場を乗り越え、コンサル型SEO事業で会社のV字回復に大きく貢献。
そして10年在籍した同社を退社し、“世のポテンシャルを飛躍させる”というミッションのもと2017年に「未知株式会社」を創業しました。
現在、コーポレートコーディネート事業を通じて、経営者の想いの言語化や企業の潜在的な魅力の最大化に寄与する下方さんに、起業するまでの道のりや大切にしているマインドなどをお伺いしました。
下方彩純さんのご経歴
- 2007年、京都産業大学法学部法律学科を卒業。新卒でITベンチャーに入社し、メディア運営やマネジメントを経験。
- 同年、「株式会社フリープラス」の立ち上げに参画。SES営業/アパレル事業/WEBマーケティング事業の立ち上げを経験。
2009年には同社の執行役員、2011年には取締役(WEBマーケティング事業管掌)に就任。
その後、地方創生事業/インバウンドリサーチ事業の立ち上げに従事し、2015年に取締役(マーケティング事業管掌)に就任。2017年に退社。 - 2017年、「未知株式会社」を創業し、代表取締役に就任。コーポレートコーディネート事業を展開。
企業の魅力を最大化し、ポテンシャルを開花させる「未知株式会社」

—現在、経営されている会社名と主な事業内容を教えて下さい。
現在、「未知株式会社」という会社を経営し、主にコーポレートコーディネート事業を展開しています。
事業内容を端的に申し上げますと、企業のトップである経営者や役員の方々へのインタビューを通して、企業が本来持つ「魅力」や「想い」といった潜在的な価値を引き出し、整理をする。——そして、それをWEBサイトや動画、インタビュー記事などの多様なプロダクトを通じて、WEB上で表現することで企業の価値を高めることです。
多くの企業において、経営者の持つ深い理念や想いがWEBサイトに十分反映されていないという課題があります。
経営者の頭の中には、実はとんでもなく濃い情報が詰まっているのに、サイトに表現されているのはそのうちの20%にも満たないケースが多くて。そこで私たちがしっかりとヒアリングを行い、その本来の価値を言語化し、形にしていくのです。
まるでその人に似合う洋服をコーディネートするように、その企業を最適にコーディネートすることで、企業が正当な評価を獲得し、そのポテンシャルを最大限に発揮できるよう支援しています。
アパレルオタクが目指したファッションデザイナーの「夢」と「挫折」
—学生時代はどのような職業に憧れていたのでしょうか?
中学生の頃から一貫して、アパレルデザイナーを志望していました。
小学生の頃は体型にコンプレックスがありましたが、ある日、女友達に勧められた服を着たところ、周囲から強く褒められ、「ファッションでこんなに人の反応が変わるのか!」と衝撃を受けました。
それを機にファッションに傾倒し、高校生になる頃には熱狂的なファン、いわゆるオタクの域に達していました。ファッション雑誌、特に女性誌のストリートスナップを切り抜き、「このコーディネートの何が良いのか」「この組み合わせのバランスが良い点」などを独自に分析し、大学ノートにまとめる日々でした。当時の私は、デザイナーになること以外考えていませんでした。
ベルギーにあるアントワープ王立芸術アカデミーへの留学を真剣に検討していましたが、母親から「まずは4年生大学を卒業し、そのときに本当にやりたいことが変わらなければ改めて挑戦すれば良いのではないか」と助言を受けました。
その助言に納得し、専門の道に進むことは思いとどまり、京都産業大学法学部法律学科に進学しました。
—大学時代もファッション業界で活躍する未来を思い描いていたのでしょうか?
大学1年生の時点では、引き続きファッションデザイナーを志していました。しかし、この時期に大きな挫折を味わう出来事があって……。
1年次、約17万円を投じてTシャツの自主制作を試みました。ところが、完成品が当初のデザインイメージとかけ離れてしまい、「自分はデザイナーとしてのセンスがないのかもしれない」と深く絶望しました。
この挫折を経て、服を作る側から、販売する側へと方向転換を図りました。ショップ店員として働き始めましたが、「立ち仕事の厳しさ」を痛感しました。毎日8〜10時間、強い照明の下で働くうちに疲弊し、「これはキャリアとして継続できない」と判断。最終的に、店舗を運営する側、すなわちショップ運営を目指すことにしました。
—大学時代、ショップ運営に関してどのような構想があったのでしょうか?
