【Michikusa株式会社】AIで人の時間を創り出したい!道草を食べられる人生を目指す経営哲学
生成AIを活用した個人・法人向け研修やDX支援サービスなどを提供し、人生における余白の時間を創り出す「Michikusa(みちくさ)株式会社」の代表取締役、臼井拓水さん。臼井さんは、ICU在学中にニュースメディア、AI系ファンド、旅行系スタートアップといった3社にインターンしました。
大学卒業後は「Amazon Japan」に入社し、マーケットプレイス事業部にてAccount Managerに従事。そして、Amazon在籍中にChatGPTが誕生し、その衝撃を受けて起業を決意しました。
AIベンチャーでの取締役の経験を経て、2023年10月29日、AIを中心としたソリューションで包括的なDXを提案する「Michikusa株式会社」を創業。
個人としてもSNSにてAI活用事例を発信し、業界で強い影響力を持つ臼井さんに、起業するまでの道のりや、経営者として大切にしているマインドなどをお伺いしました。
- 臼井拓水さんのご経歴
- 小学校低学年の頃から「商売は楽しい」という感覚があった。
- ー現在、経営されている会社名と主な事業内容を教えてください。
- ー学生時代、ビジネスに興味を持つきっかけとなった体験をお聞かせください。
- ー小学校の頃から本当にビジネスの根底を学ばれていたんですね。
- ChatGPT誕生の衝撃を受け、すぐに起業に乗り出した
- ー会社の経営者になりたいと思い始めたのはいつでしょうか?
- ー起業家体験プログラムで知り合った方とは、今でも繋がりがあるのでしょうか?
- ー起業を志してから、実際に会社を創業するまでの道のりについてお聞かせください。
- ーChatGPTの誕生により、現在のビジネスモデルの基盤ができた形でしょうか?
- 商売を考察することが好きで、色んなところからアイデアを得ていた
- ー開業をする際、利用して良かったサービスはありますか?
- ー起業前に経営ノウハウや成功事例などを学ぶ機会はありましたか?
- AIの力で余白を創り、人生に道草を食う時間を与えたい
- ーMichikusa株式会社が掲げるビジョンやミッションについてお聞かせください。
- ー御社のAIを活用した法人研修サービスの特徴をお聞かせください。
- ー法人研修サービスを展開するうえで、苦労したことはありましたか?
- ーまだ実績が少ないなかでも、案件獲得につながった要因とは何でしょうか?
- ー個人研修に関してもサービスの強みなどをお聞かせください。
- 広告費をかけない戦略の秘密は、SNSでバズる情報発信である
- ーサービスの認知拡大において、特に力を入れたアプローチとは何でしょうか?
- ーInstagramを活用した施策についてもお聞かせいただけますか?
- ー今後、新たに展開しようと考えているビジネスがあれば簡単にお聞かせください。
- 運、縁、恩、感こそ、ビジネス成功の要因である
- ー経営者として大切にしているマインドを教えてください。
- ー組織と社員の成長を促すために心がけていることはありますか?
- ーAIの最新情報を追うことも徹底されているのでしょうか?
- 人の命を救う、人の時間を創り出すための価値発信を最大化したい
- ーMichikusa株式会社とご自身の将来ビジョンをお聞かせください。
- ー「人の命を救う」という活動で何か参考にされたものはありますか?
- 後悔するのは死ぬときだけ。何もしないことが一番のリスクである
- ー起業して良かった、経営者になって良かったと思えたことをお聞かせください。
- ー経営者を目指す上で大切な要素とは何でしょうか?
- ー起業に向けた心構えとして、何かアドバイスがあればお聞かせください。
- ー起業を目指している人に対して、最後にメッセージをお願いします。
- 起業や独立に興味を持ったら、まずは「起業の窓口」に登録してみよう!
