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【KOBUSHI MARKETING合同会社】飲むだけで人脈が広がる渋谷発クラフトビール!ユニークなマーケティング誕生秘話

【KOBUSHI MARKETING合同会社】飲むだけで人脈が広がる渋谷発クラフトビール!ユニークなマーケティング誕生秘話

渋谷道玄坂発のクラフトビール「KOBUSHI BEER」を通じて、マーケターや起業家のコミュニティを形成し、新たな出会いやビジネスチャンスを生み出す「KOBUSHI MARKETING合同会社」の経営者、井上裕介さん。

学生時代にバンド活動をする中、レコード会社を立ち上げるチャンスが訪れ、音楽レーベル兼アーティストマネジメント会社を起業しCOOに就任、若くして起業家としてのストーリーが始まりました。

しかし、1度目の起業は10年間の企業経営の末、失敗に終わってしまい、その後はデジタルマーケティングやメディアのコンサルタントとして経験を積み2回目の起業でKOBUSHI BEERのマーケティングをするための会社、「KOBUSHI MARKETING合同会社」を創業、現在は渋谷道玄坂にあるマーケターや起業家が集まるクラフトビールバー「KOBUSHI BEER LOUNGE & BAR」の運営や、ビジネスマッチング、顧客開拓などを支援する井上さんに、起業までの道のりや経営者として大切にしているマインドなどをお伺いしました。

INDEX
  1. 井上裕介さんのご経歴
  2. 飲んでいるだけで友達ができて人と繋がれる「KOBUSHI BEER」
  3. ー現在、経営されている会社名と主な事業内容を教えてください。
  4. マンガのような展開でレコード会社を立ち上げた学生時代
  5. ー学生時代、どのような経緯で起業されたのでしょうか?
  6. ー若くして起業されて、最も大変だったこととは何でしょうか?
  7. GMOの社員を諦めて、野良犬として生きることを選んだ
  8. ー起業当初、会社経営一本で生活できる余裕はあったのでしょうか?
  9. ーグローバルメディアオンライン株式会社では、どのような経験を積まれたのでしょうか?
  10. CDが売れる戦術をもってビール業界に参入
  11. ー音楽レーベル兼アーティストマネジメント会社として成功を収めるなか、なぜビールのビジネスに興味を持ったのでしょうか?
  12. ー初めて参入したビール業界でのビジネスは、順調に進んだのでしょうか?
  13. KOBUSHI BEERという革新的なコミュニティマーケティングが誕生
  14. ーその後、KOBUSHI BEERでのコミュニティマーケティング事業が誕生した経緯をお聞かせください。
  15. ービジネスモデルを考えるうえで、何か参考にしたものはありますか?
  16. KOBUSHI BEERで乾杯して、パッションを高め、若さを取り戻してほしい
  17. ーKOBUSHI MARKETING合同会社が掲げるミッションについてお聞かせください。
  18. ーKOBUSHI BEERの独自性や競合優位性などをお聞かせください。
  19. ークラフトビールをマーケティングするKOBUSHI MARKETINGには、どのような狙いがあるのでしょうか?
  20. KOBUSHI BEERにしかない付加価値が、人を集め、出会いを生み出す
  21. ーKOBUSHI BEERでの集客におけるこだわりはありますか?
  22. ープラスアルファの価値観、それは具体的にどのようなものでしょうか?
  23. ーKOBUSHI BEERの認知拡大において、特に力を入れているアプローチとは何でしょうか?
  24. スケールするために、一度失敗したものに挑戦する可能性もある
  25. ーKOBUSHI MARKETINGの将来ビジョンについてお聞かせください。
  26. ー新たに展開しようと考えているビジネスがあれば簡単にお聞かせください。
  27. 今日が人生最後の日でも、予定を当たり前に守る信念
  28. ー経営者として大切にしているマインドを教えてください。
  29. ー経営者になって良かったこと、やりがいを感じたことはありますか?
  30. ー今後、井上さん個人として達成したい目標はありますか?
  31. 若い経営者はファイナンスを学び、会社全体の状況を把握すべき
  32. ー経営者を目指すうえで、大切な要素とは何でしょうか?
  33. ー組織と社員の成長を促すために心がけていることはありますか?
  34. 他人任せにせず、自責でやる覚悟が経営者には必要
  35. ー起業を目指している人に対して、最後にメッセージをお願いします。
  36. 起業や独立に興味を持ったら、まずは「起業の窓口」に登録してみよう!