ショップ運営に向け業界動向を深く調査する中で、「一店舗の力だけでは日本のファッション業界全体を救うことはできない」という危機感を抱きました。
高校時代にユニクロのカシミヤニットが爆発的にヒットした際、商品のタグに「Made in China」と記載されているのを見て衝撃を受けました。「消費者にこれがカシミアのスタンダードだと認識されてしまうと、日本産の高品質な服が市場から消えてしまうのではないか」と危機感を抱きました。この経験が、「Made in Japanの服を残すために貢献したい」という原点となりました。
以前、ネットでせどり(転売)を行っていた経験から、 「アパレルとインターネットを組み合わせることで、日本の服を世界にもっと広めることができるだろう」と考えていました。
その後、日本の職人を支援する企業のインターンに参加し、改めて服作りを基礎から学びましたが、同時にインターネットで商品を販売するための知識が不足していることを痛感しました。そこで、就職を通じてネットビジネスの基礎を徹底的に学ぼうと考え、新卒でITベンチャー企業に入社しました。
しかし、そのITベンチャー企業では思うような成果を出せず、結果的に1年で退社することになりました。
友人の起業プロジェクトに参画するも、会社経営のリアルを知ることに

—ITベンチャー企業を1年で退社された理由とは何でしょうか?
できる限り早い起業を目指し、入社後はとにかくがむしゃらに働く日々でした。週3日は会社に泊まり込み、自宅に戻るのは週2日のみという過酷な生活を送っていたのです。
しかし、半年ほど経過した頃、体が動かなくなる事態に陥りました。おそらく自律神経失調症の類だったと思います。当時のベンチャー企業は、そうした状態でも「とりあえず出社して頑張れ」という風潮が強く、精神的にも追い込まれていきました。
最終的には、会社の代表の立ち振る舞いに共感できないと思ったことが決定打となり、退社を決断しました。
—ITベンチャー企業を退社後、次にどのようなキャリアを選ばれたのでしょうか?
次のキャリアに悩んでいたとき、大学時代にmixiで知り合った友人の話を聞きました。彼は大学を中退後、SES企業に入社し、わずか1年で大阪支社長にまで昇格した人物です。
その彼が、会社の方針との軋轢から独立することになり、私を創業メンバーとして誘ってくれました。ある日、私自身の名刺を勝手に作成し、その画像をメールに添付して「待っている」という一言だけが添えられていたのです。その行動に強烈な感銘を受け、「わかった、一緒にやろう!」と即時に返事をしました。
そして2007年、「株式会社フリープラス」の立ち上げに参画することになりました。
—「株式会社フリープラス」の創業メンバーとなり、起業への道は近づいたのでしょうか?
フリープラスは、「2、3年で自分たちの起業資金を貯めるための会社」という名目で立ち上げたため、起業を目指していた私にとって、これ以上にない挑戦の機会でした。
ところが、半年でメンバーが2人辞めてしまい、残ったのは社長と私の二人だけになってしまったのです。しかし、私は社長の隣で会社経営を肌で学べる立場になったことを「またとないチャンスだ」と捉えていました。
ただ、2年目くらいになると、「やはり社長業は絶対にやりたくない」と認識するようになりました(笑)。請求書の出し忘れで深夜2時に自転車で届けに行ったり、経営、経理、事務のすべてを一人で回したりと、とにかく経営の泥臭く、大変な側面ばかりを目の当たりにしたためです。
それから、目標を「起業」から「この会社を大きくしていくこと」へと切り替え、結果的に2007年から2017年までの長期にわたって在籍することになりました。
アパレル業界進出を諦め、コンサル型SEOで会社の躍進に貢献
—株式会社フリープラスに約10年在籍した理由とは何でしょうか?
