【株式会社コソド】喫煙所×広告の再設計。社会課題に“仕組み”で挑むスタートアップの現在地

大学卒業後、Webマーケティング会社やコンサルティング会社で、多種多様な企業の支援を経験した湯川さんは、20代半ばで『rakanu株式会社(現株式会社dot LIFE)』を創業。
事業開発支援やデジタルマーケティングに携わる中で、ある日、愛犬のフレンチブルドッグから着想を得たペットメディアを立ち上げ、瞬く間に業界内で注目を集めました。
その後、ペット事業で確かな実績を築き、2023年に同社の代表取締役を退任。同年、喫煙環境の改善を起点とした社会課題の解決を目指し、『株式会社コソド』の取締役CMOに就任しました。
現在、非喫煙者と喫煙者が心地よく共存できることを目指した新しいカタチの喫煙所『THE TOBACCO(ザ・タバコ)』や、喫煙所を活用したサイネージメディア『BREAK(ブレイク)』の企画・運営を手がける湯川さんに、起業に至るまでの道のりや、経営者として大切にしているマインドをお伺いしました。
- 湯川健太さんのご経歴
- 喫煙のあり方にイノベーションを起こす、『株式会社コソド』
- ー現在、経営されている会社名と主な事業内容を教えてください。
- コンサルへの憧れから始まった、起業に続くキャリアの第一歩
- ー学生時代から経営者になりたいと思われていたのでしょうか?
- ー大学卒業後、どのような社会人経験を積んで起業されたのでしょうか?
- 経験を価値に変えるための選択が、起業だった
- ー会社経営を志すようになってから、起業するまでのエピソードをお聞かせください。
- 愛犬のフレンチブルドッグから思いついた、犬種特化型メディア
- ーrakanu株式会社でペット事業を立ち上げた理由についてお聞かせください。
- ーペット事業での成功体験をお聞かせください。
- 株式会社コソドの取締役CMOに就任し、“喫煙環境”という社会課題に挑む
- ー株式会社コソドの取締役CMOに就任した経緯をお聞かせください。
- ー株式会社コソドが“喫煙環境”に取り組み始めた理由とは何でしょうか?
- ータバコに関連するビジネスのなかで、なぜ公衆喫煙所の企画・運営を始めたのでしょうか?
- 僕にとって、“感覚”は本よりも人との会話で育まれてきた
- ー起業の準備はご自身で進められたのでしょうか?
- ー経営ノウハウや成功事例などを学ぶ機会はありましたか?
- 社会にも、事業にも、ちゃんとプラスになる仕組みを
- ー株式会社コソドが掲げるミッションについてお聞かせください。
- “6分の無防備”を捉える、サイネージメディアBREAK
- ー喫煙所内に設置するサイネージメディア『BREAK』の特徴をお聞かせください。
- ー『BREAK』の認知拡大で、特に力を入れたアプローチとは何でしょうか?
- “6分の休憩”を活かす、サイネージ×リアルの体験設計
- ー今後、新たに展開しようと考えているビジネスがあれば簡単にお聞かせください。
- 『微差が大差を生む』という言葉を胸に、競争を勝ち抜いていきたい
- ー経営者として大切にしているマインドを教えてください。
- ー組織の成長を促すために心がけていることはありますか?
- 誰かのせいにしないと決めたとき、見える景色がある
- ー起業して良かった、経営者になって良かったと思えたことをお聞かせください。
- ー経営者を目指す上で大切な要素とは何でしょうか?
- 起業に迷ったら、まずは今に集中してみると、道が見えてくる
- ー起業を目指している読者に対して、メッセージをお願いします。
- 起業や独立に興味を持ったら、まずは「起業の窓口」に登録してみよう!