臼井拓水さんのご経歴
- 国際基督教大学(ICU)在学中に、AIの研究開発を行う株式会社PKSHA Technologyを母体としたファンド、PKSHA Capitalにてアソシエイトを経験。
- 大学卒業後、Amazon Japanに入社。マーケットプレイス事業部にて、Account Managerを担当。入社後1年目で、部門全体における営業成績1位を達成。
- AI受託開発会社(ベンチャー)にて取締役に就任。
- 2023年10月29日、Michikusa株式会社を創業。現在、ChatGPTやCopilot for Microsoft 365を活用した法人向けAI研修やDX支援などを行なっている。
小学校低学年の頃から「商売は楽しい」という感覚があった。
ー現在、経営されている会社名と主な事業内容を教えてください。
現在、Michikusa(みちくさ)株式会社という会社を経営しています。
私たちは、生成AIを世の中に普及させるためのお手伝いとして、法人向け研修、個人向け研修、DX支援などのサービスを提供しているところです。
たとえば、「AIを使ってみたい」という企業さんに対して、ChatGPTやCopilot for Microsoft 365、Notionなどのツールを導入するための研修を実施し、社員さんがAIで業務を効率化するまでのサポートを行なっています。
ー学生時代、ビジネスに興味を持つきっかけとなった体験をお聞かせください。
小学生の頃から、両親に「商売の感覚を身につけてほしい」と言われてきました。
両親は身内だけを集めたテニストーナメントを開催していて、開催日が近くなると、買い出しのために業務スーパーに連れていってくれました。スーパーに着くと両親は「これで好きな物を買いなさい。誰かに高く売って、その差額をお小遣いにしていいからね」と言って、私に2千円を渡したんです。そして、「テニスをする人にどんな物が売れそうなのか考えてみてね」と言われ、子どもながらに考えて商品を選びました。
小学生の頃のお小遣いは、1年生で100円、2年生で200円という学年×100円という決まりでした。それが、2千円を元手に商品を選んで購入して売った結果、2、3千円くらいの利益が出て、それをそのままお小遣いとしてもらうことができたんです。あのときの感動や面白さは今でも覚えていますね。
実際に購入したのは粉末のスポーツ飲料だったんですが、説明不足のまま売ってしまい、粉のまま飲んでしまった人がいたんですよ。それを両親に知られて、「物を売るときはちゃんと説明して、使う人の気持ちを最後まで考えないといけないんだよ」と怒られましたね。
ー小学校の頃から本当にビジネスの根底を学ばれていたんですね。
今考えると、小学校の低学年にこういうことをやらせるのはすごいなと思いますが、商売を実際に体験できたのは貴重な経験になったと思います。
裕福な家庭ではなかったんですが、当時流行っていたベイブレードというおもちゃをいっぱい持っていました。あまり流通していなかった高額のモデルがあったんですが、あちこち探し回って見つけて、それをネットショッピングで売ったり、近所にあるおもちゃの二次販売をやっているようなお店に売ったりして、お小遣いにしていましたね。
あのときはビジネスとは思っていませんでしたが、どうやったら遊ぶためのお金を増やせるのか考えていました。
ChatGPT誕生の衝撃を受け、すぐに起業に乗り出した
ー会社の経営者になりたいと思い始めたのはいつでしょうか?
高校生の頃、StartupBaseという団体が運営している、高校生のための起業体験プログラムに参加したことがあり、そこで起業家とは何かを学びました。
2日間にわたるプログラムでは、起業家として自身のコンセプトを考え、MVP、要は顧客のニーズを満たす最小限のプロダクトを作ることを体験しました。
すごく楽しい体験でしたし、プログラムへの参加を通じて「将来は起業家になりたい」と明確に意識するようになりましたね。
ー起業家体験プログラムで知り合った方とは、今でも繋がりがあるのでしょうか?