フリープラスは創業当初からSES事業を手がけていましたが、「会社に成果を残せれば、アパレルで起業しても良い」と言われていました。
その言葉に後押しされ、1年で月商200万円を達成。その実績を持って社長に懇願し、念願だったアパレル事業を立ち上げました。しかし、事業は軌道に乗らず、残念ながら1年で撤退することになりました。
その後、2008年の新卒採用が始まるタイミングで、アルバイトとして働いていたメンバーを正社員として迎え入れる話が持ち上がりました。当初の「企業資金を貯める」という名目とは異なる展開に驚きましたが、会社として成長し、資金を安定させるためには必要なことだと社長から説得されました。
新たなメンバーを加えて心機一転、会社のミッション・ビジョンを策定することになりました。それが完成したとき、私は初めて、お金のためではなく、「会社のミッション・ビジョンの実現のために生きる」という仕事の醍醐味に気づいたのです。
それがフリープラスに長期在籍する最大の理由になりました。その後、2009年には執行役員、2011年にはWEBマーケティング事業管掌、2015年にはマーケティング事業管掌と、充実したキャリアを歩むことになりました。
—株式会社フリープラスでの一番の成長体験をお聞かせください。
最大の成長体験は、やはり2008年のリーマンショック時です。
当時、SES事業で取引のあった大手企業が一斉に支店開設をストップしました。そこから大阪の景気も一気に冷え込み、会社は毎月200万円の赤字を計上する状況に陥りました。社員7名、資本金300万円という状態でしたから、「このままでは会社が終わってしまう」という強い危機感を抱きました。
社長は借り入れをするか否かをギリギリまで悩み、私たちも全員の給与を一度ストップせざるを得ませんでした。土日はNTTの光回線の営業のアルバイトをして資金をつなぎ、無給で必死に会社を支えました。
この状況下で、SES事業の継続は厳しいと判断し、新たに立ち上げたのがSEO事業でした。当時、東京の友人から「A社がSEOで大きな成果を上げているらしい」と情報を得て、急いで専門書を購入し、一から勉強を始めました。最初はテレアポで成果報酬型の営業をしていましたが、利益の安定にはつながりませんでした。
そこで私が提案したのが、月額固定のコンサルティング型SEOモデルへの転換でした。
当時の大阪では、まだコンサル型SEOという発想がほとんどなく、非常にチャレンジングな試みでした。しかし、「内部構造から徹底的にサイトを見直す」という提案が顧客に響き、功を奏しました。結果として、会社の業績は一気にV字回復を遂げたのです。最終的に、2〜3年をかけて営業利益で5,000万円から6,000万円規模まで成長させることができました。
あのときのピンチを切り抜けた経験は非常に大きなものでした。事業が傾いたときの恐怖も、立て直していく中でのプレッシャーも、すべてが経営の基礎となりました。まさに「修羅場を抜けてこそ成長できる」というのを、身をもって実感した出来事でした。
IPO断念、事業撤退——そこから歩みだした「未知株式会社」での経営者人生

—株式会社フリープラスを退職された理由をお聞かせください。
退社を決めた背景にはいくつかの要因がありますが、最も大きかったのは「IPO(上場)準備の断念」と「自分の役割が一区切りついた」という達成感でした。
当時、私たちはインバウンド事業に新規参入し、 ホテル・飲食店・バスの手配をすべて自社で内製化するほど事業が急拡大していました。在籍時には売上が35億円規模まで伸び、「国内初のインバウンド銘柄として上場しよう」とチーム全体が熱狂していました。
ところが、東日本大震災や尖閣諸島問題などの影響を受け、インバウンド需要が一気にストップしてしまいました。これをきっかけに上場を断念することになり、会社としても大きな転換期を迎えることになったのです。
私自身が管掌していた国内向けのWEBマーケティング事業も撤退が決定し、体制をインバウンド領域に集中させるため、 英語が堪能な部下に事業を引き継ぐ形で役割をシフトしました。
これらの経緯から、「自分の果たすべき役割は果たした」と感じ、2017年6月6日に退社の意思を伝えました。
そこからは起業の準備を急ピッチで進め、6月26日に退職、そして7月1日には「未知株式会社」を創業するという、超クイックな起業を果たしました。
—「未知株式会社」誕生の背景を詳しく教えてください。
起業は勢いだけで決断したわけではなく、23歳の頃から長きにわたりお世話になっていた先輩経営者に相談しました。
すると、その先輩から「下方君がこれまで築いたキャリアと立場を考えれば、もう人の下で働くのは無理だろう。起業したほうがいい!」と強く背中を押されました。
正直、創業資金の工面が最大の課題でしたが、その点も先輩が支援してくださることになったのです。その時の心境は「この方は神様ではないか」と思うほどでした。
最終的に、創業資金の60%を先輩に出資いただく形で合意し、先輩の会社の子会社として未知株式会社を立ち上げるという経緯で、当社の経営者人生がスタートしました。
競合の真逆を突き進む戦略で、市場の独自のポジションを掴む
—未知株式会社のビジネスモデル構築において、どのようなアイデアがあったのでしょうか?