湯川健太さんのご経歴
- 横浜市立大学卒業後、Webマーケティング会社や戦略系コンサルティング会社にて、多様な業界・業種の事業支援を経験。
- 2012年、事業開発支援とマーケティング支援を手がける『rakanu株式会社』を創業。自身の愛犬をきっかけに、犬種特化型メディア『フレンチブルドッグライフ』など複数のペットメディアを立ち上げ、マーケティング支援領域において業界トップクラスの実績を築く。同社は2019年にM&Aにより『CARTA HOLDINGS』の傘下に。
- 2023年、代表取締役を退任し、同年『株式会社コソド』に参画。現在は取締役CMOとして、都心オフィスビル喫煙所デジタルサイネージ『BREAK』事業責任者として、同社のマネタイズ領域を推進。
喫煙のあり方にイノベーションを起こす、『株式会社コソド』

ー現在、経営されている会社名と主な事業内容を教えてください。
2019年9月に創業した『株式会社コソド』という会社を経営しており、喫煙にまつわる事業を展開しています。
最初に立ち上げたのが、喫煙所ブランド『THE TOBACCO(ザ・タバコ)』です。 都内の好立地なスペースを自社で借り上げデザイン・施工し、誰でも無料で利用できる喫煙所として展開しています。
さらに、喫煙所内にデジタルサイネージを設置し、動画広告を配信することで広告媒体として展開する『BREAK(ブレイク)』というサービスも手がけています。
コンサルへの憧れから始まった、起業に続くキャリアの第一歩
ー学生時代から経営者になりたいと思われていたのでしょうか?
学生時代は、経営者というよりも、コンサルタントのような仕事に漠然と憧れていました。当時、塾の講師をしていたのですが、生徒の課題を一緒に解決したり、分からないことを教えたりすることに、純粋な楽しさを感じていたんです。とはいえ、会社経営をしたいなんて気持ちは、その頃はまったくありませんでした。
就活を始めたのは、ちょうどガラケーからスマホに移行し始めたタイミング。IT企業やベンチャーが注目され始めた時代で、「大企業に入って安定を得る」よりも、「何か大きなことをやってみたい」と、ベンチャーに惹かれていたのを覚えています。
「一山当ててみたい」、そんなノリでビジネスマンとしてのキャリアを思い描いていましたね。
ー大学卒業後、どのような社会人経験を積んで起業されたのでしょうか?
横浜市立大学を卒業後、複数のWebマーケティング会社で、SEOやリスティング広告などの業務に携わりました。当時はちょうど、デジタルマーケティング市場が急速に立ち上がりを見せていた時期で、現場での実践を通じてその波を体感していました。
その後、24〜25歳の頃に、事業戦略を専門とするコンサルティング会社に転職します。規模こそ小さい会社でしたが、在籍していたのはエッジの立った実力者ばかり。日々しごかれながらも、多くの学びを得たことを今でも覚えています(笑)。
経験を価値に変えるための選択が、起業だった

ー会社経営を志すようになってから、起業するまでのエピソードをお聞かせください。
20代の頃、ゼロから事業を立ち上げて社会を変えていくようなアントレプレナーが、どんどん増えてきました。時代の空気が変わっていくのを感じながら、ふと自分のキャリアを振り返ったとき、あることに気づいたんです。
最初に入った会社は300名規模、次は100名、そして最後は5人規模。気がつけば、自分が選ぶ職場の規模がどんどん小さくなっていたんですよね。
組織のサイズが小さくなるほど、裁量は増えていく。けれど、そのぶん「自分は本当にチームの中で活きるタイプなんだろうか?」と考えるようにもなりました。
そう思ったとき、「いっそ組織を出て、社会に飛び出してみよう」と腹をくくりました。たとえ、今までの経験が一流のレベルには達していなかったとしても——。
「それでも、自分の力で稼ぐ道はきっとある」と信じて、『rakanu株式会社』を立ち上げました。
立ち上げ当初は、一人会社。対応できる範囲で業務委託やコンサルティングの仕事を受けながら、少しずつ実績を積み重ねていきました。ほとんどフリーランスと変わらない働き方でしたが、業界もテーマもバラバラな案件を上流から下流まで幅広く経験できて。とにかく刺激的で、心から楽しかったのを覚えています。
愛犬のフレンチブルドッグから思いついた、犬種特化型メディア
ーrakanu株式会社でペット事業を立ち上げた理由についてお聞かせください。
コンサル業である程度の経験を積んできたなかで、「そろそろ、自分の事業をやってみたい」と思うようになりました。そんなときに目に入ったのが、当時一緒に暮らしていた愛犬のフレンチブルドッグ。「この子のための情報って、世の中に意外と少ないな」と感じたのが、すべての始まりでした。
