個人事業主のための特定商取引法対応ガイド | 記載項目やテンプレート、違反のリスクを解説
個人事業主がインターネット通販や訪問販売などを行う際には、「特定商取引法に基づく表記」が必要です。
特定商取引法は、消費者が安心して取引を行えるよう、事業者が自らの情報や取引条件を明確に示すことを義務付けており、法人だけでなく個人事業主にも適用されます。
オンライン販売の拡大に伴い、透明性の確保やトラブル防止の観点から、正確で分かりやすい情報開示が求められています。
この記事では、個人事業主に関する特定商取引法の基本から対象となる取引形態、記載すべき項目までを分かりやすく解説します。
- 【この記事のまとめ】
- 特定商取引法とは消費者が安心して取引できるように、事業者情報の表記が義務付けられています。
- 個人事業主でも取引形態によっては特定商取引法に基づく表記が必要です。
- 特定商取引法に違反した場合、業務改善指示や停止命令、刑事罰に課せられる可能性があります。
個人事業主にも関係する特定商取引法に基づく表記とは

特定商取引法に基づく表記とは、消費者保護の観点から事業者が自らの情報や取引条件を明確に示すことを求める制度であり、個人事業主にも適用されます。
主にインターネット通販や通信販売を行う際に必要で、消費者が安心して取引できるようにすることが目的です。
具体的には、事業者の名称や所在地、連絡先、販売価格、代金の支払い時期・方法、商品の引渡し時期、返品・キャンセルに関する条件などを記載しなければなりません。
これらの情報を明示することは、法令遵守だけでなく、信頼性の向上やトラブル防止にもつながります。
特にオンラインでの販売では消費者が実態を確認しづらいため、特定商取引法に基づく表記は透明性を高める重要な役割を持っています。違反した場合は行政指導や罰則の対象となることもあるため、個人事業主も正確かつ分かりやすい表記が必要です。
個人事業主でも特定商取引法の対象となる取引形態

個人事業主であっても、以下の取引形態を営む場合は、特定商取引法の対象となり、事業者情報の適切な表示義務やクーリングオフ制度の適用が定められています。
- 訪問販売
- 通信販売
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引
- 特定継続的役務提供
- 業務提供誘引販売取引
- 訪問購入
ここでは、それぞれがどのような取引形態なのかを解説します。
訪問販売
訪問販売とは、事業者が営業所以外の場所、主に消費者の自宅を訪問して商品の販売やサービスの提供を行う取引形態です。
訪問販売は消費者との契約においてトラブルが多いため、特定商取引法の厳しい規制対象となっています。事業者は訪問時に氏名や販売目的を告げ、消費者の意思を確認しながら勧誘を行う必要があります。
また、消費者が契約の意思がないと示した場合の継続的な勧誘や再訪問は禁止です。
通信販売
通信販売は、新聞・雑誌・インターネットなどを利用して広告を行い、郵便・電話・FAX・インターネット通信などで申込みを受ける取引形態です。
インターネットショップなど個人事業主が行う販売も通信販売業に該当します。
消費者が自ら能動的に申し込みをする形態で、商品の表示内容や契約条件の明確化が義務付けられています。電話勧誘販売に該当するものは除かれますが、通信販売は広範に規制されており、適切な表示やクーリングオフの対応が必要です。
電話勧誘販売
電話勧誘販売は事業者が消費者の自宅や職場に電話をかけ、直接勧誘を行い契約を締結する販売形態です。
消費者の了承なく電話をかけて商品やサービスの購入を勧めることから、悪質な勧誘防止のため特定商取引法で規制されています。
電話時には事業者・勧誘者の氏名、販売商品、勧誘の目的を告げる義務があり、過量販売などの禁止規定も設けられています。
連鎖販売取引
連鎖販売取引は、個人を販売員として勧誘し、その販売員自身がさらに他者を勧誘し連鎖的に組織を拡大しながら商品や役務を販売する取引です。
入会金や保証金、商品の購入など特定の金銭負担を伴うことが特徴で、消費者被害防止のため特定商取引法で厳しく規制されています。
勧誘の段階から十分な説明義務があり、不当な勧誘や強制は禁じられています。
特定継続的役務提供
特定継続的役務提供とは、エステ、語学教室、学習塾、結婚相手紹介サービスなど、一定期間継続して役務を提供し、高額な対価を受け取る取引を指します。
これらの役務は、契約期間や料金が一定基準を超える場合に法の規制対象となり、適正な契約内容の説明やクーリングオフの適用などが義務付けられています。
業務提供誘引販売取引
業務提供誘引販売取引は、「仕事を提供する」という誘い文句で消費者を勧誘し、商品や役務の購入という金銭負担を負わせる取引です。
仕事の収入を得られると期待させながら、実際には不当に金銭を要求するケースが多いため法で規制されています。
勧誘時には事業者情報の明示が求められ、金銭負担の有無が重要な基準となります。
訪問購入
訪問購入とは、事業者が消費者の自宅などを訪問して商品の購入を行う取引です。
貴金属などの強引な買い取り問題が増加したため、特定商取引法で規制の対象となりました。
購入業者は営利目的で反復継続取引を行う者を指し、適正な説明義務や取引条件通知義務が課せられています。消費者の利益を守るため、悪質な取引防止が図られています。
【重要】特定商取引法に基づく表記に記載が必要な項目