前職ではSEOコンサルティングとコンテンツマーケティングを担当していましたが、当時の主な収益は外部リンク事業に大きく依存していました。
しかし、外部リンクはGoogleのポリシーにも反する、いわば“グレーなビジネス”でした。「このやり方を続けても未来はない」と感じていたため、起業する際には真っ先に「外部リンク事業は廃止する」と決断しました。
また、従来のSEOコンサルティングは、大規模サイト以外では3ヶ月程度でアドバイスすることが尽きてしまうという課題がありました。そこから「残り9ヶ月頑張って伸ばしましょう」と顧客に言い続けることに、どこか心苦しさを感じていました。
そこで注目したのが、コンテンツマーケティングでした。ただ当時の国内市場は「安く、大量に」という生産型が主流であり、大手企業もその方向性で展開していました。
私たちはこの真逆を突き進むことを決断し、「事業会社に特化して高品質な記事だけを届ける」というポジショニングで勝負しました。
—創業時のコンテンツマーケティングでは、どのような戦略をとられたのでしょうか?
私たちは代理店を挟まず、すべて直販し、営業も紹介ベースに限定しました。数を追うのではなく、「質」と「信頼」を積み上げることで成長させるビジネスモデルを構築したのです。
さらに、コンテンツマーケにプロモーションという要素をかけ合わせたのも特徴です。出版業界出身のインタビュアーを約30名集め、企業のストーリーを深く掘り下げ、単なるSEO記事ではない“認知を広げるメディア”を制作しました。
日本では「コンテンツSEO=集客ツール」という認識が根強いですが、海外の事例を見ると、本来は認知やブランディングの文脈で使われるものなのです。
だからこそ私たちは、アクセスを直接コンバージョンに結びつけるのではなく、流入した読者を「製品開発の背景」「お客様の声」「導入事例」といった、信頼を深めるコンテンツへ自然に導くように設計しています。
結果として、“売るためのメディア”ではなく、“信頼を育てるメディア”をつくる。これが、未知株式会社のビジネスモデルの核になっています。
会計や税務はプロに任せ、自身は事業を伸ばす部分に注力すべき

—起業準備で苦労されたことを教えてください。
正直に申し上げると、私たちは子会社としてスタートしたため、起業準備に関してはほとんど専門家にアウトソースしました。定款作成、登記手続き、事業計画書などもすべて外部に委託しました。とはいえ、やはり面倒だったのは書類関係です。「定款に何の事業を入れるのか」「発行株式数をどう設定するか」など、初めて聞くような専門用語ばかりで混乱しました。
特に大変だったのが、創業3ヶ月目に銀行融資を受けたときですね。前職で上場準備の経験はあったため、PLやキャッシュフローは作れましたが、BSを作るのには非常に苦労しました。 あのときはさすがに専門知識の必要性を痛感しました。
—起業準備をスムーズに進めるためのポイントはありますか?
未知株式会社を設立した際、クラウド会計ソフトを活用し、会計・請求・経費管理の処理をすべて対応できたため、創業初期の管理コストを大幅に削減できました。
あとはもう、「専門家に任せる」のが一番だと思います。現在、私たちは3社の子会社を運営していますが、すべて税理士さんに月次決算から経費処理までお願いしています。
経営者が時間をかけるべきは「事業を伸ばす部分」なので、会計や税務はプロに任せた方が圧倒的に効率的です!