ペットに関するメディアはすでに数多くありましたが、多くは『犬』『猫』といった大きなカテゴリにとどまっていて、個々の犬種に最適化された情報は少なかったんです。
実際、自分の愛犬には当てはまらない情報ばかりで、「それ、チワワの話では…?」みたいなことも多くて(笑)。犬って、体格も性格もまったく違いますよね。2〜3キロの子もいれば、25キロを超える子もいる。なのに「犬ってこうです」とひとくくりに語られてしまうことに、ずっと違和感があったんです。
フレンチブルドッグは体も弱く、悩みが多い犬種ですし、だからこそ、その子のための情報をきちんと届ける価値があるはずだと思いました。
そうして立ち上げたのが、『フレンチブルドッグライフ』という、犬種特化型のメディアです。
ーペット事業での成功体験をお聞かせください。
フレンチブルドッグに特化する時点で、メディアの規模に限界があることは覚悟していました。いかにしてマネタイズするか。そこが最初の大きな課題だったんです。
試行錯誤するなかで見えてきたのが、「犬種特化は横に展開できる」という可能性でした。『柴犬ライフ』『レトリバーライフ』など、他の犬種にも応用して展開していけば、読者も広告主も一気に広がる。
実際、パレートの法則のように、特定の人気犬種を10種ほどカバーすれば、全体の7〜8割を網羅できることがわかってきたんです。つまり、“全犬種向け”という雑な網ではなく、個別最適化された犬種別メディアを束ねるほうが、結果として広く深く届く。それに気づいてからは、2犬種、3犬種と展開を加速させ、スケールを一気に伸ばすことができました。
もうひとつ、成功を後押ししたのが広告の設計思想です。ペット業界だけでなく、『犬と暮らすライフスタイル』に寄り添った広告出稿を設計したんです。
たとえば、「驚異の吸引力!」という掃除機のコピーでは響かなくても、「ペットの毛が絡まない」と伝えるだけで、オーナーにとっては一気に“自分ごと”になる。この領域って、まだブルーオーシャンだったんですよ。
犬を飼うから車を買い替える。家を選び直す。そんな“拡張された消費”までを捉えたメディア設計ができたことが、結果的にペットメディアのマーケティング支援領域で国内1位の実績につながったと思っています。
株式会社コソドの取締役CMOに就任し、“喫煙環境”という社会課題に挑む

ー株式会社コソドの取締役CMOに就任した経緯をお聞かせください。
ペット事業は6〜7年ほど続けて、ビジネスとしても一定の規模感までは積み上げることができました。フェーズで言えば『01→10』『10→100』のあいだを進んでいくなかで、自分なりにやれることはやってきた感覚です。
そんななかでふと、「もう一度、“ゼロから事業を生み出す感覚”を味わいたい」と思うようになったんです。
同時に、当時はちょうど『リアルの価値』が再注目されてきたタイミングでもありました。デジタルが成熟する中で、「あえてリアルな空間や体験に軸を置いたビジネスを仕掛けたい」という思いが芽生えていたんです。 そんなタイミングで、コソドから声をかけてもらったのは、ある意味必然だったのかもしれません。
自分自身、誰かの“好き”や“困りごと”に寄り添うような事業にずっと惹かれてきたので、『リアル×社会課題』に本気で取り組むというテーマには、強く共感できました。そうして、コソドの取締役CMOとして新たな挑戦に踏み出すことを決めました。
ー株式会社コソドが“喫煙環境”に取り組み始めた理由とは何でしょうか?
社会課題に対して、スタートアップとしてできることに本気で向き合いたい——。 そんな想いのもとで、会社として新規事業のテーマを模索している段階でした。
とはいえ、”貧困”や”気候変動”のような大規模なテーマは、僕たちのようなフェーズの企業にとっては現実的なアプローチが難しい。もっと手触り感があり、なかなか他の企業が取り組みにくい課題を抱えているテーマはないかと模索するなかで、着目されたのが『タバコ』だったんです。僕自身もその方向性には強く共感していて、「このテーマに本気で向き合うなら、自分も一緒にやりたい」と思いました。
タバコの国内市場は約4兆円。喫煙者はおよそ1,700万人、訪日外国人を含めれば2,000万人規模とも推定されています。それだけ大きなマーケットであるにもかかわらず、ポイ捨てや路上喫煙などの課題は未だに多く、健康経営の観点や、投資家受けといった文脈からも、大手企業や資本が積極的に取り組みにくい領域なんですよね。
だからこそ、僕たちのようなインパクトスタートアップとして向き合う意義がある。社会的なインパクトと、実行可能性の両面で手応えを感じられるテーマだと思いました。そして最初に取り組んだのが、喫煙所『THE TOBACCO』の企画・運営です。
ータバコに関連するビジネスのなかで、なぜ公衆喫煙所の企画・運営を始めたのでしょうか?