そこで出会った創業者の方とは、ご自宅に遊びに行くほど今でも仲良くさせていただいています。
実は今、弊社の顧問をしていただいている方は当時起業体験プログラムの審査員を務めていた方なんです。AI界隈では有名な松田雄馬さんという方で、AI系の本を書かれていて、高校の教科書などに何冊も採択されています。
私が高校1年生の頃から9年という長いお付き合いがある方なので、この大切な縁を築けたのは、起業体験プログラムに参加したおかげですね。
ー起業を志してから、実際に会社を創業するまでの道のりについてお聞かせください。
私たちの世代は、大学時代に新型コロナが直撃して部活などができなかったんです。当時、ラグビー部に所属していましたが、部活動ができないこともあって3社にインターンしました。
1社目が「Business Insider Japan」というニュースメディア、2社目が「PKSHA Capital」というAI系のファンドです。PKSHACapitalでは、インターンというよりアソシエイトとしてほぼフルタイムで働いていました。
3社目は「令和トラベル」という旅行系のスタートアップです。こちらのインターンでは、社会人の基礎という部分でかなり鍛えられたと思います。
そこから、新卒採用で「Amazon Japan」に入社しまして、マーケットプレイス事業部にて、Amazonで物を売っている事業者さんのサポートをしていました。
Amazonに在籍中、みなさんご存知のChatGPTが誕生しました。実は、PKSHA Capitalで働いていた頃からAIビジネスにすごく興味があって。ChatGPTの誕生に「これはヤバい!」と強い危機感を抱き、すぐに友人と連絡を取り、Amazon在籍中に起業してAI受託開発会社を立ち上げました。
そして、受託である程度の売上が立ってきたタイミングで、株式を創業メンバーに譲渡して会社を離れ、「Michikusa株式会社」を創業したという経緯があります。
ーChatGPTの誕生により、現在のビジネスモデルの基盤ができた形でしょうか?
そうですね。ChatGPTは2022年11月に誕生したんですが、そこからすぐに触り、翌年1月にはもうビジネスをスタートさせていました。会社の登記に若干時間がかかりましたが、その間も個人事業として動いていた形です。
インターン時代の仲間3人と起業したのですが、3人ともすぐにChatGPTに触れていて、感度が高かったんですよね。「これ、すごくない?」という話になり、正直何も考えていなかったんですが、「とにかく触りまくって、これを世の中に広めなきゃ!」という使命感に駆られましたね。
ChatGPTが誕生したばかりの頃は、命令・質問にあたるプロンプトがかなり貴重だったんです。プロンプト共有サイトみたいなものがいくつかありましたが、そのなかでもChatGPTを使ってゲームをするのがすごく流行っていました。
まずはチームメンバーと一緒に、ChatGPTのロールプレイングゲームを共有するサイトづくりをしました。これは本気で稼ごうというよりも、まずは1個プロダクトを出してみようという気持ちで試みたことです。
その後、私以外のチームメンバーがエンジニアだったこともあり、「まずは開発に集中しよう!」という方向性に固まりました。当時、ChatGPTはまだまだ流行っていませんでしたが、感度が高い人ほど使ってみたいというニーズがあったんです。そこで私たちは、XでAIに関する情報発信をしてリードを集め、色んな人からひたすら話を聞き、「まずは企業さんの受託案件から始めよう」となったんです。
私はもともと研修の領域をビジネスにしたかったので、受託での売上が上がってきたタイミングで会社を抜けて、Michikusaを創業したという形ですね。
商売を考察することが好きで、色んなところからアイデアを得ていた
ー開業をする際、利用して良かったサービスはありますか?
Amazonを退社して起業するときはとにかく固定費をかけたくないという思いがあったので、オフィスも借りませんでした。そこで、GMOオフィスサポートさんにお願いして、バーチャルオフィスを借りることにしました。敷金・礼金などのコストがかからないですし、手続きも非常にスムーズで本当に助かりました。
他にも、freee開業さんなどのサービスを利用したので、開業手続きは最初から最後まで割りと楽に進んだ印象があります。起業するにあたって、銀行の審査落ちやオフィス登記の手間などを心配していたんですが、そこも問題なかったですね。
ー起業前に経営ノウハウや成功事例などを学ぶ機会はありましたか?