井上裕介さんのご経歴

  • 千葉大学教育学部、青山学院大学大学院MBA課程卒。
  • 学生時代に、音楽レーベル兼アーティストマネジメント会社を起業。COOとして年間売上1.2億円規模に成長させる。
  • デジタルマーケティングコンサルタント、メディアコンサルティング、ウェブサービス事業開発マネージャとして実績を積む。
  • 2018年8月、KOBUSHI MARKETINGを創業。主な事業として、コミュニティマーケティング、営業&マーケティング支援、転職&採用支援などを展開。(2020年7月に法人化)
  • 現在、「飲んでるだけで友達ができる」コンセプトとした「KOBUSHI BEER LOUNGE & BAR」の運営や、イベントを通じたビジネスマッチングや顧客・パートナー開拓支援など、幅広く活動中。

飲んでいるだけで友達ができて人と繋がれる「KOBUSHI BEER」

「KOBUSHI BEERは飲んでいるだけで友達ができて人と繋がれる」と語るKOBUSHI MARKETINGの井上裕介さん

ー現在、経営されている会社名と主な事業内容を教えてください。

現在、KOBUSHI MARKETING(コブシ マーケティング)合同会社という会社を経営しています。

私たちが運営している「KOBUSHI BEER」という渋谷道玄坂発クラフトビールのブランドがあり、そのビールブランドをマーケティングする会社としてこの社名にしました。

KOBUSHI MARKETINGのビジネスモデルは、KOBUSHI BEERで人を集めて、飲んでいるだけで友達ができる。そして、人と繋がりを作ることで仕事にも繋がるというものです。

KOBUSHI BEERはメディアのような役割を持っていて、そこで得られる情報や人との繋がりが企業様にとって貴重な顧客開拓リストになります。

多くの企業様は、営業または採用のどちらかで困っています。駆け出しの会社の場合、頑張って顧客開拓や営業をしないといけませんが、最初に必要なのは、顧客候補リスト、いわゆるアタックリストです。それをKOBUSHI BEERがメディアのように提供することができます。

事業がうまくいくと、やがて人が足りなくなって、採用に力を入れる必要があります。そうなったときに、今度は採用のタレントプール作りのためにKOBUSHI BEERを活用できます。

マンガのような展開でレコード会社を立ち上げた学生時代

ー学生時代、どのような経緯で起業されたのでしょうか?

会社経営に全く興味はなかったのですが、ある出来事をきっかけに学生起業家になりました。

当時、バンドをやっていて、バンドメンバーがゼミの先生から1,000万円を貰えるという話になり、「そのお金で会社を一緒にやろう」と誘われました。

そこで「じゃあ、レコード会社を作るか!」というマンガのような展開で、音楽レーベル兼アーティストマネジメント会社を起業することになったという経緯です。

ー若くして起業されて、最も大変だったこととは何でしょうか?

初めて起業したときに一番困ったのは、著作権に関してです。

権利ビジネスには著作権契約書が必要ですが、世の中に著作権契約書を読める人は非常に少なく、弁護士でも著作権に詳しい人は少ないというのが実情です。

その課題を乗り越えるには、自分で勉強するしかありませんでした。当時はネットから情報を得られなかったので、音楽著作権に関する本を買って読みました。

また、CDを流通させるために、ディストリビューターとコンタクトを取る必要もありました。ディストリビューターというのは、製品を小売業者などに卸している企業です。

ディストリビューターとは知り合いの紹介で繋がることができたのですが、今度は販売受託契約というような意味の理解できない内容が出てきました。

22歳の若造にはなかなかハードな問題でしたね。何が書いてあるかわからないですから。

それでも大人の力には頼らず、自分たちでなんとか乗り越えました。起業支援サービスという便利なものがあるなんて、当時は知りませんでした。

GMOの社員を諦めて、野良犬として生きることを選んだ

「GMOの社員を諦めて、野良犬として生きることを選んだ」と語るKOBUSHI MARKETINGの井上裕介さん

ー起業当初、会社経営一本で生活できる余裕はあったのでしょうか?