タバコ市場といっても、参入できる領域はそう多くありません。
たとえば“タバコそのもの”を作るには専用のライセンスが必要ですし、新規参入のハードルがとても高い。となると、自然と目が向いたのが、その周辺にある喫煙空間でした。
特に注目したのが『公衆喫煙所』です。2020年の健康増進法の改正によって、屋内での喫煙はますます制限されるようになりました。今後、喫煙できる場所はどんどん減っていくだろうと考えたときに、ちゃんと整備された“喫煙所”という空間自体に、これからの公共性や価値が集まっていくと感じたんです。
現状、ポイ捨てや路上喫煙といった課題は依然として多く残っています。もちろん、喫煙者一人ひとりのマナー意識が大事なのは言うまでもありません。でも、それをただ禁止するだけでは、根本的な解決にはなりません。
マナーを守れる場所そのものが存在しなければ、どんなに意識があっても実行できない。だからこそ、喫煙者がきちんとルールを守って吸える環境を整備することが、結果的に街にも社会にも良い循環を生むと考えています。そんな循環をつくりたいと思って、公衆喫煙所の企画・運営という領域に踏み込みました。
僕にとって、“感覚”は本よりも人との会話で育まれてきた
ー起業の準備はご自身で進められたのでしょうか?
そうですね、基本的には全部自分でやりました。『会社設立のススメ』みたいな本を一冊買って、そこに書いてある手順をひとつずつ潰していく感じで。わからないことだらけでしたが、それでも何とか形にはなりました。
ただ、今振り返ると、やっぱり起業を一気通貫でサポートしてくれる仕組みや、専門家の存在ってめちゃくちゃ大事だなと感じます。登記ひとつ取っても、「何月決算にするか」なんて、そのときは本当にピンときていませんでしたし(笑)。
起業って、やろうと思えば誰でもできるけど、「抜けもれなく、ちゃんとやる」にはプロの知見があったほうがいい。当時の自分にも、誰かそう言ってくれる人がいたら助かったかもしれませんね。
ー経営ノウハウや成功事例などを学ぶ機会はありましたか?
起業前に特別なスクールに通ったり、メンターがいたりしたわけではありませんでした。
ただ、会社員時代から『経営者視点で物事を見る』ことは意識していましたね。当時は、新聞やビジネス誌の特集などにもよく目を通していました。実際の経営現場での判断や体験が言葉になっていて、気づきをもらうことも多かったです。
自分にとって一番印象深かったのは、実際に経営者の方々と直接話す機会でした。本を通して得られる知識とはまた違ったかたちで、現場のリアルや“経験者ならではの視点”に触れられる。実際、あとになって「あのとき言ってたことって、こういうことか」と腑に落ちることもたくさんありました。
学び方に正解はないですが、経験者と対話することは、今でも自分にとって大きなヒントになっています。
社会にも、事業にも、ちゃんとプラスになる仕組みを

ー株式会社コソドが掲げるミッションについてお聞かせください。
僕たちコソドは、『空間に新たな価値を創造し、人々の多様な”好き”をつなぐ。』というミッションを掲げています。これは、たとえば“喫煙”のように、人によって価値の受け取り方が分かれる嗜好品に対しても、頭ごなしに否定せず、場を作ってその空間に新しい価値や機能を付与することで、共存できる社会を目指したいという想いから生まれた言葉です。
喫煙者と非喫煙者という構図に限らず、“好き”という気持ちが持つ個人の自由や背景を、もう少し寛容に捉えられる社会になったらいいなと思っています。もちろん、マナーや公共性を踏まえたルールは必要不可欠で、そこに対しては利用者側の意識も問われる領域だと考えています。
そういった背景を踏まえたうえで、喫煙者と社会のあいだにある摩擦を少しでも減らす手段として、整備された喫煙所を設置していくことに取り組んでいます。ポイ捨てや路上喫煙といった課題も含め、“場所があることで改善される側面があるかもしれない”という視点から、まずは空間づくりに着手しているイメージです。
そして何より、単に“場”を提供するだけでなく、それを持続可能な仕組みとして成立させること、ビジネスとしてきちんと回るモデルにすることで、社会に価値を循環させたいと考えています。
実際、喫煙所内にサイネージを設置し、そこから得られる広告収益によって運営を支える仕組みを整えています。そうしたモデルを通じて、より多くの人にとって心地よい共存のかたちを広げていきたいと思っています。
“6分の無防備”を捉える、サイネージメディアBREAK
ー喫煙所内に設置するサイネージメディア『BREAK』の特徴をお聞かせください。