両親は起業家ではなかったので、「起業しろ」とはあまり言いませんでした。むしろ起業は反対派だったと思います。ただ、「金融、英語、ITには強くなれ」と小学生くらいのときから言われてきましたね。
経営者になるための知識やノウハウは、色んなセミナーに参加したり、本を読んだりして身につけていきました。ベンチャーキャピタルで働いていたとき、たくさんの起業家の方とお話しする機会があったんですが、そこで自分の知識不足が露呈されてしまったので、ひたすら経営に関する本を読むようになったんです。
あとは、商売みたいなものを考察することが好きだったので、ネット広告で物を売っている人がいたとき、「この人ってどうやって稼いでるんだろう」ということを昔から考えていました。
たとえば、世の中で流行っているビジネスがあれば、すぐにフェルミ推定を使って売り上げや広告費、利益率を推測します。どのくらいのコストをかけて、月に何件売れるとどのくらいの利益が出るのか、みたいな。意外と儲かっていないなとか、こんなに儲かっているんだとか、自分で調べるのが好きなんです。実は、色んなところから自然とビジネスアイディアを得ていたかもしれないですね!
AIの力で余白を創り、人生に道草を食う時間を与えたい
ーMichikusa株式会社が掲げるビジョンやミッションについてお聞かせください。
弊社では、「AIの力で余白を創る」というビジョンと「人生に道草を」というテーマを掲げています。
一見道草って、いわゆるDXや業務効率化の真逆にある言葉に見えますよね。でも、逆にそれが面白いなと思ったんです。
今、現代人には「効率化しないといけない」「とにかく合理的でないといけない」という感覚があり、道草食う時間なんてないと考える人が多いと思います。それはそれで、すごく正しいことです。
私はパラグアイなどの海外に行ったり、色んなところにインターンしたりと、この人生でたくさんの行動をしてきた自覚があります。自分にとってすごく大切な時間を過ごしてきましたが、その時間をちゃんと創るには、日々の仕事の忙しさから解放される必要があると思うんです。
たとえば、会社目線で社員を見たとき、無駄なエクセル作業で時間に追われてるのはもったいないと感じますよね。会社として本当に時間を使うべきところに時間を使ってもらい、色んなことに挑戦していけるようサポートするのが私たちMichikusaなんです。
アプローチの仕方は何でもいいんですが、私たちの場合、AIの力でその余白づくりに貢献して、そして人生に道草を、というテーマで活動しています。
ー御社のAIを活用した法人研修サービスの特徴をお聞かせください。
法人研修サービスのターゲットは、小さな地方の10名規模の会社さんから東証プライムの大企業さんの社内全体まで、かなり幅広いです。
「どのようなAIを選ぶべきか」というご相談から始まり、実際に社員さんがツールを活用するところまでご提案させていただいています。
弊社の強みとしては、毎回フルカスタマイズでつくっているところですね。補助金を使うとサービスのスキームをガチッと決める必要があるんですが、弊社の場合、柔軟性を大事にするために補助金は使っていません。
会社さんによって、最適なサービスの使い方や研修の仕方が異なるので、大変ではありますが毎回カスタマイズした形で提供しています。他社さんより比較的安価なサービスで、なおかつその会社さんに合った最適なプランをご提案できる点が弊社の強みですね。
ー法人研修サービスを展開するうえで、苦労したことはありましたか?
法人研修サービスを企業さんに提案するとき、一番に求められるのが実績の部分なんです。「御社のサービスを受けたとき、実際にどういう効果があるんですか?」という話から始まって、「それで料金はいくらですか?」みたいな。
Amazonに勤めていた経歴があっても、起業したばかりの頃はまだ24歳の若造でしたから、難しい部分が多かったですね。「ChatGPTって結局嘘つくでしょ?」とあしらわれたこともありましたし、「ここからここまでは無料でよろしく」という無茶なお願いもありました。
そんな足元を見られる状況のなかで、私たちはどうしても実績をつくりたかったので、逆に吹っ切れて「全部無料でやりますよ!」という風に動くことにしたんです。
まずはFacebookメッセンジャーで繋がっている過去にお世話になった方々に、ひたすらメッセージを送ることにしました。「あのときはありがとうございました。今、こういう風に起業しています」「もし何かお店のことでChatGPTのニーズがあれば、ご連絡をください」という内容を含めた長文メッセージです。AIに頼らず、手作業で一人ひとりに合わせたメッセージをつくったので、だいたい2〜3日かかったと思います。
その後、企業さんがどのような研修を求めているのか、どのように解決すべきかを肌で体感するため、色んな会社さんに無料で研修しに行きました。「無料で研修する代わりに、研修実績をつくらせてください」というお願いをした結果、少しずつ実績が蓄積されて、最初にぶつかった課題を乗り越えられたという形です。
ーまだ実績が少ないなかでも、案件獲得につながった要因とは何でしょうか?