学生起業したばかりの頃は、もちろん生活できるほど儲かっていませんでしたので、

千葉大学で最後の単位を取り終わり、あとは卒論を書くだけになった頃に東京に引っ越して渋谷セルリアンタワーでコールセンターのアルバイトをはじめました。当時のインターネットは、ダイヤルアップという接続方法でデータ通信をしていて、電話を繋ぐと3分10円の通話料にプロバイダ料金が発生するような仕組みでした。

そのころYahoo! BBというサービスが、数千円で使い放題のADSLのモデムを配りはじめました。そういう優良なサービスが世間に浸透したら、当然従量制のダイヤルアップは負けてしまう、ということでADSLへの切り替えに各社注力していて、そのポジションのアルバイトを見つけて、GMOインターネットグループ株式会社の前身であるグローバルメディアオンライン株式会社で働き始めました。

ーグローバルメディアオンライン株式会社では、どのような経験を積まれたのでしょうか?

グローバルメディアオンラインには、2年くらい在籍して、カスタマーサービスに近いテレアポ部隊に携わっていました。

GMOインターネットグループでは、グローバルメディアオンラインの時代から「お名前.com」という有名なドメインポータルサイトを運営していて、ドメインを持っている顧客リストを大量に保有していました。

そのリストを利用してサーバーを売ったり、「J-word」というYahoo!の検索結果で下に出てくる検索広告枠を提案したりと、クロスセルやアップセルしていくのが、当時の私の役割でした。

ある程度の業務経験を積んだとき、「社員にならないか?」とお誘いをいただきましたが、自分の夢を捨てきれず、相当悩みました。セルリアンタワーで働けるチャンスなんてそうないので。

また、ちょうどそこの頃は、バンドを辞めて会社経営の裏方にまわった時期で、「いっそのこと、サイコロを振って丁半博打で決めようかな?」と思うくらい悩んだのですが、最終的に音楽のビジネスを続けることに決めました。

「GMOの社員を諦めて、野良犬として生きよう」

そう心に決め、1年くらい一生懸命頑張ったところ、音楽の会社がうまくいき始めて売上も立つようになりました。当時は業界でも結構有名になりました。

CDが売れる戦術をもってビール業界に参入

ー音楽レーベル兼アーティストマネジメント会社として成功を収めるなか、なぜビールのビジネスに興味を持ったのでしょうか?

CDをまあまあな数を売った実績もあったので、他の商品でも同じ要領で売れるだろうと考えていました。

もっと昔は、CDが飛ぶように売れていた時代がありましたが、私たちが参入した頃はCDがあまり売れなくなってきた時期でした。一方で、流通のハードルがかなり下がってきた時代でもありました。

タワーレコードやTSUTAYAといった有名なCDショップに、学生で起業したような若造が簡単に参入して、ランキング1位を取れる、そんな時代だったのです。

ただ、音楽をずっと続けて分かったのは、音楽のマネジメント会社やレコード会社って、あくまで商品がアーティスト、彼らは売れるとかなりの確率で生意気になるのです。さらに今の時代はSNSなどの普及で音楽の裏方の存在感はかなり薄くなっているように思います。そこで、次にビジネスをやるなら売れてもイニシアティブを取られないものにしようと考えました。

ビールなら生意気な口も聞かないですし(笑)、音楽CDのような戦略で売ればいけるだろうと考えたのが、ビールでビジネスを始めたきっかけです。

ー初めて参入したビール業界でのビジネスは、順調に進んだのでしょうか?

ところが、ビールとCDの売り方は全く違い、実際に挑戦してみて相当厳しいと感じました。

日本にはメジャーなビール会社がすでにいくつかあって、規制産業のため飲食店や酒屋に新しいビールを卸すのは非常に困難でした。

また、お酒は財務省管轄であるために、酒税が非常に高いという点も大きな課題でした。CDの場合、原価がすごく安くてとにかく儲かった一方、ビールは売っても売ってもこんなもんなのか…というくらい利幅が薄いのです。

ビール製造・メーカーとして生計を立てていくには、大きな規模が必要でした。初めて起業したときは、資金に余裕がない人がメーカーをやってはいけないことを知らなかったので無知ゆえにスタートすることが出来ましたが、MBAを取ったことで良くも悪くも賢くなってしまったのです。