BREAKは、都心のオフィスエリアやビル内の喫煙所に設置された、サイネージメディアです。現在は約500面まで拡大していて、月間で約500万人以上の喫煙者にリーチできる規模に成長しています。
最大の特徴は、“空間としての視聴態度”にあります。BREAKが設置されている喫煙所は、長時間滞在する空間。たとえば、1日5回利用する人が1回につき6分滞在すると、合計で約30分を同じモニターの前で過ごしている計算になります。
しかも、喫煙所という空間には独特のリズムがあります。周囲との距離感もあって会話が生まれにくく、何かに集中するような空気でもない。スマホを触ってはいても、手元に意識を集中させているわけではなく、どこか“間”のような時間が流れている。その“空白”に自然と視線がモニターへ向かう。BREAKは、そうした『視線を奪いやすい時間』にしっかり入り込むことができるんです。
こうした“無防備な視聴状態”は、広告接触の環境として非常に価値が高いと感じています。閉じた空間なので音もきちんと届きますし、モニターから流れる情報に集中しやすい。さらに、喫煙という“ひと息つく時間”の中で、心理的にも時間的にも余裕があるからこそ、内容次第ではその場でスマホを取り出して検索したり、サービス登録まで進んでいただけることもあります。
これまで見過ごされていた“休憩の6分間”に、メディアとしての価値を設計したのがBREAKです。
ー『BREAK』の認知拡大で、特に力を入れたアプローチとは何でしょうか?
僕がジョインした当初は、BREAKというメディア自体の認知もまだ低く、媒体資料もコンパクトなもので、魅力を伝えきれていない部分が正直ありました。リーチ数も月間160万人程度で、OOHメディアとしては拡張性を想起させづらい数字だったと思います。
だからこそ最初に取り組んだのは、『知ってもらうこと』と『使われた実績をつくること』を、同時に進めることでした。NewsPicksや宣伝会議といったメディアにも徐々に取り上げられ、リーチが500万人を超える頃には、「BREAK、よく見るね」と言っていただける機会も増えてきました。
メディアというのは、“存在を知ってもらう”ことができた瞬間から、ようやく評価のテーブルに乗る。そういう意味で、“積極的に売る”というより、“染み込ませていく”アプローチがブレイクスルーになった気がしています。
“6分の休憩”を活かす、サイネージ×リアルの体験設計

ー今後、新たに展開しようと考えているビジネスがあれば簡単にお聞かせください。
2024年からは、BREAKの設置空間を活かしたリアルプロモーションにも本格的に取り組み始めました。
BREAKが掲げているのは、サイネージによる『認知』の設計ですが、喫煙所という空間はそれだけにとどまらないポテンシャルがあります。
たとえば、6分間しっかり休憩しているビジネスパーソンに対して、直接声をかけてアプリをインストールしてもらったり、商品を手に取ってもらったりといった体験設計や行動喚起にもつなげられるんです。
街中でティッシュやビラを配っても素通りされることが多い中、喫煙所のような“立ち止まっている空間”では、自然に手が伸びたり、話を聞いてもらえる確率が圧倒的に高い。『ゆっくりしている人に、適切な体験を届ける』——それが、今後の展開のひとつの核になると思っています。
実際、THE TOBACCOはすでに150カ所以上に広がり、延べ利用者数も170万人を超えました(2025年4月現在)。このベースがあるからこそ、サイネージ×リアルの“認知と体験を連動させるプロモーション”として、これからの可能性に大きく期待しています。
『微差が大差を生む』という言葉を胸に、競争を勝ち抜いていきたい
ー経営者として大切にしているマインドを教えてください。
僕が大切にしているのは、『微差が大差を生む』という考え方です。
小さな違いにこだわり続けることが、いずれ大きな差を生む——いわば“成果の複利”のようなものだと思っています。一つひとつの作業に対して、あと5分、あと1%だけ良くしようと向き合う。そうした姿勢の積み重ねが、長い目で見たときに確かな成果につながると信じています。
最強のビジネスモデルなんて存在しないと思っていて、だからこそ、業務をいかに早く、正確に、丁寧に遂行できるかが、最終的な競争力になる。「明日やろう」ではなく、「今日やって、明日にはみんなに共有する」。そんなスピード感を大切にしています。
もうひとつ大事にしているのは、『良きマーケターは、良き消費者である』という考え方。ユーザーインサイトを机上でこねくり回すのではなく、自分自身が商品を試して、体験して、その温度感を言葉にする。頭でっかちになる前に、まずは“感じてみる”。これは常に意識しています。
ー組織の成長を促すために心がけていることはありますか?
