法人登記の住所変更はどうする?必要書類や手続きも紹介
法人登記の住所変更は、企業が移転や所在地変更を行う際に必ず行うべき手続きです。
急な移転や新オフィスの開設準備に追われる中、登記変更の申請を後回しにしてしまうケースも少なくありません。
しかし、登記情報を更新しないままにしておくと、「法務局からの書類が届かない」「行政手続きに支障が出る」など思わぬトラブルを招くこともあります。また、ビジネス上の信頼関係に影響するリスクもあります。
この記事では、法人登記の住所変更の手続き方法や必要書類、変更が必要となるケースをわかりやすく紹介します。
- 【この記事のまとめ】
- 法人登記の住所変更は、移転や表示変更、代表者住所変更などが対象で、移転後2週間以内の申請が法律で義務付けられています。
- 住所変更手続きには株主総会の承認、定款修正、本店移転登記申請、登録免許税の納付など計画的な準備が必要です。
- 登記後は税務署や市区町村役場、金融機関などへの届け出も重要で、早めの対応が法人の信用維持と円滑な事業運営につながります。
法人登記の住所変更について

法人登記の住所変更とは、会社の本店所在地や代表者住所など、登記簿上の住所情報を新しい場所に更新する手続きのことです。
法人が事業所を移転した場合や、住所の表記が変更された場合には、法務局で登記の変更申請を行う必要があります。
変更登記は、会社法第915条第1項により、原則として移転から2週間以内に申請しなければなりません。また、登記を怠った場合は会社法976条に基づき、登記懈怠として100万円以下の過料に処せられる可能性があります。
さらに登記の変更を怠ると、融資や契約などのビジネスにも支障が生じる可能性があるため、移転後は速やかに手続きを行うことが重要です。
【重要】法人登記の住所変更が必要なケース

法人登記の住所変更は、会社の所在地情報が変わった際に対応が求められます。
ここでは、法人登記の住所変更が必要となる代表的なケースを具体的に解説します。
本店所在地の移転
法人の本店が別の場所へ移転した場合は、本店移転登記が必要です。
移転先が同じ法務局管轄内でも異管轄でも、移転から2週間以内に登記申請しなければなりません。
定款に本店所在地が記載されている場合には、株主総会で定款変更の承認を得る必要もあります。
住所の表示変更
住所表示の変更は、市区町村による道路整備や再開発の影響で地番から住所表示に切り替わることがあります。
この場合、法人が実際に移転していなくても、登記簿上の住所表記が更新されるため、登記の変更申請が必要です。公的機関からの通知を受け取ったら速やかに法務局に届け出ることが求められます。
これを怠ると、登記簿の住所と実際の住所が異なったままになるため、金融機関や取引先との信用に影響を及ぼす可能性があります。
支店の廃止
2022年9月26日に施行された商業登記規則の改正により、支店の所在地については登記の義務がなくなりました。
しかし、本店の登記簿には引き続き支店の所在地情報が記載されます。したがって、支店を廃止した場合には、必ず本店の管轄する法務局へ支店廃止の登記申請を行う必要があります。
支店の閉鎖後に登記手続きを怠ると、登記簿上に支店の情報が残ったままとなるため注意が必要です。
代表者の住所変更
株式会社や合同会社の代表者が住所を変更した際には、登記情報の住所更新が必要です。
特に株式会社の代表取締役の住所は、会社の信用情報として登記簿に公示されるため、正確な情報管理が求められます。これは本店所在地の変更とは異なるものの、同様に重要な登記変更の一つです。
適切な登記を行うことで、信頼性の向上やコンプライアンス遵守にも寄与します。
管轄外への移転
本店を異なる法務局の管轄区域へ移転する場合は、旧管轄での「変更登記」と新管轄での「設立登記」を同時に行う必要があります。
期限は移転日から2週間以内で、新旧双方の法務局間で申請書類の送付・受理が行われるため、処理に時間を要する点にも注意が必要です。
書類の作成や添付資料も通常より多くなるため、早めに準備を進めましょう。
法人登記の住所変更で必要な手続き

法人登記の住所を変更する際は、会社法に基づいた適切な社内手続きと登記申請が必要です。
ここでは、法人登記に伴う主要な手続きの流れを順に解説します。
株主総会の開催
法人が住所変更を行う際は、まず株主総会を開催して住所変更に関する承認を得ることが必要です。
株主総会の開催は移転日より前に行う必要があるため、移転日を決定した後、速やかに開催します。株主総会では、新しい住所や変更理由、変更日などを決議し、その内容は株主総会議事録として文書化します。
議事録の他に、株主リストも登記申請時に必要な添付書類となるため用意しておきましょう。
これらの手続きは、法人の住所変更手続きの法的根拠を確立し、登記申請を円滑に進めるために重要です。
定款の変更
法人の住所が異なる市区町村に移る場合、定款に記載された住所の修正が必要となります。
この修正には株主総会にて特別決議を取得することが求められ、議決権を有する株主の過半数以上の出席と、出席者の3分の2以上の賛成が条件です。決議が成立すると、新しい住所を反映した定款を作成し、株主総会議事録と共に登記申請時に提出します。
定款変更は住所変更登記の重要な前提となるため、手続きの正確性と適切な議事録作成が特に重要となります。
本店移転登記の申請
法人登記の住所変更では、本店移転登記の申請が必要です。
法人の住所変更に伴う本店移転登記の申請は、以下のステップで行われます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1.必要書類の準備 | 株主総会議事録、株主リスト、定款(変更があれば)、本店移転登記申請書を揃える。管轄変更がある場合は旧法務局管轄と新法務局管轄にそれぞれ申請書を用意。 |
| 2.申請場所の確認 | 本店所在地の変更先が同一管轄内なら1ヶ所の法務局へ、異なる管轄の場合は移転前の法務局へも提出が必要。 |
| 3.登記申請の実施 | 法務局窓口、郵送、または「登記・供託オンライン申請システム」によるオンライン申請が選べる。 |
| 4.登録免許税の納付 | 納付は申請時に収入印紙貼付または電子納付で行う。 |
| 5.申請期限の遵守 | 移転日から2週間以内の申請が義務。 |
計画的に準備を進め、必要書類の漏れや申請期限の遵守に努めることが大切です。
登録免許税の納付
本店移転登記に際しては、登録免許税の納付が必須です。
管轄内の移転であれば3万円、管轄外の場合は旧法務局・新法務局双方で3万円ずつ、合計6万円となります。
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表 会社の商業登記(主なもの)」
納付方法は申請時に収入印紙を貼るか、オンライン申請時に電子納付を利用します。
登録免許税は登記申請時に必ず納付が必要な法定費用であり、金額の誤りがあると申請が受理されない場合もあるため、事前確認が重要です。
法人登記の住所変更後に届け出が必要となる場所

