個人事業主が引っ越したら住所変更でやることは?手続き方法や必要書類を解説
個人事業主が引っ越しを行う場合は、適切な書類を税務署に提出し、所在地を正確に伝える必要があります。しかし、提出しなければならない書類は多岐にわたるため、把握するだけで一苦労です。また、提出漏れによる税金関係のトラブルも考えられます。
本記事では、個人事業主が引っ越した場合に必要な手続きを網羅的に解説しています。これから引っ越しの予定がある個人事業主は、ぜひ最後までお読みください。
- 【この記事のまとめ】
- 個人事業主が事業所を引っ越す際、最初に必要な手続きは、開業・廃業届の提出です。新しい所在地を税務署に通知することで、適切な税務管理が行われます。提出は引っ越しから1ヶ月以内に行うことが求められます。
- 労働保険や社会保険に加入している個人事業主は、さらに日本年金機構に2つの書類を提出する必要があります。提出期限は引っ越しから5日以内であり、期限に注意することが重要です。
- 納税地が変わる場合、所得税・消費税の納税地変更届や口座振替依頼書を提出します。納税地の特例も利用可能ですが、引っ越し後は速やかに手続きを行うことが推奨されます。
- 個人事業主が事業所を引っ越したら住所変更で必要な手続き
- 個人事業の開業・廃業などの届出書を提出
- 労働保険・社会保険の加入者は別途届出が必要
- 引っ越しで納税地が変わる場合に必要な手続き
- 所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する届出書を提出
- 預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を提出
- 個人事業主が海外に引っ越した場合に行う手続き
- 日本に住所を残さない場合(非居住者)
- 日本に住所を残す場合(居住者)
- 個人事業主における納税地の特例とは
- 個人事業主の引っ越し費用は経費として計上できる?
- 事業所の引っ越しを行う場合
- 住居兼事務所の引っ越しを行う場合
- 個人事業主の引っ越しに関するよくある質問
- 個人事業主が引っ越しても納税地が変わらない場合は何もしない?
- 個人事業主が引っ越しする場合はe-Taxを利用するべき?
- 個人事業主の引っ越しで住所変更を忘れていた場合はどうすればいい?
- まとめ
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個人事業主が事業所を引っ越したら住所変更で必要な手続き
まずは、個人事業主が事業所を引っ越した場合に必要な手続きを2つ紹介します。
- 個人事業の開業・廃業などの届出書を提出
- 労働保険・社会保険の加入者は別途届出が必要
直近で引っ越しの予定がない個人事業主も、今後のために確認しておくのがおすすめです。ぜひ、参考にしてください。
個人事業の開業・廃業などの届出書を提出
個人事業の開業・廃業などの届出書とは、新しい事業を始めた場合や事業所の移転、廃止などの報告で必要になる書類です。提出先は、自分が納税地に設定しているエリアの税務署長です。
税務署は、個人事業主が引っ越した場合の新たな所在地を正確に把握することで、適切な税金の徴収や税務の管理を行います。
提出期限は、事業所の引っ越しをしてから1ヶ月以内です。1ヶ月後が休日もしくは祝日だった場合、翌日が期限となります。
個人事業の開業・廃業などの届出書は、e-Taxか直接税務署へ提出可能です。事業所を引っ越す場合は、個人事業の開業・廃業などの届出書を必ず提出してください。
労働保険・社会保険の加入者は別途届出が必要
本業で労働保険・社会保険に加入している個人事業主は、個人事業の開業・廃業などの届出書以外に、2つの書類を日本年金機構へ提出しましょう。
- 健康保険・厚生年金保険事務所関係変更(訂正)届出書
- 適用事業所所在地・名称変更(訂正)届
上記の書類は、提出期限が引っ越してから5日以内です。個人事業の開業・廃業などの届出書と、提出期限が混同しないように注意しましょう。
提出先は、事業所のエリアを管轄している年金事務所です。電子申請や郵送、窓口持参にて提出できるため、自分に合う方法を選択してください。
労働保険・社会保険の加入者に該当する方は、日本年金機構のサイトから書類をダウンロードしましょう。
引っ越しで納税地が変わる場合に必要な手続き
次に、引っ越しによって納税地が変更になる場合の手続きを紹介します。
- 所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する届出書を提出
- 預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を提出
引っ越しによって市区町村が変わる場合は、納税地が変更になる可能性があります。納税地の変更を正しくできていない場合、確定申告や税金の納付がスムーズに行えないため、注意してください。
所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する届出書を提出
所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書は、引っ越しで納税地が変わる個人事業主が、変更後の税務署長に提出しなければならない書類です。必要事項を正しく記入した書類をe-Taxもしくは税務署の窓口に持参することで、納税地の変更ができます。
そもそも納税地とは、日本国民が確定申告や納税を行う場所の基準として定められた住所です。
所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する届出書は、引っ越しのみならず事業所から住所地に納税地を移す場合も提出する必要があります。
提出期限は特に定められていませんが、できるだけ速やかに提出することで、納税に関するトラブルや手間を回避できるでしょう。
預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を提出
預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書とは、納税地の変更により税務署が変わった場合に必要な書類です。預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を提出すれば、変更後の納税地でも口座の引き落としにより、国税を納付できます。
国税を口座引き落としで納付していない方は、提出する必要がありません。