それから資金調達。ここは最も重要だと思っています。私は先輩経営者から「どの銀行が、どんな条件で、どのくらい貸してくれるか」という情報をもらえたのが大きかったです。もし周りにそういった情報源がない場合は、資金調達のコンサルタントを入れるのが最善かなと思います。
そして、これは今でも社員に伝えていることですが、「会社はお金があれば潰れない」——だからこそ、早い段階で銀行に融資を申し込んでおくことを強くおすすめします。金利などは誤差であり、借入実績ができれば信用も積み上がります。保証協会の融資枠を確認し、その半分程度を目安に借りておくと安心だと思います。
—起業前に経営ノウハウや成功事例などを学ぶ機会はありましたか?
基本的に本をあまり読まないタイプですが、『ビジョナリー・カンパニー』と『ストーリーとしての競争戦略』の2冊は本当におすすめしたいです。これらはデータをもとに書かれており、マーケターとしても非常に腑に落ちる内容でした。
あとは、『7つの習慣』。これは経営者を目指すなら絶対に読んでおいた方がいいと思います。学生の頃に読んだ『アドラー心理学』の全集も、“人の心の動かし方”を学ぶうえですごく役立ちました。
もう一つ挙げるなら、『最強のNo2』という本です。これはビジネス文脈でいう「右腕の在り方」を的確に捉えており、特にチームを率いる立場の人にはぜひ読んでほしい一冊ですね!
経営者の本音を聞くには、自分も経営者になるしかなかった
—経営者セミナーに参加して経営学を学んだ機会はありますか?
前職の社長がEO(起業家機構)に所属していたので、そのつながりで年に1〜2回ほど、社長以外も参加できる回にご招待いただく機会がありました。
そこで経営者の方々の考え方や事業戦略を聞く機会があって、大変勉強になりました。
ただ、「経営者は、経営者にならないと本音で話してくれない」ということが多くを占めていました。表面的な会話や一般論は聞けても、本当に血の通った経営の話は、同じ立場になって初めて共有してもらえるのです。なので、正直なところ「経営者とつながるだけでは意味がない」と感じていました。
起業前の段階では、セミナーや書籍、メディアから学ぶ方が、よほど実践的で価値があると思います。
当時、グローバルWiFiを展開するビジョン株式会社の佐野社長など、今思えばすごい方々とつながっていましたが、 「どうして当時、もっと深く話を聞かなかったのだろう」と今でも思うことがあります。でも、結局それも自分が経営者になっていなかったからこそ、見えなかった景色なんですよね。
レッテル文化の破壊——誰もがポテンシャルを発揮できる社会へ

—未知株式会社が掲げるミッションについてお聞かせください。
未知株式会社では、“世のポテンシャルを飛躍させる”というミッションを掲げています。
誰もが何かの分野で輝ける可能性を持っている——その可能性を信じ、まだ見ぬ力を引き出したいと考えています。たとえ今は結果が出ていなくとも、できない人なんて、この世にいない。ただ、その能力が発揮できる瞬間に、まだ出会えていないだけなのです!
社名の「未知」は、“未知の領域”という言葉から名づけました。その人の中に眠っている「やる気スイッチ」は、まだ“未知の領域”にある。だからこそ、私たちは共にそのスイッチを見つけ、押してあげたい。そんな想いが、未知株式会社という社名とミッションに込められています。
—「世のポテンシャルを飛躍させる」ために、どのような取り組みが重要だと考えていますか?