業務のヒアリングの際は、私も実際にその会社さんに足を運んで、どのような作業でどのような環境か、どのくらいのリソースをかけているかなどを事前に聞くようにしていました。経営者が自らサービスの使い方を検討して、具体的な提案をする会社って、かなり少ないんです。
補助金を利用した場合、動画を使って導入・運用サポートを安く済ませるというビジネスモデルもありますが、私には向いていないなと思いました。やっぱりライブ感を大事にしたいんです。実際に間近で見て、そこに驚きがある。AIって魔法のようなものですから、実際に見た人、体験した人を魅了するんです。
AIの凄さを実感したことがない人ほど、「どうせAIは嘘をつくんでしょ?」と疑心暗鬼になるので、私たちはどうにか実践してもらうことを一番に考えて、毎回研修をつくっています。
ー個人研修に関してもサービスの強みなどをお聞かせください。
個人研修に関しては、おまけ程度で少しだけやっています。私が3時間がっつり喋って5,000円程度の料金ですから、業界でもかなり安いです。
同業のなかには、広告費などの諸々のコストを含めて、数十万円もらわないと利益が出ないビジネスモデルもあります。
私の場合、SNSが結構伸びているという好材料もあって、広告費をかけずに安くサービスを提供しています。それに、法人研修で売上が立っていますから、無理に他の売れるビジネスモデルを真似る必要もないです。だからこそ、業界では少ない代表による実名顔出しの個人研修を提供できているんです。
低価格で高品質な個人研修サービスとして展開した結果、5月だけで8,000人の受講者と99%の満足度を獲得できました。研修を終えた受講者の99%が「業務でAIを使えるようになるイメージが湧いた」と回答してますから、これは成功したなと大きな手応えを感じましたね。
広告費をかけない戦略の秘密は、SNSでバズる情報発信である
ーサービスの認知拡大において、特に力を入れたアプローチとは何でしょうか?
完全にSNSでの発信一本ですね。リソースが限られていますし、私自身、心の底から発信することが大好きなんです。たとえ無職で所持金ゼロの状態でも、情報を発信し続けるんだろうなと思います(笑)。自分の好きなことを発信して、なおかつそれが伸びるのが嬉しいからこそ、SNSをやっていますね。
AIに関する情報発信をする際、最適なプラットフォームは断然Xです。Xでの情報発信は、業界でもトップ5に入るか入らないかくらいバズってます。ですが、Xを見ている層にしか届かないんですよね。
Xを見る層は結構リテラシーが高くて、AIのことをある程度理解している人しか情報を見ない印象がありました。そこで、インスタのショート動画をつくって、より多くの層に情報を届けることを考えました。
ーInstagramを活用した施策についてもお聞かせいただけますか?