KOBUSHI BEERという革新的なコミュニティマーケティングが誕生

ーその後、KOBUSHI BEERでのコミュニティマーケティング事業が誕生した経緯をお聞かせください。

マーケターとして業界の情報をキャッチアップしていくなかで、マーケター同士をマッチングさせるサービスにニーズがあるのではという仮説がありました。

フリーで活動していた頃、いくつかの経営者コミュニティに参加したことがありましたが、当時マーケティングのコンサルのような抽象度の高いものを売っていたので、私のビジネスとの親和性を感じられず、正直あまり活用できませんでした。

アドテックやマーケティングアジェンダなどのカンファレンスも沢山ありますが、いわゆるマーケターコミュニティとして運営されていてマーケター同士をマッチングさせるものはあまり知られていませんでした。

「それなら自分でつくってしまおう!」と思い、そこで誕生したビジネスモデルがKOBUSHI BEERでした。「マーケターが集まるビール」というブランディングをして、ビールで儲からなくても成り立つビジネスモデルです。

飲食店という立場で考えると、マーケター向けの勉強会や交流会を企画し、それをネタにしてお客様を集められます。このビジネスモデルであれば、業界でも独自性があり、競合優位性を確立できると思ったのです。

現在、渋谷の道玄坂二丁目で「KOBUSHI BEER LOUNGE & BAR」という名前の店舗を運営しています。クラフトビールを飲みながら、初めて会った人同士でビジネスの話題で盛り上がり、学びを得られ、新たな人脈を作れる場になっています。

そのKOBUSHI BEERをマーケティングするために、KOBUSHI MARKETINGを立ち上げたという背景があります。

ービジネスモデルを考えるうえで、何か参考にしたものはありますか?

スコットランド発祥のクラフトビールメーカー「BrewDog(ブリュードッグ)」の共同創業者であるジェームズ・ワットが執筆した、「ビジネス・フォー・パンクス」というビジネス書は参考になりましたね。

ビール会社を作るなら、全部自分でやれ。他人の言うことを聞くな。他人には任せるな。 暇を削ってコストを削減しろ。

とにかく無茶苦茶なことが書いてあるんですが、彼の考え方にものすごく共感しましたし、このくらいの気合いがなければ新規事業は上手くいきません。

KOBUSHI BEERで乾杯して、パッションを高め、若さを取り戻してほしい

「KOBUSHI BEERで乾杯して、パッションを高め、若さを取り戻してほしい」と語るKOBUSHI MARKETINGの井上裕介さん

ーKOBUSHI MARKETING合同会社が掲げるミッションについてお聞かせください。

弊社では、「マーケティングとエンタテインメントを通じて、チャレンジャーをサポート。世の中に情熱と若さを提供します」というキャッチコピーを掲げています。

充分なリソースのある大企業に入り、組織の中で出世するのが利益が多くて合理的だと思われています。ただ、そのような環境に浸っていると、一人ひとりの権限や業務の達成感が失われていくケースが多いと言います。

たとえば、100人で1つのビジネスをやるとき、「あなたはこの部分の歯車になって、この作業をしてください」という役割を与えられるでしょう。全員でビジネスを回していると感じる人もいますが、分業にやりがいがなく、つまらないと思う人も相当に発生します。

そんな状態に陥った人に、「ビールを乾杯することで、若さを取り戻せたと感じることができる瞬間をつくる」ことが私たちのミッションです。

人間には必ず、エンターテイメントという側面でのプライベート、そしてビジネスという2つの側面があります。エンタメとビジネスでリストを分けることがありますが、この2つは同じ人間が持っている両面なので実は一人に対して、まとめてアプローチができます。

彼らにどういうコンテンツを出せば、パッションが高まり、若さを取り戻せるのかを常に考え、ビジネスを通じて実現させたいと思っています。

大人になると、特に男性は、仕事くらいしか楽しむことがなくなる人が多いです。彼らに仕事の出会いをつくってあげるのは最高のエンターテイメントなんです。

ーKOBUSHI BEERの独自性や競合優位性などをお聞かせください。

一般的な経営者コミュニティの場合、参加者となる経営者同士でマッチングするのが基本ですがKOBUSHI BEERの場合、まずフリーで誰でも参加できて、参加者同士でガチャを引くように1対1でマッチングすることに対しては飲み代だけで出来ます。