今の日本社会には、目に見えない“レッテル文化”が根強く残っています。
例えば、経歴や身体的・精神的障がいといった特定の属性だけで評価し、「この人は難しい」「採用しづらい」と判断してしまうケースがあります。しかし、これは本当にもったいないことです。
人の価値を「出自」や「既成概念」だけで決めてしまうことで、本来の才能が埋もれてしまう——つまり、既成概念のレッテル貼りこそが、多様な視点から生まれるイノベーションを阻んでいるのです。
だからこそ私たちは、そうした偏見に埋もれている人たちの可能性に光を当て、社会で大成できる場をつくっていきたい。すべての人が輝く世界を実現するために、法律の仕組みを変えることも視野に入れ、本気で取り組む必要があると考えています。
経営者の思想から企業の色を引き出す、独自のブランディング支援
—未知株式会社の「コーポレートコーディネート事業」の特徴についてお聞かせください。
当社が手がけるコーポレートコーディネート事業は、企業の頭の中にある魅力を形にする仕事です。
ターゲットは非常に幅広く、営業、システム開発、不動産、保険、製造、介護、建設関連など多岐にわたります。私たちは、こうした業界で自社の魅力をうまく言語化できず、他社との差別化を図れていない企業をサポートしています。
—具体的に、どのような手段で企業課題を解決されているのでしょうか?
大きく分けて、営業課題と採用課題の2つのニーズにお応えしています。
営業課題では、企業の強みを取材・言語化し、WEBマガジンやコンテンツマーケティングで集客につなげます。特に多くの企業で不足している事例コンテンツをしっかり整備し、信頼性を高めていくことに重点を置いています。
一方採用課題に関しては、採用サイトや採用特化メディアの制作を行っています。
最近では、自社の採用メディアを立ち上げる企業が増加しており、「入社後にどんな仕事ができるのか」「やりがいは何か」「実際に福利厚生を使っている人の声」といったリアルな情報を発信することが不可欠です。私たちは、こうしたコンテンツをインタビュー形式で発信し、その企業の“色”を明確に出す採用広報を支援しています。
また、大手の人材紹介・求人媒体に頼りきるのではなく、自社でも直接採用できる仕組みを構築します。具体的には、デジタルマーケティングで自社の採用LPに誘導し、コンバージョンにつなげるなど、採用広告から採用代行まで、戦略的に一気通貫で支援しています。
単に「サイトを作る」のではなく、経営者が考えていることをベースに、言語化から実行まで伴走することを常に大切にしています。
“左脳と右脳”で課題を解く——マーケ×ブランディングの革新的モデル

—コーポレートコーディネート事業が持つ競合優位性とは何でしょうか?
当社のコーポレートコーディネート事業の強みは、マーケティングとブランディングを両輪で扱える点にあります。
多くの制作会社が「デザイン寄り」か「マーケティング寄り」のどちらかに偏りがちですが、私たちは両方の視点を持っています。言い換えれば、“左脳(論理・分析)と右脳(感性・創造)の両軸”で企業の課題を解決しているのです。
さらに大事にしているのは、「納品して終わりにしない」ことです。一般的なWEB制作会社は、サイトが完成した瞬間にプロジェクトが終了しますが、私たちはむしろそこからが本番だと捉えています。
例えば、3ヶ月に1回は経営者と打ち合わせを実施し、言葉や方向性をアップデートします。会社のビジョンは常に進化していくものなので、それを継続的に反映し続けるのが私たちのスタイルです。「想いを言語化する力」と「実行まで伴走する力」——この2つを兼ね備えているのが最大の特長だと思っています。
—サービスの認知拡大において、特に力を入れているアプローチとは何でしょうか?