特定商取引法に基づく表記は、消費者が安心して取引できるよう事業者情報の明示を義務付けています。
Webサイトやパンフレットなどで、誰が販売しているのか、価格はどうなっているか、支払いや商品の引き渡しの条件、返品の可否などの重要事項を記載しなければいけません。
主に記載が必要な項目は、以下の通りです。
- 販売事業者情報
- 販売価格やその他料金の説明
- 代金の支払い方法と時期
- 商品の引き渡し時期
- 返品やキャンセルの有無と条件
ここでは、特定商取引法に基づく表記に記載が必要な項目を詳しく解説します。
販売事業者情報
販売事業者情報とは、事業者の正式名称や代表者名、所在地、電話番号、メールアドレスなど、消費者が事業者を特定・連絡できるための基本情報を指します。
法人の場合は会社名や代表者名、個人事業主であれば氏名や屋号も明記が必要です。また、問い合わせ窓口を設置することも求められ、信頼性の証明として重要な項目です。
販売価格やその他料金の説明
商品やサービスの販売価格は消費者にとって最も重要な情報のひとつです。
商品本体価格だけでなく、送料、手数料、消費税など別途発生する料金も明示しなければなりません。
価格表示が不明確だと誤解やトラブルの原因になるため、合計金額が具体的にわかるように説明することが大切です。
代金の支払い方法と時期
代金の支払い方法には、クレジットカード、銀行振込、代金引換、コンビニ決済など多様な手段があります。
支払い方法を分かりやすく消費者に伝え、支払いタイミングも明示する必要があります。
例えば、注文時に支払うのか、商品到着後に支払うのかを具体的に示すことで誤解を防止します。
商品の引き渡し時期
商品の引き渡し時期は、通常の発送予定日や納期を明確に表示します。
注文後何日以内に発送されるのか、予約商品や取り寄せ商品はどの程度の期間がかかるのかを記載することが求められます。
遅延が予想される場合の対応方法も示すことで、消費者の不安を軽減できます。
返品やキャンセルの有無と条件
返品やキャンセルに関しては、可能かどうか、期間や条件を具体的に記載しなければなりません。
例えば、商品の破損時の返品対応、サイズ違いやイメージ違いによる返品の可否、キャンセル受付の期限や手続き方法などを明確に示すことが重要です。
この記載がないと消費者保護の観点から問題となるため、詳しく説明する必要があります。
【テンプレート】特定商取引法に基づく表記の記載例

特定商取引法の対象となる取引形態を営む個人事業主は、事業者情報などの正確な明示が求められます。
記載内容は業種によって異なりますが、一般的には以下の例を参考にしてください。
| 販売事業者 | ◯◯(氏名または個人事業主の屋号) |
|---|---|
| 責任者名 | ◯◯(個人事業主の屋号) |
| 所在地 | ◯◯県◯◯市◯◯区◯◯1-2-3 |
| 電話番号 | 00-0000-0000 |
| メールアドレス | ◯◯@◯◯◯◯.jp |
| 販売URL | https://◯◯◯◯.jp |
| 販売価格 | 各商品ページに記載しています。 |
| 商品代金以外の料金 | 消費税・送料・振込手数料 |
| 支払い方法 | 銀行振込・クレジットカード・コンビニ払い |
| 支払い時期 | 注文確定後、◯◯日以内にお支払いください。 |
| 商品引き渡し時期 | 決済確認後、◯◯営業日以内に発送いたします。 |
| 返品・キャンセルについて | 商品発送後の返品・キャンセルはお受けできません。ただし、商品の不具合があった場合は速やかにご連絡ください。早急に代替商品を送付いたします。 |
上記のテンプレートは、あくまで一例となるため、消費者庁の特定商取引法ガイドを参考に記載項目を調整してください。
【注意】特定商取引法に違反した場合のリスク