KOBUSHI BEERのコミュニティはスポンサー制度になっていて、現在50社ほどのスポンサー様がいるのですが、スポンサーになっていただくと、私たちのコミュニティ活動を元に作成される1万人ほどのリストを使って顧客開拓や採用活動の支援を得られるというメリットがあります。私たちがそのデータを活用して、人脈構築やイベントの企画運営・集客などを幅広くお手伝いするというモデルです。

これはメディアに近いモデルで、単なるコミュニティ事業という言葉には収まらない特殊なものになっています。

最初はマーケターをターゲットにして始めましたが、今では経営者や起業家、採用人事やエンジニア社長、営業女子と横展開しています。コミュニティのニーズがあればどんどん横展開していきたいですし、来年はエンタープライズを新規のスコープとして考えているところです。

ークラフトビールをマーケティングするKOBUSHI MARKETINGには、どのような狙いがあるのでしょうか?

実は、自分たちのブリュワリー(ビール醸造所)は持っておらず、KOBUSHI BEERという登録商標のみを持っています。

当初KOBUSHI MARKETINGは、ビールのマーケティングをする会社として、飲食店を持たずに、多店舗の遊休時間を活用して営業するというビジネスモデルを考えていました。

飲食店は稼働率が悪く、特に渋谷の場合は、家賃がかなり高いので、スペースの空き時間を有効活用することに価値を見出していました。

ターゲットに関しては、ベンチマークをしていたレッドブルを最初に参考にして、チャレンジを応援するというテーマで、アーティストやアスリートをターゲットにすることを考えましたが、レッドブルと同じようなことをするには膨大な資金力が必要だということに気付きました。

そんなときに、ビジネス側でマーケターのニーズがあり、かつ運営型のコミュニティを知っている限りなかったのでビジネスチャンスを感じ、コミュニティで場所に紐付いているというところも少なかったので逆に店舗を持つという発想になりました。

渋谷は激戦区なので物件を見つけるのに半年くらいかかりましたが、交流会のご縁から未公開物件をご紹介いただき、現在の場所に店舗をOPENすることが出来ました。当時はタピオカ屋が流行っていて申込が5件くらい入っている中、私たちだけがクラフトビール×マーケターコミュニティという特殊なものだったので、それを面白がった大家さんがKOBUSHI BEERを選んでくれたという経緯で、現在の場所を中心としたクラフトビール×コミュニティマーケティングのモデルがスタートしたのです。

KOBUSHI BEERにしかない付加価値が、人を集め、出会いを生み出す

ーKOBUSHI BEERでの集客におけるこだわりはありますか?

人を集めるためのアプローチは、「出会い」か「宗教」しかないと考えています。

たとえば、アーティストのライブは宗教と似ていて、あるアーティストを見るためにお金を払って人が集まります。ファン同士で仲良くなって友人関係になるという出会いもファンコミュニティの大きな魅力の一つになっています。

また、男女が集まって出会うきっかけがある場所としては、クラブが良い例です。音楽という共通の目的に対して、ナンパなどの出会いも大きなコンテンツの一つになっています。音楽に興味がないがナンパ目的でクラブに集まる人も多いことはクラブが好きな人なら実感があると思います。

私たちは、ビジネスの出会いをメインの手段として選択して、KOBUSHI BEERだからこそ実現できるものをやろうと決めました。その思想はある種宗教的な側面もあるかもしれません。コミュニティマネージャの考え方や人の選び方、運営のスタンスは教祖のそれと似ています。

誰にでも受け入れられるコミュニティは少なくとも私たちの規模では必要とされません。共通の価値観や目的、思想や意識が共通する、利害関係が一致することが大切で、趣旨と合わない人を排除することは規模を拡大するよりはるかに重要な要素です。

将来、少子高齢化で日本のビール会社が伸び悩み、国内市場が落ちると予想されています。それに輪をかけるように、ビールを飲む若い人も減ってきています。

だからこそ、KOBUSHI BEERはお酒として飲んで終わりではなく、そこにプラスアルファの価値観を付けていくことでクラフトビールに新たな存在意義を作る戦略です。

ープラスアルファの価値観、それは具体的にどのようなものでしょうか?