制作周辺で言うと、まず自社のオウンドメディアには、非常に力を入れています。
単なる実績紹介ではなく、私たちの考え方や支援事例をしっかり発信し、企業ブランディングとリード獲得の両方を狙っています。最近では、オウンドメディアと連動したセミナー施策にも注力しているところです。
また、広告運用やYouTubeの活用も認知拡大につながっていると思います。ブランディングの領域では、自社でYouTubeチャンネルを立ち上げるのではなく、登録者数の多いインフルエンサーや著名人のチャンネルに広告を出稿するという、独自の戦略をとっています。
採用支援領域のSaaSプロダクトで、面接の常識を変えたい
—今後、新たに展開しようと考えているビジネスがあれば簡単にお聞かせください。
今後、採用支援領域のSaaSプロダクトを2つ新たにローンチしようと考えています。
1つ目は、世の中のあらゆる面接の工程数を削減することを目指したプロダクトです。
もう1つは、コーポレートサイトや採用サイト上で、社長と直接つながれる仕組みを構築するプロダクトです。具体的には、サイトにアクセスした瞬間にオンライン会議ツールが起動し、社長がその場で営業担当者や求職者と対話できる仕組みを構築しています。これが実現すれば、商談の成約率や内定承諾率の向上につながると考えています。
現在、これらのプロダクトの構想を形にするために、開発を進めている段階です。
最期から逆算した人生設計——時間を有意義に消費していきたい

—経営者として大切にしているマインドと座右の銘を教えてください。
「人生にもミッションとビジョンを持つこと」——これは会社経営と同様に、自分の生き方にも一つの軸が必要だと考えています。
この人生をどのように終えたいか、考えたことはありますか?私は、単に家族だけに見送られるのではなく、「この人のおかげで救われた」と思ってくれる人たちが集まるような最期を迎えたいのです。そのためには、困っている人を見捨てないこと。それが結果として、自分を慕ってくれるファンを増やし、人生のミッションを達成することにつながると信じています。
座右の銘に関しては、「時は金なり」という言葉を大切にしており、人生で最も重要なのは「時間」だと考えています。
意思決定をするときも、たとえ人に嫌われることがあっても、“自分の時間”を大切にしてきました。興味のないことには時間を使いません。付き合いが悪い方ではありませんが、目的のない会合には基本出席しませんし、大規模な会合でも「これ以上意味ない」と思えば、15分で退席することもあります。目的を果たすことができたら、残りの時間を他の有意義なことに割きたいからです。
「自分の人生の目的と時間の使い方を意識して生きる」という考え方は、これからも経営者として、そして個人として、ずっと大切にしていきたいですね!
フラットで透明な組織こそ、強いチーム文化が育まれる
—組織と社員の成長を促すために心がけていることはありますか?
まず、私は週に1回、朝礼に出席するようにしていますが、その際は必ず「今、組織に対して思っていること」と「今、自分が考えていること」を包み隠さず話すようにしています。これは楽天の三木谷さんのやり方を参考にしている側面もあります。
次に、企業文化づくりで大事にしているのは、「役職や職種は肩書きではなく、役割だ」という考え方です。
私自身、今でもそうなのですが、実は代表取締役をやりたくないんです。このミッション・ビジョンを達成することが目的であり、端的に言えば、私が代表やオーナーでなくても良いのです。だから、組織の中に「取締役が偉い」「マネージャーが上」っていう発想はありません。
例えるなら、船には船長もいれば、漕ぎ手もいる。それぞれが自分の役割を担っているだけで、上下関係ではなく役割の違いなのです。
給与もその役割に応じて決まっているだけで、誰が上とか下とかはありません。当社のメンバーはその感覚で働いていますし、社内で私を「社長」と呼ぶ人は、ボーナス支給時くらいしかないほどです(笑)。それくらい、フラットなコミュニケーションを大切にしています。
—組織文化の形成や社員とのコミュニケーションで、特に重視している取り組みはありますか?
3ヶ月に1回、「四半期報告会」という全社イベントを開いています。
これは事業の進捗や業績をすべてオープンに共有する場で、営業利益から販管費まで全項目を開示します。「先月は飲み代を使いすぎました」といったことも含め、包み隠さず報告しています(笑)。
さらに、各メンバーが自分の3ヶ月間の成果を真剣にアピールする「ガチプレゼンバトル」も企画しています。ここで評価されるのは、定量的に成果を語れる人材です。「お客様から感謝された回数」や「商談の成約率」など、数字で自分の努力を示せる人が強いですね!最後は私が登壇し、「次の3ヶ月で何を考えているのか」「どんな方向に進むのか」を共有して締めくくります。
こうした取り組みは、「透明な経営」に不可欠です。メンバー全員が会社の現状を正しく把握できる状態をつくること。これが、組織と社員の成長に最も重要な要素だと考えています!