特定商取引法に違反すると、法的な責任を問われるだけでなく、事業運営への大きな影響が生じます。
消費者保護のための法規制を守らないことは信用失墜につながり、行政からの厳しい処分や罰則が科される可能性があります。個人事業主でも例外はなく、法令順守は事業継続のために不可欠です。
ここでは、特定商取引法に違反した場合のリスクを解説します。
業務改善指示や停止命令などの行政処分
特定商取引法違反が認められると、まず行政機関から業務改善の指示を受けることがあります。
違反行為を是正し、消費者が安心して利用できる環境を整えるための措置です。
しかし、改善指示に従わなかったり重大な違反があった場合は、一定期間の業務停止命令が出されるケースもあります。
業務停止は事業活動が制限されるため、経営に大きな打撃となり得ます。
罰金や拘禁刑の可能性
悪質な違反や故意の場合には、行政処分に加え刑事罰が科されることもあります。
違反内容によっては2年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはこれらの併科が科される可能性があるため、法令を軽視することは非常に危険です。
こうした厳しい罰則は消費者保護を強化し、公正な取引環境を守るために設けられています。
特定商取引法に関するよくある質問

ここでは、特定商取引法に関するよくある質問に回答します。
Q.特定商取引法に基づく表記はどこに記載すればいい?
A.特定商取引法に基づく表記は法律上、掲載場所の指定はありませんが、一般的にはWebサイトのフッターから専用ページにリンクするケースが多いです。
消費者が見つけやすい位置に設置し、商品ページなどからリンクを貼ることで利便性が高まります。また、SNSやフリマアプリなどの場合は説明欄などに明示することも必要です。
Q.個人事業主でも特定商取引法に基づく表記は必要ですか?
A.特定商取引法は法人・個人事業主の区別なく適用されます。
例えば、個人事業主が通信販売を行う場合は、消費者が安心して取引できるよう、必要な事項を正確に開示する義務があります。
Q.特定商取引法に基づく表記の記載内容が間違っていた場合は?
A.記載内容に誤りがあると、消費者に誤解や損害を与える恐れがあり、法令違反となります。
発覚した場合は速やかに訂正し、誤った表示による被害がないか確認することが求められます。
Q.住所を記載したくない場合はどうすればいいですか?
A.法律上、販売事業者の住所は必ず記載しなければなりません。
ただし、自宅住所を公開したくない場合は、バーチャルオフィスやレンタルオフィスの住所を利用するなどの対策が考えられます。
Q.電話番号の表示は省略できますか?
A.電話番号の表示は原則として必須項目ですが、問い合わせ窓口をメールなどに限定する場合は、消費者に分かりやすく説明する必要があります。
ただし、表示を省略するとトラブル時の連絡などに問題が生じる可能性があるため、可能な限り記載するほうがよいでしょう。
Q.フリマアプリやインターネットオークションにも表記は必要ですか?
A.フリマアプリやインターネットオークションは個人間取引が主であり、基本的に特定商取引法の対象外となります。
ただし、継続的かつ反復的に商売として取引を行う個人事業主は規制対象となり、表記義務があります。
ECモールやハンドメイド販売サイトなど、プラットフォームが用意する「事業者情報の代行表示」を利用するのも効果的です。
しかし、自宅住所や個人の電話番号を直接公開したくない場合は、バーチャルオフィスの住所や電話番号を記載する方法があります。
例えば、GMOオフィスサポートが提供する住所を使用し、カラーミーショップのような通販プラットフォームで特定商取引法に基づく表記を入力すれば、自宅住所を公開せずとも事業を始められます。
なお、GMOオフィスサポートは月額660円~、カラーミーショップは月額4,950円~利用可能です。両サービスを利用してインターネットショップを始める場合、5,610円~と非常に安価でスタートできます。
まとめ
特定商取引法に基づく表記は、個人事業主であっても通信販売や訪問販売など一定の取引を行う場合に必ず遵守しなければならない重要な法的義務です。
特定商取引法に基づく表記により、消費者は安心して取引を行うための必要情報を得ることができ、事業者側は信頼性を高めるだけでなくトラブルの未然防止にもつながります。
ただし、記載内容には正確性が求められ、違反すると行政処分や罰則の対象となるため注意が必要です。
特にオンライン販売を行う個人事業主は法令をしっかり理解し、適切に情報を公開することがビジネス成功の鍵となります。
今後も法改正などの動向を注視し、最新のルールに対応していきましょう。
- ※本記事は、起業の窓口編集部が専門家の監修または独自調査(アンケート)に基づいて制作したものです。
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