私は「海の家のビール理論」と呼んでいます。

鎌倉の由比ヶ浜浴場は日本で一番流行っているビーチの一つです。夏には若い人が集まってお酒を飲んでナンパをしています。僕も若いころは大好きで毎年行っていました。

ビーチの目の前にローソンがあるのですが、そこで買えば当時は500ml缶が260円くらいでした。 100mくらいの距離しか変わらない海の家で生ビールを買うとアサヒのスーパードライ1杯で安くても700円くらいします。そんな状況のなか、お金を使いたくない人は、コンビニまでビールを買いに行ってビーチに持ち込みます(今は条例違反です)。一方で、コンビニまで行かず、海の家で買う人もいるわけです。

何故、倍以上の価格を払って海の家で飲むのでしょうか?彼らにとって、ビール自体はどうでもよく、海の家でビールを飲むという体験に価値があるのではないでしょうか。つまり、ビールそのものに何か付加価値を付ければ、同じビールでも高く売れる可能性があります。

「KOBUSHI BEERを飲んでいれば、渋谷でイケてるマーケターに出会える」といった特殊な付加価値を付けて集客に繫げています。一方でコンビニでお酒を買って渋谷の路上で飲む(これも条例違反です)ことに価値を感じる人は私たちのお客さんではないのです。前述のコミュニティの選別は具体的にこういう部分でおこなわれます。

ーKOBUSHI BEERの認知拡大において、特に力を入れているアプローチとは何でしょうか?

認知拡大のアプローチは、「リアル」と「SNS」の2つです。

リアルでは、ひたすら飲み会や交流会の幹事をやること。SNSでは、特にFacebookでの情報発信とコミュニケーションに力を入れています。

目的としては井上という人間とKOBUSHI BEERという存在を覚えてもらうことです。ただ、結構な工数がかかる作業なので、定型業務を切り出して外部のリソースを使って自動化することでやり切れる環境を構築しています。

幹事をやる理由としては、たとえば、参加者として30人の飲み会で名刺交換や挨拶を交わしても、最終的に多くの人、具体的にいうと80%は忘れてしまう=忘れられてしまいます。しかしながら、参加者側は幹事のことは100%に近く認知してくれます。大きなイベントだと参加者は全員と挨拶することができなくなる一方で、主催者になれば、参加者全員に認知してもらえるだけでなく、参加者リストという形でリード情報を得ることができます。

そういうメリットがあるからこそ、毎日ひたすら幹事をやっています。そして、その繋がりをより強固なものにするために、毎日3回くらいFacebookを更新しています。投稿の更新だけではなくて、コメントやDMでやりとりもしながら、ものすごい数の有益な情報が飛び交うコミュニケーションチャンネルと化しています。

結果として私が覚えていなくても嬉しいことに「いつも見ています」という形で覚えてもらっていて声をかけていただくことがあります。実際こちらが覚えていないのは気まずいですが数が多すぎで仕方ないと割り切っています。大体3回くらい会って一緒に飲むか取引関係か見込み顧客になると覚えるということがわかりました。

私のSNS運用方法は即効性がありSNSコンサルタントにとっては不都合な内容なので絶対に教えてくれませんが、かなりの結果を出せています。

ただ、200〜300人くらいの参加者がいると私一人でメッセンジャーをやるのは大変です。そこで、オンライン秘書を使って、細かい手順を書き起こしてプロセス化し、自動的に回して効率よくマーケティング活動として運用しています。

後は縦型動画のSNS広告は非常に効果が良いのでアクティブに利用しています。オーガニックとペイドでの新規集客をSNS運用によって定着させるという教科書に載っているマーケティングを普通にやっています。

スケールするために、一度失敗したものに挑戦する可能性もある

「スケールするために、一度失敗したものに挑戦する可能性もある」と語るKOBUSHI MARKETINGの井上裕介さん

ーKOBUSHI MARKETINGの将来ビジョンについてお聞かせください。

元々はあまり会社を伸ばすということに興味がなく、楽しく食べていけたら良いや、くらいのテンションで経営していましたが、コミュニティをはじめてから特に意識の高い経営者とご一緒する中で、自分がこんな感じだと失礼だと考えるようになり、絞り出した会社の目標として1年間に売上20%成長というのを掲げました。

今期と来期はすでにアクションアイテムは固まって、後は実行するだけですが、その次の期の仕込みは今からやらないと間に合いません。当然失敗してロスが出る可能性もあるので本当の意味での事業投資が必要です。その事業投資のために日々の数字をしっかりこなすことと両軸で進めています。