前職でも今の会社でも、共通して意識しているのは、『思いを、ちゃんと言葉にすること』です。特に感謝の気持ちは、曖昧にせず、できるだけ具体的に伝えるようにしています。
「ありがとう」と一言チャットを送るだけでも、相手の感じ方って全然変わる。 細かいことのようでいて、その積み重ねが組織の空気をつくると思っています。
誰かひとりだけでは仕事は成り立たないし、チームの一人ひとりがちゃんと見られていると感じられることが、組織としての強さにつながると思うんです。
誰かのせいにしないと決めたとき、見える景色がある

ー起業して良かった、経営者になって良かったと思えたことをお聞かせください。
一番大きかったのは、“ヒリヒリするような当事者意識”を得られたことかもしれません。誰かが何とかしてくれるわけじゃない。自分が動かなければ、何も変わらない。そんな状況で日々意思決定をしていると、自然と感覚が研ぎ澄まされていくような感覚がありました。
もちろん、リスクもプレッシャーもあります。でも、そういったものを乗り越えていく中で、見える景色や視野の広がり方がまったく変わったと思っています。
ビジネスの構造や社会の仕組みを、より立体的に捉えられるようになったというか——。
キングダムで言うなら、試練をくぐり抜けた大将軍にしか見えない景色、みたいな(笑)。あの感覚を味わえたこと自体が、起業して本当に良かったと思える一番の理由かもしれません。
ー経営者を目指す上で大切な要素とは何でしょうか?
まず、最低限の知識はやっぱり持っていた方がいいと思います。会計にしても、税務にしても、全部わかっている必要はないですが、「これはこういう構造なんだな」と理解できるベースはあった方が安心です。本を読んだり、AIを使って調べたり、インプットの手段はいくらでもありますから、起業前にある程度触れておくと、実際に会社を回すときにラクになります。
一方で、スキルに関しては職種や業種によって前提が異なる部分もありますが、少なくとも僕自身のケースでは『やりながら身につける』で十分間に合いました。事業を進めるなかで自然と必要な場面が出てくるので、そのときにちゃんと学んでいければ大丈夫だと思っています。
あとは、やっぱり『当事者意識』ですね。経営者って、何かトラブルが起きたときに「誰かが悪い」「環境が悪い」で終わらせてしまうと、もうその時点で詰んでしまう。最終的には「じゃあ自分はどう動くか」を考えられること。この“矢印を自分に向けるスタンス”は、起業に限らず、どんな立場でも必要なんじゃないかと思います。
起業に迷ったら、まずは今に集中してみると、道が見えてくる
ー起業を目指している読者に対して、メッセージをお願いします。
やりたいことがあるなら、早く始めてみるのが一番です。やらずに悩んでいるより、少しでも動いた方が見える景色は確実に変わる。実際、僕も小さく手を動かし始めたことがきっかけで、多くのご縁やチャンスに繋がってきました。
「何をやればいいかわからない」という人も、焦らなくて大丈夫です。目の前のことを突き抜けるくらい取り組んでいけば、必ず“これならできるかも”と思える瞬間がくる。特定のスキルに強くなれば、人が集まり、仲間が生まれ、いつの間にか次のステージが見えてくるはずです。
そして、やると決めたなら、こだわりを持ってやり切ること。周りからの雑音は必ずあるけど、自分が信じた道なら進めばいい。ただ、どこかで「そのこだわりはまだ有効か?」と問い直す柔軟さも、同じくらい大事だと思っています。起業は正解がない分、“自分で考えて、選んで、動く”を繰り返していくことがすべて。
不安もありますが、だからこそ面白い。そう思える瞬間が、一度でもあるなら、ぜひチャレンジしてみてほしいです。
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起業には個人事業主としての開業と会社設立の2種類があり、事業形態に合わせて選ぶことが大切です。また、起業のアイデアをまとめたり、事業計画書を作成したりといった起業の流れを把握し、十分な準備を整えるようにしてください。
一度起業すると、資金や従業員の管理、納税など多くの責任を負わなければなりません。過去の成功事例も参考にしながら、自分なりのビジネスを展開できるよう起業アイデアを練ってみましょう。
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