実は私自身、テキストで1分で書けるような内容を時間をかけてショート動画にすることが、あまり好きじゃなかったんです。それに、リテラシーの低い層を狙い撃ちした、匿名・顔出しなし・実績なしの人間が情報商材を売るような動画が増えたことで、ショート動画自体にあまり良い印象がありませんでした。
そこで逆に、実名・顔出しあり・実績ありの人間が届けるショート動画であれば、伸びるのではないかと考えました。
私は過去にショート動画クリエイターをやっていたので、編集技術があります。ちゃんと良い内容で良い編集をすれば、全部持っていける可能性すらあると思い、実際にやり始めた結果、3週間ほどで業界1位だったフォロワー数10万人の方を超えることができたんです。現在、インスタの運用3ヶ月で15万人までフォロワーが増え、YouTubeのチャンネル登録者数も8万人を超えました。
インスタのショート動画がかなりバズったことで、たくさんの個人向け案件を獲得できました。それだけではなくて、個人で受けられた方から「うちの会社でも導入したい」とお問い合わせいただくケースが増えて、難しいと言われている法人向け案件もかなり取れました。「ちゃんとしたまともな会社の研修で、こんなに安いならぜひ受けたい」という方が増えていき、はずみ車式にどんどん大きくなっていくという形ですね。
こういった成功体験があったからこそ、私の場合はSNSで広告費をかけなくても良いと結論づけました。
Amazonの創設者として有名なジェフ・ベゾスがナプキンに描いた「フライホイール」という図があります。それは、商品数が増えればお客さんも増え、お客さんが増えれば事業者も増えることを意味するものです。どんどん回っていって、止められなくなるのがフライホイールなんですが、Amazonに勤めていたときから「これをつくりたい」とずっと考えていました。それをこの個人研修と法人研修でつくれたことは、本当に良かったなと思いますね。
ー今後、新たに展開しようと考えているビジネスがあれば簡単にお聞かせください。
この先、生成AIを使いこなすような優秀な学生が、デジタル技術に疎い会社に入社してしまうと日本にとって大きな損失になると思っています。今後、そういった人材と企業のミスマッチが起こらないよう、私たちがお手伝いできたらいいなと強く思っています。
従来型の人材紹介にはしたくない部分があるので、悩んでいるところですが、学生さんに対して「こんなに優良な企業があるんだよ」とお披露目するような取り組みをしてみたいです。
たとえば、イベントなどの開催ですね。単純に人材を送り込むようなモデルというよりは、AI技術を活用している優良企業を私がしっかりと見極めて、学生さんに丁寧に紹介するということを今後やりたいなと思っています。
これはかなり短期的な計画で、長期的に見ると必ずしもAIに限定せず、人間の時間の最適化みたいなところに取り組んでいきたいです。たとえば、AI以外の分野なら、トランスポーテーションなどの分野になるかもしれません。
時間の大切さ、つまり人類がどれだけ無駄な作業を減らせるかということを常に考えているので、将来的にはAI以外の分野に進む可能性もあるということです。
運、縁、恩、感こそ、ビジネス成功の要因である
ー経営者として大切にしているマインドを教えてください。
「運」と「縁」と「恩」と「感」、これを大切にしてきました。
この言葉は、私のICUの先輩で、元上場企業の社長を務められていた方から教わったものです。その方が上場インタビューで「経営で何を大事にしていますか」と聞かれたときに、「運と縁と恩と感です」と一言だけ答えたエピソードがすごく好きなんです。
確かにそうだなと思います。正直、会社経営にはそれほど特別な能力が求められるわけではないと感じています。もちろん、すごい能力を持つ人もたくさんいますけど、どれだけこの「運」「縁」「恩」「感」をちゃんと大切にするかが重要だと思っています。
私がAIに出会えたのも、すごく運が良かったからですし、そこから色んな方との良い縁にも恵まれました。それは多分、私が過去にお世話になった方にちゃんと「恩」を忘れないでいたからだと思います。もちろん私自身も、恩を感じてくれている方には報いたいです。そして、最後は「感」が大事なんだろうなと。
「運」「縁」「恩」「感」、これに全て集約されているんじゃないかと思いますし、この言葉はすごく気に入っています。
ー組織と社員の成長を促すために心がけていることはありますか?
割りと心がけているのは、組織の風通しを良くするということです。弊社は、DXやAIを提案する会社ですから、そういう組織づくりの根底はしっかりやっていこうという意識があります。他社にデジタルを提案するのに、うちでアナログなことをしていたら説得力がないですから。
具体的には、Microsoft AIやMicrosoft Copilotなどを活用して、リモート環境でも良いコミュニケーションや連携が取れる環境を整えています。
ーAIの最新情報を追うことも徹底されているのでしょうか?