法人の住所変更後には法務局への登記だけでなく、さまざまな公的機関や取引先への届け出が必要になります。
ここでは、法人が住所変更後に手続きを行うべき代表的な機関を紹介します。
税務署
法人の住所変更後は、速やかに税務署へ異動届を提出する必要があります。
これには以下の3つが含まれます。
- 異動届出書
- 納税地の異動に関する届出書
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
移転前および移転後の管轄税務署に届け出ることが必要です。届出書類は国税庁の公式サイトからダウンロードでき、移転日からなるべく早く提出することが推奨されます。
これにより法人税や所得税の課税関係が正しく管理され、税務上のトラブルを防ぐことができます。
市区町村役場
法人の住所変更後は、新所在地の市区町村役場に届け出を行う必要があります。
主に法人住民税の納付先変更のためで、各市区町村の担当部署に異動届出書を提出します。届出期限や提出書類は自治体ごとに異なるため、事前に移転先の市区町村役場で確認しましょう。
法人の事業所として正式に登録を済ませることで、住民税の適正な課税につながります。
年金事務所
法人の住所変更後は、管轄の年金事務所に「適用事業所名称・所在地変更(訂正)届」を提出する必要があります。
提出期限は、変更事由が発生してから5日以内と定められており、速やかな手続きが求められます。
提出方法は窓口持参、郵送、またはオンライン申請が可能です。管轄が変わる場合は、変更前の管轄年金事務所に届出を行い、健康保険料率が変わることもあります。
適切な届け出で社会保険の管理が円滑に行われ、遅延するとトラブルの原因となるため注意が必要です。
労働基準監督署
法人が住所変更をした場合、移転後10日以内に新所在地を管轄する労働基準監督署へ「労働保険名称・所在地等変更届」を提出する義務があります。
この届出は、労働保険の適正な管理と労働者の保護のために必要で、移転前の管轄署ではなく、移転先の管轄署に提出しなければなりません。届出書には登記簿謄本のコピーなど、変更を証明する書類の添付が求められます。
また、一元適用事業所か二元適用事業所かによって、手続きや提出先が異なるため、事前に確認して正確な手続きを行うことが重要です。
公共職業安定所
法人の住所変更後は、公共職業安定所にも「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出する必要があります。
提出期限は移転日から10日以内で、新住所を管轄する公共職業安定所に届け出ます。なお、労働保険の所在地変更届も併せて提出し、手続きの順序としては労働基準監督署へ先に届け出ることが推奨されます。
公共職業安定所の届け出は求人情報にも影響するため、届け出の遅れがないよう早めの対応が重要です。
金融機関
法人が住所を変更した場合、取引のあるすべての金融機関に速やかに届け出ることが必要です。
通常、登記簿謄本の最新のもの、法人印鑑、通帳、代表者の本人確認書類などが必要です。届け出により、法人名義の口座情報や契約書の住所が更新され、取引先や金融機関とのやり取りが滞りなく行われるようになります。
また、融資契約や保証内容にも影響するため、漏れなく手続きを済ませることが重要です。
郵便局
法人が住所を変更した際には、郵便局への転居届の提出が必要です。
「郵便物転送サービス」を利用することで、新旧住所間で届く郵便物を1年間無料で新住所に転送してもらえます。届出は郵便局の窓口、郵送、またはオンラインから行うことが可能です。
転送開始までに数営業日かかるため、早めの手続きが望まれます。
また、転送期間が終了すると旧住所宛の郵便物は差出人に返送されるため、必要に応じて延長申請も検討しましょう。
警察署
法人の住所変更後、特に営業所としての所在地が変わる場合は、管轄の警察署に「営業所移転届」や「許可証書換申請書」を提出する必要があります。
提出期限は移転日から14日以内と定められており、遅延すると罰則の対象となる場合があります。
届出に際しては、登記事項証明書のコピーや、新旧住所を証明する書類の添付が必要です。
【結論】法人登記の住所変更は早めの対応を
法人登記の住所変更は早めの対応が必要です。
法務局への登記申請期限が移転日から2週間以内と法律で定められており、この期限を過ぎると登記懈怠として代表者に100万円以下の過料が科される可能性があります。
さらに、登記の遅れは取引先や金融機関での信用低下や契約・融資の遅延を招くこともあります。したがって、法人の住所変更に伴う各種手続きは計画的に準備し、速やかに進めることが重要です。
早期対応が法人の信頼維持と円滑な事業運営につながります。
法人登記の住所変更はGMOバーチャルオフィスもおすすめ
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法人登記の住所変更に際して、コスト削減とサポート体制を重視したい場合は、GMOバーチャルオフィスを利用してみてはいかがでしょうか。
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