“逃げ場のない責任”を引き受けた瞬間、経営者の自覚が生まれる

—経営者になってよかったと思えたことをお聞かせください。
経営者同士で本音を語り合えるようになりましたし、こういう立場になって初めて見える景色があるなと感じています。
また、初めて人を雇用したときに「経営者になったんだな」という実感を強く持ちました。人の人生の時間に責任を持つということは想像以上に重く、経営者にしか味わえない感覚だと思います。
同様に、私が連帯保証を負って借り入れをしたときもそうでした。エクイティファイナンスを否定するつもりはありませんが、私にとっては「利子が高い借り入れ」という感覚があり、基本的に行わない方針です。しかし、自分の名前で責任を持って借り入れるという経験は、社員ではなかなか経験できません。これは、経営者としての覚悟を実感できる瞬間でもあります。
そしてもう一つ感じるのは、“逃げられない”ということです。「では、社長に確認します!」という言葉が通用しなくなりますから。過去には270名規模の組織を経験したこともありますが、 やはり最終判断者として“逃げ場がない”というのは、ある意味で面白いトレーニングだと捉えています。大変ではありますが、得られるものも非常に大きい。だからこそ、今は「経営者になってよかった」と素直に思います。
—経営者を目指すうえで大切な要素とは何でしょうか?
最も大事なのは、「人生を賭けられるかどうか」だと思います。
起業によって何を成し遂げたいのか。それはミッションやビジョン、あるいは売上目標や年収でも構いません。ただ、それを「人生かけてやれるのか?」と問われたときに、即答で「やれます!」と言えない人は経営者になるべきではないと思っています。
経営とは、単に自分の夢を追うことではなく、社員の人生の時間を預かる行為です。社員一人ひとりが「自分の人生の時間を会社に託してくれていること」に対し、私は感謝の言葉を伝えることを徹底しています。これくらいの覚悟で臨まなければ、経営者として人の人生を巻き込む資格はないと考えてください。
最近では「セルアウト」や「事業売却」が話題になっています。もし一人で事業を行っているなら問題ない選択だと思います。しかし、社員を巻き込んで一緒に頑張ってきたにもかかわらず、安易に売却して利益だけを追求するようなやり方は、正直、経営者のあり方として少々違うのではないかと感じています。
人生を賭けられる理念とビジョンを持つこと——それが起業への第一歩
—起業を目指している読者にメッセージをお願いします。
会社経営は、想像の何十倍もしんどいものです。だからこそ、人生を賭けられる理念やビジョンを持って起業してください。
「好きな仕事でご飯を食べていきたい」「なんとなく自由になりたい」——そういった動機で始めると、必ずどこかで立ち行かなくなります。
経営者という職業は、タイパもコスパも決して良いとは言えません。例えば、「報酬3,000万円を差し上げますので、2億円を借金して会社を経営しませんか?来年どうなるかは保証できません」と言われたら、おそらく誰も引き受けないでしょう。しかし、それが経営の現実なのです。
皆、「起業したい」とは言いますが、そのリスクを本気で背負う覚悟があるかどうか。結局、経営とは自分の本心で「それでもやりたい」と思える事業でないと続きません。借金せずに起業できるのであればそれでも良いですが、会社を成長させていくには、どこかでリスクを取らざるを得ない瞬間が必ず訪れます。
だからこそ、自分が本気で信じられる事業、人生を賭けてもいいと思えるテーマをぜひ見つけてください。
そして「これでやっていくんだ!」と心から納得できたとき、 きっと多くの人があなたのファンになって応援してくれるはずです。
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起業には個人事業主としての開業と会社設立の2種類があり、事業形態に合わせて選ぶことが大切です。また、起業のアイデアをまとめたり、事業計画書を作成したりといった起業の流れを把握し、十分な準備を整えるようにしてください。
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- ※本記事の内容は取材時点の情報に基づいて作成されたものであり、今後変更される可能性があります。
- ※本記事は一般的な情報提供を目的としております。個人の状況に応じた具体的な助言が必要な場合は、専門家にご相談ください。
- ※本記事に掲載された情報によって生じた損害や損失に対し、弊社は一切の責任を負いません。
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