法人に対してAIのサービスを提案するという部分では、そこまで最新情報を追う必要はないと考えています。ファンダメンタルなところ、要はChatGPTをどう使うかという部分が重要ですから。
ただし、私たちは発信者として伸びている部分もあるので、業界の最新情報を常に追い続けています。「良いものがあれば積極的に取り入れてみよう!」という姿勢は、絶対に忘れてはいけないと思いますね。
今この仕事ができてるのも、ChatGPTが誕生した瞬間に情報をキャッチして、すぐに発信をスタートしたことが原点ですから。その感度の速さが一番大事だったんです。
人の命を救う、人の時間を創り出すための価値発信を最大化したい
ーMichikusa株式会社とご自身の将来ビジョンをお聞かせください。
まだ事業規模が小さいということもあって、将来ビジョンに関しては今のところ解像度が低めですね。ですから、上場したいとか、何兆円企業をつくりたいとか、現時点ではあまり考えていません。
売上の部分に関してすでに個人的な目標を達成してしまったので、大きな家に住みたいとか、ブランド品を買いたいとか、そういう欲求もないんです。
今後の展望としては、「人の命を救う」「人の時間を創り出す」という可能性を、どのように最大化できるかが勝負だと思っています。これらに挑戦するとき、上場が最も良い手段となれば、もちろんそれを選択するでしょう。ただし、あまりそこにこだわりすぎず、人類にとって常に良いことをしていきたいなという想いがありますね。
ちょっと大げさな話ですが、「usutakuという人材を世界のどこにどのぐらい配置すれば世界が最適化されるんだろう」ということをずっと考えていて。予想はあまりついていませんが、現時点で私ができる最大の価値発信といえば、日本でのAIの情報発信だと思います。たとえば、NotionやChatGPTに関する情報発信では、日本で一番見られてるという自信がありますから。
ただし、この価値っておそらく1年ごとに大きく変わると思うんです。ですから、あまり定義しないようにはしています。それでも、私ができる価値発信を常に最大化していきたいですし、それができる場所に居続けたいです。
ー「人の命を救う」という活動で何か参考にされたものはありますか?
グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)というヘルスシステムのトップを務めていらっしゃる、馬渕俊介さんという方がいます。馬渕さんは、過去にマッキンゼーやビル&メリンダ・ゲイツ財団などに属されていた方で、現在は新型コロナウイルスなどの新たな感染症の蔓延を防ぐために、保健医療システムを改善する活動などをされています。
馬渕さんはかつて、エボラ感染のリスクをなくすため、文化人類学者と現地の宗教リーダー、コミュニティリーダーなどとの共同プロジェクトに参加されました。そのプロジェクトを通じて、人々が尊厳ある死を迎えられる「安全な尊厳ある埋葬」が開発され、それが普及した結果、死者70万人を超える可能性があったエボラ感染を1万人強にとどめることができたそうです。
マッキンゼーのプロジェクトマネジメントスキルや、学生時代に学んだ文化人類学の知識などを駆使し、さらに部族の長などと交渉などして69万人命を救ったんです。とんでもない功績ですよね。
そんな馬渕さんのように、人の命を救いたいという志を持って活動すれば、私のビジネスでも結果的に売上に繋がると思いました。お金を稼げる、モノを動かせるといった優秀な人間こそ、人命やテクノロジーなどの分野に挑戦すべきなんです。
私が大好きなイーロン・マスクこそ、そういう人間だと思います。彼がもし普通の生き方をしていたら、人類にとって大きな損失になったと思うくらいの人ですから。
本当はもっと優秀なはずなのに、「なんで今それをやってるの?」という人って多いと思いますし、私自身そうはなりたくないんです。人の命のために、人の時間のために、ちゃんと貢献できる人間でありたいですね。
後悔するのは死ぬときだけ。何もしないことが一番のリスクである
ー起業して良かった、経営者になって良かったと思えたことをお聞かせください。
この世の中で感じた課題を自ら解決していけるのが経営者ですし、やりがいをすごく感じますね。
大きな組織に属する社員の場合、「これって本質的じゃないだろう」と思っても、やらなければならない場面ってかなり多いです。
起業して経営者になれば、自分にしかできないことや、誰もやっていないことにどんどん挑戦できますし、この環境はすごく楽しいと思いますね。
ー経営者を目指す上で大切な要素とは何でしょうか?