また、先述した所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する届出書には、振替納税を継続する旨を記載する箇所があるため、正しく記入すれば預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を提出する手間が省けます。
個人事業主が海外に引っ越した場合に行う手続き
本章では、海外へ引っ越す個人事業主に向けて必要な手続きを紹介します。
- 日本に住所を残さない場合
- 日本に住所を残す場合
日本に住所を残すパターンと残さないパターンで必要になる手続きが変わるため、自分がどちらに該当するのか把握しておきましょう。
原則として、海外での滞在が1年を超える場合は、非居住者とみなされます。
日本に住所を残さない場合(非居住者)
海外での滞在が1年を超える個人事業主は、非居住者とみなされ国内における廃業手続きをする必要があります。最大で下記3つの書類を用意し、住所地の管轄税務署に提出しましょう。
- 個人事業の開業・廃業等届出書
- 所得税の青色申告の取りやめ届出書
- 所得税・消費税の納税管理人の届け出
所得税の青色申告の取りやめ届出書は、国内で青色申告を利用していた場合のみ提出が必要です。
また、所得税・消費税の納税管理人の届け出は、国税に関する事項や申告書の提出のため、納税管理人を選任する場合に必要です。所得税・消費税の納税管理人の届け出は、出国の日までに提出すれば、問題ありません。
注意点として、日本で不動産所得を得ている方は、非居住者でも所得に税金がかかります。
日本に住所を残す場合(居住者)
日本に住所を残した状態で海外へ引っ越す個人事業主は、居住者とみなされます。居住者とみなされた場合は、海外で得た所得で管轄税務署に納税する義務があります。
租税条約があるため、引っ越し先の国と日本で二重に税金を支払う心配はありません。どちらの国の居住者になるかは、以下の4つの要素で判断されます。
- 恒久的住居の場所
- 利害関係の中心がある場所
- 常用の住居の場所
- 国籍
原則として、海外の滞在が1年未満の個人事業主は、日本の居住者と判定されます。
個人事業主における納税地の特例とは
納税地の特例とは、住所地以外に居住地もしくは事業所を持つ個人事業主が、本来の納税地以外で納付ができる制度です。納税地の特例を活用すれば、事業所か居住地の納税地を納付先に選択できます。
納税地の特例を利用する場合は、本来の納税地を所轄する税務署長に、所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書を提出する必要があります。
提出時期は定められていないため、自分の好きなタイミングで納税地の変更が可能です。
個人事業主の引っ越し費用は経費として計上できる?
本章では、個人事業主の引っ越し費用について、経費に計上できるのかという観点から解説します。
- 事業所の引っ越しを行う場合
- 住居兼事務所の引っ越しを行う場合
個人事業主は、経費として計上することで節税対策が可能です。収入にかかわる可能性があるため、ぜひ最後までお読みください。
事業所の引っ越しを行う場合
事業所の引っ越しを行う場合は、原則かかった費用を全額経費として計上できます。経費は、事業を継続するために必要な支出を指しており、事業所の引っ越しは事業継続に直接的な関係があるためです。
そのため、事業所の引っ越し費用は、確定申告で忘れずに計上しましょう。
住居兼事務所の引っ越しを行う場合
住居兼事務所の引っ越しを行う場合も、原則かかった費用を経費として計上できます。しかし、事業所の引っ越しのように全額は計上できない点に注意しましょう。
住居兼事務所の引っ越しは、住居スペースを全体の割合から引き算して経費を算出する必要があります。この考え方を家事按分といいます。仮に、事業所としているスペースが住居の20%だった場合は、引っ越し費用の20%を経費に計上可能です。
家事按分の考え方は、引っ越し費用のみならず水道・光熱費や家賃でも利用できます。個人事業主は、家事按分を使いこなすことで節税対策が可能です。
個人事業主の引っ越しに関するよくある質問
ここからは、個人事業主の引っ越しに関するよくある質問に回答していきます。
個人事業主が引っ越しても納税地が変わらない場合は何もしない?
引っ越しで納税地が変わらない場合でも、以下の書類を税務署に提出しなければなりません。
- 所得税・消費税の納税地の異動に関する届出
個人事業主が引っ越しする場合はe-Taxを利用するべき?
e-Taxとは、国税に関する手続きを電子的に行えるシステムです。e-Taxを利用すれば、わざわざ税務署の窓口に足を運ぶ必要がないため、忙しい個人事業主にとって画期的なシステムといえるでしょう。
本記事で紹介した書類の多くは、e-Taxを利用して提出可能です。e-Taxは、確定申告や電子納税にも対応しているため、操作に慣れておいて損はありません。
個人事業主の引っ越しで住所変更を忘れていた場合はどうすればいい?
個人事業主が引っ越し後の住所変更を忘れてしまうと、国税関連の書類が届かないといった事態が考えられます。そのためできるだけ速やかに提出するようにしましょう。
引っ越し後の住所変更書類の提出は、必ずやらなければならないこととして、後回しにせず引っ越し作業の一環として取り組むのがおすすめです。
まとめ
本記事では、個人事業主が引っ越す場合の手続きに関して詳しく解説しました。住所変更等の書類を税務署に提出しないと、税金に関する手続きの手間や余計なお金が必要になる可能性があります。本記事を参考に、必ず知識を蓄えておきましょう。
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- 記事監修
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- 中野 裕哲 HIROAKI NAKANO
- 起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP 技能士。 V-Spiritsグループ創業者。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「あの起業本」の著者。著書16冊、累計20万部超。経済産業 省後援「DREAMGATE」で11年連続相談件数日本一。
- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修のもとに制作したものです。
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