ー新たに展開しようと考えているビジネスがあれば簡単にお聞かせください。

仲の良い社長から事業アイデアをいくつかもらったのですが、KOBUSHI BEERのC向け展開にチャレンジしています。

実は、KOBUSHI MARKETINGの創業当時はKOBUSHI BEERのメーカー事業をメインにするという事業計画でした。一度目の起業がレコード会社、いわゆるメーカーという立場だったのでノウハウが活かせると思っていました。

ただクラフトビールは税務署管轄で酒税は税収の3%を占めるほどインパクトがある、つまり非常に高くて原価を圧迫するということ、大手のビール会社が販路をしっかり押さえていることなどが、150円のプラスチックを3,000円で誰でもタワーレコードに流通できたレコード会社のビジネスモデルとは全く違うものでした。 とはいえ、今は創業時とは状況も違います。KOBUSHI BEERもある程度認知されてきました。スケールを目指すなら薄利多売でもメーカーのビジネスモデルは適しているので、もう一回チャレンジしてみる価値はあると考えていました。

今日が人生最後の日でも、予定を当たり前に守る信念

「今日が人生最後の日でも、予定を当たり前に守る信念」と語るKOBUSHI MARKETINGの井上裕介さん

ー経営者として大切にしているマインドを教えてください。

今日が人生最後の日でも、決められた予定をきちんとこなす決断ができるような生き方をすることを心がけています。

これは、RANCIDというアメリカのパンクロックバンドから影響を受けているマインドです。彼らはライブのステージに立つとき、「これが自分たちの人生最後のショーかもしれない」という気持ちで常に臨んでた、とインタビューに書いていました。

私がバンドを辞めるとき、彼らのその言葉がすごく刺さりました。そういうマインドでバンド活動をできていなかったなと…⋯。

もしあなたは、今日が人生最後の日だとしたら何をしますか?

家族と過ごす、恋人と過ごす、お世話になった人にお礼を言う。そうする人は多いと思いますが、私は今入っているスケジュール通りに動きます。仮に明日癌で亡くなっていると知っていても、このインタビューを受けに来ていたでしょう。

ビジネスの観点で、「お客様との約束を守る」という信念にも繋がっています。こういう意識の積み重ねが信頼に置き換わっていくのだと思います。

ー経営者になって良かったこと、やりがいを感じたことはありますか?

前述のとおり、何かを成し遂げたくて経営者になったわけではありませんが、結果的にKOBUSHI MARKETINGでのコミュニティマーケティング事業にはものすごくやりがいを感じています。

KOBUSHI BEERを通じて新しいビジネスチャンスを掴んだ人に、「ありがとう」と感謝してもらえることは本当に嬉しいです。

経営者というものは、すごくキラキラした存在に見られますが、それはトレードオフなんです。自由、再現性、特権などを得られるのは経営者の良いところですが、社員のような生活はできません。

同僚と一緒にランチを食べて、金曜の夜にはしご酒をするような生活を送りたくても、それは無いものねだりです。現実では、毎朝早く起きて、深夜まで働く。もちろん自分で決めてサボることも出来ますが、売り上げの責任は100%自分です。それもトレードオフです。

経営者にしか得られないものがあり、そして、失うものもあります。

ー今後、井上さん個人として達成したい目標はありますか?

私は、実はお金にはあまり興味がない人間で、車にも服にも全然興味がありません。趣味もこれといってないですし、生活に全くコストをかけていません。お酒はめちゃくちゃ好きですが、食にもあまり興味はなく、安い居酒屋で満足できます。

お金は自分にとって数字であり目標のスコアです。ゲームの感覚に近いかもしれません。遠い未来のビジョンはないですが、貯金で年売上20%成長を達成して5年くらいで会社を売却して仙人みたいになることが一つのマイルストーンです。もちろん今思っていることなので、明日には変わるかもしません。

ただ、その日その日を全力で立てた計画に向かうことが重要で目標が変わることは特に問題と思っていません。今日が最後の日だと思って生きることと繋がります。

若い経営者はファイナンスを学び、会社全体の状況を把握すべき

ー経営者を目指すうえで、大切な要素とは何でしょうか?