やっぱり、オーナーシップじゃないですかね。Amazonにいた頃はよく言われてきました。
圧倒的当事者意識という言葉があるように、もし起業をするなら「俺がどうにかしないといけない」という使命感を持たなければならないんです。今自分がやっていることに対して、自分で責任を持てない人間は起業できないと思います。
経営者に求められるスキルなら後からでも身についてきますし、一番大事なのは気持ちの部分ですね。
ー起業に向けた心構えとして、何かアドバイスがあればお聞かせください。
昔とは違って、起業する人を歓迎するカルチャーが少しずつ出来上がってきていますし、終身雇用もどんどん減ってきています。そうなると、起業するリスクってそんなにないんですよ。
あまり無責任なことは言えませんが、今って売り手市場における人手不足なので、会社を辞めて起業しても死ぬわけではないです。起業にお金も知識もそこまで必要ないですし、ある程度まともなキャリアと実力さえあれば、もう一度会社に戻ることだってできます。
準備が必要、資金が必要、経験が必要、骨が必要と言って、なかなか動かない人は起業に向いていないと思います。もし自分がそうかもしれないと感じているなら、起業に対するフィルターを全部取ってもう一度調べてみてください。きっと考え方が変わりますから。
最後までやりきって失敗しても、選択肢はあるんです。私だったら、Amazonに戻る、またはもう一度別の事業に挑戦するという選択肢があります。あとは、大好きな国であるパラグアイに戻るという選択肢もありますね。
一昨年の今頃、私はパラグアイにいました。GDPこそ低いですけど、すごく幸せな国でしたね。みんな土地を持っていて、豚、牛、鶏をいっぱい飼っているんです。地震がない国ですから、勝手に大きな家を建てて、庭にプールまで作ってしまうんですよ。
見ず知らずの日本人なのにみんな優しくしてくれましたし、日本で何かに失敗しても、パラグアイに行けば幸せになれるんだろうなと感じるほどでした。
ー起業を目指している人に対して、最後にメッセージをお願いします。
起業に関して、事務的な手続きは昔と比べて相当低くなりました。GMOあおぞらネット銀行やGMOオフィスサポートなど、GMOさんの素晴らしいサービスがあるからです。僕も本当にお世話になりました。誰でも起業できます。それでも多くの人が起業したがらないのは「リスクを取りたくないから」だと思います。そして、なぜリスクを取りたくないのか深掘りすると「後悔したくないから」になるはずです。
ですが僕は、挑戦しない人生こそ後悔に繋がると思っています。死ぬ時に、「起業すればよかったなぁ」なんて絶対思いたくないです。それに、起業するときにみなさんが考えるようなリスクも、実は全くリスクにはならないことが多いですよ。
むしろこの変化の激しい時代、リスクを取らず何も行動しない、現状維持であることが一番のリスクなんです。維持しているように見えて、退化してますからね。いまだに生成AIを使ってない人とか特にね。起業のは簡単。リスクも怖くない。ただ、やりきるだけ。これに尽きますね。
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起業には個人事業主としての開業と会社設立の2種類があり、事業形態に合わせて選ぶことが大切です。また、起業のアイデアをまとめたり、事業計画書を作成したりといった起業の流れを把握し、十分な準備を整えるようにしてください。
一度起業すると、資金や従業員の管理、納税など多くの責任を負わなければなりません。過去の成功事例も参考にしながら、自分なりのビジネスを展開できるよう起業アイデアを練ってみましょう。
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