他の経営者を見ていて圧倒的に足りない要素は、会計知識です。

特に会計を嫌いな経営者が多いです。私は自分で月次決算を書いています。会計は面倒で手間もかかりますが、会社の状況を把握するためと考えると自分でやるのは効率的です。たとえば、月次の会議費が20万円でした。数字だけだと高いか安いかの判断できませんが、内訳を自分で仕訳けていたら内容を把握できるので評価が出来ます。

面倒だからやらない、税理士丸投げという人がおおいのですが、管理会計、予実管理がやらないと経営者としての仕事って何だろう?という個人的な意見です。売上予算、コスト予算、原価管理の3つは、ちゃんと自分の目で見て実感しておくべきで、そうすると高い確率で経営に良くない兆候があった時に気付くことができます。窮地に陥る前に、どこを見て何をダウンサイジングすれば良いか自分で判断して一早く手を打てます。

ー組織と社員の成長を促すために心がけていることはありますか?

社員雇用という制度はもう時代に合わないんじゃないかと思っています。全員がプロフェッショナル=事業主として一つのプロジェクトを一緒にやるという形がこれからのスタンダードになると創業時から謳っています。ただし、教育を放棄しているわけではなく、結構スパルタ&マイクロマネジメントでやります。

日本企業の終身雇用型の働き方はもう古いと思っています。

大規模な工業などでは、事業を動かすための歯車が多く必要で、社員の確保や解雇規制がすごく重要です。従業員には職能が求められますが、それは、その会社の工場でしか輝かない特殊技術だったりします。そういう人のために労働者は、特定の組織に保護されるというレガシーな解雇規制があるのですが、私たちのようにITベンチャーに同じような規制があることが問題だと考えています。これこそが日本人の年収が上がりにくい原因なのです。

弊社では、優秀な人材を高い報酬でプロジェクトメンバーとして、マッチしなければ契約終了にしてもらいます。正社員なら定着するという根拠は今の時代には有りません。こういうやり方のほうが結果メンバーに高い年収を払うことが出来ます。

良いパフォーマンスを発揮してくれれば、高い報酬を支払いますし、優秀な人に辞めたいと言われたらお金で引き止めればよいのです。逆に会社に縛られない形で自由に働くと良いと思います。自分の責任で請けた仕事に対して価値を出していけばよいのです。副業やメインとサブみたいな概念もなくなります。

誰でも楽しく仕事に取り組み、情熱を注ぎ、そして達成感を感じられる組織を作りたいです。現にパラワーカーとしてジョインしてくれているメンバーはKOBUSHI BEERのプロジェクトで得た人脈を、もう一つの会社の仕事に活かしてメリットを感じてもらっています。

他人任せにせず、自責でやる覚悟が経営者には必要

「他人任せにせず、自責でやる覚悟が経営者には必要」と語るKOBUSHI MARKETINGの井上裕介さん

ー起業を目指している人に対して、最後にメッセージをお願いします。

経営者には自責という考えが大事です。一方で、ビジネスがうまくいくかどうかは環境に依存します。

そして、どの環境にいるかを選ぶことが経営者には出来ます。すべて自己責任です。環境が悪ければ他に移ればいいだけの話。それは市場環境やビジネスモデル、場所、やり方、付き合う人すべてにおいてです。

そしてもう一つはすぐに始めることです。事業の規模はあまり関係なくて、アフィリエイターになってスマホ代を稼ぐことから始めてもいいと思います。

月額1,000円くらいでサーバーを借りてアフィリエイト会社と契約して、集客の仕方を勉強して月2〜3万円でも稼げるようになれば、立派な経営者と言えます。たとえサラリーマンの方でも、寝る時間や遊ぶ時間を削って始められます。計画を立てる暇があったら、まずは小さなステップから踏み、うまくいったら、もっと大きなビジネスに挑戦する、ダメだったら止めるくらいでよいです。それよりも、今この瞬間にスタートすること=時間の方が貴重なのです。

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起業には個人事業主としての開業会社設立の2種類があり、事業形態に合わせて選ぶことが大切です。また、起業のアイデアをまとめたり、事業計画書を作成したりといった起業の流れを把握し、十分な準備を整えるようにしてください。

一度起業すると、資金や従業員の管理、納税など多くの責任を負わなければなりません。過去の成功事例も参考にしながら、自分なりのビジネスを展開できるよう起業アイデアを練ってみましょう。

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